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ニッポンのゆる~い日常

「日本健全化」の第一歩が始まる 

2012-12-18 09:07:25 | 正論より
12月18日付     産経新聞【正論】より


「日本健全化」の第一歩が始まる    杏林大学名誉教授・田久保忠衛氏


http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121218/elc12121803110076-n1.htm


 少なくとも自民党幹部は勝って奢(おご)らず、敗者の民主党に対しても部分的政策協議に応じたい、と相手を尊重する武士道的態度は示していた。安倍晋三総裁は首相就任後に訪米すると明言した。戦後最大の困難と称していい国際情勢の中で打つべき手の優先順位を知っているからだろう。総選挙は手段であって、結果を利用して国家の再建をするのだと石破茂幹事長は淡々と述べていた。自民党当選者多数の抱負なるものを聞いてきたが、ひたすら投票者に媚(こ)び、選挙区のために全力を尽くすなどと涙を流している手合いが少なくない中だったので、2人の深沈たる態度が目立ったのかもしれない。




 ≪脱原発、卒原発…は敗退した≫


 とにかく、「戦後」を清算しなければならないという一大宿題を抱えている日本にとって絶望的なのは、選挙民の前で繰り広げられる大衆迎合的な政治家の振る舞いが年々、大袈裟(おおげさ)になってきていることである。ポピュリズムは民主主義には付き物だから、ある程度は仕方がないにしても、自分こそは世界一誠実で被害者の心の痛みが分かる、と自称する候補者が偽善者ぶりの競争を始めたら、どのような結果になるのだろうか。「反原発」「卒原発」「原発即時ゼロ」…。最後には「元祖・反原発」の虚言が飛び交った。これを煽(あお)り立てた報道機関はどことどこであったか。罪は深い。

 40に近い原発立地選挙区で当選したのは、条件付きながら原発を容認する自民党候補者だった。当選者の中に民主党幹部数人が含まれているが、知名度の高い人々であるから、原発立地選挙区であるなしにかかわらず、もともと当選するとみられていた。これは何を意味するのだろうか。何の責任も持たずに平和と叫ぶ偽者と同様、反原発を売り物にする政治家には、いかがわしい者が混じっているということを物語ってはいないか。被災地、被災者への対応は別の問題である。選挙民はこれを峻別(しゅんべつ)したと考えれば、救われる。





 ≪芦田と石橋も説いた憲法改正≫


 自民党の大勝は目立つが、日本維新の会とみんなの党の躍進も世間の耳目を集めている。民主党への反感によって揺り戻しが起きたとの解釈もできるが、内外の情勢激変に何とか対応しようという国民の気持ちが底流にあったことと、無関係ではないと思う。

 日本がサンフランシスコ講和条約に調印した直後の昭和27年1月1日付の毎日新聞朝刊紙上で、安倍能成・学習院院長、芦田均元首相、石橋湛山元蔵相、中山伊知郎・一橋大学学長の4人が独立と防衛について座談会を行っている。人から教えられて改めて読んでみたが、一驚した。4人とも戦後の進歩的文化人ではなく、戦前に軍部に抵抗した経験を持つ自由主義者だ。この中で、芦田と石橋は、国際情勢の現状から再軍備と憲法改正の必要性を説いている。芦田は、「日本民族は不幸にして常に世界の大勢を見ることを怠り、独断に流れる」と警告し、石橋は、「(再軍備について)将来日本に力が出来れば自分でやるべき義務がある」と明言し、改憲を2度にわたって口にしている。


 何も自民党結党の精神に戻れ、などと説教じみたことは言わないが、当時の政治家には俗説に阿(おもね)らない稜々(りょうりょう)たる気骨があった。政治家として波瀾万丈(はらんばんじょう)の経験をした後で名著『指導者とは』を書いたニクソン元米大統領は、「はっきり書いておきたいことがある。偉大な指導者は必ずしも善良な人ではないことである」と述べた。政治家には含意を汲(く)み取ってほしい。





 ≪気になる米リベラル派の誤解≫


 今回の選挙結果を新生日本の第一歩とする場合、前記の3党には通底するところがあるが、最大の障害は公明党だろう。山口那津男同党代表は、集団的自衛権を行使できるよう、憲法解釈を変更したり第9条の改正に動いたりした場合の、連立離脱を示唆している。時代の大きな流れの中で、公明党は民主、社民、共産党並みの野党になってしまうのであろうか。


