サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境教育の根幹

2008年01月05日 | 環境と教育・人づくり
 年初めは、頭をリセットし、どう生きるかを考える、よい機会だ。何に根ざし、何をよりどころとして、自分は生きるのか、忙しさにかまけている時には思考を停止する。

 私がふと、大学時代に考えていたことを思いだす。自然生態系の中の存在に無意味なものがないのと同様、人は存在に意義がある。その意義に素直に、自然の摂理に即して暮らすことが大事だと考えていた。

 また、同級生の小川君が、「人は成長にするにつれて、自分の根幹のところに蓋をする」という持論を解説してくれたことを思い出す。成長するにつれ、どんどんと蓋を重ね、根幹を見失ってしまうと。また、根幹の部分で、人は「他者との合一」する存在であるようなことを言っていたようにも記憶する。こぎれいにした6畳・角部屋の彼の部屋同様、彼の解説は大人っぽくも、さわやかだった。


 会社に就職し、月日は流れた。なにげなく、環境教育やら持続可能な社会のための教育やら、詰まるところ何を大事にすべきなんでしょう。キープ協会の川嶋さんに問いかけたことがある。何かの会合の帰りで、四谷駅のホームだったと思う。「根っこの部分の気づき」と答えてくれた。

 この根っこ(根幹)の部分は、人によって解釈が様々で、社会問題の解決を重視する人は、問題の根幹にある構造的課題(大量生産・大量消費・大量廃棄とか、経済的利益至上主義とか)のことを根っこと捉えるだろう。感性的な部分を根っこと捉える人もいるだろう。


 曖昧な理解のまま、根っこに踏み込まない仕事を重ねていた。そして、数年前、トヨタの森の新しいプログラム開発の仕事に関わった。林野庁が森林セラピーを施策にとりあげた、はしりの頃だ。トヨタの森でも、森を活かした健康づくりのプログラムをつくりたいというニーズだった。

 私は、森での環境教育がポジティブさを持つのに対し、森林セラピーはマイナスをゼロにするようなもので、あまり創造的でないという違和感を感じていた。そこで、ロハスを持ちこむことにした。環境と健康の2軸で、環境面だけ考慮するのが環境教育、健康面だけ考慮するのが森林セラピー、両方を考慮するのがロハス教育と整理した。

 さらに、環境配慮を”利他”、健康配慮を”利己”と広義に読みかえると、ロハス教育とは、利他と利己を両立させる持続可能な社会のための教育につながる。環境教育も、森林セラピーも、この意味でのロハス教育をめざすべきだと考えた。
 
 健康を入り口にすることで、森林体験の間口が広がる。説教くさい”利他”を繰り返し唱えるより、”利己”的な入り口をつけた方が、参加者は広がる。こんなことも考えたように思う。


 そんなとき、打ち合わせの際、トヨタ里山学習館の館長である池上さんが、「環境教育も森林セラピーも、根っこの部分で同じ。自然の中での小さな自分とか、そんなことへの気づきが、健康づくりにもつながる」とおっしゃた。この方、伊達に、長年、森の中で炭を焼いていなかった。

 それか、、、大事な発言だった。人が日常の迷いごとから解放され、本来の姿を取り戻したとき、ストレスのない健康な人となる。迷いごとに囚われない人は、他者を見る目が等身大で、曇りがなく、他者への配慮や社会の創造も行う人となれるだろう。


 環境教育の根っこととは何か。森林セラピーやロハスという得てして表層的になりがちが流行の扱いを考えることで、それに私自身が気づけたような気がした。学生時代の友人の思考や環境教育の第一人者の言葉が、自分にもやっと受けとめられたようだ。

 食うための仕事はどうしても思考を停止させる。でも、環境の仕事をしていると、仕事での経験がつながることで、人の生き方まで学ばせてくれる。環境の仕事をしていてよかったと思う。。。さあ、今年もかんばるか。

 

 




 

 
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1 コメント

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根幹 (その角部屋のおかげで。。。。)
2008-01-10 13:08:16
環境問題を生涯の仕事と誓った18歳
そのためには社会の最先端に居るべきと働き出した22歳
仕事が面白くなり、海外の事例に目を向けた27歳
子供が生まれ、地震に遭遇し、人が中心であるべきと認識した33歳
子供が低燃費の車に買い換えてと言われた45歳
でも、ワゴンよりこの車の方が燃費が良いよと買ってしまったポルシェ。

矛盾は多いが、根幹は忘れてません。


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