11月25日付けの信濃毎日新聞に「里親制度(アダプト)」に関する記事がある。昨今話題に出ることもあり、以前に触れたこともあったが、これに関して疑問もあったので再度これに触れてみたい。
以下信毎ウェブにあった記事の引用。
県管理の道路「里親」2倍に 10年度までに
県管理の国県道の「里親」として住民や企業、学校などと協定を結び、美化活動に取り組んでもらう
「アダプトシステム」について、県は2010年度までに計200団体と締結し、05年度時点の2倍
に増やす方針だ。「地域の連携で、きめ細かな道路環境の維持・向上を進めてもらいたい」
(県道路課)と話している。
県は協定先に、清掃や除雪のためのほうきやスコップを貸し出したり、沿線に植える花の苗を提供した
りする。作業中の事故に備えた傷害保険への加入も支援する。05年度までに協定を結んだのは101
団体。それぞれが、延長計143キロの道路の美化活動などに取り組んでいる。県が作った本年度から
の5カ年計画によると、本年度は新たに25団体と協定を結ぶ方針で、10月末までに13団体と締結
した。締結をさらに進め、10年度には、市街地や平地の県管理の道路約2450キロのうち計
約220キロで、200団体に活動してもらいたいとしている。
県道路課によると、県管理の国道や県道の清掃などは通常年2回程度。協定は年6回以上の活動を盛り
込んでいる。
(引用おわり)
「里親」「アダプト」でネット検索すれば分かるように、これらは1998年頃にアメリカから導入され、身近な公共施設について地元の人が日常の管理を行い、管理者がそれをバックアップする制度として日本各地で定着した。言うまでもなく、ここでのアダプトは英語のadopt(adaptではない)に由来している。
長野県においては、道路、河川、砂防に関してそれぞれアダプトが設定されており、ここ1~2年でそれぞれの協定締結数は増加している。財政難にあえぐことと、現場組織に予算付けと人員配置ができないこととで、県が管理する道路、河川などの公共施設は十分な管理がなされていないものが多く、とりわけ草刈が目に付く。目に付く以上は苦情もあるし、日頃から管理者として占用料(土地使用料)を徴収しているくせにとの批判もある一方で、管理の手が現実に回っていないのが実態としてある中で、県がそれを推進したい気持ちはよく理解できる。この信毎記事は、県庁の道路課(旧・道路維持課)による広報の一部と見てもいいだろう。
確かにここ1~2年で、道路に限らず河川等のアダプト協定も増加している。しかしこうしたアダプトの協定が結ばれている実情は、従来から地元でそうした取り組みを行っている組織に県が正式に援助の契約を結んだというだけでしかなく、こうした取り組みを知って地元で活動をしようと新たに立ち上がったというのはレアケースだ。
県民の間で、身近な公共物を自分達で管理しようとする機運が高まっているとも思えない。むしろ、自分の家の前の道路や河川の草刈を県はしてくれないとする苦情が相次いでいて、現地で対応が回らないのに腹を立てて知事あてに文句を言う人がいたとの話も聞いてくる。
そうした実情を知ってか知らずか、道路課は現地機関に対して、この信毎記事と同様な内容を事実上のノルマにするともいえるような通達を出していた。道路課としては、こうした一見安上がりのシステムを導入することにより維持管理費を安く上げたいとの思惑があるのだろうし、実際にただでさえ少ないとされる管理の予算を更にカットする動きも出ている。一方で、県の施設なのだから県が草刈等の管理をすべきだと主張する県民は少なくなく、そうした人達に限って声が大きい。
住民サイドの公意識に甘えるように県庁がノルマを課すことの滑稽さ、住民サイドにおける公の意識が希薄になっていることの是非はここではさておき、県庁と県民とで、お互い虫のいい皮算用を相手に期待して、間に入っている現地機関が両者から責められるという図式だ。
県の提案したアダプトという予算補助システムに、既存の草の根の取り組みが組み込まれたということで増加してきた里親制度だが、数に限りがあるものを組み込んでいるだけであれば、協定数の増加は近いうちに頭打ち状態になるだろう。里親という取り組み自体は決して悪いものではないが、これは決して道路や河川の管理者による管理の代替措置ではなく、管理を補完する位置づけでしかない。
