サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

イノベーションの類型

2010年04月18日 | 環境イノベーションとその普及
青池愼一先生の「イノベーション普及過程論」(慶應義塾大学出版会、2007年7月)を読んだ。Rogersをはじめとするイノベーションの普及に係る研究を、体系的にレビューしている。

私は、かねてより、イノベーション普及学を環境配慮の普及に応用することが有効だろうと考えている。Rogersの本は持っているが、それが以外の論文をきちんと読んだわけではないため、青池先生の本は大変、参考になった。

ここでは、青池先生の本から、イノベーションの類型について、要点をお借りし、それを環境配慮に応用する可能性をメモとしておく。

 イノベーションとは、一般的に「新しいもの」を指す。しかし、環境配慮でいえば、「ごみの分別回収に協力する」ことも、それまでは実施されていなかった、新しい行為の採用である。一方、「家庭用生ごみの処理機を購入する」は、生ごみ処理機という「新しいもの」の採用である。

 私は、この両方とも、イノベーションの採用に相当する行為だと捉えたい。しかし、ルールへの協力と設備・機器の購入という行為では、費用負担や必要性、行動への期待度が異なる。

 同様のことは、地球温暖化防止対策についてもいえる。「節電を行う」という生活上の工夫と、家電製品を買い変えるとき、「省エネ家電を選んで買う」とこと、あるいは「太陽光発電を設置する」と物の導入では、普及メカニズムが異なるだろう。

 イノベーションを一様に捉える、その類型を整理し、類型毎の普及メカニズムの相違と共通点を整理しておく必要がある。

 青池先生の本では、下記に示す類型を紹介している。

【青池愼一先生の「イノベーション普及過程論」に示されたイノベーションの類型】

●企業と消費者に求める変化の程度(Bell(1964))
戦略的イノベーション(strategic innovation):製品の改変、模様替え
  機能的イノベーション(functional innovation):新しい仕方で機能を充足する製品

●現在、確立している消費パターンとイノベーションの関連性(Robertson(1971))
 動的に連続的なイノベーション (continuous innovation)
 動的に非連続的なイノベーション (discontinuous innovation)

●新しさの度合い(Donnely and Etzel(1973))
 本当に新しいもの (genuinely new)
  かろうじて新しいもの (marginally new)
 見せかけの新しいもの(artificially new)

●イノベーション創造の源泉(Hirschman(1982))
 象徴主義(symbolism)の次元で発生したイノベーション:社会的意味を付与
  技術(technology)の次元で発生したイノベーション:有形の特徴を付与・改変

●予防と非予防(Rogers(1995,2003))
  予防的イノベーション(preventive innovation)
現状をより増進させていくイノベーション(incremental innovation):非予防的


 私は、これらの類型を踏まえ、環境イノベーションには、①継承的環境配慮、②付加・代替的環境配慮、③新規環境配慮の3つがあると設定したい。

 ①は、例えば「もったいない」精神に基づく環境配慮である。新しさと言う点では、イノベーションとは言いがたいが、現在それを実施していないとすれば、現在に対して相対的に新しいと定義したい。

 ②はこれまでの行動に環境配慮を付加するものである。省エネ家電やエコカーは、環境配慮目的ではなく購入する製品に環境配慮を付加し、そうでない製品を代替している。

 ③の新規環境配慮は、環境配慮を目的とする(あるいはそれを契機とする)、新たな行為である。太陽光発電の設置等がこれに当たる。

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