イタリアンでも食べルッカ

おいしい物と個性豊かな料理人達に囲まれた料理学校での日常記

9月28日・マリエッラのルッカ料理

2006-09-29 05:26:10 | 料理学院
9月28日(木曜) 講師:マリエッラ先生(トスカーナ州ルッカ)・その2

普段はアシスタントとして「縁の下の力持ち」役を務めているマリエッラの授業、2回目。実はおとといの明け方彼女は家で倒れ、一晩救急病院で過ごしたのではたして無事に授業ができるのかと一時は危うんだ。結局もともと低血圧なところにもってきて、胃の調子がおかしくて薬を飲もうと明け方に起き出し、脳貧血を起こして倒れただけで、検査の結果もなんら異常はなかったのであったが。
彼女の得意はルッカの伝統料理なので、今回もドルチェ以外はすべて極めつきのクラシックな郷土料理の定番ばかり。すでに生徒さんの性格と能力もある程度(すべて?)把握し、仕入れはなじみの店で自分でやり、器具もどこに何があるか知り尽くしているので非常にスムーズに進む。声が多少荒立てられたことは何回かあるが、すべて「シェフ(マリエッラ)にことわり・相談・確認せずに何かをやってしまった時」だけだった。伝統料理というのは技術的にもそれほど難しいことはないが、何百回も作っている料理だけにどのプロセスにも必ずといっていいほどどの人も一家言あるのだ。野菜のみじん切りの大きさ、塩を入れるタイミング、それに味の決め手となる各材料のバランスと、ハーブや香辛料のさじ加減。ルッカ人でない私たちには、こういうことはいくら包丁さばきがうまくても、何年日本で経験があっても絶対に判断ができない。以前に学校に遊びに来た卒業生もよく「こいつバカかと思われてもいいから、これでいいですか(Va bene così)と2回確認するくらいでちょうどいいですよ」と言っていたものだが、簡単な作業ほど「単にミンチにするだけだから」「単に塩コショウするだけだから」と油断してしまいがちで、難しい。講習は8週間あって作る料理は午前中に用意するだけでも200点以上あるが、同じ料理を2度作ることは決してない(名前が同じでも作る人が違ったり、地方が違ったりする)のだから、一度限りの先生のやり方を習っておくべきだと思うし、一番おいしい正統派の作り方で見たり食べたりしたいはずだと思うのだが。

27日目の昼食:
Insalata di faro スペルト小麦のサラダ ルッカの北方、ガルファニャーナ地方の特産のスペルト小麦を使用。水加減のやり方も炊き方もお米の炊き方とそっくりで面白い。千切りの野菜、さいの目切りのチーズやサラミを混ぜ、オリーブオイル・塩・こしょうなどで味付けするあっさりしたおいしいサラダ。
Tortelli classici al ragù di carne 「トルテッリ」(伝統的なルッカの詰め物入りパスタ)、ラグーソース 肉と青菜ベースの詰め物、1時間半は煮込まなくてはいけないラグーソース、手打ちパスタ生地をそれぞれ作って成形するので担当の班は大忙し。
Zuppa inglese ズッパ・イングレーゼ(昨日の残り)
Caffe’ エスプレッソコーヒー

滞在許可証がいつできるのかと警察に問い合わせのファックスを送ったところ「明日出頭せよ!」との命令が下る。指定された時間は3時。急きょイタリア語の先生に連絡、今度は受領だけだから「たぶん早く終わる」ので、4時ごろに待ち合わせて市内を散策しながらの授業に切り替えてもらう。「もし今度も待たされたら、丁重かつ断固とした、お役所に抗議するときの言い方を生徒に教えておいて」と頼んでおく。

27日目の夕食:
Farro sul brodo di fagioli スペルト小麦入りうずら豆のスープ 香味野菜で作ったソフリットに、煮あがったうずら豆を混ぜ、ムーランでこしてクリーム状にした中でスペルト小麦を煮る。
Spezzatino di vitella di latte con verdure 子牛と野菜のトマトシチュー 野菜はにんじん・セロリ・玉ねぎ・マッシュルームなど。季節によってじゃがいも・グリーンピースなど他のものに替えてもよし。ルッカはスパイスを多用するので、ここにもナツメグやクローブなどが隠し味に入る。
Crostata alla cannella con pere e cioccolato 洋梨とチョコレートの、シナモン風味のタルト これだけはマリエッラのオリジナルレシピ。タルト生地にシナモンパウダーを最初から練りこんで作るところがミソ。「ジャンルーカはシナモンが嫌いだけど、そんなの知ったこっちゃないわ!」と、さすが幼馴染だけに強気の発言。今度マリエッラに、京都銘菓「八ツ橋」を食べさせたら何と言うだろう?
Caffe’ エスプレッソコーヒー

おまけ:ルッカ人対象木曜日の講習メニュー
Sarde a beccafico alla palermitana
Taglierini con tonno fresco e caponatina di verdure al basilica
Palamiti o sgombri in guazzetto
Torta al limone con meringa
Caffe’ エスプレッソコーヒー

実は魚の下処理は生徒さんに手伝ってもらったが、セコンド用に仕入れたサバが1匹腐っていて、腹の肉など半分溶けていた。生協にクレームをつけに行くとジャンルーカが言うので、臭さに絶句しながら生徒さんがゴミ箱から回収した。最近のスーパーの魚売り場の電球は研究に研究が重ねられていて、古い魚でも新鮮に見えるのだそうだ。そんなことより輸送と保存の方法を研究してくれ。

9月27日・3人目のマイスター登場

2006-09-28 04:44:04 | 料理学院
9月27日(水曜) 講師:イタリアの宍戸錠ことロランド先生(トスカーナ州フォルテ・デイ・マルミ)

