
このなかで記憶の中に鮮明に残っている箇所がある。人類約6000年の歴史の中で21の文明(マヤ、シリア、ヒッタイト、エジプト、ギリシャ、ローマなど)が発生し、成長して、あるものはやがて脱落、消滅していったという部分だ。文明が消え去るのは外敵によって滅ぼされたのではなく、内部崩壊によってであると。「日本の自殺」では特にギリシャ・ローマの没落に焦点を当てて分析・検討を加えている。まさに今回のユーロ危機の舞台だ。
没落の理由を一言で表現するならこうなる。「パンとサーカスで滅びた」。広大な領土と奴隷によって豊かな暮らしが出来たローマの市民は、次第に働かなくなり、政治家のところに行き、「パンをよこせ、食料をよこせ」と要求する。大衆迎合的な政治家はパンを与えた。働かなくなったローマの人たちは暇をもてあまし、円形競技場でサーカスを見るようになった。アテネでは市民が「サーカスを見てやるのだから、見物料をよこせ」と、本末転倒な要求まであったという。
論文のエピローグ「歴史の教訓」として(1)国民が自らのエゴを自制することを忘れたこと(2)自らの力で解決するという自立の精神と気概を失うこと(3)エリート(政治家、学者、産業人、労働運動家など)が大衆迎合主義に走ること(4)年上の世代がいたずらに年下の世代にこびへつらうこと(5)幸福を物や金だけではかること、を挙げた。
★ドンペリを開けても虚しい夜もあれば、王将でも満たされる夜がある。
