korou's Column

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エンゼルスという選択

2018-01-04 | MLB

日本プロ野球で目覚しい活躍を残した大谷翔平が

ついに念願のメジャーリーグ入りを果たしたのだが

それが随分昔のニュースのように思えて

実はまだ決定後1ヶ月も経っていないことに気づいた。

その短い間でさえ

期待過剰とも思える報道にさらされている現状。

思うに、彼のMLBでの活躍については

かなりの比率で

「これからの期待値」という部分にかかっているのであって

現時点での伸びしろが不明な以上

何も言えない、というのが本当のところではないか。

ただ、渡米時の年齢の若さからして

伸びしろについては十分期待できる。

以上が大前提。

 

現状のままの能力で即MLBで通用するかといえば

投手としては中途半端、打者としては全くダメと思っている。

 

現在のMLBは、数年前と違って

先発投手の速球の平均スピードが4,5キロ上がってきており

さらに主要な変化球がスライダーからカーブになってきている。

NPBでさえ160キロ超えとはいえバットに当てられていた程度の速球が

MLBのスラッガーたちに通用するとは思えない。

さらにカーブが武器でない大谷としては

スライダーが生命線となるのだが

そのコントロールが安定していないので

ダメなときはメッタ打ちに遭うだろう。

ダルビッシュと違ってタテに変化するスライダーなので

良い時には全然問題ないが

コントロール不足でメジャーのストライクゾーンと食い違うときは

あっさりと見逃され

カウントを悪くして、苦し紛れのストレートを痛打される場面が

続出するだろう。

 

打者としての大谷は

本当に凄い素質をもった選手だと思っていたが

残念ながら、日本ハム時代にその素質を磨くことができなかった。

どうしても投手としての練習が優先されたに違いないのだが

それでいて、あれだけプロの投手が投げる球をミートできるのだから

どれだけ素晴らしいバッティングセンスだったことか。

NPBで二刀流が通用してしまったことが

MLBでの打者大谷の可能性をかなり狭めたことは否定できない。

現在の大谷は

一流の投手に存分に投げられてしまうと

手も足も出ないほど弱点だらけの打者になっている。

甘い球をスタンドに放り込む技術は健在だが

MLBで二刀流を続けるとなると

やはり注目の的ということで

執拗なマークをされることは避けられない。

それでも二流の投手のときは

甘い球をとらえることはできるだろうが

全体として苦戦は免れず

打率2割4分、二刀流で打席数が少ないことを考慮して本塁打は毎月2本程度

ということになるだろう。

守備は問題外の下手さ(これは指導を受けていないせいで彼の能力の問題ではないが)

なので、DHとして使わざるを得ず

昨年までのDHだったプホルスを守備に不安のある一塁を守らせてまで

大谷を打者として使うメリットがあるとはとても言えない。

プホルスなら

もはや過去に大打者だった面影すらないが

それでも2割6分で本塁打25本は確実である(もちろん3割、30HRも十分あり得る)。

 

以上の現状であるとしたなら

大谷はどこをどうすればいいのか。

答えは明確だろう。

どの野球評論家に訊いても同じ答えがでるはずである。

あえてそれを書いてみると

まず投手大谷については

細かいフォーム修正が必至だろう。

160キロ超えの速球を簡単にミートされること自体

すでにおかしい。

球の出所が打者に見えやすくなっているのではないか。

単にそれだけのことであれば

これは簡単に修正できるのでラッキーだろう。

もちろん、今まで修正してきていないこと自体

プロの野球選手としてどうなのかとも言えるが

「なるべくフォームをいじらない。結果が出ていれば何も修正しない」

というチームの方針もあったに違いない。

しかし、MLBの打者の動体視力は半端ないので

おそらく自信を持って投げ込んだ速球を

簡単にスタンドに放り込まれるということを

何度も体験するだろう。

(もちろん、通用すれば、今まで通りで支障ないのだが・・・)

その時点で素早く修正できれば

一気に速球を武器にすることができる。

そうなれば、スライダーが不調のときも

ギリギリでしのぐことができるだろう。

 

さらに言えば、もう1つ決め手となる変化球がほしい。

MLBで本当のエースになるためには

速球+変化球2種類がマストアイテムである。

(注)野茂は速球とフォークの2種類だけで

   MLBでもエース格だった年が数年あったが

   それは①フォークを投げる投手が当時のMLBに居なかったこと

   ②1990年代半ばのMLBが長期のストなどの影響で

   一時的にレベルダウンしていたこと

   が大きく

   現在のMLBで野茂がエース格になれるかどうか

   私個人的には大いに疑問に思っている

 