トスカーナ州で4人しかいない「料理のマイスター(名人)」のうち3人までが当校に来てくれているが、ジャンルーカ、アルヴァーロ先生に続いてトリで登場した今日のロランド先生。国立の料理学校の先生でもあるので教え方は穏やかで上手。先生のレバートリーのうちでは「丸ごとのめんどりで作るフルコース」の授業も面白いし、出身地ルニジャーナ地方の伝統料理オンパレードのメニューも楽しいが、前者は昨日のジュゼッペ先生のメニューとちょっと似すぎているし、後者は前の期でやったところなので、今日はこれまでに取り上げた中から、スタッフに好評だったものを独断で選んだ。
10時過ぎ、国立エノテカ・イタリアーナから電話があり、La Carta dei vini DOC e DOCGの新版の翻訳依頼を正式に受注。今週中に原稿がまずメールで、それから印刷した形で届き、納入期限は11月中旬ごろの予定。原稿が届いてみないと分量はわからないが、ちょっとやそっとのマイナーチェンジでは新版が出るはずはないので、忙しくなりそう。たぶんブログも遅れがちになるか短くなると思いますがご諒承のほどを。

26日目の昼食:
Farrotto di fagioli patate e gamberi con pesto verde al lardo 「リゾ」(米)のかわりにファロ(スペルト小麦)で作るリゾットなので「ファロット」。じゃがいも、煮豆、ソテーしたエビ、ラルドとハーブで作ったペーストが入る豪華版。
Filetto di salmone gratinato ai fiori di finocchio selvatico フェンネルの花・サンブーカ(アニス風味のお酒)・パン粉などで作った具をサーモンに乗せ、オーブンでミディアムとウェルダンの中間に焼く。オリーブオイル風味のマッシュポテト、炒め煮したフェンネルの上に乗せて。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

コーヒーのちょっと前に、昨日滞在許可の件で話した日本人女性から電話。今日警察に出直したところ、結局書類は全部OKになったが指紋を取られたとのこと。テロ対策に各国の警察が神経を尖らせている昨今これは当たり前の措置なので、別にあなたが疑われているわけではありませんと強調。「試験に合格するかどうかはまだわからないけど、10月に入って落ち着いたら学校に遊びに行きます」「ぜひ来てください」。
語学の授業は今日は初心者コース担当のリディア先生がお休みで、先日もピンチヒッターに来たロレンツァ先生の授業。先日は会わずじまいだったので休憩時間に初対面。なんでもご主人がオリーブオイルの会社を経営していて、世界中(日本にも)輸出しているらしい。生徒さんが何人か見学を希望しているのでとりあえず4人今日連れて行くが、搾油はしていないし、今年のオイルも11月ごろにならないと瓶詰めしないから、はっきり言って工場見学は面白くないと思う。それよりテイスティングの授業を、主人や会社のエキスパートにしてもらう方が面白いんじゃない?オリーブオイルといっても南と北じゃぜんぜん違うし……とのご提案。いいチャンスなので、ジャンルーカとそのうち話してくださいとお願いしておく。
今週の週末は、ほとんどの生徒さんが研修先を見に行くので、イレーネは書類の準備、列車のルートや時刻の確認、レストランとの連絡など大忙し。先週は友達の結婚式の準備もあったので公私共に忙しく、唇のところにヘルペスができていたが、今週は大丈夫かな?生徒さんのひとりはガルダ湖のほとりの、リナルド先生の息子さんの勤めるお菓子屋さんに研修が予定されているので、ジャンルーカが昨日いっしょに連れて行っていっしょに帰ってきた。お店はとてもよかったが、泊めていただいた先生のお宅での「日常会話」が大変だったようで「勉強しなきゃ!」と真剣な顔。毎朝7時30分に皆勤を続けているヨシ君のほか、最近は2~3人ずつで勉強会を自発的にやっているグループもある。結構なことです。
結構じゃないのがPCと携帯の接続。今期の「隊長」がイタリア語の授業までサボって(こら!)さらなる調査を続けたところ、結局ケーブルの問題ではなく携帯の設定そのものに問題があるのではないか?との疑惑が浮上した。今日もパオロさんが注文しておいた携帯2台を納入しに来たので、ケーブルの型番の件、インストールの手順の件、ウインドゥズのバージョンの件、いろいろ質問したが打開策は見当たらず。2年前のラム君の設定時のやり方は理論的に不可能ではないが、ややこしいので最近はあまりやる人がないとパオロさんは言うが、とにかく曲がりなりにも過去に一度できた方法なので、もう一度試してみると「隊長」は悲壮な決意を固めている。それでダメならもうお手上げだそうだが、ラム君のやり方が「ややこしい」んだったら、もっと「簡単」なはずの現在の機種でなぜこんなに苦労するのか、私にはさっぱりわかりません。

26日目の夕食:
Spaghetti al pomodoro トマトソースのスパゲティ ソースは、昨日の授業で作ったポマローラを使用。乾麺は久しぶりなのでみんなすごい勢いで食べた。
Torta d’erba della Lunigiana ルニジャーナ地方の野菜のタルト
Zuppa Inglese ズッパ・イングレーゼ
Brutti ma buoni ヴェネト州はガルダ湖畔に研修先を見に行った「ダイナちゃん」のおみやげ。直訳すると「不細工だがおいしい」という意味になるおもしろい名前のお菓子。
Caffe’ エスプレッソコーヒー



9月26日・ジュゼッペ先生その2

2006-09-28 04:42:14 | 料理学院
9月26日(火曜)ジュゼッペ・G先生 その2

先週に引き続き登場の「ジャンルーカの兄弟子にして最初のお師匠様」ジュゼッペことベッペ先生。今日はジャンルーカがヴェローナに1泊2日で調理講習会に出かける日なので、こういうベテランの(かつ、某有名温泉地のエグゼクティブ・シェフのように無理無体な要求をしない)先生はありがたい。今日は4点しか作らないので夕食の準備をしても結構ゆとりがあり、先生はまたも白ワインをゴクゴク。「胃は焼けないんですか?」「さっきから水をコップ3杯も飲んだから、ワインを飲まずにはいられない!」。しかし先生を単なる呑み助と思ってはいけません。「今日は店は休みだが、この5日間は忙しかった!」聞けばこの5日間の客の入りは、金曜が昼30・夜60。土曜は結婚式の披露宴が1組と団体が2組で、普通のお客も入れると昼120・夜60。日曜が80―40、月曜が30-40だったそうだ。厨房は3人で回しているので連日9時~夜中2時まで働きづめだったとか。コックの仕事は3K労働に近いとつくづく思う。

