12月25日付 産経新聞【正論】より
首相は英霊の加護信じて参拝を 日本大学教授・百地章氏
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131225/plc13122503100002-n1.htm
案の定、危惧した通りのニュースが目に入ってきた。「靖国参拝、年内見送りの公算=対中韓関係を考慮-安倍首相」と題する時事ドットコムの記事(12月21日)だ。それによれば、安倍晋三首相周辺は「首脳会談実現には、首相が靖国を参拝しないことが不可欠だ」と強調し、菅義偉官房長官も首相の参拝には「慎重な立場」(政府関係者)だ、とある。
≪戦没者慰霊と歴史認識は違う≫
首相周辺と言っても、「体を張ってでも阻止する」と豪語している秘書官もいれば、「ぜひ参拝」をという推進派もいると伝えられるから、これが参拝阻止のための「飛ばし記事」である可能性は否定できない。それに対中韓関係配慮といっても、おのずから限度がある。いくら配慮しても中韓両国が一向に歩み寄りを見せない以上、もはや配慮など無用であろう。それに、「歴史カード」を切り続けたい中国が、この問題で簡単に引き下がるはずがない。
首相周辺が懸念するのはむしろ米国の意向ともいう。しかし、米国の主張は中韓関係に配慮をとの趣旨だから、これも疑問だ。いうまでもなく、靖国神社はわが国における戦没者慰霊の中心施設である。それ故、首相が国民を代表して靖国神社に参拝し、国のために殉じられた戦没者に対し感謝と慰霊の誠を尽くすのは当然のことであって、本来、政治的配慮などとは無縁なはずだ。今こそ、この本義に立ち返るべきではないか。
アーリントン米国立墓地には先の大戦やベトナム戦争の戦死者も埋葬されている。もちろん、わが国の首相はいつも同墓地に参拝しているが、仮にベトナム政府から大統領の戦没者追悼式参列に抗議があったとしても、それを理由に参列を躊躇(ちゅうちょ)する米大統領などいまい。というのは、戦没者の慰霊・追悼と戦争に対する歴史評価とは次元が異なる問題だからだ。
また、ケビン・ドーク米ジョージタウン大教授によれば、同墓地には、南北戦争で奴隷制度を守るために戦った南軍の将校も埋葬されているという。しかし、アーリントン墓地に参拝するオバマ大統領が奴隷制度を肯定しているはずがない。わが国内法上、いわゆるA級戦犯など存在しないことはもちろんだが、もし米国から批判があれば、この例を引き合いに出して反論すれば済むことであろう。
≪戦前戦後通じ諸外国から参拝≫
国際社会においては、旧敵国同士であっても、互いに自国のために戦った戦没者の勇気を称(たた)え、敬意を表する。それが国際儀礼であり、常識というものである。
このことは、創建以来、140年以上におよぶ靖国神社の歴史を振り返ってみれば明らかだ。『靖国神社百年史事歴年表』などによれば、明治20年にシャム(現在のタイ)国王の弟である外務大臣が参拝して以降、大正から昭和にかけて、靖国には米英仏露をはじめ世界各国から元首、大使、軍隊などが毎年数多く参拝してきた。
特に興味深いのは、満州事変の翌年(昭和7年)国際連盟のリットン調査団が来日した折、英リットン卿、クローデル仏将軍、マッコイ米将軍ら一行が揃(そろ)って同神社を参拝していることである。英武官や米軍艦の艦長ら一行などは、先の大戦の開始前、昭和14年頃になっても参拝を続けている。
さらに、戦後も、昭和21年にはGHQ(連合国軍総司令部)の空軍士官が参拝、昭和30年代以降になると、旧連合国やアジア諸国からも多数の要人たちが参拝を行っている。昭和60年、中国による「A級戦犯」合祀(ごうし)批判が起こり、中曽根康弘首相が参拝を取りやめた後も、各国からの参拝は変わらず、米国からも空軍横田基地副司令官や海軍横須賀基地司令官など軍幹部が参拝を続けてきた。
中韓両国についていえば、わが国の小渕恵三首相らが中国の人民英雄記念碑に献花し、2006年には安倍首相が国立ソウル顕忠院に参拝している。にもかかわらず、中韓両国は靖国神社に参拝しないのだから、これこそ国際儀礼に反する。それどころか、両国は首相の靖国神社参拝まで批判してくるのだから、内政干渉も甚だしい。なぜこのような理不尽な批判に、わが国がいつまでも甘んじ続けなければならないのか。
≪246万余柱の後押しあり≫
安倍首相には、経済対策だけでなく、「戦後レジームからの脱却」の本丸「憲法改正」が控えている。そのためにも長期政権は望むところだが、それはあくまで手段ないし結果であって、長期政権自体が目的であってはなるまい。
講和独立後の長期政権のうち、佐藤栄作首相の在任期間は8年だったが、その間に11回靖国神社を参拝している。また、中曽根首相と小泉純一郎首相の在任期間は5年だが、参拝の回数は10回と6回である。参拝回数が多かったから長期政権となったのか、その逆かは分からないが、小泉首相の後、毎年交代した首相が一度も参拝していないのは象徴的である。
安倍首相には、246万余柱の英霊の加護と後押しがあることを信じ、年内にぜひとも参拝していただきたいと念願している。(ももち あきら)
