
知床日誌⑦
前回の日誌6の写真はわくさんとまんさんだ。わくさんと私は未だにハイライトを喫っている。まんさんは健康のため最近極軽のタバコに変えた。私たちは今知床を漕ぐことが出来る。しかし2人がいなければ漕げなかったことを知っているだろうか。わくさんは羅臼郷土資料館の館長だった人でオホーツク文化を研究する考古学者だ。まんさんは長く羅臼町の環境課長を務め今はリタイアして第三セクターの責任者をしている。
知床が世界遺産に指定される気運が盛り上がっていた20年前、環境省は知床国立公園の将来像を模索していた。環境省は自然保護と人との調和をはかろうと考えた。日本の自然公園法は保護と利用が建前だが、多くの場合、観光以外の利用には表面的にしか対処しない。具体的には旅館やホテルなどの施設の許認可が主な仕事であり、登山やカヤックなどの利用については林野庁など他の役所との兼ね合いから積極的な関わりを避けてきた。しかし知床はそれでは済まない。ここには人が住んで漁業を営み、カヤッカーやトレッカー、登山者が勝手に海や山を歩き回っている。世界自然遺産になれば観光客も大勢集まり地域も潤うだろう。学者も役人も取り敢えず地域の機嫌を損なわないための施策を考えた。その中で遊びの登山やカヤックを排除できるだろうか。議論の中身を詳しくは知らないがユネスコの遺産委員会を納得させ、そして漁業者の権利を守るためには物言わぬ外来の利用者の規制が必要とする意見が趨勢を占めていた。
この問題をここで書くのは時間的にも足らず無謀だが、つまり中身を知らぬ役人や知識人は、ユネスコの遺産指定を受けるために漁業と遊びを天秤にかけた。それに異を唱えたのがわくさんとまんさんだ。
知床が世界遺産に指定される気運が盛り上がっていた20年前、環境省は知床国立公園の将来像を模索していた。環境省は自然保護と人との調和をはかろうと考えた。日本の自然公園法は保護と利用が建前だが、多くの場合、観光以外の利用には表面的にしか対処しない。具体的には旅館やホテルなどの施設の許認可が主な仕事であり、登山やカヤックなどの利用については林野庁など他の役所との兼ね合いから積極的な関わりを避けてきた。しかし知床はそれでは済まない。ここには人が住んで漁業を営み、カヤッカーやトレッカー、登山者が勝手に海や山を歩き回っている。世界自然遺産になれば観光客も大勢集まり地域も潤うだろう。学者も役人も取り敢えず地域の機嫌を損なわないための施策を考えた。その中で遊びの登山やカヤックを排除できるだろうか。議論の中身を詳しくは知らないがユネスコの遺産委員会を納得させ、そして漁業者の権利を守るためには物言わぬ外来の利用者の規制が必要とする意見が趨勢を占めていた。
この問題をここで書くのは時間的にも足らず無謀だが、つまり中身を知らぬ役人や知識人は、ユネスコの遺産指定を受けるために漁業と遊びを天秤にかけた。それに異を唱えたのがわくさんとまんさんだ。
わくさんは考古学研究者の先住者への思いから、似たようなことをしているカヤックを擁護し、まんさんも地元の零細漁民と変わらぬカヤックに役人として一人理解を示した。
私はよそ者だ。だから役人にも若い猟師にも頭を下げ続けた。そして漕ぎ続けた。理由のない批判は続けることで消える。今私たちが漕げるのは少数の地元の人たちがこの問題を他人事とせず、自分の問題として関わったおかげだ。観光を狭い見方で見る土地ならカヤックは排除されていただろう。多くの自然遺産指定地や国立公園はそうだ。しかし知床は違った。その後、諮問機関の知床半島先端部適正利用検討会議は、カヤックを知床の有効利用の形のひとつと認め、キャンプ地や火の始末なとへの強い責任を求めた上で利用を容認した。だからカヤッカーである私たちには大きな責任がある。
この原稿は我が家の犬の通夜の朝に書いている。これから穴を掘り埋葬する。命がなくなるのは悲しいものだ。残された者の後悔の思いとともに犬の冥福を祈りたいと思う。イブという名前だった。
私はよそ者だ。だから役人にも若い猟師にも頭を下げ続けた。そして漕ぎ続けた。理由のない批判は続けることで消える。今私たちが漕げるのは少数の地元の人たちがこの問題を他人事とせず、自分の問題として関わったおかげだ。観光を狭い見方で見る土地ならカヤックは排除されていただろう。多くの自然遺産指定地や国立公園はそうだ。しかし知床は違った。その後、諮問機関の知床半島先端部適正利用検討会議は、カヤックを知床の有効利用の形のひとつと認め、キャンプ地や火の始末なとへの強い責任を求めた上で利用を容認した。だからカヤッカーである私たちには大きな責任がある。
この原稿は我が家の犬の通夜の朝に書いている。これから穴を掘り埋葬する。命がなくなるのは悲しいものだ。残された者の後悔の思いとともに犬の冥福を祈りたいと思う。イブという名前だった。