25日目の昼食:
Crostini di pane fritto con ragù di frattaglie 揚げパンのクロスティーニ、鶏もつのラグーソース 鶏のレバー・砂肝・とさかでミートソースを作り、揚げパンに乗せてクロスティーニに仕立てる。鶏モツ料理「チブレオ」の一種。見かけは単純素朴ながら、ワインがすすむと大好評。
Cosciotti di pollo ripieni 詰め物をした鶏のもも肉 骨をはずした鶏もも肉に、合挽きミンチや香草で作った具を詰め、焼き色をつけてからオーブンで焼く。骨のないもも肉は食べやすく、なかなか好評。
Sformatino di finocchio e patate フェンネルとじゃがいものスフォルマート フェンネルとじゃがいもは別々にゆでてマッシュし、パン粉などで固さを調整し、調味してプリン型で焼く。やわらかめに仕上げたかったので卵はなし。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

先日申請に行った滞在許可証がそろそろできているかもしれないので、申請の受領書の番号を控えて警察に問い合わせのファックス。たぶん我々は滞在許可書の手続きについては警察についでルッカで一番詳しい人間になりつつあるが、それを見込んで?なんと警察の方から「隣のマッサ県の警察で、日本人が滞在許可書の申請で苦労しているから要領を説明してやってくれ」と依頼が入る。聞けば国立の美術学校に入学予定の(つまり、イタリア文化会館を窓口として就学ビザをとった)学生さんで、今月末にある予定だった試験が10月に延期になったためいまだに学校の入学許可書がなく、今いるユースホステルも月末で閉まるから宿泊証明ももらえずに困惑している女性だった。例のものわかりのいいルッカの警察のお兄さんにイレーネがいろいろ聞き、とりあえずの対応策を電話連絡。

25日目の昼食:
Crocchettini di carne fritti con salsa alla cinese 揚げミートボール、中華風甘酢ソース 昼のもも肉の詰め物が余ったので、下記のサラダに混ぜるべくミートボールにして油で揚げるところまで昼間やっておいたところ、当番のメンバーが玉ねぎ・しょうがなど残り物の材料を使い、みりん・日本酒など秘蔵の材料も使って中華風にしてしまいました。でもおいしかったので誰からも文句は出ず。
Insalata con funghi coltivati e pollo lesso マッシュルームとゆでた鶏肉入りサラダ 前菜のラグーソースに使った鶏の余り(?というか本来鶏の余りの部分でチブレオを作るのだと思うが)でブロードをとり、さらにその時余った鶏肉を細長く手で裂いて、スライスしたマッシュルームにサラダ菜を合わせて作った。
Cannelloni alla nizzarda ニース風カネロニ 手打ちパスタ生地のかわりにクレープ生地を使って作るカネロニ。先生が若いころ働いていた店の、20年フランスで働いていたというシェフから習ったレシピとか。具はいろいろな肉を焼いてミンチにしたものと、ゆでたビエトラ、パルメザンチーズなど。
Torta di mele al latte リンゴのケーキ、ミルク風味
Caffe’ エスプレッソコーヒー


ジャンルーカの南イタリア料理

2006-09-27 04:26:16 | 料理学院
9月25日(月曜)講師:ジャンルーカ先生その4

今回のテーマは「南イタリアの料理」。当校に来る先生は北部・中部の出身および在住者が多く、料理もどうしてもトスカーナから北に偏りがちである。幸いジャンルーカはシチリアに親戚がいるし、そこで習い覚えた料理も多いので、今回と(たぶん)もう1回に分けて不足しがちな南の料理をとりあげることになった。

24日目の昼食:
Pasta al ferretto con ragù di agnello 手打ちパスタだが、小麦粉でなくデュラム(硬質)小麦粉と水で作る生地。それを小さくちぎって竹串を芯にして転がし、筒状のパスタに成形する。カラブリア州で以前に見たやり方で、むかしは女性は手作りのパスタが30種類マスターできないとお嫁にいけなかったそうである。ソースは子羊のラグーソース。偶然だけど、どういうわけかジャンルーカの料理には毎回子羊が登場しますね。
Polpettine in agrodolce ミートボールの甘酢風味 これはシチリアやプーリアで見るやり方。塩味の料理に甘さをプラスするのはアラブの影響だそうだ。牛肉のミンチに卵やすりおろしたカチョカヴァッロチーズ、香草と香辛料を入れて混ぜる……具の中に、別の料理で使うベシャメルソースを混ぜてしまったからさあ大変。汁気が多すぎてなかなか「ボール」にまとまらず、苦労しながら油で揚げてさらに甘酢ソースで煮込んだ。ところが味の方は抜群においしく「これって、新しいレシピの誕生?」と一同びっくり。
Fagiolini saltati インゲン豆を塩ゆでし、さらにオリーブオイルでソテーしたつけあわせ。
Cannoli alla siciliana シチリア風カンノーリ おなじみの伝統菓子。具はリコッタチーズを半分ずつに分け、片方にはオレンジピールとシトロンピール、もう片方にはコーヒーと砂糖を混ぜて2色にした。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

夕方にまたアメリカ人(18人)の料理講習。ベジタリアンが多いので野菜中心のメニュー。そのわりにやせた人ばかりでは決してないのが不思議なところだ。

24日目の夕食:
Arancini di riso alla siciliana シチリア風アランチーニ 
本来はまずラグーソースを作るのに1日、そこに米を入れてリゾットのように仕上げるのに1日、そして揚げて食べるのに1日と、3日がかりで作った料理らしい。リゾットのようと言ってもそれは「ソースの中に米を入れて煮ていく」プロセスの話であって、米の日の通り方はリゾットとは違って外も芯も同じ方が望ましいので、日本の米でいいらしい。昼食のミートボールに入れてしまったベシャメルは、実はこれ用に作ったもの。班の方には(恐縮ながら)また作り直してもらったが、こちらでもちょっと多めに入れすぎたので生地がやたら柔らかくなり、氷をあてがって思い切り冷やして固めて揚げた。しかし味の方はやはり抜群だったので、生地のまとめやすさを優先してベシャメルを減らすか、味を優先して増やすか、判断が難しいところである。
Maccu siciliano 乾燥そら豆のスープ ジャンルーカが、シチリアの親戚のそのまた友人から習ったレシピ。乾燥そら豆と香味野菜をいため、野生のフェンネルを加えて裏ごししてスープに仕立てる。フェンネルは去年チェンニーナで摘んだものを冷凍しておいて使ったが、やはり1年たつと風味が少々落ちた気がする。
Cannoli alla siciliana シチリア風カンノーリ お昼の残り。
Caffe’ エスプレッソコーヒー