首相は英霊の加護信じて参拝を 日本大学教授・百地章氏
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131225/plc13122503100002-n1.htm
案の定、危惧した通りのニュースが目に入ってきた。「靖国参拝、年内見送りの公算=対中韓関係を考慮-安倍首相」と題する時事ドットコムの記事(12月21日)だ。それによれば、安倍晋三首相周辺は「首脳会談実現には、首相が靖国を参拝しないことが不可欠だ」と強調し、菅義偉官房長官も首相の参拝には「慎重な立場」(政府関係者)だ、とある。
≪戦没者慰霊と歴史認識は違う≫
首相周辺と言っても、「体を張ってでも阻止する」と豪語している秘書官もいれば、「ぜひ参拝」をという推進派もいると伝えられるから、これが参拝阻止のための「飛ばし記事」である可能性は否定できない。それに対中韓関係配慮といっても、おのずから限度がある。いくら配慮しても中韓両国が一向に歩み寄りを見せない以上、もはや配慮など無用であろう。それに、「歴史カード」を切り続けたい中国が、この問題で簡単に引き下がるはずがない。
首相周辺が懸念するのはむしろ米国の意向ともいう。しかし、米国の主張は中韓関係に配慮をとの趣旨だから、これも疑問だ。いうまでもなく、靖国神社はわが国における戦没者慰霊の中心施設である。それ故、首相が国民を代表して靖国神社に参拝し、国のために殉じられた戦没者に対し感謝と慰霊の誠を尽くすのは当然のことであって、本来、政治的配慮などとは無縁なはずだ。今こそ、この本義に立ち返るべきではないか。
アーリントン米国立墓地には先の大戦やベトナム戦争の戦死者も埋葬されている。もちろん、わが国の首相はいつも同墓地に参拝しているが、仮にベトナム政府から大統領の戦没者追悼式参列に抗議があったとしても、それを理由に参列を躊躇(ちゅうちょ)する米大統領などいまい。というのは、戦没者の慰霊・追悼と戦争に対する歴史評価とは次元が異なる問題だからだ。
また、ケビン・ドーク米ジョージタウン大教授によれば、同墓地には、南北戦争で奴隷制度を守るために戦った南軍の将校も埋葬されているという。しかし、アーリントン墓地に参拝するオバマ大統領が奴隷制度を肯定しているはずがない。わが国内法上、いわゆるA級戦犯など存在しないことはもちろんだが、もし米国から批判があれば、この例を引き合いに出して反論すれば済むことであろう。
≪戦前戦後通じ諸外国から参拝≫
国際社会においては、旧敵国同士であっても、互いに自国のために戦った戦没者の勇気を称(たた)え、敬意を表する。それが国際儀礼であり、常識というものである。
このことは、創建以来、140年以上におよぶ靖国神社の歴史を振り返ってみれば明らかだ。『靖国神社百年史事歴年表』などによれば、明治20年にシャム(現在のタイ)国王の弟である外務大臣が参拝して以降、大正から昭和にかけて、靖国には米英仏露をはじめ世界各国から元首、大使、軍隊などが毎年数多く参拝してきた。
特に興味深いのは、満州事変の翌年(昭和7年)国際連盟のリットン調査団が来日した折、英リットン卿、クローデル仏将軍、マッコイ米将軍ら一行が揃(そろ)って同神社を参拝していることである。英武官や米軍艦の艦長ら一行などは、先の大戦の開始前、昭和14年頃になっても参拝を続けている。
さらに、戦後も、昭和21年にはGHQ(連合国軍総司令部)の空軍士官が参拝、昭和30年代以降になると、旧連合国やアジア諸国からも多数の要人たちが参拝を行っている。昭和60年、中国による「A級戦犯」合祀(ごうし)批判が起こり、中曽根康弘首相が参拝を取りやめた後も、各国からの参拝は変わらず、米国からも空軍横田基地副司令官や海軍横須賀基地司令官など軍幹部が参拝を続けてきた。
中韓両国についていえば、わが国の小渕恵三首相らが中国の人民英雄記念碑に献花し、2006年には安倍首相が国立ソウル顕忠院に参拝している。にもかかわらず、中韓両国は靖国神社に参拝しないのだから、これこそ国際儀礼に反する。それどころか、両国は首相の靖国神社参拝まで批判してくるのだから、内政干渉も甚だしい。なぜこのような理不尽な批判に、わが国がいつまでも甘んじ続けなければならないのか。
≪246万余柱の後押しあり≫
安倍首相には、経済対策だけでなく、「戦後レジームからの脱却」の本丸「憲法改正」が控えている。そのためにも長期政権は望むところだが、それはあくまで手段ないし結果であって、長期政権自体が目的であってはなるまい。
講和独立後の長期政権のうち、佐藤栄作首相の在任期間は8年だったが、その間に11回靖国神社を参拝している。また、中曽根首相と小泉純一郎首相の在任期間は5年だが、参拝の回数は10回と6回である。参拝回数が多かったから長期政権となったのか、その逆かは分からないが、小泉首相の後、毎年交代した首相が一度も参拝していないのは象徴的である。
安倍首相には、246万余柱の英霊の加護と後押しがあることを信じ、年内にぜひとも参拝していただきたいと念願している。(ももち あきら)