korou's Column

2024.5.1 音楽ブログとして再スタート。

松浦亜弥 カヴァー曲②「ひこうき雲」

2020-04-17 | 松浦亜弥

1973年11月5日、

荒井由実2ndシングル曲「きっと言える」のB面曲として

「ひこうき雲」は発表されました。

その15日後には

荒井由実としての初のアルバムが

「ひこうき雲」のタイトルで発売されたのですが

そのアルバムでも、最初と最後の曲として

「ひこうき雲」は収録されましたた。

デビュー直後の荒井由実にとって

最も大事な曲のひとつだったに違いありません。

その思いに応えるかのように

当時のTBS林美雄アナが

「パック・イン・ミュージック」で絶賛し

この曲は広く世に知られるようになります。

 

曲の構造としては

本人も常々語っているように

プロコル・ハルム「青い影」の影響を受けています。

ゆったりとしてテンポでベース音をクリシェで進行するあたりは

ほぼそっくりですが

「ひこうき雲」の本当に凄いところは

その部分が終わりBメロに入った時点から始まります。

どんなに凄いのかを書こうとすると

結構長い文章を要しますので

興味ある方は

(私が書こうとしていた文章よりはるかに上手に解説されている)このサイトの記事

ご参照ください。

 

(2020.8.14追記・・・ここで、荒井由実自身のオリジナルの歌唱の音源を引用すべき

 でしたが、この記事を書いたときはすっかり忘れていました。今日になって、音源

 を探したのですが、残念ながらアルバム「ひこうき雲」からの音源はyoutube等で

 見つけることはできませんでした。松任谷由実になってからの80年代以降のものと

 思われる歌唱動画はいくつかあったのですが、荒井由実の頃とは声質が微妙に違って

 いて引用しにくいなと思っていたところ、最近になって1976年のライブ音源がアップ

 されていたので、今回はこの動画を引用することにしました。なお、この音源自体、

 (いつまで再生可能なのか不明ですが)「お宝」の名に値する凄い歴史的音源だと

 思います。「ひこうき雲」は30分37秒あたりから始まります)

 

1976 荒井由実(22)コンサート(FM放送フル楽曲版)

 

☆☆☆

 

2002年5月22日、ピッコロタウン(現アップフロントワークス)から

「FOLK SONGS 2」というカヴァーアルバムが発売されましたが

そのなかで、松浦亜弥は

「てんとう虫のサンバ」「冬が来る前に」「ひこうき雲」「長い間」

「神田川」「さとうきび畑」の計6曲をカヴァーして歌っています。

ここで注目すべきことは

このアルバムの「ひこうき雲」では

オリジナルの変ホ長調ではなく

そこから半音上がったホ長調で歌っていることです。

この曲が変ホ長調であることは

ある意味曲の核心部分と言っても過言でなく

この曲のどこか哀しい、切ない気分は

決してハ長調とかト長調などでは出せないことは

間違いないところです。

長調なのに決して浮かれない、落ち着いた感じが

変ホ長調の特性であり

強めに表現すれば内容の詰まった充実感となり(例:ゆず「夏色」)

ゆっくりと表現すれば何とも言えない渋さと悲しさが詰まった音楽

(例:平井堅「瞳をとじて」、徳永英明「レイニーブルー」)になります。

そうした個性ある調性なのに

わざわざ半音上げてホ長調にする意味はどこにあるのか

少なくとも私にはさっぱり分かりません。

ホ長調こそ、ホ長調独特の妙なニュアンスがこびりついたまま

一気に楽観的に突っ走る感じの調性で

ユーミンの「ひこうき雲」の世界には全然合わない調性なのです。

何だろう、この「半音上げ」は?

たまたまアルバムで「半音上げ」しただけでなく

あるライブ1回を除いて

亜弥さんは、いつもこの曲をホ長調で歌っています。

 

その(ホ長調でない)例外のライブというのが

アルバム発売の翌月8日に行われたこの有名なライブです。

このライブでは、「ひこうき雲」はヘ長調になっています。

さらに半音上げているんですねえ。

武部さん、どうして?(笑)

 

松浦亜弥 「 ひこうき雲~LOVE涙色」(20020608)

 

厳密に言えば、亜弥さんとこの曲の相性は最悪で

このライブでも、音程は若干不安定なのですが

そういった分析を許さない「何か」が

このライブにはあるようです。

本来もっといろいろと表現して歌えるのに、

(ユーミンの曲であるがゆえなのか)なぜか

表現することを控えてとことん素直に歌ったことで

もうすぐ16歳という年齢の少女らしい歌唱になり

それがこの曲の雰囲気にマッチした、

というところでしょうか。

歌っていくうちに会場の雰囲気も変わっていったたようで

そのへんが、いかにもライブらしくていいですね。

でも、なぜヘ長調?(しつこいか)

 

2007年10月15日、

亜弥さんは、ハロプロの一員として出演回数も多かった

「歌ドキッ! 〜ポップクラシックス〜」という番組で

この「ひこうき雲」を歌いました。

調べてみると

「歌ドキッ!」最後の出演だったようで

時期的にも、

アルバム「ダブルレインボウ」を出して

ハロプロ卒業も間近な頃でした。

2007年10月ともなれば

亜弥さんの歌唱力もハイレベルに安定してきた時期で

「ひこうき雲」の歌唱も

5年前と比べて相当確信に満ちたものになっています。

もっとも、そうした積極的な表現意欲が

この曲の場合、必ずしも功を奏さないことも多いわけで

特にこの歌唱については

調性の問題が露わになっているように感じます。

上手く歌えば歌うほど、曲の本質からズレていく感じ。

しかし、松浦亜弥の歌としてみれば

この歌唱がベストだと(個人的には)思っています。

 

