『 うさぎの言霊 』 Rabbit's Kotodama 

宇宙の謎、神と悪魔と人とは?

《 最終章 》 〈 第五話 〉 騎士と武士( 後 編 )

2019年02月07日 08時46分39秒 | 小説




     遂に始まった正邪の最終決戦!
    その決戦も三日目に突入致しました。

  今まで月面特設リングにおいて、アンドラスタ司令長官と拳三は、
 百本の剣の死闘を繰り広げていました。

拳三と相対する中で、悪魔の騎士は神の愛に大きく心が揺さぶられ、
何と改心してしまいます。

 改心したアンドラスタは、徹底的に拳三を鍛え上げ名刀とすることで、
  神へのお詫びの証としたい思いなのです。

   そして今、百本目になろうとしていましたが、
    ここで拳三から提案がありました。

    それは、父、剣三郎直伝の 「活人剣の構え」
    なるものを披露したいというものでした。

  その構えとは如何に ・・・






月の裏側 





          ( 推奨 BGM ) 

       フレデリック・ショパン 作曲

   00:00 - Nocturne in F major, Op.15 No.1 (1967)
   03:41 - Nocturne in D-flat Major, Op. 27 No. 2 (1972)
   09:41 - Nocturne in C minor, Op. 48, No. 1 (1978)
   14:54 - Nocturne in E-Flat Major, Op. 55 No. 2 (1965)   

       マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

https://www.youtube.com/watch?v=q6vq5YarPe8&index=18&list=RDAYCaAU5N0Sg     


 


( うむ。ところで、もう一本で百本目になる。
  これで最期にしよう。随分時間も経過してきた。

   僕はもう充分 君と剣で語り合ったと思うが、君はどうかな?)


( はい、私も先生の御指導を十二分に魂に刻み込みました。
  ただ、一つお見せしたいものが御座います。

   これは、技ではありません。

   我が父、剣三郎が編み出した
  「 活 人 剣(かつじんけん)の構え 」 と呼んでいるものです。

  これは戦国時代、上泉信綱 が提唱した 「 活人剣 」 に父が傾倒し、
 「 戦わずして相手から戦意を奪う 」
 極意として辿り着いた構えであります。

  どうか、御覧頂きたいのですが、如何で御座いましょう。)


( いいだろう。
 まあ、その 「活人剣の構え」 から君の父の想いを感じ取り、
 この胸に刻み付けよう。さあ、見せてくれ給え。)


    そう言いながらも、理解出来ない顔だ。


( あ、有り難き幸せに存知ます。

 では参りますが、私は先生を倒す気は御座いません。
 ただ、先生は普通に構えて頂ければ結構です。)


    拳三はうれしそうな顔から、直ぐに穏やかな顔になった。


( それは構わんが、わざわざ言う事か?)


  彼は言われた通り通常の構えで相対した。

   拳三が、ニ コ ッ、 と笑った。

    ただ静かだ ・・・
    殺気は無い ・・・   なんで???
    気合も無い ・・・

   拳三は右手を、えっ? 妙だ ・・・
  刀の刃先を上にしてゆっくり抜いた。

アンドラスタも驚いている。

それで、抜いた刀の柄を左手で軽く添え、そのまま中段に構えた。

 つまり上向きの刃先を相手は見下ろす訳です。
 見るだけなら怖いですが、峰打ちの構えでしょうか?

  あ、まだあるようです。

 次に、その刀を持った腕を前方に軽く伸ばし、
切っ先をアンドラスタのへその辺りに向け、
そのまま腰を落としつつ、
 右足を後方に大股で一歩ほど伸ばしました。

  体重は、ほとんど左足に掛かっていますが ・・・

   へっ? 何のポーズ??

  あまりに奇妙な前傾姿勢の構えです。

これでは、如何なる攻撃を仕掛けることも不可能です。
しかも刃っ先の向きは上下逆。

  あなた、どう思います?

  漫画 「 るろうに剣心 」 の逆刃刀とは訳が違います。

    この構え、やってみて下さい。

  腕を伸ばしていると攻撃の動作に移る時、
  腕を引いて力を溜めてからでないと、
  突くなり斬るなりが出来ません。

そりゃ勿論、腕を引いてから攻撃すればいいのですが、
その僅かな時間に、相手の攻撃は当たってしまいます。

 ましてやフェンシングの剣士が相手なのですから ・・・

つまり、この構えは攻撃を放棄しているとしか思えません。
致命傷を与える等とても?