9月24日・日曜日

2006-09-27 04:25:01 | 料理学院
9月24日(日曜)
先日「休みの日は何をしているんですか」と聞かれたが、数年来ひきずっている翻訳の仕事が切れないので純然たる休みは最近ない。そのうち国立エノテカ・イタリアーナの仕事も来るのではないかとの懸念から、昨日今日は他の翻訳をやっていた。いつも困るのは人名・地名など固有名詞のカタカナ表記。同じ先日はオランダ人の表記に出くわしたが、アムステルダム育ちの生徒さんに聞いてめでたく解決。それにしても日本語なら発音さえわかればカナ表記はだいたい定まるが、中国語の翻訳者はどうしているのか。歴史上の人物や有名人ならマスコミが決めるだろうが、実在した、しかもあまり有名でない人物や、マイナーな地名には決まった表記があるはずもない。人名地名辞典に載っていない場合、翻訳者が勝手に決めていいのだろうか?それで、その人物の出てくる本を別の人が訳す場合は前例にならうのか勝手に決めていいのか??前例にならう場合、どうやって全部検索するのか???日本語にはカナがあって助かった……。

23日目の夕食
Insalata verde グリーンサラダ
大根 だし・醤油・日本酒などで煮たと思われるが、濃口醤油の色なので関西人の私は食指が動かず。味はいいんですが……。
ポルチーニ茸の炊き込みご飯 夕方、やってきたジャンルーカがいきなり「今晩は釜飯を作る!」と宣言。「え~、うちには16個もお釜ないよ」「おカマ16もいらない。釜で炊いたご飯は釜飯デショ」「あのね、炊飯器も電気ガマというくらいだから、基本的に米の飯はぜんぶお釜で炊いたもの。それを全部釜飯と呼んでしまっては、普通のめしと釜飯の区別はどこでつけるの?」「それは知らない。君たちが考えてくれ(出た!イタリア人の責任転嫁)。とにかく作る」と、醤油・みりん・日本酒・鶏肉・野菜等々を総動員して作られたが要するに炊き込みご飯。お味はなかなかのものであったが、惜しいかなリゾット用のお米(Vialone nano)しかなかったので火の通り方がイマイチだったとジャンルーカの評。リゾットは外側が柔らかくても芯はアルデンテでなくてはいけないが、ご飯は外も中も同じように柔らかくならなくては困るので、使い分けが必要なのだ。日本風の炊き方をするなら、個人的には Fino ribe が向いていると思う。より安く上げるなら Originario。
緑茶 やはり炊き込みご飯の後には、コーヒーでなくこれでしょう……。

9月22日・支配人変じてシェフとなる

2006-09-25 00:40:30 | 料理学院
9月22日(金曜) 講師:パオロ・M先生(トスカーナ州ルッカ)

昨日「明日の先生はみなさんがとてもよく知っている人です」とパオロ先生のことを紹介しはじめたら、みんな、今泊まっているホテルの支配人が実は「去年までは4つ星ホテルのエグゼクティブシェフ・料理の先生」だったのを知らなかったので絶句していた。といっても実際に厨房を切り盛りしていたのは別のシェフで、パオロ先生は主に経営面や調理講習の担当だったので、技術やアイデアの面で大きな発見のあるわけではないが、長年アメリカ人などを相手に講習するうち磨かれた「笑いながら楽しく学ぶ授業」がパオロ先生の持ち味である。まず朝会うなり「講習開始までに練習するから、普通のオハヨウゴザイマスよりもっと芸のある日本語の挨拶文をローマ字で書いてくれ」とのご注文。ほとんどエンタテイナーである。

21日目の昼食:
Cozze al sambuca ムール貝のサンブーカ風味 先生の以前の勤務地 Portovenere、および近郊の都市 La Spezia はムール貝の養殖がさかんなので、ムール貝を使ったレシピがとても多い。今日はオリーブオイルとにんにく、パセリで口を開かせてから生クリームとサンブーカで味つけ。
Ravioli di zucca かぼちゃのラビオリ かぼちゃは焼くかゆでてマッシュし、アマレットやシナモンと混ぜて具を作る。つなぎに卵黄も入るので「冷蔵庫から卵を出して」。レシピ通りに1個出したらもう1個使うという。「皆さん、卵は(卵黄と卵白に)分けて使うことがよくありますが、分け方は知っていますか?」一同沈黙、謹聴。「ではお見せしましょう」両手に卵を1個ずつ持ち、腕を前方に伸ばしてそのまま左右に開き「はい、この通り」。「栄養学を専門にしている医者と話したことがありますが、イタリア人の食事は長生きにつながるんです。いっしょに料理して、いっしょに食べて、いっしょに笑う。これが長寿の秘訣だと医者も言っています」。けっきょく具の方には卵黄が1個しか入らないので「先生、もう1個の卵は使わないの?」「いらない。卵を分けるジョークをするのに使っただけだから」。
Tagliata di salmone con salsa di lattuga サーモンの「たたき」、レタスのソース 
Verdure all’aceto 温野菜のビネガー風味
Caffe’ エスプレッソコーヒー

最近なぜか当校では髪を坊主頭(マリエッラに言わせると capelli a zelo)に丸める人が多く、料理学校なんだか禅寺なんだかわからなくなる日も近いのではないかと思われるが、最近剃髪した「アキヒト上人(しょうにん)」の荷物もミラノ税関でひっかかっていることが、EMSの番号を郵便局のHP上で追跡調査して判明した。原因はタカヒト上人と同じく「インボイス」がなかったため。タカヒト上人の方はご家族が郵便局で書いたインボイスがファックスで届いたが、イタリアの納税者コード(codice fiscale)がないと書類が完備しないので、ただいま役所にコードを申請中。

