時折強風も吹き、最低気温は28度と蒸し暑さが増す朝です。

15日午後8時点火の高円山のなら大文字、火床もきれいに整備され
後は待つばかりなのに、台風10号とぶつかりそうで開催が???

先週3日間、奈良大学と奈良市との共催講座「正倉院と天平文化」を
受講し、一日目は『星とスッポンー謎の正倉院宝物』と不思議なお題
講師は元宮内庁正倉院事務所長から奈良大学教授を経られ現在、放送
大学奈良学習センター客員教授の三宅久雄先生です。



星とスッポンー謎の正倉院宝物とは中倉50の『青斑石鼈合子』で、
”せいはんせきのべつごうす”と読み、長さ15.0cm 幅10.0cm
高さ3.5cm、重さ390.6gの蓋付きの容器で作風は中国・唐か。
国産の青斑石と呼ぶ蛇紋岩製で、写実的に表されたスッポンの形、
目は深紅色の琥珀、甲羅の北斗七星文は銀象嵌・金泥が施される。



レジュメには次のように書かれていた。
見所①亀(スッポン)の形 ⇒水・大地の神、吉兆、長寿、富を表す
②とてもリアル・・・④
③背に北斗七星 天円地方⇒亀
④容器と判らない ⇒ 仙薬(秘薬)
⑤蛇紋岩を用いる ⇒玄黄 ⇒宇宙
①亀の形がシナスッポンと特定できる理由は、
1.口が鋭いくちばし状で、吻端は2本の管のように突出し、
2.後ろ足の指の間隔に注目、4指と5指の間隔が開いている。


②容器と判らないリアルさ、通常合子は蓋が上なのに
例)西安法門時銀製亀形合子

蓋は上部と隙間がなく造られており、知らないで持つと、そのまま持ち上るが
落ちて破損の危険性があり、摸刻時も慎重に扱うようお願いされたとか。

③北斗七星と亀
キトラ古墳では、亀は四神の玄武として北を表し北斗七星は中央付近で
中国の天文観では北極星に続いて重要位置を占め、天の中央が相応しい。
「史記」天官書のなかで、
”斗は天帝の乗車で天の中央をめぐり、四方を統一し、陰陽の区別を立て
四季を分け、五行の活動をなめらかにし、二十四節気を動かす。
これらのことはみな斗の役目である。(中国古典文学大系より)
・なぜ背の北斗七星は裏返しなのか⇒亀の背を天とみなした
「天円地方」という宇宙の考え方、北斗七星の信仰
「晋書」天文志に”天は円く蓋を張るが如し。地は方にして棊局の如し”
正倉院宝物、北倉36『木画紫檀碁局』、
亀のひきだしを内蔵する天板部分を床脚で支えることは、
大地が碁盤上で亀が大地を支えていると。


・亀と宇宙
「尚書」中候
” 霊亀は玄文五色にして神霊の精なり。上は員くして天を法どり、
下は方にして地を法どる。”と
*五色は中国古代の五行説=万物を組成する五つの元になる気のことで
木・火・土・金・水が青、黄、赤、白、黒
使われている碁石、紺牙撥、黄(琥珀)紅牙撥、黒(蛇紋岩)、白(象牙・石英)

・何を入れたのかは、構造から液体ではないことは明らかで七のつく薬から
淮南王七神仙散または七星散か
「政事要略」10世紀末の政務上の仕事の事例集や「神仙伝」陳永伯には
この薬の秘方を入手し、「服用すると30日にして仙人になる」とあり
服すると行方しれずに。仙去する際、仙人が迎えに来るが人には見えないだけ

茯苓は太一の精 サルノコシカケ科の菌核、マツの根などに寄生
地黄は土の精 ゴマノハグサ科の多年草
車前子は雷電の精 オオバコの成熟種子
桑上寄生は気の精 おおばやどりぎ(大葉宿木)の古名
菊華は月の精 漢方で中国茶では茶花と
地膚は列星の精 ホウキギの果実、煎じて強壮薬、利尿薬などに
竹実は太陽の精 竹の実
:日月五星の運行を正すことより北斗七星に重ねあわせた。