 あ、いや、拳三君は相手を倒す気はないと言っていました。

すると、相手に刃先を見せ付け怯ませておいて、
隙を見て腕か足にちょっと突きを放つ。でしょうか?

 それで、

「 今日はこの辺で勘弁しておこう。もちっと腕を磨かねばならんぞ。」

 とか言って、めでたしめでたし ・・・ という結末?

  実に平和的解決法であります。
  しかし、真の目的は何でしょう?

    ただアンドラスタは、
    この構えの意味を掴もうとしていますが怪訝な表情は変らない。


( いや、確かに攻撃はしづらい。
 ただ、僕が攻撃を仕掛ければ君の腕は落ちるぞ。)


( はい、おっしゃる通りです。
  先生が相手の場合には通用しません。

   ですが、レベルを グッ、と落とせば話は別です。

   失礼ですが、
  人間並みのスピードで攻撃を仕掛けて頂けますでしょうか。)


( それは構わんがねえ ・・・?) 私も ・・・? です。


  彼の言う通り、アンドラスタは攻撃に転じる為、
  一瞬右腕を上げた。

 その刹那、拳三の刀の切っ先が、
その右腕に向かって少々間合いを詰めた。

するとアンドラスタは攻撃を止めた。
出端を挫かれたからだ。

 そのまま少しでも前に体重移動していれば、
  彼の腕は拳三の上向きの刃先に触れて傷を付けられてしまう。

    拳三が ニヤッ、と笑った。


( おいおい、これでは人間の一流剣士でも、そう攻撃は出来んぞ。

  では左右に回り込もうとしたら、
   君は左足を軸に回転して対応するのだろう。どうかな?)


( 仰せの通りで御座います。

  私は単に相手の腕、
   又は踏み込んで来る足の動きに刃先を合わせるのみで、
    こちらから仕掛ける事はしません。

    それに、間合いに入られ危ないと思ったら、
    剣を引きつつ後方に下がります。

  それだと、
 相手の剣に私の小手や腕を狙われても容易にかわせます。)


    拳三は実際に動いて示した。


( 理屈は分かった。
  防御面に特化した構えということになるが、
   あ~~相手を倒す気が無いとか始めに言って、

    「 戦わずして相手から戦意を奪う 」 構えか?

   自分も戦意無し、
  相手からも戦意を奪い、戦う意味無し ・・・ 何だと?

 では実力が上の相手等に対抗する為の構えということか?
  それに 「 無益な殺生すべからず 」 かな? 

   それじゃあ、まるで坊主ではないか?
    はっ、坊主武士だ! 君の父は正気かね?) あ~なるほど。


( は、はい、そういった意味も含まれます。

    父曰く、

 「 命のやり取りなどつまらない。 
  勝敗を気にするより仲良く剣技を磨こう。」


              だそうで御座います。) 


      こりゃいい!!!


( 何だと? それが現代武士の心得か?

  つまらんつまらんというよりはっ、
   おかしくて、ははは、はぁ~はっはっは ・・・
    おい ・・・ わ、笑わせるなよ。)


    彼は腹を抱えている。


( 先生。正直私も以前は理解出来ませんでしたが、
  今やっと理解出来ました。) 何だ?


( 今頃かね。親不孝者だな、全く ・・・ 
  お、御蔭で プッ、力が入らんぞ。)


( せ、先生。)  ニコニコ 楽しそうだ。

( ん? ぷ っく く、何だ。)  苦しそうだ。

( 先生は完全に戦意喪失なされました。
  こ、これって一本取った事になりませんでしょうか? 
   ぷぷっ ・・・ )  戯けだ。


な、何だとお~~!!
  ん~それはある意味一本取られた感はあるが ・・・

  もしや、この僕から剣聖の称号が欲しいのか?
 全く現代武士はなっとらんなぁ。

  分かった、しょうがない。
  約束だから剣聖の称号を授けよう。

 ただし君の父、剣三郎にだ。当然だろう。

  悔しかったら、父上君に認められるまで精進することだな。)


    父は偉大なり!


ええ~~ッ、それはないですよ! 
  そこを何とかならないでしょうか?)


( ならんなぁ。騎士に二言は無い!

