サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

「地域における持続可能なカーボンゼロ社会の選択」についての提案をまとめました。

2021年03月21日 | 気候変動緩和・低炭素社会

 2020年度に設置・開催してきた「地域の主体による持続可能なカーボンゼロ社会の選択に向けた研究会」(主宰:白井信雄 山陽学園大学 地域マネジメント学部 教授)では、岡山県岡山市をケースとして、次の検討を行ないました。

1.省エネルギー技術と再生可能エネルギーの導入といった「技術対策」によってカーボンゼロを実現する可能性の試算

2.価値観や生活様式、社会や地域の構造の転換といった「根本対策」も含めて、市民がカーボンゼロ社会を考える際の論点の整理

3.地域の市民や事業者がカーボンゼロ社会の姿(ビジョン)を考える場、そしてカーボンゼロ社会先駆者(フロントランナー)がプロジェクトの立ち上げに動き出すような仕組みの検討

 このたび、この検討の結果を報告書にまとめ、各地での検討に役立つように報告書要旨を公開することにします。岡山市での実践とともに、各地での検討の参考になればと願います。関心がある方には、要旨の配布や説明、提案をさせていただきます。連絡先は下記です。

 shirai.nobuo(アットマーク)gmail.com 注:(アットマーク)を@に変えてください。

 

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検討結果の要点は次の通りです。

1.省エネルギー技術の導入を最大限に実施していけば、岡山市内あるいは県内の太陽光発電等の導入により、カーボンゼロは実現できるわけです。しかし、太陽光発電に多くを依存するだけでなく、幅広い視点でカーボンゼロ社会を描く必要があると考えます。

2.カーボンゼロ社会の実現方法においては、「技術対策」の導入とともに、価値観や生活様式、社会や地域の構造の転換といった「根本対策」が重要です。「根本対策」は、カーボンゼロ対策であるとともに、これまでの経済社会における暮らしにくさ、生きづらさを見直すものであり、持続可能な発展に向けた対策でもあるからです。

3.カーボンゼロ社会は、カーボンゼロさえ達成すれば何をしてもよいとはなりません。カーボンゼロであると同時に、持続可能な発展の規範を満たす社会でもあるべきです。カーボンゼロ社会の実現に当てはめるべき規範としては次のことがあります。

  • 環境配慮とともに、地域の社会経済の活性化を図ること
  • カーボンゼロ社会から取り残されがちな弱者に配慮すること
  • 技術導入ばかりでなく、自立しつつ助け合う豊かな暮らしを実現すること
  • 災害への備えに役立つにようにすること

4.カーボンゼロ社会を市民が考える際の論点として、次のことを提案します。

  •  量的成長を求めず、質的に成長する社会を求めるとしたら、どのような姿を目指しますか
  • 人の移動量を減らし、公共交通の利用を増やす、コンパクトシティとして、どのような姿を目指しますか
  • 経済圏のコンパクト化、すなわち地産地消を中心とした社会として、どのような姿を目指しますか
  • 社会経済的弱者が取り残されないカーボンゼロ社会として、どのような姿を目指しますか
  • 再生可能エネルギーによる自給、地域内、地域外からの調達について、どのような姿を目指しますか
  • 脱物質化、脱プラスチック、植物(バイオマス)を基軸とした社会として、どのような姿を目指しますか

5.持続可能なカーボンゼロ社会の実現に向けて、次のプロセスを提案します(図参照)。

  • カーボンゼロ社会の将来像(ビジョン)づくりに多くの市民が参加し、専門的なことも含めて学び、ビジョンを具体的に考え、共有していくこと
  • フロントランナー(プロジェクトを先導し、実現していく力のある人たち)が育ち、動き出す場をつくること

6.カーボンゼロ社会を様々な立場や視点から実現可能なあり方を探求するために、対話を重視したワークショップが重要です。対話とは「他者との話しあいとわかりあいを通じて、他者、自分、関係、社会を変えていくこと」です。

 

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 2020年度に富山公民館で「気候変動のとみやま学」未来塾を実践してきました(同公民館と山陽学園大学の共催)。同未来塾は、カーボンゼロ社会とともに、気候変動適応社会のビジョンを描き、その実現に向けたライフスタイルを宣言するものでした。ライフスタイル宣言だけでなく、共に立ち上げていくプロジェクトの計画等を出口とした未来塾を、各地で開催していくことが考えられます。

 さらに、高校生や大学生での対話、気候変動以外の分野でSDGsに取組む団体、SDGsや気候変動を本業あるいは社会貢献活動のテーマとしている企業等での社内での対話等、様々なグループでの対話を各所で展開していくことが考えられます。


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