21日目の夕食:
Trofie al pesto alla Genovese トロフィエの「ジェノヴァ風」ペーストソース
リグーリア料理とくれば欠かせない一品。生徒さんは先日チンクェテッレに行ったときに一度食べているので、味比べのいいチャンス。この料理にはリグーリアのオリーブオイルが欠かせない。風味がまろやかで、トスカーナのシエナ・フィレンツェあたりの苦味の強いオリーブオイル、それよりは穏やかだがまだまだ個性が強く(フェンネルの風味がするのだそうだ)ルッカのオリーブオイルでもだめ。チーズもパルミジャーノとペコリーノ・サルドの両方を使うのでしっかり塩味のついたソースになる。ちなみにチンクェテッレで食べたときは、そのままだとおいしかったのに、回されてきたおろしチーズを上からふりかけたところ、塩味が強くなりすぎてダメだったそうである。パオロ先生に聞くと「上からはかけない。風味は全部ソースの中に入れてしまうから。かけるとすれば見栄えがするという、それだけの理由だね」。やっとまともな説明が登場した……と思うまもなく、飾り用に作った「軽くフライパンで炒った松の実」の乗ったお皿の、横を通るたびに先生はパクパク。マリエッラもつまんではパク。生徒さんもパク。このままでは講習の終わりまでもたないのでは……と皿を取り上げると「その皿を隠せ!目がくらむ(以上、戯曲『モルフィ公爵夫人』のパロディとしてお読みください)。これは誘惑だ。私はほとんどのことには抵抗できるが、誘惑にだけは抵抗できないのだ」。
Mozzarella fresca al frullato di pomodoro 水牛のモッツァレッラをスライスし、ピューレにしたトマトのソースの上に盛りつけてバジリコを飾る。「モッツァレッラの原料のミルクを出す水牛はアジアから導入された。ナポリ周辺の湿地帯では普通の牛は飼育できず、水田にいる水牛が注目されたのである。やがてそのミルクからよいチーズができることがわかったが、チーズ造りよりも大変なのはミルクをしぼる作業である。なにしろ水中で生活している牛だから、乳しぼりの前には深呼吸して鼻をつまみながら水中にもぐり、ミルクをしぼってはまた地上にあがって息を吸い……」「するかそんなモン!」(←大阪人の生徒さんのツッコミ)「それは昔の話で、現在ではもっと簡単である。なにしろスキューバダイビング用の器具があるから……」「するかそんなモン!」
ジュゼッペ先生の講習で作った「うさぎのロール巻き」で余った具をベースにして作ったコロッケ。イタリア語の料理名は不詳。
Stinco di vitella al forno con salsa di porcini 昨日の夜の講習会のお流れ。
Panna cotta ai frutti di bosco marinate パンナコッタ、マリネしたベリーのソース 
Caffe’ エスプレッソコーヒー

今日でカロータさんは最後の講習日なので、チェンニーナの出張から戻ったジャンルーカも途中から夕食に参加し、食後に「参加証」の授与。明日はフィレンツェ行きのバス停まで全員で送っていくそうで、その前に有志と裏のバールで「お別れ飲み会」。

9月21日・ジャンルーカ先生その3~三大陸の生徒たち

2006-09-25 00:38:53 | 料理学院
9月21日(木曜) 講師:ジャンルーカ先生・その3

昨日の南アフリカ勢のうちお2人と、ジャンルーカの料理のファンらしいオーストラリア人のマーゴさんの計3人も登場(オーストラリアの男性は家事をとてもよく手伝うそうだが、マーゴさんの夫は今まで3回とも食事には来るが講習には来ない)。でも今日はジャンルーカが英語で説明するのでこっちは楽である。四苦八苦しているのは英語のレシピを用意するイレーネの方で、昨日も「この『chick peaとランゴスティーヌのクリーム』って何のこと?英語の辞書にはランゴスティーヌなんて載ってないわ」と悩んでいた。調べるとフランス語で scampi のことだったのでめでたくイタリア語版も日本語版もあることが判明したが、このところのように英語圏の生徒さんが増えてくると、イタリア語←→日本語版だけでなくイタリア語版←→英語版の対照表も作らなきゃ。それにしてもアジア大陸、アフリカ大陸、オセアニア大陸から来た生徒がヨーロッパ大陸に会して料理を学ぶっていう図はちょっと面白い。

20日目の昼食:
Taglierini all’uovo con calamari, zucchini e fiori di zucca 卵風味の生地で作るタリエリーニ、千切りにしたヤリイカ、ズッキーニ、ズッキーニの花のソース
Involtini di filetto di orata con melanzane e purea di zucchini スライスしたなすをしんなりオーブンで焼いてクロダイをくるみ、ふたたびオーブン焼き。ズッキーニのピューレのソースで。
Tortino semifreddo con ricotta e sciroppo al limoncello リコッタベースのセミフレッドをビスキュイでサンドし、冷やしてサービス。冷凍庫から出すのが少し遅かったのでやや固かったが、上品な甘味で好評。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

20日目の夕食:
Passato di fagioli cannelloni con scampi 白いんげんを裏ごしし、手長エビでとったダシと合わせるクリームスープ 本来はひよこ豆でやるが、今回手に入らなかったので「この近くのアグリツーリズモのパオロさん」の畑のおいしい白いんげんで作った。相性としてはひよこ豆のほうが合うと思うけど、話に聞くとおりなかなかおいしい白いんげんだった。
Insalata di polpo タコとじゃがいもの冷製サラダ
Souffle’ di baccala’ in cialda di pane 塩ダラのスフレ、トスカーナパンのチャルダ添え
Souffle’ di arancia オレンジのスフレ(ルッカ人対象の講習会のお流れ)一足早く、明日で講習を終わって帰国する「カロータ」さんのリクエストによる。創立当時からマリオ先生と並んで講師を務めていた故・ピエロ先生のレシピ。途中うっかりオーブンを開けられてしまったので、おいしいことはおいしいのだがほんの少し卵臭いというか、生焼けだったのが残念。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