  それにタイムリミットだ。
   総帥がお呼びなのだよ。もう行かねばならない。

    楽しい一時だったよ拳三。

   最期に君を弟子と認めよう。
  君には僕の全ての奥儀を見せたといっても過言ではないからね。)


( あ、ありがとうございます。 師匠ぉ、うう ・・・ )


( 泣くな。 我々には、まだ別の戦いが待っている。

  僕は総帥と共に、地球で最期の戦いに挑まねばならない。
  相手は正神軍。つまり君も含まれるのだ。

  ただし、君が自力で地球に戻れたらの話だ。

 それに君の体の大きさは、まだ適性ではないだろう。
これからは一人。
だが、寂しさなど今の君なら微塵も無い筈。

良いか、光の粒子の左回転を意識し中心を貫くのだ。
さすれば一瞬で地球だが、甘くは無いぞ。
 まずは飛ぶスピードを上げることだ。

  大黒天様は時間に厳しいお方だから遅刻などしたら、
   メンバーから外されかねないだろう。)


( 師匠、お約束致します。
 必ず時間内に地球の神の光輪へ戻り、邪神軍を向かえ打ちます。

 ただ、師匠は邪神軍を抜けては頂けないのでしょうか?)


おい、戯言を言うな! 

  いいかぁ、僕が生きる目的は既に切り替わっている。
  この瞬間に於いて、主神の為に成すべき事。

 それは、堕天した天使の無様に断罪される姿を、
  神の子人の魂に刻み付ける事だ。

  邪道魔道に堕ちた者の末路、
 それがどんなに醜く愚かなものかをなぁ!

 その神の演出は、
  世にも恐ろしい姿でこの物質界に顕現されるであろう。
  この僕でも血が凍る程の恐怖を感じる。

 だが、もう逃げられない。
  僕は魂で全てを受け止め永遠に懺悔するのみ!

 君もその姿を見届けるのだ。 急げよ、拳三!! )


    そう言うと、
    アンドラスタの姿は名残惜しそうに静かに消えて行った。


 ( 師匠ぉ~、ありがとうございました。 
   時間内に必ず地球へ帰還します ・・・

   え、あれっ、お、おあっ ・・・ 

  じゅ、重力が戻った。軽いなぁ。それと誰もいない ・・・ 
 何時の間に消えたんだろう。 一人かぁ ・・・ )


   そうなんです。
   アンドラスタが去る前に、三機の邪龍は地球に戻ったのです。

   それで、電磁シールドも悪魔の蜘蛛の巣も、
   地球へ転送されたようです。


       一人残った拳三 ・・・

    月から地球までの距離、344,400キロメートル。

 光 = 電磁波 ( 秒速30万キロ ) のスピードで換算すれば、
一秒余りで到着ですが ・・・

 瞬間移動の技は容易に身に付かないようです。



            ( 推奨 BGM ) 

       ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン 作曲
    ピアノソナタ 14番 嬰ハ短調  作品27ー2 「月光」 

         マウリツィオ・ポリーニ( ピアノ ) 
 
 
https://www.youtube.com/watch?time_continue=3&v=oj75TeQmSHA


 



    光 ・・・ この全宇宙全次元は神の光と愛の充満界。


     故に物質界も然り。


  つまり瞬間移動、テレポートとは、
 己の全身全霊が光その物だと認識出来た時に、
初めて可能になる技ではないだろうか?

その他の霊力にしても、
根幹にその自覚が無いと発揮出来にくいと思います。

全てが光。一点も光の一粒子。
全次元はその光の充満界。

 故に汚れた醜く重い魂、汚れた心と体のままでは、
  神の子の力、霊力が復活しないのであります。

   更に人の体は、
   本人の意識無くして太陽やその他の光が当たっているから、  
  その反射に因り、他人から自分の体が認識されるのです。

 そこには色霊のみ働きがあるのです。

加えて、自らの魂を光らせ真の光の放射体となる。
これが最も人を光らせ、
 他人にも神にも讃えられる要素になるのです。 

  月やその他の星にしても、
  太陽(恒星)の光を浴びないと地球からは見えません。
 それと同じことです。

加えて己の体、
特に顔や背中という部分は鏡を使わないと見られません。
とは言え、反射した姿ですので逆向きです。

 きっと神様は、「人の本体は違う次元に有るのだ。」 と、
  おっしゃりたいのではないでしょうか?

