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癒さぬ傷口が 栄光への入口

華麗なる一族【最終回】

2007-03-20 | テレビ。
結局、序盤に感じた違和感を引きずってしまって真っ直ぐ見ることが出来なかったのですが、最終回は良かったと思います。

華麗なる一族

何に違和感があったかといえば、ひとつは万俵鉄平の言動に一企業を率いている責任の重さとかそういうものが感じられなかったことじゃないかと。
原作はまだ読んでいないが(近々読む予定…借りて…)このドラマに関しては主人公を鉄平において父子の確執、愛憎が主題となっていた為もあるのだろう。鉄平の鉄鋼業に対する情熱もしつこいほど描かれてはいたのだが、最終的に父との関係の部分に帰結していってしまうあたりがどうも物語が矮小化された気がして仕方ない。

見ていてずっと感じていたことではあるが、鉄平はずっと「青臭い子供」だった。
それが父・大介との対比において大事なことだったというのは理解できるが、子供すぎて受け入れられない部分が私には多分にあったのだと思う。
一方では一般論で企業とメインバンクとの関係を望みながら、いざとなれば父の情を事業の場でも欲していた。それが得られなければ自分は父に憎まれているから…というのは幼稚なのでは?
舅である大川代議士の汚職の罪は問題でなくとも、それを自らの利益のためにわざとリークした大介に対しては汚いと断罪するのは?
自分の実の父親は祖父の敬介なのではないか、と家族全員集まった中で母親を詰問して恥をかかせるのは?


物語に登場する主人公が完全な人間であるべきだというわけではないので幼稚であることそのものは構わない。ただ、物語の上で彼の言動が幼稚であることに誰も言及せずすべて正しいかのように扱われていたことに対して多少なりと疑問は感じる。
それは、先代・万俵敬介について誰も表立った批難をしてこなかったこととも通じる。

まるで伝説の英雄のように誰からも賛辞を送られていた敬介。
この物語の悲劇である大介と鉄平の確執は、まぎれもなく彼が作り出したものだったのに。
大介の心の疵はその父親によって齎されたものだったというのに。
それなのに、その大介ですら、父親に対する対抗心と生まれた鉄平に対する憎しみという形でしか表現しない。
息子の妻を蹂躙するというのはもっと批難されて然るべき罪悪ではないのか?
(結局鉄平は大介の実子だったと最終回で明らかになるけれど、敬介が残した手紙から察するに敬介が寧子と関係を持ったというのは確かだと思われる。敬介は鉄平を自分の子だろうと考えていたのだから)
画面の「こちら側」から感じるであろうそういう批難を代弁する人間が、劇中に必要だったのに。
鉄平に対する批難は嫌味な敵役しか語らず。
敬介に対する批難を語るものはない。

このドラマに対する違和感はそういうところから生まれていたような気がする。


いずれにせよ、様々な「肝心の部分」に鉄平にとってのご都合主義的展開が続いた中盤にはもうダメだと思ったものだ。
高炉を建設するにあたって突貫工事に必要な人員集めの際に、鉄平の人望を慕って大量の仲間を引き連れてやってくる作業員のシーンなどは、多分感動ポイントとして作られたのだろうけど、演出過剰で昔の番長マンガかよ、と思ってしまった。
(孤立無援で絶対絶命の主人公のもとに多数の応援を連れて駆けつける仲間というシチュエーションは熱血少年漫画には不可欠な要素だったと思うのだがどうかw)



しかし最終回の1回前に銭高常務の証言で裁判が有利に転じたと思わせておいて、最終回に奥の手を使われて裁判そのものが取り下げられたところから徐々に追い詰められていく鉄平というのはなかなかの見ものだった。
社員たちに対して、「僕にあの煙突から上がる煙を見せてくれ」と諭す場面とか。
父と最後の決別をして、池の将軍に対して石を投げ込むとことか。
死を覚悟して妻子に電話をかけて感極まるところとか。
篠山にこもって妙に静かな顔つきになってるとことか。

最終回に至って、やっと木村拓哉が万俵鉄平と重なった気がした。

父に、お前が生まれてしまったからと言われてしまった息子の悲しみ。
その悲しみは───
君が大事にしてきた「夢」や、これからも妻や子を慈しんでゆくことや、それらのどんなものをも捨て去ってしまいたくなるほどの悲しみだったのか。

───やはり、鉄平は、子供だったのだ。


違和感と言ってしまえば、もっと瑣末な部分ならいくらでもある。それこそ鉄平の髪型や、肖像画の適当さや、鯉とか猪とか。そこばかりあげつらっていくのも単なる揚げ足取りみたいな気がするのでスルーしたのだが、物語の中での人物の描き方にやはりどうしても違和感が拭えなかったのが残念だったと思う。

とはいえ、結局最後までちゃんと見てしまったわけで。
面白かったです、はい。
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4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (メンズ流行局)
2007-03-20 01:50:46
はじめまして

突然のコメント失礼致します。

私のサイトで、こちらの記事を紹介させて頂きましたので
ご連絡させて頂きました。

http://blog.livedoor.jp/mensfas/archives/53212720.html
メンズ流行局さん (さいん)
2007-03-21 13:23:33
ご紹介ありがとう…と言いたいところですが、拝見したところどこにご紹介頂いているのか判じかねます。
結局ドラマは見なかったですが (マダムO)
2007-03-26 14:31:53
原作、どうぞこれから堪能?してください~。
ドラマはたまに見ていましたが、もっと作りこむべきところと
そんなに凝らなくてもいいんじゃない?ってところがあった気がします。
放送時間が長いんだからもっと丁寧に出来た部分もあった気がする…。
私は映画版は元々お気に入りなのですが(佐分利信好きとも言えるw)
もし機会があったらこちらもご覧くださいな。
また違った面白さがあるかもです。
マダム (さいん)
2007-03-27 13:14:32
三冊、貸して頂きありがとうございます。
たっぷり堪能したいと思います♪
(まずは読む時間を作らねば…←そこからか)
原作も映画版も見てないけど、テレビ版はまあ視点が違う別のストーリーと考えてテレビのみの感想を書いたのですが、力の入れようはわかるけど空振りのところやつくりがなおざりな部分もけっこうありましたしね。準備期間長かったわりにもう一歩作り込めてない気もしました。
原作読んで面白かったら映画の方も見てみたいなー。

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