木曜日のルッカ人対象の料理コース・第一夜「キノコづくしのメニュー」
Tortino di funghi, porri e fiori di zucca キノコ・ポロねぎ・ズッキーニの花をブリゼ生地で包んで焼いた温かい前菜
Cacciucco di funghi misti di bosco いろいろな肉を取り合わせて煮込む「カチュッコ」を肉のかわりにピオッピーニ(ポプラの木に生えるキノコ)・ポルチーニはじめ森のキノコの取り合わせで。
Stinco di vitella al forno con salsa di porcini 子牛のすね肉のオーブン焼き、ポルチーニのソース
Souffle’ di arancia オレンジのスフレ
Caffe’ エスプレッソコーヒー

今回の生徒さんも「携帯電話にパソコンを接続してインターネットを楽しもう計画」に挑戦し難儀している。ケータイ屋のパオロさんにチラッと聞いた感じでは3人くらいが不成功だったと思っていたら、実は購入した人ほぼ全員らしい。前期と同じ展開である。滞在許可証の再発行の件でイレーネと警察に出直すためやってきた前期の「隊長」も「(あれだけ克明なレポートを書いておいたのに)皆さん接続できないんですか?」と意外そうだったが、私も意外だ。おととしのラム君のような人ばかりなら無理はないが、今回も詳しい人が何人かいるのだ。今回の「新・隊長」は日本語英語バイリンガルの人なので、ノキアのHPの英語版を参照しつつ3台のパソコンを比較検討しながら「オレ、事態を甘く見てたかも」と悪戦苦闘中。まず留学中にケータイを買い、自力接続に挫折して例のフィレンツェのお店でやってもらった人のPCを開け、設定を全部チェックするとパスワードが必要なことがわかったが、どこでそのパスワードが入手できるのかわからない。前期「隊長」のメモを参照しても、前回は Bluetooth 接続(無線接続)だったが今回はケーブルでつなぐので勝手が違う。ならばとラム君の時のメモを見てもプロバイダーのHPの仕様が変わっていて同じ項目に行き着けない……。ようやくケータイのマニュアルにあった「PCとの接続は」を参照して開いたHPから、ダウンロードして使える接続マニュアルを発見、ラッキーなことに日本語版があったので手順に従ってやり始めたら、PCのUSBポートが携帯を認識してくれない。結局真夜中近くまでかかって、すべての原因は「ケータイと一緒に買ったケーブルは、形状こそUSBポート対応だが実際はPCとの接続には使えない商品で、接続には別の型番のケーブルが必要だった」こととわかったそうだ。こんなに苦労するんだったら、デザインとか多少の価格差には目をつぶって、前回と同じモトローラにしておけばもっと簡単だったのかなァ。「でもこれがクリアできれば、新隊長は片手間に(失礼)料理しながら、ケータイの接続サービス・トラブルシューティングサービスでお小遣い稼ぎできますねっ!?」「みんな研修先が散らばってるから、フランチャイズでイタリア中に展開して……」「各自に営業車買い与えなきゃ」。夢はふくらむ?もう3週間目も終わりなんだし、みんな語学にももうちょっと身を入れましょうね。

9月20日・アルヴァーロ先生と第2ラウンド

2006-09-25 00:30:07 | 料理学院
9月20日(水曜)講師:アルヴァーロ先生・その2

1週間ぶり2度目の登場となるアルヴァーロ先生、今回のメニューは肉料理。前回いきなり「ブロードが9リットルほしい」と言ってのけマリエッラを絶句させたが、今回は今までの講習で時に余ったブロードをしっかり冷凍してあるので、マリエッラは大船に乗った気分である。とはいえさすが5つ星デラックスホテルのエグゼクティブ・シェフ、ちょっとクリームが泡立てすぎになると「やり直し」だし、野菜もブロードのほかドミグラスにもガンガン使うのですぐ減り、足りなくなるもの続出。「なぜあの男はいつも私が切らしているものを要求するの?」。ちなみに先生の奉職するホテルでは来週なんと900人の宴会の予約が入っているそうだが、そういう場合ブロードは何ガロンとるのであろうか。
そういえば先週「箱ごと持って来てやる!」と豪語したビベロン、ちゃんと持ってきた?と聞いたらホントに持ってきたそうだ。うちの倉庫狭いんですけど……。何事にもほどほどというものがあるじゃろが。
講習が始まってしばらくした頃に、今日も外国人、いやイタリアでは私たちも外国人だから「非・日本人」の生徒さん登場。白人の女性4名。推定平均年齢45歳。「アメリカ人でしょうかね?」「う~ん、でも服装がアメリカ人とはちょっと違うような……」で聞いてみたら南アフリカのヨハネスブルグとプレトリアの人たちでした。ミラノ、ヴェネツィア、フィレンツェときてルッカには4泊の予定とか。
一通り準備ができたところで一皿ずつ盛りつけの見本作りと写真撮り。食事に移る前に先生お得意の「野菜の彫刻」のデモンストレーション。今日はダイコンやラディッシュ、にんじんなどで花を作り、竹串を刺して花瓶に生けた花束のように仕立てた。これを食卓に出して、集合写真もこれを囲んで座って撮った。

19日目の昼食:
Tortino di patate e lardo saltati con funghi porcini al sentore di nepitella ゆでたじゃがいもとラルドを詰め物にした丸いパスタを、オリーブオイル・にんにく・「キノコのお伴に欠かせない香草」ネピテッラでソテーしたポルチーニのソースで。
Tortino di asparagi su fonduta leggera di pecorino 形のまま残すアスパラガスの穂先を、ピューレ状にした残りの部分といっしょに型に流してプディング状に。ソースはペコリーノのフォンデュソース。
Pere al Chianti con bavarese alla canella 洋梨の赤ワイン煮、シナモン風味。実はこれは記憶している限りでも3回ほどバージョンアップしており(そのためまた翻訳しなおした)、毎回レシピが微妙に違うが、実際に作っているところと味を較べても、はっきり言ってどこがどう変わったのかはわかりません。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

昼食後、および夕食前にひとりずつ事務所に来てもらい、研修先に選んだレストランの紹介と説明。再来週の週末の遠足は土曜日(30日)、翌日曜日が自由行動の日なので、なるべくその機会を利用してお店の下見とあいさつに行くよう案内する。