  そう考えると面白いでしょう。

 人の魂も体内も、自分では見る事は出来ません。
自分の心でさえ良く分かっていない者多しで御座います。

逆に他人の方が良く理解している場合があります。

 したがって人というものは、
  利他の為、神の為に存在している証拠とも言えるものであります。
   是非、意識されて下さい。

  更に、魂が強く光らないと、
 神様から救いの手を差し伸べられることはありません。
地獄の人間界は、既に真っ暗な泥沼の中にあります。

そこで魂が輝いていなければ、
 救いたいと思われた神様でも見つけることはできません。

  逆に言えば、泥沼の中にいるのに脱出しようと努力しない人間は、
  もう救わないということです。

 だからこそ、心と魂の浄化の行が最も大事な要素になるのです。

   私の座右の銘の一つは 

    「 汚れが取れずば磨けまい! 磨けずば輝けまい!」

     であります。

    それは、心と魂の浄化を意識してのことなのです。

  人の魂といえる主要な八つのチャクラは、
 頭頂部から背骨沿いに点在しています。

そのチャクラが光輝くと、光の柱、或いは 火柱 となり、
我の神性なる魂は此処にありと、神々に示すことができるのです。

 そうは思いませんか?
  私はそう思います!!!


      宇宙根源の『 生命の樹 』の謎 参照


        神を表す単位は、「 柱 」 です。

       宇宙根源の 「生命の樹」=「創造主」 
      から分けられた魂が幾多の神々でありますから、
      「柱」 と称される訳が理解出来るでしょう!

       「木」「主」と書いて、「柱」ですね。

    みなさん、心と魂の汚れを取り、磨いて光輝かせましょう!

      そして自分の中心軸を光の柱とするのです!!


    ここで、何度もお伝えしている情報を再度記載致します。


         《 アセンションの3ヶ条 》

   1、心と魂の浄化が、100%中81%まで到達している。
   2、DNA12条が完全解除している。
   3、光のネットワークに繋がり、地球意識に到達している。




さてさて、拳三君が飛ぶにしてもどれ程のスピードが出るのか?

 先程からの戦いで見る限り、
  戦闘機の機動力よりはあるように見えました。

   現在時刻、何と日本時間、午後六時を回っています。

  つまり、剣の神前試合百本に要した時間は凡そ五時間です。
 拳三は百回死んだようなものです。

そして、実際は一本どころか傷一つも付けられず、
 剣聖の称号はおあずけ ・・・

  大黒天様とのお約束の制限時間は、午前八時から午後十一時。


    残り五時間弱。


( ああ、とにかく行こう。
  瞬間移動のイメージはまだ掴めないから飛ぶしかない。

   地球は見えるんだけど、後五時間しか無いぞ。
   もう行こう ・・・ では、月の女神様、行って参ります。
   あちこち散らかして申し訳ございませんでした。

  よ~し待ってろ地球 ・・・ ? 
 ああ、あれは何だ?)


    あれって、あれは ・・・ ななな? 
    スゴスゴすご~~~!!!

                    
《 あたたたた、あのお方は 月讀命(つくよみのみこと)様
  素戔嗚尊(すさのおのみこと)様 ではないかぁ!

    あわわわ、何という神気じゃあ!!
     太陽のオーラを纏ったかの如き御姿!


      おい、うさぞう、控えよ控えよ頭が高いぞ! 》

      チュチュチュチュ ちゅうううう ~~~~~!

     「 ははは、はい~~~~っ! 」 





はっはっはっは、わしらは女神ではないぞ!
  残念じゃったな!

  わしは月の守護神、素戔嗚尊である!
 こちらは兄上の月讀命殿じゃ!》 


《 ほほほ、紹介ありがとう。
  拳三よ、なかなか見応えのある試合であったぞ。
   大義であったな。褒めて遣わすぞよ。ほほほほ。》 


( あああ、何と偉大な神様にお会いできるとは光栄至極に存じます。)  


《 まあまあ、そう畏まらんでもよいぞ。

  しかし、隕石でも落ちたかのような散らかりようじゃな。
  その衝撃は、月の内部世界まで響いておったわい。

 よくぞ悪魔共の攻撃に耐えたものだ。見事であったぞ!》 


    素戔嗚尊様が仰せです。


( はは、有り難き幸せに存じます。)


《 拳三よ、我等と同様に汝を見守っていた同志達がおりますから、
  引き合わせて差し上げましょう。

   さあ、月の住人を代表とする神々よ。
    そして宇宙連合の皆よ姿を見せなさい!》


     すすっす、すると、
    あああ、満天の星々が一斉に動き出しました!

   それらの動く星は、なんと宇宙船だったのです。
  なんという壮大な光景でしょう!

   そして輝くオーラを纏った神々が、拳三の頭上にお出ましです。


《 拳三よ、汝は一人ではありませんね!

