近頃のコメの値上りは、日本の農業を取り巻く環境(食生活の変化、輸出入、担い手の不足)が変化する中で、日本政府が行ってきた農業政策の失敗が目立つようになった、と考えるのが自然ではないでしょうか。
戦後にアメリカ軍の指示で実施された、日本の民主化に向けた改革の1つに農地解放があります。目的は、大地主の耕作地を強制的に国が買い取り、小作人に安価で売り渡されることとなり、これによって膨大な小規模農家が誕生しました。
地主に支配される小作人を解放することはできましたが、工業の進展に伴って人員が必要なことから兼業の小規模農家が増え、小さな土地へ大型の機械を導入する程でもなく、したがって農業の生産性は低く、耕作放棄地が増えました。その結果政府の財政で保護しなければ成り立たない産業となりました。
産業構造の変化で、生活スタイルが変ってコメ余りの現象から、コメの作りすぎを防ぎ、コメの価格を維持するために減反政策を行いましたが、収益力の低い小規模農家の担い手は、兼業農家が定年退職後の仕事として行う高齢者が多く、生産者の減少や天候不順などが重なり、生産量は大きく減少することとなりました。
減反政策の失敗で2018年に廃止となりました。減反政策によって意欲がある農家の若い担い手へは、規模拡大を妨げた可能性があります。その後の需給の不安定からコメ価格は値上りする原因となり、不安なことから、今では生産者や販売店の在庫が目立つようになり、全国の年間消費量約800万トンに対し、わずか数%の政府備蓄米では対応しかねることでしょう。
近頃では「コメの高騰」という新たな課題に直面し、日本人の主食であるコメの安定供給は、食べ物による安全保障という国の根幹に関わる問題で、将来の日本の農業をどう支えていくのか。農地解放や減反政策の失敗から学んで、持続が可能なコメの生産を行い、食べ物の未来を考えていくことが急務ではないでしょうか。