サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

「街なか避暑地」で節電と猛暑対策

2012年04月15日 | 気候変動適応

 2011年の夏、原子力発電の停止に伴い、全国各地で夏場の電力の需給逼迫が懸念される中、荒川区で「街なか避暑地」と称される事業が実施された。夏場に、区施設である図書館、ひろば館・ふれあい館(コミュニティ施設)のロビーや集会室、情報コーナー等を解放し、区民に集まってもらい、涼んでもらうという試みである。また、単に施設を開放するだけでなく、施設を利用したイベントを紹介し、街なか避暑地の利用を促す工夫がなされた。

 街なか避暑地の狙いは3点である。1つは家の電気を消して、公共施設に出かけてもらい、全体としての節電を図るという節電効果である。2つめは、熱中症防止である。特に高齢者の方等等には公共施設に出てきてもらうことが安否確認になる。3つめは、公共施設に地区住民が集まることでコミュニティづくりをするという効果である。節電行動を呼びかけるだけでなく、自分のためや地域のためになるような事業として、街なか避暑地というアイディアが注目された。

 荒川区以外にも同様の施策が実施された。例えば、和歌山県は「暑い夏は家族そろってお出かけキャンペーン」と称し、近代博物館、博物館等の県立4施設を8月中、半額にしたり、デパート、ショッピングセンター、映画館なども「クールスポット」と位置づけ、午後の早い時間にバーゲンなどを開くよう各店舗に呼び掛けた。滋賀県や兵庫県等でも同様の試みが実施された。これらの事業では、外出促進による経済効果もあったと考えられる。

 また、 市川市地球温暖化対策推進協議会では、外へ出かけることによって節電する『お出かけ節電』」を促進するため、身近なクールスポット、特に水辺、森林、公園など「自然の避暑地」を紹介した「いちかわクールスポットマップ」を作成している。荒川区等とは異なり、こちらは冷房を聞かせた屋内ではなく、屋外の自然空間をクールスポットとして、利用を呼び掛けるものである。

 ただし、荒川区等へのヒアリングによると、アイディアはよかったが十分に成果があがっていない面もある。例えば、街なか避暑地となる公共施設では、涼んでもらうために冷房が節電をせずに、これまで通りにしていたというが、28度という従来の冷房の温度設定は決して涼しいというほどではなく、涼みに行きたいと思わせなかった可能性がある。また、集客のためのイベントを実施しても、おばあさんは出かけるが、おじいさんは家にいる場合もあり、この場合の節電効果はあまり期待できないという意見もあった。集客のための工夫に改善余地があると考えられる。

 適応策(熱中症対策)や節電、地球温暖化を学べるようなイベントも工夫したいところである。地域環境力(人の意識や人と人の関係)を高めるために、ワークショップ等の仕掛けをすることもできるだろう。もっとも、街なか避暑地のために夏場だけイベントを充実させるのではなく、通年的に人が集まるように公共施設が運営され、常に地域環境力が醸成され、計画停電や猛暑の夏には結果として適応策や節電になるようにすることが必要である。

 

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