19日目の夕食:
Fettuccine all’arrabbiata フェットゥチーネのアラビア―タ。これはジャンルーカの作。
Filettino di maiale ai semi di finocchio con salsa dolce e forte su purea di mela golden
フェンネルシードをまぶした豚ヒレのオーブン焼き。豚肉と相性のいいリンゴのピューレのソースで。
Insalata di verdure miste 冷蔵庫の余り物の野菜で作ったミックスサラダ。
Caffe’ エスプレッソコーヒー



9月19日・ジュゼッペG先生1回目

2006-09-25 00:27:19 | 料理学院
9月19日(火曜)講師:ジュゼッペ・G先生(トスカーナ州ルッカ)

ジュゼッペという名の先生は2人来るが、きょうはジャンルーカが13~4歳のときに初めてレストランで下働きをしたときの「兄弟子」で最初に料理を教わった相手の先生。コック歴40年、独立して6年だがこの人もご多分にもれず、教えたり説明したりするよりも自分でさっさと動く方が多いので「手を動かす時は口も動かし、とにかく説明して解説して教えなさい」と訓示を?垂れる。
調理の合間を縫って「食材の品質チェック」に励むのはこの人も同じ。マリオ先生の場合は赤ワインの宝庫・キャンティ地方とシエナ県がテリトリーなのでいつも赤ワインに手が伸びるが、かつての海上貿易王国ピサに向かう道沿いに店を構えるジュゼッペ先生はいそいそと冷蔵庫から冷えた白ワインを取り出した。ところが当校のハウスワイン、いやスクールワインの白はトレッビアーノ100%の地酒だったものだから「ワオ、胃が焼ける!」。「じゃあ、先生のおいしいと思うワインは何ですか?」先生によると個人的に好きなのはソーヴィニョンやミュラー・トゥルガウ。トレッビアーノがよく造られるのは面積あたりの収穫量が多いからだが、100%では酸味が強すぎるから(消費者が胃を焼かずにすむためには、造り手は)何か別の品種を混ぜるべきである。あるいは10年くらい熟成させるとおいしくなるが、コストが問題である。「10年も熟成がききますか?」「いいワインセラーで上手に管理すればできる。ただしイタリアでは伝統的に白はせいぜい2~3年で飲みきってしまうので、やるのは主にフランス人だが」。
明日、いよいよ5週間後の研修先となる候補の店を全員に連絡の予定。今日のジュゼッペ先生の味はこれまでで一番好きだ、先生の店に研修に入りたいという人が2人ほどいたが、残念ながら諸般の事情により研修生は現在取ってもらえない。先生は来週火曜日にまた登場の予定。

18日目の昼食
Ravioli di cavolo nero con pomodori disidratati e pinoli 黒キャベツのラビオリ、オーブン焼きのトマトと松の実のソース
Piccione in casseruola 部分的に骨をはずしたハト肉をフライパンで色よく焼き、マルサラワインとヴィンサントをふりかけて。ハトは小型の鳥だから数がたくさんあり、みんな交替で骨のはずし方を練習した。
Spinaci saltati ほうれん草のソテー いったんゆでてから、レーズンと松の実を合わせてフライパンでソテー イタリア(だけじゃなく周辺国でも)の青菜は蓚酸が強いので、日本人の感覚では「やりすぎ」と思うくらいクタクタにゆでる。以前スペインに暮らしていた知人がそれに気づかず「おひたし」の感覚でさっとゆがいて食べていたらみごとに内臓をやられた。大学で薬学をやった人が今回メンバーにいるのでその話をしたら、その通り結石の原因になるそうだ。
Crostata di ricotta e frutti di bosco リコッタとベリー類のタルト 昨日の、アメリカ人対象の料理コースのデザート。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

午後、「来なくていいです」との生徒さんの遠慮(反対というべきか)を押し切り、かねてから興味のあった「入門」クラスに「保護者授業参観」に行く。なにしろいつも日本人同士でかたまって生活しているものだからイタリアに暮らしている割にはみな進歩が遅いが、雰囲気が楽しそうなのが何より。朝7時30分からの補習に唯一皆勤で来ているヨシさんは「むずかし~」といつも頭をひねっているが、言語感覚が案外スルドイことが判明。
1)猫がテーブルの下にいるよ。
2)猫はテーブルの下にいるよ。
この意味の違いわかる?と聞いたらパッと答えられたのだ。こういう人はいったんコツを飲み込むと伸びる。ちなみに1)の猫はイタリア語に直すと un gatto、2)の猫は il gatto になります。日本語は定冠詞と不定冠詞の違いをこういう風に処理するんだね。
レシピの翻訳依頼絶えず。ジャンルーカの恒例の「ルッカ人対象」木曜の料理講習会はキノコづくしのメニュー。今回は地元新聞に記事が載ったせいか1人を除く全員が初めての参加者だから以前やった料理をしてくれれば楽なのに、なぜか「すべて新しい料理だ。次のキノコの時期には日本人コースでもやりたいから訳してくれ」。じゃあ来年まで時間があるってこと?キノコの時期が年に1回でよかったよ。

18日目の夕食
Zuppa alla frantoiana 搾油場風のスープ 11月の、新しいオリーブオイルが出回る時期に、その時に出回っている野菜を使って作るスープ。搾油場でしぼりたてのオリーブオイルの味見をするのに、よくこのスープにオイルをたらして食べたことから来た名前。
Coniglio farcito alle erbe 骨をはずしたウサギに、牛・豚・子牛の3種類の肉と、ふやかしたパンなどをミンチにした具をロール状に巻き込み、アルミで巻いてオーブン焼き。
Insalata verde グリーンサラダ
Tortino al cioccolato amaro con prugne al vino rosso チョコレートのカップケーキに、プルーンを赤ワインで煮て作ったソースを添える。
Caffe’ エスプレッソコーヒー


マリエッラ「先生」その1

2006-09-19 15:44:54 | 料理学院
9月18日(月曜)講師:マリエッラ先生(トスカーナ州ルッカ)

