松蔭神社駅の近くに銭湯があることは知っていたので、日曜日の散歩の帰りに立ち寄りました。駅からは、松陰神社に向かって数分先の右奥にあります。
名前は「鶴の湯」。ありふれた名前ですが、タンチョウフリークの私にとっては、それだけで嬉しい。
結論から言えば、この銭湯は、なかなかの傑作でした。
まずは外観。歴史を感じさせる造りで、趣があります。
暖簾をくぐると、下駄箱がありますが、これも、なかなかレトロ。こういう鍵のことを「松竹錠」と言うんですね。知らなかった。
入口は自動ドアなのですが、これがまた面白い。室内から自動ドアの装置とでも言うのでしょうか、器材が見えるのですが、手作りの工作みたいなものです。今にも壊れそう。
中はやたらと暖房が効いていました。左端に見えますが、壊れていると思われる古いゲーム機が置いてあり、郷愁を誘います。
20円で使えるドライヤー。本当に動くのだろうか。
浴室の様子。先客のお爺さんが二人いました。
浴室がまたボロい。しばらく手を入れていない感じです。壁はボロボロに剥がれかかっています。よく地震で倒壊しなかったものです。そして、天井のど真ん中には、何故か大きな日の丸が。直径2mぐらいありそうです。何なんだろう。
そして極めつけは、「エッキス」なる入浴剤を使っている浴槽。白い乳白色の湯を張ってありますが、壁に説明の看板が架かっているのですが、これが凄い。(中央に見えるのが、その看板。現役です。
看板には、「旧字体」で効能が書かれています。
「本鉱泉湯は深山の鉱道より採掘し、それを粉末にした天然鉱物ですから、天然にふん出する温泉と変わりなく多額の費用をかけて遠い温泉地に出かける必要はなくなります。本鉱泉湯は~」
そして、適応症として、神経痛、慢性胃腸病などといった病気が書かれているのはよくあることですが、その一つに挙げられているのが「寝小便」!思わず笑ってしまいました。
描かれている絵も、描いたのは戦前か?と思うようなタッチです。これは必見です。
何でも、オーナー兼番台主のお爺さんが、数十年前にこの銭湯を買い取った時に、セールスマンがこの「エッキス」を売りに来て断りきれずに購入したのだそうですが、今でも、この「エッキス」を売っている会社があるらしいのですから、世の中は分かりません。
「エッキス」の湯は、温めの温度設定にしてありますが、ゆっくり時間をかけて入れば、気のせいか、体がポカポカするような気がしてきます。効能があるんでしょう、きっと。それにしても「エキス」ではなく、「エッキス」です。面白いです。
また、飼い猫がいるようなのですが、番台のお爺さんの言葉を解するらしく、「明日の朝、何時頃に起こしてくれ」というと、多少のズレはあるものの、きちんと起こしてくれるそうです。本当だろうか。ちなみに、このお爺さんは、とんでもなく話し好きです。下手に話しかけると逃げられません。15分ほど世間話にお付き合いして、やっとの思いで「また来ます」と言って外に出ました。
しかし、このお爺さん、一人でこの銭湯を管理しているそうです。1日17時間労働で、いつも夕食しか食べないと仰っていました。もう80歳ぐらいでしょうかね。いつまで続けられるでしょうか。どうかご自愛くださいますよう。