サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

持続可能な未来を拓く、ライフスタイル革新

2013年05月11日 | 環境イノベーションとその普及

 環境未来都市の計画をみていると、「ライフスタイル革新」という言葉がでてくる。その内容は、住宅用太陽光発電の普及に伴う発電量の見える化と節電行動のナビゲーションをさしている。

 

 ただ、これは日常生活におけるエネルギー消費行動の改善努力を求めるもので、抜本的という意味での「ライフスタイル革新」にはなっていない。生活様式自体はなんら変わらないからだ。

 

 「ライフスタイル革新」というなら、もっと画期的なことがあるのではないだろうか。拙著の「図説 スマートシティ・環境未来都市」では、ソフトウエアやヒューマンウエアを重視する視点から、「ライフスタイル革新」につながるようないくつかの事例を紹介した。

 

 例えば、限られた空間や資源、エネルギー、製品をシェアする仕組みとしてのカーシェアリングサービサイジングをとりあげた。また、職住分離という概念を多様化させるマルチハビテーション、テレワーク等も革新的である。都市から地方への移住をさらに促すこともいいだろう。家庭内手工業的なコミュニティビジネスの重視とそれらが集まる手づくり市、高齢者による学童保育等は先駆的事例として紹介させていただいた。

 

 小手先ではない「ライフスタイル革新」の具体像を示し、それによる環境・エネルギー負荷の削減効果、社会・経済面の効果を明らかにすべきだ。と、考えつつあるなか、内藤正明先生に会う機会を得た。内藤先生は、こまねな節電は気づきとしては重要であるが、節電を契機として、住まい方や社会を変えていく取組みにつなげていく必要があるというようなことを話された。

 

 そして、先生が提示する「ライフスタイル革新」に関して、資料を送っていただいた。地域エネルギー利用、世帯の構成人員を多くする、地域産品の活用、手づくりと創造による歓びへの生活時間の転換、空き家を利用した街の縁側づくり、ソーシャルファーム、シニアの金によるバンク創設、等々が示されていた。

 

 改めて考えてみると、「ライフスタイル革新」が革新である所以は、個人の改善・努力にとどまるものではなく、社会システムや経済システムの変革と一体的にあることにある。、社会経済システムへの波及性を持つもの、あるいは個人の努力だけでは実現できなく、社会システムや経済システムの変革を伴わないと実現できないようなものが、「ライフスタイル革新」である。

 

 社会システムや経済システムとは構造に置き換えた方がわかりやすいかもしれない。世帯構造、就労構造、産業構造、都市構造、交通構造など、構造を語ることが多い領域が多くあるが、これらの構造を変えることが革新であり、これらの構造を前提にした(変えない)取組みは革新ではない。さらに、空間を変えること、時間の使い方を変えること、人との関係を変えること、自然とのつきあい方を変えること、コミュニティを変えること、自分の意識や価値規範が変わることも、「ライフスタイル革新」の重要な側面であろう。

 

 では、「ライフスタイル革新」が必要であるか。それは、小手先の改善努力では二酸化炭素排出の削減、エネルギー消費量の削減などの効果に限界があるからである。それとともに、目指すべき社会は、経済の効率や成長に囚われることなく、一人ひとりが幸福で、未来への希望を持ち、自らが主体的に取り組み・学び・育ち、そして相互に支えあう社会であるからだ。経済市場主義や刹那主義からの脱却、主体性や関係性の再構築等につながるような「ライフスタイル革新」を具現化していきたいものだ。

 

 「ライフスタイル革新」を定義し、相当するメニューを体系的に整理し、各メニューの効果を評価することを考えている。

 

 

 

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