地球浪漫紀行☆世界紀行スタッフの旅のお話し

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「世界遺産」概観

2007年12月06日 10時35分17秒 | まとめてみました

『世界遺産』についてレジュメをまとめる機会がありましたので、そのまま転載してみました。
ご自由にご利用ください。各社の添乗員の方もどうぞ。

世界遺産の歴史
1960年代にエジプト政府により、アスワン・ハイダムの建設計画が持ち上がります[1970年完成]。
ダムの完成により、ナイル河上流のアブシンベル神殿などヌビア遺跡が水没の危機に。
そこでユネスコが「ヌビア水没遺跡救済キャンペーン」開始しました。
呼びかけに応じ、世界60ヶ国が援助、技術支援、考古学調査実施しました。
細分して移動させるスウェーデン案が採用され、アブシンベル神殿[1979年に世界遺産登録]を現在の高台へ移築。
これを受け、開発から歴史的遺跡、建築、自然等を国際的組織で守る運動が開始。

1972年11月16日 第17回ユネスコ総会(パリ本部)にて
「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」が満場一致で成立。
1975年 20ヶ国が条約締結し、正式に世界遺産条約が発効。
1978年 第1号世界遺産リストとして、以下の12件(自然遺産4、文化遺産8)が登録されます。
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アメリカ :イエローストーン、メサ・ヴェルデ
カナダ  :ランス・オ・メドー国定史跡、ナハニ国立公園
エクアドル:ガラパゴス諸島、キト旧市街
ドイツ  :アーヘン大聖堂
ポーランド:クラコフ歴史地区、ヴィエリチカ岩塩坑
エチオピア:シミエン国立公園、ラリベラ岩窟教会群
セネガル :ゴレ島
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1979年 文化財の破壊が心配された東欧圏を中心に46件が追加登録され本格化。
1992年 日本も世界遺産条約批准、126番目の加盟国です。文部省・文化庁と宮内庁のそれぞれの管轄が違うため、その縦割り行政の影響で先進国で最後になってしまいました。
2007年 条約締結国184ヶ国
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世界遺産登録総数 851件[141ヶ国] (日本14件)[2007年現在]
内訳:文化遺産660件 自然遺産166件 複合遺産25件
    (危機遺産31件、文化的景観60件)
無形文化遺産50件
世界の記録156件
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条約締結国であっても世界遺産の無い国もたくさんあります。

登録件数の多い国・ベスト10
1.イタリア(41件) 
2.スペイン(40件) 
3.中国(35件)
4.ドイツ(32件) 
5.フランス(31件)
6.イギリス・インド・メキシコ(各27件)
9.ロシア(22件) 
10.アメリカ(20件)
次点.ブラジル・オーストラリア・ギリシャ(各17件)
少し前までは、イタリア、スペイン、ドイツが不動の3強でしたが、最近は中国がものすごい勢いで数を増やしています。

世界遺産の分類
文化遺産 :すぐれた普遍的価値をもつ記念物、建築物、遺跡、文化的景観
自然遺産 :すぐれた普遍的価値をもつ地形、地質、生態系、景観、絶滅が危惧される動植物の生息地
複合遺産 :文化と自然の両方を兼ね備えている遺産

世界遺産はこの3分類に分けられますが、そのうちの重大な危機にあるものを「危機遺産」に指定しています。
また近年は「文化的景観」という概念を重要視し、単に立派な建築物や美しい自然ということではなく、人間の生活文化と自然との調和を、特別に評価しています。石見銀山周辺や熊野古道がその代表です。
さらに「負の遺産」という概念も取り入れています。

危機遺産
紛争、災害、工事、都市開発、密猟によって、普遍的価値を損なう重大な危機にあり、後世に残すことが困難な遺産。
以下の2つに分類されますが、状況が改善されれば、指定が解除されます。
確定された危機」:密猟や砂漠化など直接的危機
潜在的な危機」:道路やダムの建設計画など予測的危機

文化的景観 
下記のいずれかに該当する「自然と文化の共同作品
(文化遺産、自然遺産、複合遺産のいずれに該当するかは対象によります)
*長期にわたる人類文化の進化・発展を示す農村・牧草地
*劇的な自然景観に配置された文化遺産
*世界遺産としての顕著で普遍的な重要性、その地域における典型的な景観
*優れた土地利用技術を示すもの
*自然と文化の関係を示すもの
*特別な宗教的意味があるもの