  それに月以外の全宇宙の恒星、惑星の同志達も祈っているのです。
  そのことを決して忘れてはいけませんよ。

 では、我々が暫くこの場で見送ります。

そして、私と素戔嗚尊は地球で待っていますよ。
何しろ我等二人は、地球の守護神、「丑寅の金神」 なのですからね。

つまりは月と地球の守護を兼務しているということです。

 ただし、地球に於いては、
  国之常立神(くにのとこたちのかみ)様の補佐的役割 を仰せつかっています。
  三位一体の神が守護することで、「丑寅の金神」 と呼ばれるのです。

 もう地球の表層上は汚染と破壊が限界域まで達しています。

我等、「丑寅の金神」 は、
地球表層上全体を大浄化する苦渋の決断をしました。

その地球の大浄化を最期まで見届けるのです!

 さあ、全身全霊をもって地球の魂、
 「丑寅の金神」 を意識しながら飛ぶのです!!



《 拳三! わしも地球で待っているぞ!! 

  さあ、ゆけ~~い! 

   己の神性に自信と誇りを持って、
   燃える魂を爆発させて飛ぶのだ!! 


  それに振り向く必要はないぞ。
 何しろ時間が無いでな! はっはっは ・・・》


( ははあ、有り難きお言葉を肝に銘じ、
  全力で地球に向かいます!!)


  そう言うと、拳三は地に額づいた後、
   ゆっくり立ち上がり、飛び立ちました。

    彼の魂には燃え上がる闘志が漲っています。

     思いがけない神々と宇宙連合の皆様の激励は、
     よほど彼の魂に響いたようです。

     それからは振り向くことなく、
    厚い雲で覆われた地球を目指したのです。






ところで、残り五時間でどれ程の平均時速が必要か、計算してみて下さい。
 月から地球までの距離、344,400キロメートル。 

  簡単でしょ。

最低、平均時速、約8,000キロは出さないと余裕で到着出来ません。

 ただし、地球に到着前にすることがあります。
  それは減速です。

    ブレーキを掛けなければ地球に衝突となります ・・・

    とはいえ、
   そんな計算をするコンピュータは持ち合わせていないでしょうから、
  勘ピュータを使う他ございません。

あ~~こりゃ厄介だ!!!

 大気圏突入時の摩擦熱は、何等問題無しですから、
  後は速度を上げることと、
   もう一つ ・・・ 体の大きさを適性にする事です。

   さて、我等も後を着いていますが何でしょう、速いのか遅いのか?
  周りの景色が変らないので、実感が湧きません。

    拳三もピンときていません。


《 では、現在の速度を教えて進ぜよう。
  時速二千飛んで二十キロじゃ。
   音速の二倍すら出ていないとは話にならんわい! 》

   チュチュウ。


  その時、上から巨大な白い物体が迫って来ています ・・・ 
 邪龍じゃない何か?

いや、邪気を少し感じるが ・・・ 
ただ、あれは恐らく彗星だ。長い尾を引いている。

直径数キロはあるでしょう。
彗星は一瞬で通り過ぎました。

 拳三はそのガス状の尾を避けようとしましたが、
  避け切れませんでした。

   ガス状の塵を被ってしまったのですが、
    何か顔に纏わり付いているようです。

    粘り付く何か分かりませんが、特別支障は無いようです ・・・
   彼は、また飛び始めました。


《 いや、支障はあるぞ。これを見よ。》 チチ~


   叡智晶で先程の彗星を拡大して見ていますが ・・・


「 こ、これは何でしょう? 奇妙な形ですね。」


《 いいか、これはシアニードの邪龍が
  縮こまって彗星に化けていたのじゃ。

   あの塵の成分は恐らく蜘蛛の糸だ。
    何か仕掛けがあるに違いない。
     これは気を付けて見ておらねばならんな。》 

     チュウ~!


「 はは、気を付けます。」


   何と、ただ塵を着ける為だけにわざわざ彗星に化けるとは、
    当然この先に待ち受けるものは地獄でしょう。


《 しかしなぁ、マーフィーの様子も気になる。
  もう地球で待つことにしよう。では、ゆくぞ。》

   チチッ!

   「 ははっ!」

    《 戯け、ふざけるな!》 タワケ。

     「 いやその、偶然でして・・・」 あは~~ 




 さて、月の住人達から見送られ、
意気揚々と地球を目指して飛びった拳三ですが、
幾多の試練が待ち受けています。

 果たして、無事に地球に到達できるのでしょうか?

  皆さんも祈ってくださいね!





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