korou's Column

2024.5.1 音楽ブログとして再スタート。

船山基紀サンを語ってみた

2021-08-24 | J-POP

図書館で「ヒット曲の料理人 編曲家 船山基紀の時代」という本を借りて

今読んでいるところ。

本当は、この本の前段として

同じシリーズの「萩田光雄」を先に読むべきだったのだが

そうと知らずに借りてしまった。

このブログでは、約1年前に

筒美京平サンについて書いたのだが

今回の記事は、その続編ということになる。

(その意味でも筒美サンの右腕的存在だった萩田サンの話から書きたかったのだが)

 

☆☆☆

 

筒美サンについては

最初の数年間は作曲と同時に編曲もこなしていて

南沙織「17才」とか郷ひろみ「小さな体験」のように

後世に残る名アレンジもされたわけだが

超多忙ということもあり

70年代後半から編曲に関しては

より若い世代のアレンジャーを指名して依頼するようになっていった。

そのトップバッターにして最高に信頼を得ていたアレンジャーが

萩田光雄サンであり

その次の世代で、かつ「自分(筒美サン)にはない感覚のアレンジ」と評されたアレンジャーが

船山基紀サンなのである。

船山基紀編曲で大ヒットとなった曲は数多くあるのだが

その代表的な数曲を引用してみる。

 

沢田研二 勝手にしやがれ

 

この曲のイントロは船山サンの手になるもので(イントロはアレンジャーが作ることが多い)

これほど鮮烈な印象を与えるイントロはそうそうないだろう。

作詞も歌唱もメロディも素晴らしいが

イントロの魅力もそれに負けていない。

 

榊原郁恵 (Ikue Sakakibara) - ロボット (ROBOT)

 

この曲などは、アレンジが曲のイメージを決定づけている。

発売された1980年の時点で、これほどテクノっぽい「歌謡曲」は珍しかったはずだ。

 

実は、歌謡曲の世界でシンセを本格的に導入して成功した最初の人物こそ

船山基紀サンなのである。

上記「ROBOT」にもシンセっぽい音は出ているが

実際には制作上の事情により、スタジオミュージシャンによる手弾きで演奏されている。

そうではないもっと本格的なシンセサイザー音楽を知りたいと思った船山サンは

1982年に渡米し、そのあたりの電子音楽の研究を始める。

そして、日本の歌謡曲関係者としては第1号となるフェアライト(シンセサイザー)を個人で購入して

1984年に記念すべきシンセ歌謡曲第1作となる柏原芳恵「ト・レ・モ・ロ」を完成させる。

ただし「ト・レ・モ・ロ」という曲には、あえてシンセの音を挿入する必然性はなかった。

別のアレンジでも間に合う楽曲だったのだが

その次にフェアライトで作曲した小泉今日子「迷宮のアンドローラ」の場合は

シンセサイザーの音が最も効果的に鳴り響き、実質これが日本の歌謡曲史上

最初の電子音楽曲と言っていいだろう。

 

迷宮のアンドローラ 小泉今日子

 

その後、パソコンが急速に普及して、この種の音楽が素人でも作成できるようになり

現在のボカロ音楽にまで至ったのだから

船山サンの先見の明は称えられていいだろう。

 

もちろん、船山基紀サンをシンセサイザー導入の功績だけで称えるのは

あまりに小さすぎる賞賛になることは言うまでもなく

日本の歌謡曲史上、これほど長期間にわたってアレンジャ―として活躍し

ヒット曲を世に送り出してきた人は他に居ないのである。

その点では同じアレンジャーの萩田サンでも及ばないし

作曲・編曲の違いはあれど筒美サンの息の長さをも上回る活動期間の長さになっている。

船山サンがアレンジを手がけた最初のヒット曲が山口百恵「パールカラーにゆれて」で

これが1976年9月のこと(初登場オリコン第1位)。

そして、最近では2018年5月に発売され、同様に初登場オリコン第1位となった

この曲のアレンジも船山サンの手によるものだ。

 

King & Prince「シンデレラガール」YouTube Edit

 

ある意味、こんなキラキラ王子様の楽曲など

中高年男性にとって無縁なものに等しいのだが

アレンジがどうなのかという視点で聴けば

結構面白く聴ける。

理屈っぽく音楽を聴くことの効能かもしれない。

 

☆☆☆

 

最後に、船山サンが語った興味深い言葉を引用。

「どれだけPCが発達して多彩な音を自由に作り出すことができても、ギターなどの弦楽器は残る。

 エレキギターだと、カッティングなどの単純な音は作り出せるが、フレーズを弾くときの手癖などは

 絶対にPCではできない。逆にドラムはどんな音でもできてしまう。どんな音も可能なのだが、かと

 いって誰にでもそのことができるわけではない。やはり生楽器を使ったアレンジを理解していない

 人が、それっぽい音を出そうとしても、生と同じ音を再現することはできない。だから時々「この音、

 バイオリンじゃ出ないぞ」というような、すごくおかしいデモテープに出会うことがある。そうなると

 私の出番となり、より自然な音質、クオリティに修正する作業を行うことになる。まだまだ勉強する

 ことは多いし、まだまだ仕事は楽しい」

 

うーん、凄いなあ。

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1 コメント

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あらら、ゴールデン枠で本人ご登場 (korou)
2021-09-29 22:14:20
何気なくテレビをつけたら、突然、船山基紀特集が始まっていて・・・(驚)

今(9/29)、NTV系で放映している「有吉 対 怪物」という番組で
船山サンのことを”編曲家の怪物”としてミニ特集していました。
有吉、友近、指原、大吉、バカリズムなどがゲストのゴールデン枠の番組で
何で今さら船山サンが?

このブログのせいなのか、読者に日テレの関係者・・・いやいや違う(笑)
記事冒頭で紹介した本のせいでしょうねえ。
なかなかアレンジャーのことを取り上げる機会はないので
やはり出版物の効果は大きいと感じました。

ご本人も登場しましたが
仕方ないとはいえ
地味なキャラに見えてしまい
ゴールデン枠の番組ではインパクト不足でした。
まあ、これは残された偉大な仕事とは
何の関係もないんですが。

とにかく、船山サンの仕事が
まあまあの視聴率が期待できるテレビ番組で紹介されて
良かったです。
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