サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

コミュニティ・エネルギー事業の離陸のために

2013年03月30日 | 気候変動緩和・低炭素社会

 これまでの日本の地方自治体では、エネルギー政策を所管する権限や義務がなく、補助金による設備実験をたちあげるのが関の山であったといっても過言ではないだろう。しかし、原発事故により、電力会社にエネルギー供給をゆだねることの脆弱性を知らされたこと、あるいは再生可能エネルギー事業の成立を可能とする環境整備が進められてきたことにより、地方自治体がエネルギー政策に関与する可能性が高まってきている。

 

 ある地域の再生可能エネルギー導入可能性調査に参加させてもらっているが、再生可能エネルギー事業に対する地方自治体の関わり方として、次のような側面がある。

 (1)公共事業として再生可能エネルギーの発電事業や熱供給事業を主導する場合。ごみ発電や都市公園でのバイオマス利用事業等が相当する。

 (2)公共資源を提供し、民間事業者に発電事業等を提供する場合。学校等の公共施設の屋根を貸出し、民間事業者に太陽光発電事業を展開してもらう等。

 (3)民間事業者が域内で行う発電事業等を支援する場合。民間の施設の屋根貸しのマッチング、メガソーラー施設の立地調整等。住宅用光発電の設置補助等。

 

 上記のいずれのケースにおいても重要なことは、コミュニティのコミュニティによる、コミュニティのための事業となるように十分に配慮することである。例えば、次のすべてを満たすように事業を設計することが必要となる。

 (1)二酸化炭素の排出削減やエネルギー自給等、環境や安全・安心の確保という面の有効性を十分に確保すること。

 (2)事業の採算性を確保するためのマーケティングを十分に行うことはもとより、地域経済面での効果が発揮されるよう、地元事業者の参加を促すこと。特定の事業者の利益独占にならないように、共益性を確保すること。外部企業の参入を得る場合においても地元事業者との共同を条件とすること。

 (3)地域住民や地域のNPOの主体的な参加を促し、各主体の参加による学習を促すこと。地元事業者が事業主体となる場合でも、特に地元NPO等との連携をもとめること。

 (4)エネルギー事業単体を独立的に行うのではなく、複数のエネルギー種別の組み合わせ、省エネルギーや蓄電との組み合わせ、あるいは面的な展開を可能な限り行うこと(あるいは点から始め、面的に拡張していくこと)。

 (5)小さな事業を成功させていくとともに、大きな事業と小さな事業を重層的に成立させていくこと。長期的には、ICT技術を利用するスマートコミュニティを視野にいれ、小さくはじめ、大きく育てる方向性を共有すること。

 

 また、実際に事業を成立させていくための課題や解決方策として、思いつくところを列挙する。

 (1)地元事業者が事業を行う場合に、資金調達が困難な場合が多いときく。国の補助金利用は必要に応じて行うとして、地元の金融機関の役割が重要となる。金融機関を巻き込んだ検討を進めることが必要である。

 (2)地域のエネルギー事業をコーディネイトする組織や人材の確保も進めたいところである。

 (3)市町村単体でエネルギー施策を展開することは行政資源上、難しい場合もあると考えられるため、広域的な融通やネットワーク組織も必要であろう。

 

以上

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