青池愼一先生の「イノベーション普及過程論」(慶應義塾大学出版会、2007年7月)を読んだ。Rogersをはじめとするイノベーションの普及に係る研究を、体系的にレビューしている。
ここでは、青池先生の本から、イノベーションの決定過程におけるコミュニケーション・チャネルについて、要点をお借りし、それを環境配慮に応用する可能性をメモとしておく。
以下、「」内は青池先生の本の引用」
Rogers(1983,1995,2003)は、「普及過程の本質は、ある一人の個人が、新しいアイデアについて、一人の個人あるいはいく人かの人々にコミュニケートしていく情報交換である」としている。また、青池先生は、「普及過程とは、イノベーションについての情報、評価情報の社会システム内の人々の間における情報共有過程である」と記している。
イノベーションの決定過程は、これまでの研究で、知覚段階(awareness stage)、関心段階(interest stage)、評価段階(evaluation stage)、試行段階、(trial stage)、採用段階(adoption stage)といった段階論で捉えられている。
「知覚段階では、採用者はイノベーションに接触するが完全な情報を持っていなく、知っている程度である。これが、関心段階に以降すると、さらなる情報を求める」。さらに、評価段階では、既にイノベーションを採用している他者の情報(口コミ)なども含めて、詳細の情報を参考し、自らの評価を行う。
イノベーションの決定過程における各段階において、参考にされる情報チャネルが異なる。「イノベーションの決定過程において、マス・メディア・チャネルは知識段階で、インターパーソナル・チャネルは態度段階において、相対的により重要である。」
ただし、「発展途上国では、マス・メディア自体の普及率が低く、インターパーソナル・コミュニケーションやコスモポライトなインターパーソナル・チャネルが重要である」。
また、「イノベーションの決定過程において、コスポライト・チャネルは知識段階で、ローカルライト・チャネルは態度段階において、相対的により重要である」。
この際、マスメディアは、ほとんどコスモポライト・チャネル(地域外とつながる)であり、インターパーソナル・チャネルには、コスモポライトとローカライト(地域内でつながる)の両方がある。
「後期採用者より、早期採用者にとっての方が、マス・メディア・チャネルがインターパーソナル・チャネルより相対的に重要である」、「後期採用者より、早期採用者の方が、コスモポライト・チャネルがローカライト・チャネルよりも相対的に重要である」という指摘もある。
これらのRogersの知見は、環境認知と行動意図を説明する「広瀬のモデル」の関連研究に通じるものがある。関連研究では、環境リスクの認知にはマス・メディアが、行動意図の形成にはローカル・メディアあるいはインターパーソナル・チャネルが強く、影響するという知見も示されている。
今、私は、飯田市で実施した市民アンケート調査を実施している。この中で、飯田市の20歳代は総じて、環境配慮の実施度が低いが、太陽光発電の設置意向では他年代よりも設置意向が高いという結果になる。
太陽光発電の設置意向は、どの年代でも、地球温暖化問題解決への行動意図と、太陽光発電の費用対効果等への知覚に規定される。この際、若い世代では、インターネットメディアや地域外のコスモポライト・チャネルとの接触が、太陽光発電の費用対効果等の知覚を促し、それが太陽光発電の設置意向の高さに結びついているのではないかと考えられる(ような解析結果が得られている)。
採用者の属性によって、イノベーション採用過程におけるコミュニケーション・チャネルが異なることに踏み込んだ知見が求められる。特に、今日では、インターネットメディアが普及に果たす役割を掘り下げる必要があろう。
さらに、追記しておく。
私は環境省の仕事として3年間、担当してきた環境情報戦略では、コスモポライトな部分だけを検討し、特に国によるインターネットによる環境情報を中心としている。しかし、地域レベルでのローカルライト・チャネル、あるいはインターパーソナルな部分も含めた情報戦略が必要なことは明らかである。
ここでは、青池先生の本から、イノベーションの決定過程におけるコミュニケーション・チャネルについて、要点をお借りし、それを環境配慮に応用する可能性をメモとしておく。
以下、「」内は青池先生の本の引用」
Rogers(1983,1995,2003)は、「普及過程の本質は、ある一人の個人が、新しいアイデアについて、一人の個人あるいはいく人かの人々にコミュニケートしていく情報交換である」としている。また、青池先生は、「普及過程とは、イノベーションについての情報、評価情報の社会システム内の人々の間における情報共有過程である」と記している。
イノベーションの決定過程は、これまでの研究で、知覚段階(awareness stage)、関心段階(interest stage)、評価段階(evaluation stage)、試行段階、(trial stage)、採用段階(adoption stage)といった段階論で捉えられている。
「知覚段階では、採用者はイノベーションに接触するが完全な情報を持っていなく、知っている程度である。これが、関心段階に以降すると、さらなる情報を求める」。さらに、評価段階では、既にイノベーションを採用している他者の情報(口コミ)なども含めて、詳細の情報を参考し、自らの評価を行う。
イノベーションの決定過程における各段階において、参考にされる情報チャネルが異なる。「イノベーションの決定過程において、マス・メディア・チャネルは知識段階で、インターパーソナル・チャネルは態度段階において、相対的により重要である。」
ただし、「発展途上国では、マス・メディア自体の普及率が低く、インターパーソナル・コミュニケーションやコスモポライトなインターパーソナル・チャネルが重要である」。
また、「イノベーションの決定過程において、コスポライト・チャネルは知識段階で、ローカルライト・チャネルは態度段階において、相対的により重要である」。
この際、マスメディアは、ほとんどコスモポライト・チャネル(地域外とつながる)であり、インターパーソナル・チャネルには、コスモポライトとローカライト(地域内でつながる)の両方がある。
「後期採用者より、早期採用者にとっての方が、マス・メディア・チャネルがインターパーソナル・チャネルより相対的に重要である」、「後期採用者より、早期採用者の方が、コスモポライト・チャネルがローカライト・チャネルよりも相対的に重要である」という指摘もある。
これらのRogersの知見は、環境認知と行動意図を説明する「広瀬のモデル」の関連研究に通じるものがある。関連研究では、環境リスクの認知にはマス・メディアが、行動意図の形成にはローカル・メディアあるいはインターパーソナル・チャネルが強く、影響するという知見も示されている。
今、私は、飯田市で実施した市民アンケート調査を実施している。この中で、飯田市の20歳代は総じて、環境配慮の実施度が低いが、太陽光発電の設置意向では他年代よりも設置意向が高いという結果になる。
太陽光発電の設置意向は、どの年代でも、地球温暖化問題解決への行動意図と、太陽光発電の費用対効果等への知覚に規定される。この際、若い世代では、インターネットメディアや地域外のコスモポライト・チャネルとの接触が、太陽光発電の費用対効果等の知覚を促し、それが太陽光発電の設置意向の高さに結びついているのではないかと考えられる(ような解析結果が得られている)。
採用者の属性によって、イノベーション採用過程におけるコミュニケーション・チャネルが異なることに踏み込んだ知見が求められる。特に、今日では、インターネットメディアが普及に果たす役割を掘り下げる必要があろう。
さらに、追記しておく。
私は環境省の仕事として3年間、担当してきた環境情報戦略では、コスモポライトな部分だけを検討し、特に国によるインターネットによる環境情報を中心としている。しかし、地域レベルでのローカルライト・チャネル、あるいはインターパーソナルな部分も含めた情報戦略が必要なことは明らかである。