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サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

脆弱性とレジリアンス

2010年12月07日 | 気候変動適応

 

 

適応策の地域総括・関東中部班の第2回全体会合を開催した。各研究機関から、本年度の中間報告があり、進捗を確認しあった。

 

法政大学としては、地方自治体・地方研究機関のアンケート調査結果、今年の猛暑の影響等の論文検索結果等の速報を示すとともに、今後のヒアリング調査や関連機関のコンソーシアム設立に向けた準備会合の予定等を示した。また、話題提供として、かねてより課題としていた脆弱性に係る概念整理結果等を説明させていただいた。

  

脆弱性に関連する概念としては、resilience(回復力)、marginality(限界性)

、susceptibility(感受性)、adaptability(適応力)、fragility(壊れやすさ)risk(危険性)、exposure(外力)、sensitivity(感受性)、coping capacity(対処力)、

criticality(臨界性)、robustness(強健性)等があり、各々の概念が重複したり、混同されて使用されているように思われる。

  

脆弱性という科学用語のルーツは、地理学と自然災害であるとされる。しかし、現在では様々な研究分野の中心的概念となっている。関連する研究分野としては、自然現象と災害の管理、生態学、公衆衛生学、貧困と開発生活の保障と飢餓サステイナビリティ学、土地利用の変化、そして気候の影響と適応等がある。各研究分野で脆弱性の定義が異なり、脆弱性という用語を学際的に扱うことを難しくしている。

  

地球温暖化分野における脆弱性の定義は、IPCCの第三次報告書にある。そこでは、「気候変動や極端現象を含む気候変化の悪影響によるシステムの影響の受けやすさ、または対処できない度合い。脆弱性はシステムがさらされる気候変動の特徴、大きさ、速度と、システムの感度、適応能力の関数である」IPCC, 2001b, Glossary)と記している。

  

例えば、熱中症による死亡に係る脆弱性は、夏の高温という外力と高齢者単独世帯比率や近隣の社会関係資本等に感受性、熱中症に係る予防や予報・救急体制等の適応能力によって規定される。

 

気候変動への適応策は、この脆弱性を総合的に改善するものでなければならない。特に、高齢者単独世帯の多さや高齢者を支える社会関係資本の希薄化等に対する対策を取ることが大事である。

 

また、地球温暖化の影響を分析する際、地球温暖化の影響となる現象を抽出する場合には、気候変動という外力と現象との関連を分析すればいいが、適応策を考える場合には、その現象とそれを規定する感受性や適応能力との関係を分析することが必要となる。

 

 

さて、適応策を考えるうえで、脆弱性ともとに、レジリアンスがキーワードである。レジリアンスは、リスクの発生後の回復力だけでなく、脆弱性を規定する要因である適応能力も含めて、広義に定義される傾向がある。

  

例えば、ピークオイルと気候変動という危機を受け、脱石油型社会への移行を目指す「トランジション・タウン」という運動では、レジリエンスを中心コンセプトとしている。そこでは、レジリエンスとは、「外界の大きな変化に対し、パニックを起こすことなく、また対症療法的にとりあえずその場をしのぐのでもなく、しなやかに対応する力」であると定義されている。

  

 

 

 

出典)NPO法人トランジション・ジャパンのサイト http://www.transition-japan.net
    
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