松浦亜弥「ひこうき雲」(20071015)

 

最後に。

2013年12月20日・21日にCOTTON CLUBで行われた

ラグジュアリー・クリスマス・ナイト2013でも

「ひこうき雲」は歌われました。

この時期には、

youtubeでの「ひこうき雲」の動画が話題になっていたので

その意味でセットリストに加えられたようです。

しかし、残念ながら

(前回もこのブログに書いたように)12/21のブルーレイ収録分のライブでは

歌詞を完全に間違えて

意味不明な歌にしてしまいました。

間違えた歌詞そのままを書いてみます。

 

 白い坂道が 空まで続いていた

 ゆらゆらかげろうが あの子を包む

 誰も気づかず ただひとり

 あまりにも 若すぎたと

 何もおそれない そして舞い上がる

 

これはダメでしょ。

意味が通じませんね。

 

というわけで

一度ご紹介していますが

その前日のライブで歌ったほうを

再掲ということで。

こちらは歌詞はもちろん、歌唱もまともです。

 

松浦亜弥「ひこうき雲」(20131220night)<歌は2分20秒あたりから>

コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 松浦亜弥 カヴァー曲①「部屋... | トップ | 松浦亜弥 カヴァー曲③「あな... »

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (あやマルm(_ _)m)
2020-04-19 00:59:41
大変勉強になりました。音楽的なことはよく理解はできてませんが。

実はこの「ひこうき雲」は、亜弥さんのカバーの中では私としてはめずらしくあまり感動がなく、スルーしがちな曲でした。

ノリの良い明るい曲は言うまでもなく天下一品ですし、バラードも失恋系等圧倒的な表現力で亜弥ワールドに引きずり込むわけですが、どうもこの「ひこうき雲」だけは?でした。

今回、荒井由実さんの「ひこうき雲」とも聴き比べてみましたが、キーの違いによる影響がどうという以前にユーミンの声と歌唱はどうも好みではなく比較困難でした。

それで思ったんですが、亜弥さんの「ひこうき雲」は荒井由実さんとしてはどう感じていたんでしょう。世間の評判はいいけど、自分の曲想とは違う歌にしやがって台無しじゃないかと、内心ご立腹だったのではなかろうかと。

誰の曲を歌っても松浦亜弥ワールドに引きずり込む力があるってことは、オリジナルと違ってきてしまう場合もあるわけで、松浦亜弥だけにはカバーされたくないと思う歌手もいたりして。

返信する
カヴァーされる心理 (korou)
2020-04-19 19:48:02
>あやマルさん

>>亜弥さんの「ひこうき雲」は荒井由実さんとしてはどう感じていたんでしょう。

なかなか信じ難い話ですが
松任谷由実は
荒井由実時代の記憶を
ほぼ喪失しているらしいのです。
本人がテレビ番組でそう言っていました。

ひょっとしたら
荒井由実時代の歌をライブで歌うとき
松任谷由実としては
「カヴァー」のような気持ちで歌っているのかもしれません。
そう想像すると
荒井由実時代の曲をカヴァーする人について
どう思っているのかは
なかなか屈折した感情なのではないかと。

まあ、普通に考えれば
松浦亜弥レベルであれば(歌唱に問題はないし)
文句のつけようはないはずなんですが・・・
返信する
悔やまれる (beginner)
2020-04-21 16:24:04
「ひこうき雲」
もちろん知ってる曲ですが、リンク先の解説を読むと色々と練られた?(あるいは自然にそうしている?)素晴らしい曲なんだということが分かりました。

どう違うのか。何となく雰囲気でしか感じられない私みたいな素人には難しくて到底理解は出来ないのですが、それを理解出来る人がカヴァーした松浦亜弥を聞くと、これまた何か別な感情やらが湧いてくるんだろうなと想像して聞いてみました。

しかし音楽は奥深い。コード進行から作り手側の想いやテクニック、雰囲気叙情作りなどが千差万別になるんだなと。その理論を勉強せずにいたのは非常に悔やまれる。
歌い手はソコも理解した上でカヴァーしなければならないのかもしれませんね~。

オリジナルとカヴァーを聞き比べるなんてことあまりしませんでしたが、なるほど雰囲気まるで違うぞっていうのは今回初めて理解しました。

オリジナルはスゲェなと。これは荒井由実の曲ですね。決して松浦亜弥の曲ではないことだけ私の中で認識しました 笑。
返信する
素人蘊蓄のブログです(笑) (korou)
2020-04-22 08:56:42
>beginnerさん

>>オリジナルはスゲェなと。これは荒井由実の曲ですね。
>>決して松浦亜弥の曲ではないことだけ私の中で認識しました 笑。

素晴らしい!
私の言いたかったことを見事に表現して下さいました。

”音楽理論”の話ですが
私も、今まで何も知らずにいたことを悔やんでいます。
(特に「歌詞」について無頓着だったことは致命的だった!)

まあ、難しいことを言わずに
普通に純粋に感動すればいいのでしょうけど
そこを、ごちゃごちゃと素人丸出しの蘊蓄を披露して
自慢げに書き連ねるのが
私のブログです(笑)
よろしければ、次回もお楽しみください
(次回は「あなたに逢いたくて」の予定です)
返信する

コメントを投稿

松浦亜弥」カテゴリの最新記事