korou's Column

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松浦亜弥ディスコグラフィー 90 「LOVE涙色」

2016-11-19 | 松浦亜弥

松浦亜弥の3枚目のシングル曲(2001年9月5日発売)。


アルバム「ファーストkiss」に収録され

その後も、ベストアルバム「ベスト1」「10TH ANNIVERSARY BEST」と

企画アルバム「「Naked Songs」に収録された。

作詞・作曲:つんく、編曲:渡部チェル。

 

「あやや」をトップアイドルに押し上げた

松浦亜弥史上不滅の曲である。

オリコン週間チャートで初のベスト3入りを果たし

売上枚数も初の2ケタ(17万2千枚)に乗せた。

この曲のヒットで年末の紅白出場を果たし

21世紀最初の紅白のトップバッターとして登場。

弱冠15歳ながら堂々としたステージを披露し

TV視聴者に鮮烈な印象を残した。

 

これほど全体の流れがスムーズな曲もないだろう。

どの部分を切り取っても曲として成立しないほど

綿密に作られていて

それでいてどの部分も

メロディ、リズムとも魅力的だ。

聴き惚れている間に

いつのまにか曲が終わってしまうことすら珍しくない。

だが、心を揺さぶられる感動の名曲かというと

そういう類の曲ではないことも確かである。

典型的なシングル・ヒット曲であり

浅い面もあるけれど

他の曲とは比較にならないほど

抜群に広いファン層を獲得できる曲になっている。

 

曲の細部を探ると

いくらでも話はふくらむのだが

(つまり、それだけ、つんくの才能が嫌でも感じられる曲なのだが)

 ここでは、1ヵ所だけに止めておこう。

実際、その1ヵ所だけで

この1週間考えて続けてしまい

いまだに結論にたどり着けない有様だ。

 

その箇所とは

すでに「おいちゃんさんのブログ」で指摘済みの部分でもあるのだが

最初のサビ予告が終わって

いよいよ曲がスタートするこの部分。

 

 Ah きっぱり あなたの事なんて忘れてる
 そう 思って とぼけてきたみたい
 Ah なんだか 急に複雑な 感情が
 こう 頭の 中をぐるぐる巡っている
 くやしいわ

 

「あなたの事なんて」の部分と

「とぼけてきた」の部分は

メロディが一緒のようで、実は一緒でない。

同様に「急に複雑な」と「頭の中を」の部分も一緒でない。

 

「あなたの事なんて」「急に複雑な」の部分は

音階を普通に上昇していく(ミーファーソーラ)のに対して(以下「音階上昇」と記す)

「とぼけてきた」「頭の中を」の部分は

最初の3音が半音ずつ上昇するメロディ(ファーファ#-ソーラ)(以下「半音上昇」と記す)

になっている。

 

実は、この部分の音程をどう歌えばいいのかについて

いろいろ考えてみてもよく分からないのである。

もちろん譜面通りに歌うのが

デビューして半年足らずの新人歌手として当たり前なのだが

「あやや」はそうではなかった。

「あやや」はこの反復するメロディを

「音階上昇」→「半音上昇」の2反復ではなく

「音階上昇」の4反復で歌っている。

本家本元の「あやや」がそう歌ってヒットさせたため

この部分は本来のメロディと違った形で

人々の記憶に残った。

そして、その”アレンジ”は特に違和感なく聴こえ

むしろ今となっては

「半音上昇」のほうに違和感を感じるくらいだ。

 

しかし、この部分のメロディラインとか

その直後のメロディに付くハーモニーを考えると

「半音上昇」のほうが自然だったはずである。

そもそも、こういうことに敏感なはずのつんく♂が

なぜこういう「あやや」の”アレンジ”を許したのか解せない。

 

有名な例でいえば

かつて、いしだあゆみが「ブルーライト・ヨコハマ」で

筒美京平の指示したメロディを勝手にアレンジして歌ったことがある。

レコーディングの際、すぐにそれはチェックされたが

筒美が「それもいいね」と判断したので

そのアレンジは許されることになった。

筒美は、そのメロディを間奏でも使っていて

筒美の意図としては、同じメロディの反復のはずだったのだが

間奏では歌の部分と少しだけ違うメロディが流れることになり

「それもいいね」と筒美が納得したというエピソードになっている。

 

この「ブルーライト・ヨコハマ」と

今回の「Love涙色」のケースは似ているといえば似ているが

決定的に違うのは

その後、「ブルーライト・ヨコハマ」がカバーで歌われるときに

いしだあゆみの”考案”したメロディ、即ち皆が知っているあのメロディで歌われるのに対し

「Love涙色」がカバーで歌われるときは

元の楽譜通りの「半音上昇」込みで歌う歌手と

あややの考案した「音階上昇」だけで歌う歌手とに分かれているという点だ。

個人的には、そのような、どっちでもいいというような扱いをする箇所では

ないと思うのだが(元々音程のとれない下手な歌手は別として)。

そのあたりがどうにも分からない。

 

1週間考えて、いろいろ考えをめぐらせても

結局その地点に戻っってしまうので

もう細部にこだわるのは止めにした。

本当なら、このメロディを正確に歌うかどうかというのは

大きな問題のはずなのに、なぜこんな結果?