負の世界遺産 
戦争や人種差別など人類の犯した罪を証明する物件
(アウシュヴィッツ、原爆ドーム、奴隷貿易の拠点であったゴレ島、タリバン政権により破壊されたバーミヤンなど)

世界遺産以外に、ユネスコでは「無形文化遺産」と「世界の記録」を指定し、保護・保存に努めています。

無形文化遺産 
歴史的・芸術的・民族学的・言語的・文学的観点のいずれかにより、世界的に価値の高い無形の伝統的な文化表現。
下記のいずれかに該当する芸能(民族音楽、ダンス、劇)、伝承、社会的慣習、儀式、祭礼、伝統工芸、文化空間など。
*文化的伝統の根源をなしている
*文化的な独自性が認められる
*優れた技術的応用が見られる
*生きた伝統のすぐれた証左
*都市化より消滅の危機にある
*大衆化されすぎていない

世界の記録(記録遺産)
世界歴史に重大な影響をもつ事件、時代、場所、人、主題、社会的価値を持った歴史的文書等をマイクロフィルム化などにより保護する
(中国雲南省の古代ナシ族トンパ文字による歴史的文書、故宮博物館所蔵の清代の歴史文書、バイユーのノルマン・コンクエストのタピストリーなど)

世界遺産の登録基準
○世界的に普遍的な価値をもつこと
○世界遺産登録基準(下記)を最低1つは満たしていること
○登録後、将来にわたり継承していくために十分な法的保護の下にあり、確実に守られていること

自然遺産「完全性」に合致する(該当する登録基準の自然的特徴の集合で人為的影響が無いこと)
1.地球の歴史の主要な段階を示す顕著な見本。生命の進化、地形の重要な地学的進行過程。
2.ある地域における動植物の、進行中の重要な生態学的、生物学的発達過程を示す顕著な見本。
3.最もすばらしい自然現象、ひときわ優れた自然美をもつ地域。
4.学術上または生物多様性の保全にとり、最も重要かつ意義深い自然生息地を含むもの。すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種が存在するものを含む。 生物の多様性が保護され、各生物種間の生態学的複合体が保全されている。

文化遺産「真正性」に合致する(資材や文化的特徴が本物である。復元に関しては正確な情報に基づくこと)
1.人類の創造的才能の傑作。
2.ある期間またはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、街路計画、景観デザインの発展に関し、人間的価値の重要な交流を示すもの。
3.文化的伝統または文明の唯一の(少なくとも稀な)証拠となるもの。
4.人類の歴史上重要な時代を物語る建築様式、建築的・技術的集合体、景観の顕著な見本。
5.歴史の流れの中で存続が危うい、ある文化を代表する伝統的集落や土地利用の顕著な例。
6.顕著な普遍的な意義を持つ出来事、現存する伝統、思想、信仰、芸術作品、文学的作品と明白に関連するもの。

登録までの流れ
1.各国の担当政府機関が候補地推薦リスト[暫定リスト]提出
 - 1か国あたりの毎年の審査数最大2件[かつてのイタリアの申請ラッシュの反省による](文化遺産は1件まで[多くなりすぎたため])
2.ユネスコ世界遺産委員会が評価依頼
  (文化遺産候補→国際記念物遺跡会議へ、自然遺産候補→国際自然保護連合へ)
3.世界遺産委員会が登録推薦を判定
- 全推薦数の上限:年45件(1.世界遺産ゼロの国の推薦優先,2.登録の少ない分野を優先[複合遺産→自然遺産→文化遺産])
4.世界遺産委員会で最終審議
5.正式登録
-登録後、保全状況を6年ごとに報告、世界遺産委員会で再審査

日本の場合
1.文化遺産候補は文化庁、自然遺産候補は環境省が担当
2.文部科学省、国土交通省、林野庁などを加えた世界遺産条約関係省庁連絡会議で推薦物件を決定
3.暫定リストとして外務省を通じユネスコに提出

(照沼 一人)


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1 コメント

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Unknown (まりもです。)
2007-12-06 23:03:06
すごい 資料ですね。 大事なので 画面メモしますね。
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