 日本の新しい動向に対する、米民主党リベラル派と称される人々による見解は少々、気になる。

 ジョセフ・S・ナイ・ハーバード大学教授は11月27日付英紙フィナンシャル・タイムズに、「日本のナショナリズムは弱さの表れ」と題する一文を書き、中国と日本にあたかも危険なナショナリズムが生まれているかのように述べている。独裁国家が国策として育成したナショナリズムと、健全なナショナリズムに欠けている日本の現状を等しく扱う誤りを犯している。氏は最新の「アーミテージ・ナイ報告」で、日本がこのままでは二流国家になる、と心配してくれたはずではなかったか。


 旧知のジェラルド・カーティス・コロンビア大学教授は、12月3日付日本経済新聞で、尖閣諸島をめぐる日中の争いの原因は石原慎太郎発言だと断じているが、因果関係をもう少し考えてほしい。

 日本の健全化への第一歩を、米国にはむしろ祝福してもらいたい。強い日本と強い日米同盟の絆こそが、アジアと世界の安定になる、と私は確信している。(たくぼ ただえ)












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「右傾化」批判の誤り

2012-12-18 09:02:15 | 米州
「右傾化」批判の誤り


http://sankei.jp.msn.com/world/news/121218/amr12121803080002-n1.htm



「安倍政権誕生となると、北京の論客たちはあらゆる機会をとらえて『日本はいまや右傾化する危険な国家だ』と非難し続けるでしょう。しかし『右傾化』というのが防衛費を増し、米国とのより有効な防衛協力の障害となる集団的自衛権禁止のような旧態の規制を排することを意味するのなら、私たちは大賛成です」


 ブッシュ前政権の国家安全保障会議でアジア上級部長を務めたマイケル・グリーン氏が淡々と語った。日本の衆院選の5日ほど前、ワシントンの大手研究機関、ヘリテージ財団が開いた日韓両国の選挙を評価する討論会だった。日本については自民党の勝利が確実ということで安倍政権の再登場が前提となっていた。

 CIAでの長年の朝鮮半島アナリストを経て、現在は同財団の北東アジア専門の上級研究員であるブルース・クリングナー氏も、「右傾」の虚構を指摘するのだった。


 「日本が右に動くとすれば、長年の徹底した消極平和主義、安全保障への無関心や不関与という極端な左の立場を離れ、真ん中へ向かおうとしているだけです。中国の攻撃的な行動への日本の毅然(きぜん)とした対応は米側としてなんの心配もありません」

 確かに「右傾」というのはいかがわしい用語である。正確な定義は不明なまま、軍国主義や民族主義、独裁志向をにじませる情緒的なレッテル言葉だともいえよう。そもそも右とか左とは政治イデオロギーでの右翼や左翼を指し、共産主義や社会主義が左の、反共や保守独裁が右の極とされてきた。


 日本や米国の一部、そして中国からいま自民党の安倍晋三総裁にぶつけられる「右傾」という言葉は、まず国の防衛の強化や軍事力の効用の認知に対してだといえよう。だがちょっと待て、である。現在の世界で軍事力増強に持てる資源の最大限を注ぐ国は中国、そして北朝鮮だからだ。この両国とも共産主義を掲げる最左翼の独裁国家である。だから軍事増強は実は「左傾化」だろう。

 まして日本がいかに防衛努力を強めても核兵器や長距離ミサイルを多数、配備する中国とは次元が異なる。この点、グリーン氏はフィリピン外相が最近、中国の軍拡への抑止として日本が消極平和主義憲法を捨てて、「再軍備」を進めてほしいと言明したことを指摘して語った。


 「日本がアジア全体への軍事的脅威になるという中国の主張は他のアジア諸国では誰も信じないでしょう。東南アジア諸国はむしろ日本の軍事力増強を望んでいます」

 同氏は米国側にも言葉を向ける。

 「私はオバマ政権2期目の対日政策担当者が新しくなり、韓国の一部の声などに影響され、安倍政権に対し『右傾』への警告などを送ることを恐れています。それは大きなミスとなります。まず日本の対米信頼を崩します」

 グリーン氏は前の安倍政権時代の米側の動きをも論評した。


 「米側ではいわゆる慰安婦問題を機に左派のエリートやニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズが安倍氏を『危険な右翼』としてたたきました。安倍氏の政府間レベルでの戦略的な貢献を認識せずに、でした。その『安倍たたき』は日本側で同氏をとにかく憎む朝日新聞の手法を一部、輸入した形でした。今後はその繰り返しは避けたいです」

 不当なレッテルに惑わされず、安倍政権の真価を日米同盟強化に資するべきだという主張だろう。(ワシントン駐在編集特別委員)














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