 

さて、細部にこだわらず全体的な印象でいえば

亜弥さんの「Love涙色」の(私見)ベスト3は

以下のとおりになる。

 

まず、この有名な映像(2002年)の後半で歌われた「Love涙色」。

この曲の歌詞の内容からいえば

こういう落ち着いた雰囲気のバージョンが

むしろ正解ではないかと思われるくらいで

また、そういう雰囲気でも完璧に歌える「あやや」は

当時の年齢(16才直前?)を思えば凄すぎる。

 

松浦亜弥 - ひこうき雲~LOVE涙色(4分6秒あたりから) 

 

 

2つめは”Aya the Witch”ツアー(2008年)でのライブ映像。

これは「あやや」ではなく「歌手・松浦亜弥」がこの曲を歌ったらどうなるかという問いへの

最も鮮やかな回答といえる。

旬のアイドルがもつ躍動感とかピチピチ感とかは望むべくもないが

それらの不足を補って余りある安定した歌唱が聴かれる。

 

AYA THE WITCH -LOVE涙色-

 

3つめは”First Date”ツアー(2002年)での映像。

個人的に「あやや」時代の映像よりも

「歌手・松浦亜弥」時代の映像を推している当ブログですが

今回この映像を何度も繰り返し聴いて

これが「Love涙色」のベストパフォーマンスと思いました。

それこそ原因不明ですが、とにかくこれが一番いいです。

 

松浦亜弥 - LOVE涙色

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8 コメント

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違和感解決 (大sansan)
2016-11-20 19:59:44
とうとうLoveまできましたね。お疲れ様です。

「Love涙色」の音階に関する問題を整理してくださりありがとうございます。

たまーに、ボーカロイドカバーが出てくるのですが、
楽譜通りに歌わせることが多い(当たり前のことですが)ので、
何となく違和感がありました。
松浦亜弥ファンが歌わせれば、そのへんを調整するんでしょうが、
松浦亜弥さんの歌を聴き込んでいて、尚且つ、ボカロオタクなんて云う奴は、
この世に、皆無のようですから、あきらめています。

楽譜通りだと変、と云うのも可笑しな話ですが、
もう、完全に松浦亜弥さんの歌い方にならされてしまいました。
ハロプロの若い子たちも、松浦亜弥さんの歌を聴いて育っているからか、
今さら、楽譜通りに歌えと云われても、難しいかもしれませんね。
返信する
Re:違和感解決 (korou)
2016-11-20 22:43:12
>大sansanさん

実は、元々のメロディを確認するための映像として
初音ミクへのリンクを紹介しながら説明する予定だったのですが
そんなリンクを面白がってくれる人はそう居ないかもと思い
やっぱり止めました(笑)。
もちろん、そういうリンクを挟めば
大sansanさんは面白がってくれると思っていたのですが
止めちゃってすいません。

まあ、これは元気いっぱいの曲調、ボーカルなんで
初音ミクには向いていない曲だとは思いますが。

ハロプロの若い子はともかく
そこまで若い子ではなくて、ちょっとだけ若い子wなら
楽譜通りに歌っている人はちょこちょこいます。

菅谷梨沙子
https://www.youtube.com/watch?v=b2DepQw5ZdA

新垣里沙(1回だけミスってますが・・・)
https://www.youtube.com/watch?v=ttgTF4qyHOo

吉川友
https://www.youtube.com/watch?v=kc3If0-njpE

こんなにハロプロのアイドルが歌った
亜弥さんの歌ののカバーばかり聴き続けたのは初めての体験でしたww
返信する
年齢詐称疑惑 (アヤまる)
2016-11-22 02:16:09
あいかわらず深い分析、勉強になりました。

