サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

NHKニュース深読み「人類は"適応"できるのか?進む地球温暖化」への出演

2013年09月29日 | 講義・講演

 9月28日(土)朝のNHKニュース深読みで、「人類は"適応"できるのか?進む地球温暖化」を特集し、ゲスト出演をした。

 番組中でアナウンサが行うプレゼン取材で、海外事例を知りたいと問い合わせがあり、そのための取材に協力するうちに、出演依頼となった。

 私が参加している環境研究総合推進費の関係であり、法政大学のリーダーの先生と調整したが、最終的に事例調査を直接担当しているということで私になった。

 番組は40分程度で、ある程度の台本があるが、小野アナウンサーや文珍さん、松本明子さんのその場で発する質問に、専門家が答えるというもの。

 解説員の方には、「時間も短いので言いたいことの半分も言えませんよ、前のめりで発言するしかいないです。」と言われ、がんばってみたが、それでも言いたいことは十分に言えなかった。

 私が今回の番組の流れの中で発言したことの真意、言おうとしたが言えなかったことを、書いておく。

 

1.科学者は、これまでも人類起源の温室効果ガスの排出による気候変動の警鐘を行ってきた。しかし、それを不確実性があるからといって、真剣に取り組んでこなかったのは国際政治、国内政局等の都合がある。しかし、IPCC第5次報告書により、気候変動の進展や人類の責任がさらに具体的になり、確信度を高めてきているなか、不確実であるとして緩和策あるいは適応策の先送りすることはできなくなってきた。もちろん、どの程度の影響があるか、その影響の幅はあるが、幅のある未来に対しての準備しておく方法がある。

 

2.気候変動は将来世代の問題ではない。既に気候変動が進展しており、現在の私たちが被害を受ける問題となっている。猛暑や豪雨等の増加の要因は、温室効果ガスの増加以外にもあるが、温室効果ガスの寄与分ははっきりとしているではないか。この点では不確実なことは何もない。

 

3.緩和策で注意しなければならないのは、二酸化炭素の排出削減効果があれば、何でも実施していいわけではないということである。原発にせよ、二酸化炭素の地中封じ込めにせよ、二酸化炭素は減らせるかもしれないが、果たして安全・安心は確保されるのか、きちんと議論をしていかなければ、間違った判断をしてしまうことになる。

 

4.適応策は、緩和策による温室効果ガスの削減が政治的経済的に十分にできないから、必要なのではない。緩和策を最大限に実施して、気候変動の進行を止めたとしても、既に過去に排出した二酸化炭素等によって気候変動は発生しているし、今後の気候変動の進展は回避しきれない。緩和策を最大限に実施しなければならない。そして、それでも回避できない気候変動の影響があるから適応策が必要である。適応策は緩和策の敗北の後始末ではない、緩和策の勝利を補完するものでなければならない。

 

5.適応策というと、堤防等の土木工事を行うことと誤解されるが、ハードウエアでの対応は1つの手段に過ぎない。そもそも気候変動影響に対してハードウエアで防御することは予算制約等もあって不可能であるし、仮に強固なハードウエアで防御したとしても、防ぎきれる保証はない。当初、強固に作ったハードウエアも維持管理が十分にできないと、逆に危険なものとなってしまう。ハードウエアよりも、むしろソフトウエア(制度や仕組み)やヒューマンウエア(人の意識やコミュニティのつながり)の強化・改善による適応策を重視した方がいい。

 

6.適応策には、3つのレベルがある。レベル1は防御できるレベル、レベル2は防護しきれないが影響を最小化するレベル、レベル3は撤退も含め、社会経済や土地利用を再構築するレベルである。水災害でいえば、レベル1はハードウエアで生命や財産を守る、レベル2は浸水は避けられないので早く逃げて生命だけは守る、レベル3は常に逃げているのも無理があるので、そもそも住む場所を変えるレベルである。すでに、レベル1の対応は困難になっており、レベル2、あるいはレベル3を検討していかなければならない。

 

7.気候変動の影響は地域によって異なるため、地域に密着して地域で実施することが必要である。既に気候変動の影響が深刻な埼玉県、長野県、三重県、東京都などで気候変動適応への先駆的な検討がなされている。こうした地域でのボトムアップの動きを支援する国の施策が必要である。また、科学の地域の取組みに活用な成果を提供できるように、地域の現場との対話を進める必要がある。ボトムアップとトップダウンの統合が重要である。

 

8.しかし、地域での適応策を進めるうえで、気候変動の予測等に関する専門的知見を扱い、ステークホルダーの調整や普及啓発、政策具体化のコンサルティング等を行う主体が不足する。地域の環境研究所があるところはよいがないところもあり、地域の大学等も活用することで、「気候変動地域適応センター」を整備し、行政資源を配分していくことが必要となる。

 

 今後、下記のサイトに番組概要が報告される。

http://www1.nhk.or.jp/fukayomi/maru/2013/130928.html

 

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