今日の先生は平素アシスタントの地位に甘んじている?マリエッラ。今日はジャンルーカが午前中よそで調理講習会をしているので、買出しも自分でやって朝からフル回転。アシスタントがいないから今日は忙しいぞ、と思って朝7時半からの勉強会でも「レシピを読んだら、何が必要で次に何が行われるかわかるんだから、いい機会と思ってシェフの先読みをする練習をしたほうがいいよ」と出席者にアドバイス。ところがレシピ説明の最後に「きょうは助手がいないんだから、各班が自分たちの料理は責任を持って作ってね!とマリエッラが言った言葉がバッチリ効いて、まあどの班も動く動く、働く働く!12時30分にはほとんどの料理を作り終え、写真も撮ってパスタがゆでられる体勢になった。我々が厨房をお借りしているレストランの方も、きょうは2つも団体が入って(合計75名)大忙し(しかも昨日まで毎日来ていたパオロがきょうから休暇、入れ替わりにもう1人のシェフのシモネッタが出勤したばかりで、ますます忙しそう)だったからちょうどよかった。

17日目の昼食:
Maccheroni lucchesi al ragu’ di coniglio ルッカの伝統的パスタ「タッコーニ」、ウサギのラグーソース 靴のかかと(タッコ)に似た形と大きさなのでこの名があるパスタ。ルッカで一番おなじみのパスタなので「マッケローニ」とも呼ばれる。今日はウサギのラグーソースで。やはり野ウサギにくらべるとずいぶん食べやすい。レバーと腎臓もソースに加えたが、昔はダシをとるため一緒に煮込んでいたという頭は使わず捨てた。
Faraona al cartoccio con sformato di fagiolini ほろほろ鳥の紙包み焼き、さやいんげんのスフォルマート添え 本来レシピによると付け合せはペコロスの甘酢風味。ところがスーパーでペコロスが売り切れだったのでさやいんげんに変更になった。しかもほろほろ鳥に至ってはスーパーを3軒回ってすべてにフラれ、やむなく卸業者に電話して届けてもらった。「携帯には、友達の電話番号だけじゃなくてスーパーの番号も登録しなさい」とマリエッラに進言する。実は9月はルッカではいろいろな催し物が多く観光客が訪れる時期の上、昨日は月の第3日曜日で骨董市の立つ日。それをあてこんでスーパーが臨時営業したので商品の在庫が少なかったというわけである。お腹をきれいにして香草のみじん切りをお腹の中と手羽の部分にまぶし、パンチェッタを巻いてさらにオーブンシートで包んでオーブン焼き。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

懸案続出。
その1 生徒さんあての小包が、前期のキムちゃんと同じく「ミラノの税関で」留め置かれ、「インボイスを出さないと差出人に送り返す」という脅迫状、いや督促状が届く。この夏中央郵便局で確認したところ、イタリアはいまカナダと並んで小包のチェックが一番厳しい国らしい。一定以上の金額のもの(ちなみにこの生徒さんの場合7万円程度)を送る際にはふつうの送り状に加えて「インボイス」も添付しないといけないのだ。集配業務を行っている大きな局にはインボイスの用紙が備えつけてあるはずなので、ご家族に局まで出向いて用紙に記入し、こちらまでファックスしてもらうよう案内する。
その2 日本から持ってきた電気製品はイタリアの電圧では使えないものが多いので、先週から2回ほど旧市街の電気屋に足を運んで変圧器を買ってきたが、110V(アメリカの標準電圧)には落とせても日本と同じ100Vに落とせる機種はこちらには売っていない。そのためパソコン用に使う人(今回1名)は問題ないが、携帯電話やカメラの充電器に使おうという人(今回2名)の場合、何度も使用を繰り返すとあまった10V分が電化製品に負担をかけ、故障の原因になるらしい。皆さん変圧器は出国前に日本で買いましょう!
その3 携帯屋のパオロさんによると、前回3名分の携帯vs.パソコンの設定がうまくいかなかったので持ってかえってトライしていたのだが、週末の自由時間をすべて捧げたにもかかわらず3つともダメだった。携帯はどんどん進化して新しい機能が使われているから、少し古い型のPCだとなかなかバージョン情報が合わず難しいらしい。前回「隊長」の指揮のもとに?設定をした時はモトローラの携帯だったのだが、今回はノキアだったので少々勝手が違うせいもあるかもしれない。フィレンツェの語学学校から直接こちらに来た生徒さんに聞いてみると、なんとか自分で設定しようと数か月(!)格闘したがついに力尽き、例のフィレンツェのインターネットカフェのお世話になったらしい。今回のメンバーにもPCに詳しそうな人は何人かいるが、さて自力で接続に成功できるか?

17日目の夕食:
Parmigiana di zucchini ズッキーニのパルミジャーナ 先日エンリカ先生の授業では「現代風にアレンジした」パルミジャーナを作ったが、今日はクラシックなやり方で。塩であく抜きしたあと油で揚げ、トマトソース・モッツァレッラ・おろしチーズなどと重ねて耐熱皿で焼くが、やはりズッキーニでは味が淡白すぎ、油もあまり吸わないのでなすの方がおいしかった。
Parmigiana di melanzane なすのパルミジャーナ
Crema di piselli グリーンピースのクリームスープ 別名Passatina di piselli。乾燥グリーンピースと香味野菜を炒め、湯を加えて煮込んでからバーミックスで粉砕。クリームスープといいながら生クリームを入れず野菜だけで作るヘルシー版。
Torta d’amaretti アマレッティのタルト マカロンに似た「アマレッティ」という丸いビスケットをリキュールでふやかし、卵などを混ぜてタルト生地の上に流す。タルト生地の周辺に「くちばし」と呼ばれる三角形の飾りを作るのが特徴。
Torta e’erba ふだん草のタルト ゆでて刻み、スパイス各種・松の実・オレンジピール等を混ぜて、同じくタルト生地に流し入れて焼く。このあたりの伝統菓子のひとつだが、この前どこかの(イタリアの)料理学校の日本語ページで「ハーブのケーキ」と訳されていたのでびっくりした。Erbaは「草」だの「ハーブ」だのいろいろに訳されるが、この場合は「青菜」でしょうね。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

夕方、米国・カリフォルニアからトスカーナに旅行に来ている小グループ(6人くらい)が、ジャンルーカの調理講習に来る。あちらは全然メニューが別で魚介なので、テーブルは別々。そちらで余った料理はこちらへも回ってくるので、これ以外にも2~3種類味見した。