それにしてもデビュー半年、弱冠15歳の少女と、その少女を発掘し作詞作曲した大御所とのやり取りがどんなものだったのか興味深いですね。

少なくとも「音階上昇」の4反復は亜弥さんから提案したんでしょうね。

そして原曲は変えていないのだから、あややバージョンをつんく♂氏が許可したのか、むしろそっちの方がいいと思ったのか、亜弥さんが無理やり通したのか。

いずれにしても15歳にしてすでにプロ同士の会話が成立したってことでしょうね。年齢詐称疑惑がおきるわけですね。

私もこの曲は”First Date”がストレートに入ってきます。

Aya the Witchになると「おめーらに、懐かしいの歌ってやっからよ」的オーラが見え隠れして(実はそこも含めて亜弥さんが好きなんですが)、さすがに曲想と合わない感じもします。

返信する
Re:年齢詐称疑惑 (korou)
2016-11-23 09:38:43
>アヤまるさん

まあ、つんく♂氏とのやりとりなどは
想像の域を出ないので
ただ単に「あやや」が
メロディを歌い間違えて(歌詞の間違いはよくあり・・・・以下自粛)
つんく♂が「仕方ねえなあ」と黙認しただけ、という可能性も大ですね。

この曲のメロディの複雑さについては
おいちゃんさんのブログを読んで初めて気づきました。
他にもいくつかあるのですが
いちいち分析していくと
頭が痛くなってきます(笑)
シンプルな曲のように見えるのに
さすがプロの仕事ですね。

そんな複雑な曲を
シンプルに聴きやすく歌ってしまう「あやや」・・・素晴らしいの一言です。
返信する
脱帽m(_ _)m (おいちゃん)
2016-11-29 20:22:38
korouさん、脱帽です。
よく聴き分けましたね。私は先入観から、キチンと歌っているものだとばかり思っていました。
さすがです。聴き込み方が違います。

でも、この歌い間違いはきっと確信犯ですよね。
PVでは正確に歌おうとしていますし、コンサートの「Otona no NAMIDA 」ではキチンと歌っています。

ですので、例えば「みんなが歌えるように」とか「聴きやすい方で」などの理由で、簡単な方を選択しているのだと思います。

竹内まりやさんの「みんなひとり」では、サビ後半部分の半音をあんなに正確に歌っていますので、「LOVE♡涙色」でも、どちらで歌うのかは、予め決めているのではないかと。
返信する
いやいや帽子はそのままでどうぞ (korou)
2016-11-29 22:38:16
>おいちゃんさんへ

「Otona no NAMIDA」は敬遠してまして
ご指摘があったので初めてじっくり聴きました。
たしかにこれは譜面通りですね。
まあ、かなり雰囲気が独特で
他のライブと比較できない感じではありますが。

PVでもしアレンジして歌っていたら
「ブルーライト・ヨコハマ」と同じになっちゃいますからね。
作曲者公認のアレンジというか、譜面そのものが変更になりそうです。

発売から9日後のこの映像では
最初だけ「半音上昇」で、後は「音階上昇」になっています。
この時期はまだ迷っていた?
https://www.youtube.com/watch?v=6SzQ_xB-xoA
返信する
これはアウト? (おいちゃん)
2016-11-30 04:22:35
9日後ですか。
これまた微妙な歌唱を見つけましたね。

これはPVの音程に似ていますね。
うまく音程がはまらなかった可能性がありますでしょうか。

和音としては「ファ♯」は嵌りにくいので「ミファソラ」とか「ファファソラ」になりがちです。
ならいっそのこと「ミファソラ」に統一
、なんてことなのでしょうかね。
返信する
Re:これはアウト? (korou)
2016-11-30 20:25:39
>おいちゃんさん

和音としては
最初の流れが
Dm7 → G7 → C → Fmaj7
次の流れが
Dm7 → G → Cmaj7 →E7
ということになっています。

詳しい理論は私には説明不能ですが
実際この和音を楽器で弾いてみると
そこに乗せるメロディとしては
つんくの作曲した「半音上昇」が正しいように
思えるのです。

でも、いざ歌うとなると
この「半音上昇」は結構難しい、というか
あまりアイドルの歌では使わない音程になっていますね。
だから、亜弥さんとしては
繰り返し部分を
Dm7 → G7 → Cmaj7 → E7
と修正して歌ったのだろうと思います。
G7がGになって微妙に揺れる感じよりも
G7の繰り返しで安定した聴きやすさを優先したということで。

和音の流れとして正しくても
声楽として違和感があれば
こういうことはあるでしょうね。
でも、なかなかデビュー半年のアイドルには
できないことだと思います。
それを許したつんくもつんくで
このあたりの真相はもう「藪の中」でしょうね。
本人たちも
「そんな昔のこと忘れたわ。今さらどうでもええやん」
ということになりそう。
返信する

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