以下信毎ウェブにあった記事の引用。
県管理の道路「里親」2倍に 10年度までに
県管理の国県道の「里親」として住民や企業、学校などと協定を結び、美化活動に取り組んでもらう
「アダプトシステム」について、県は2010年度までに計200団体と締結し、05年度時点の2倍
に増やす方針だ。「地域の連携で、きめ細かな道路環境の維持・向上を進めてもらいたい」
(県道路課)と話している。
県は協定先に、清掃や除雪のためのほうきやスコップを貸し出したり、沿線に植える花の苗を提供した
りする。作業中の事故に備えた傷害保険への加入も支援する。05年度までに協定を結んだのは101
団体。それぞれが、延長計143キロの道路の美化活動などに取り組んでいる。県が作った本年度から
の5カ年計画によると、本年度は新たに25団体と協定を結ぶ方針で、10月末までに13団体と締結
した。締結をさらに進め、10年度には、市街地や平地の県管理の道路約2450キロのうち計
約220キロで、200団体に活動してもらいたいとしている。
県道路課によると、県管理の国道や県道の清掃などは通常年2回程度。協定は年6回以上の活動を盛り
込んでいる。
(引用おわり)
「里親」「アダプト」でネット検索すれば分かるように、これらは1998年頃にアメリカから導入され、身近な公共施設について地元の人が日常の管理を行い、管理者がそれをバックアップする制度として日本各地で定着した。言うまでもなく、ここでのアダプトは英語のadopt(adaptではない)に由来している。
長野県においては、道路、河川、砂防に関してそれぞれアダプトが設定されており、ここ1~2年でそれぞれの協定締結数は増加している。財政難にあえぐことと、現場組織に予算付けと人員配置ができないこととで、県が管理する道路、河川などの公共施設は十分な管理がなされていないものが多く、とりわけ草刈が目に付く。目に付く以上は苦情もあるし、日頃から管理者として占用料(土地使用料)を徴収しているくせにとの批判もある一方で、管理の手が現実に回っていないのが実態としてある中で、県がそれを推進したい気持ちはよく理解できる。この信毎記事は、県庁の道路課(旧・道路維持課)による広報の一部と見てもいいだろう。
確かにここ1~2年で、道路に限らず河川等のアダプト協定も増加している。しかしこうしたアダプトの協定が結ばれている実情は、従来から地元でそうした取り組みを行っている組織に県が正式に援助の契約を結んだというだけでしかなく、こうした取り組みを知って地元で活動をしようと新たに立ち上がったというのはレアケースだ。
県民の間で、身近な公共物を自分達で管理しようとする機運が高まっているとも思えない。むしろ、自分の家の前の道路や河川の草刈を県はしてくれないとする苦情が相次いでいて、現地で対応が回らないのに腹を立てて知事あてに文句を言う人がいたとの話も聞いてくる。
そうした実情を知ってか知らずか、道路課は現地機関に対して、この信毎記事と同様な内容を事実上のノルマにするともいえるような通達を出していた。道路課としては、こうした一見安上がりのシステムを導入することにより維持管理費を安く上げたいとの思惑があるのだろうし、実際にただでさえ少ないとされる管理の予算を更にカットする動きも出ている。一方で、県の施設なのだから県が草刈等の管理をすべきだと主張する県民は少なくなく、そうした人達に限って声が大きい。
住民サイドの公意識に甘えるように県庁がノルマを課すことの滑稽さ、住民サイドにおける公の意識が希薄になっていることの是非はここではさておき、県庁と県民とで、お互い虫のいい皮算用を相手に期待して、間に入っている現地機関が両者から責められるという図式だ。
県の提案したアダプトという予算補助システムに、既存の草の根の取り組みが組み込まれたということで増加してきた里親制度だが、数に限りがあるものを組み込んでいるだけであれば、協定数の増加は近いうちに頭打ち状態になるだろう。里親という取り組み自体は決して悪いものではないが、これは決して道路や河川の管理者による管理の代替措置ではなく、管理を補完する位置づけでしかない。