大谷はフォークボールも投げるが

そうでなくてもコントロールに不安のある投手が

フォークのような球筋が乱れやすい球種を武器にするのは危険すぎる。

フォークボールというのは

要するに速球のタイミングで打者をひきつけておいて

最後の最後で急速に落下することで空振りを誘うという武器なので

同じ「タイミングずらし」ということでいけば

チェンジアップのほうがずっとコントロールがつけやすく効果的である。

現在のMLBのエース格の投手は

そういうタイミングずらしの球種を必ず持っていて

大体において

速球(ツーシーム)を軸に

球筋で惑わす球種(カットボール、スライダー)と

タイミングで惑わす球種(チェンジアップ、遅いツーシーム)の

3種類を使い分けている。

さらに、最近の打者のフライボール志向に対応するために

落差の大きいカーブをマスターして

計4種類の持ち球を武器にする投手も増えてきた。

その意味では、大谷の現状はまだまだである。

通用する速球はないし

そうなるとスライダーが生命線となるが、そのコントロールも怪しい。

加えてタイミングを外す球は持ち合わせていないし

ジャッジ、スタントン、サンチェスといった長距離打者を封じるための

落差のあるボールも持っていない。

そんな現状なので

一つ一つ改善していくしかないが

その点、23歳の若さで渡米しているのは大いなる強みだろう。

速球の投げ方を改善し

チェンジアップとカーブの習得に努めれば

MLBにおいても20勝可能な大投手になれる可能性は十分にある。

FA期間満了まで待って渡米したとしたら

そのへんの改善が年々困難になっていくので

早いタイミングでのMLB入りは

やはり賢明な選択だったと思う。

 

打者大谷はどう改善していくべきか。

これについては

早い段階で高打率はあきらめて

長距離打者に専念するしかないのでは、と思っている。

現在のMLBではデータ分析が物凄く進化しているので

内野の間を抜いて安打を稼ぐというタイプの打者(例:イチロー)は

生き残りにくくなってきている。

多くの打者は、ゴロの打球を飛ばした場合

その打球のコースは何種類かに限定されることが分かっているので

それに対応したシフトをとれば

相手打者の打率を4分ほど下げることが可能

ということがここ数年の実戦での結果で判明している、

そうなると、打者のほうも

ゴロよりもライナー、悪くてもフライになる打球を狙うしかなく

実際、現在のMLBの一流打者は

そのことを意識して打席に立っている。

その結果、以前よりも

ツーシームとかカッターのような球筋が細かく揺れる球種について

無意識に普通にバットを出していた時代にはゴロが多かったのに対し

ここ数年、その球種でもゴロに打ち取れないケースが増えてきている。

そうなると、投手のほうも、もう一工夫必要になり

少々のことではフライボールにできない落差の大きいカーブなどを

決め球にしてゴロを打たせるという投球を試みるようになってきた。

(なお、カーブでなくても、絶妙のコントロールで低めぎりぎりで落ちる

 カットボールでもそういう結果が得られるということは、ヤンキースの

 田中将大の例で実証済みである)

 

大谷も

打者としては絶妙のミート力と抜群の長打力を兼ね備えているとはいえ

単なるミート力だけでは

現在のMLBのデータ重視守備を打ち破ることは不可能と思われる。

NPBはそういう段階まで来ていないので

たとえば三塁手が二塁のポジションまで移動して守るというような

極端なシフトはまだ徹底していないが

MLBはその点容赦がない。

そうなると、せっかく長打力があるのだから

他の一流打者の例にならって

本塁打狙いのフライボールヒッターを目指すべきだろう。

今まで打者として血のにじむような苦労はさせてもらえてなかっただろうから

もう今更弱点を直すという努力よりも

自分の長所を生かしたバッティングに徹するべきだろうと思う。

もろい三振も頻繁にあるが、油断すればホームランがあるという打者。

 

投手としては、速球+スライダー+チェンジアップ(+カーブ)を操り

打者としては、下位で本塁打が期待できる意外性のある長距離打者というのが

大谷に可能な未来の姿ではないかと思っている。

 

そういう未来像をイメージしたとき

彼の選択したエンゼルスというのはどうなのか?

今年のコーチングスタッフが未確認なので

確認でき次第

今まで書いてきたことの続きをアップしようと思うが

2017年についていえば

投手コーチはチャールズ・ナギーで

打撃コーチはエリック・ヒンスキーという面々なので

これはかなりいいメンバーではないか。

選手としては

それぞれの現役時代についてどんな感じだったかは

何回か映像で見ているし大体のところは知っているつもりだが

コーチとしての能力については皆目見当がつかない。

ただし、ナギーは

2011年から3年間、アリゾナ・ダイヤモンドバックスで投手コーチを務め

完全に崩壊していた投手陣を立て直した実績を持っていて

一方のヒンスキーも

2014年からシカゴ・カブスで打撃コーチを務め

カブス悲願のワールドシリーズ制覇の立役者の一員となっている。

どちらのコーチも

大谷にアドバイスを送るスタッフとして申し分ないように思える。

 

問題は監督のソーシアだけだろう。

すでに同一チームで18年間も監督を務め

当初は名監督と謳われたものの

2010年以降は地区優勝すら珍しい不振ぶりが続き

2016年にはオーナーと組んでGMを追い出すなど

長期政権の弊害が指摘される存在になってきている。

2017年は、たまたま予想外の健闘を見せたものの

やはりプレーオフ進出を逃してしまい

契約の切れる2018年には

相当ムリなことをやってでも

目先の勝利にこだわる可能性は十分にある。

長い目で育ててほしい大谷にとって

そんなソーシアのもとで野球をやることは

決してベストチョイスではなかった。

 

なにかが気に入ってエンゼルスを選んだ大谷。

ソーシアについても問題ないと思ったのか?

それとも、そこまで気にすることはなかったのか?

大いなる可能性を秘めたNPBの宝だけに

ナギーのようなコーチの薫陶を受けて

ソーシアの采配に惑わされることのないよう

MLBにおいても進化を続けてほしいと願うばかりである。

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