
10月13日、都道府県会館1階大会議室にて、「気候変動適応社会をめざす地域適応フォーラム」(地域適応フォーラム)の第1回めを開催することができた。
おかげで様で150名を超える申込みとなり、参加された多くの方々から反応をいただけたと思う。
参加者のアンケート結果等はこれからだが、会場からいただいた質問・意見を踏まえ、私個人として強調したいメッセージを記録・整理しておく。
Ⅰ 問題認識
1.温暖化の影響は、温室効果ガスの増加に起因する気候変動という外力と、その外力を受ける地域の脆弱性(感受性と適応能力)で規定される。気候変動の要因である温室効果ガスの削減は緩和策(低炭素施策)であり、脆弱性の改善が適応策である。気候変動の影響は弱いところに現れる。適応策とは社会の弱さの改善である。
2.緩和策を最大限にとって(地球上で温室効果ガスの排出半減)をしたとしても、温室効果ガス濃度は安定していくが、安定に向けて濃度上昇は進む。すなわち、緩和策をとっても気候変動は進むため、適応策が不可欠となる。
3.1990年以降に猛暑年が増えていること、台風のピーク雨量が増えていることなど、温室効果ガスに起因する気候変動は既に始まっている。すなわち、緩和策は将来の問題であるとともに、現在の問題でもある。
Ⅱ 実施主体
4.気候変動の影響は、地域によって異なり、影響分野は幅広い。水災害、渇水、水質悪化、農業被害、自然生態系、人間の健康、伝統文化等、多様な分野にわたる。地域に密着した主体が、地域特性に応じて、きめ細やかに、また行政の縦割りを排して、取組むことが必要である。地域行政と地域研究機関の連携も重要である。
5.一方、地域毎に、気候変動の将来影響予測等をすることは困難であり、地域で共通する影響も多い。地域で密着した取り組みを進めるとともに、地域間の連携や広域行政や国による地域の支援・補完が重要である。
Ⅲ 既存施策との関係
6.適応策にかかる取組は、適応策と名乗らないまでも、農業分野や防災分野で既に進んでいる。また、高齢者の安否確認が熱中症被害につながる。既存の施策において適応策と両立するもの、適応策として位置づけられるものを整理し、推進することが、当面の一歩となる。
7.既存施策の位置づけなおしだけでなく、将来予測情報に基づく、適応策の精緻化・追加、脆弱性の改善に踏み込んだ根本的な適応策の立案、気候変動をプラスと捉えた地域戦略等、新たな施策を創造することが必要である。
Ⅳ 緩和策との両立・調整
8.緩和策と適応策には、都市内緑化等のように共通する施策がある。一方、コンパクトな市街地は密集ゆえに水災害に弱い、気候変動に対する農業安定化のための温室栽培はエネルギー消費量を増大させるなど、緩和策と適応策のトレードオフになる施策もある。両立するところを優先するともに、両立しない施策もほっておかずに、改善が必要である。
9.緩和策をやってから適応策を付加するのではなく、農山村等では適応策を優先的に考え、そこに緩和策を追加するという考え方があってもよい。
10.原発の事故等を考えると、これまでの緩和策は「安全・安心」に欠けていた。経済合理性等を重視しすぎた緩和策の失敗である。安全・安心な温暖化対策という文脈において、脱原発やエネルギーセキュリティとともに、適応策を位置づけていくことが不可欠である。
Ⅴ 科学・情報・コミュニケーション
11.適応策を具体化するうえでは、気候変動及びその影響を予測する科学者の持つ専門的知見と、一般市民とのコミュニケーションが不可欠である。ただし、専門家と一般市民との対話は必ずも効果的ではなく、コミュニケーションにおけるルールと仲介者の位置づけ、育成が必要となる。
12.適応策を検討するうえで、長期的計画をどのように位置づけるか、不確実性を伴う予測情報をどのように扱うか、ハザードマップ等の不利益を被る者があるネガティブ情報をどのように公開・共有するかなど、克服すべき課題がある。これらを行政計画制度で扱う法的根拠や方法論の確立が必要である。
参考: 地域適応フォーラムのサイト http://www.adapt-forum.jp/