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イタリアンでも食べルッカ

おいしい物と個性豊かな料理人達に囲まれた料理学校での日常記

ボイやで~

2012-10-17 22:10:23 | 語学
というのはトスカーナ有数の大きな港町リヴォルノで、おそらくもっとも多く口にされる間投詞で
嬉しいとき、悲しいとき、悔しい時、驚いた時、ハラが立つ時などなど
平常心を乱すナニゴトかが起こったときに幅広く使えてすべてを表現できるオールマイティな言葉である。
したがって日本語に訳すのはエーカゲン難しい。
ついでに言うと、そのときどきのイントネーションを表記するのも実に難しい。

語源をたどると、語末の「デー」は標準語の「神(Dio)」、「ボイヤ」は首切り斧のことで
恐れ多くも神様の首根っこをひねってやれ、という悪態らしい。
さすがに「カチュッコ」と「へらず口」で有名な町だけあるというものである。

先日は、ロザリオシェフに大量の魚の処理を命じられたアレッサンドロ君が
ウロコとワタを取るというジミで苦手なミッションをようやく終了し、
華やかでかっこいい(?)三枚おろしに進もうと、まな板と包丁を手に空いた作業台の方に近づいてきた。
だがそこはデザートの班に必要な場所だったので
「ここはデザート用地だから、外でやるように!」と言い渡した、いや伝達したときの反応がやっぱり「ボイヤデ~」。
その時の彼の表情および少々うなだれた後姿には「キッチンの方が流しで水が使えて楽なのに、外でやんのォ~?
オレ疲れてんのにサァ~、割りに合わネェよォ~」という意味がありありと読み取れたのだが
そこにオーバーラップした「ボイヤデ~」の口調が関西弁の「ワヤやで~」(=めちゃくちゃだよ、形無しだよ)に
そっくりだったので大阪出身のH君と笑ってしまった。
いらいこのリヴォルノ弁は関西弁としか聞こえず、「ボイやで~」としか表記できない……

9月23日 翻訳は裏切りだとはいえ

2012-09-30 22:12:16 | 語学
先日「パンの講習」編では身内のお恥ずかしいミスをお目にかけた。
本ブログのテーマ(そんなものあったのか?)からは離れるが
職業柄言葉に関しては敏感にならざるを得ないのでこの話題をもう少し。

確かに翻訳に誤訳はつきものであって、世の中のいかなる大家、
どんなにエライ先生方でも誤訳をおかさない人はいない。

昔イタリア語の講読・演習の授業に出たことがあるが
京大出身の学識で現在東京外大イタリア語の重鎮である講師の先生も理数系には弱かったのか
「模範訳」で「これらの接線は……触れあうことなく」と口走り(?)
物理学科卒業の実務翻訳者(英語)に即座に「触れ合わない接線というものは存在しません」と指摘されていた。

だいいち伊和辞典の代表格「伊和中辞典」(小学館)にしたところでミスはある。
第1版では知人と一緒に数えたところ20数か所、第2版はあまり利用していないので
今のところ4か所しか見つけていないが、探せばもっとあるだろう。
該当箇所には書き込みを施し巻末に一覧表をつけて対処しているが
電子辞書ではこうした防御策をとれないのでいまだに買う気になれない。

ただ英語はもとよりフランス語、スペイン語、中国語等々と較べて
格段にマイナーな言語同士であるイタリア語から日本語への翻訳の場合
発注者(クライアント)側や編集部側にチェックできる人間がいない可能性が高く
よく言えば翻訳者の良心に任され、悪く言えばバレる恐れがないためか
無責任な仕事の例が目について困ってしまう。

シエナの国立ワインセンター Enoteca Italiana 発行
La Carta dei Vini DOC e DOCG の日本語版第14版を担当した時のこと。
「7~8割は旧13版と同じなので、改訂された部分だけ訳しおろすか
改訳するかしてほしい」と言われて序文からあらためて読み始めたのだが
1ページから、同センターのある Fortezza medicea(メディチ家の要塞)が
「1561年に築かれた中世の要塞」となっていて驚いた。
もちろんmedicea 「メディチ家の」 をmedievale「中世の」と勘違いしているのだが、
1561年と言えばヨーロッパの「辺境国」イギリスにすらルネサンスが波及している。
訳者は中世がいつまで続いたと高校世界史で習ったのか。

また「ウンブリア州」の位置が、「マルケ州の東(…海では?)、
トスカーナ州の西(…海です!)、ラツィオ州の南」
(原文ではもちろん、東でマルケ州と、西でトスカーナ州と、南でラツィオ州と接すると書かれている)と
訳されているところから察するに地理も習わず伊和中辞典もひもとかなかったようだし
カンパーニア州の農業が「二毛作または三毛作で行われているため収穫量は少なくとも2倍になる」
(正しくは:棚田などを利用して面積を2倍以上に増やしている)とあるのを読んだうちの姪は当時高校生だったが
「二毛作を行っても収量は絶対に2倍に達しない!」と叫んだ。彼女の祖父は兼業農家を営んでいる。
ちなみに13版の訳者はワインに詳しい実務者グループ、
彼らが参考にした12版の訳者(以上3点のミスはこの版からの「遺産」)は
以前NHKラジオ講座のテキストにもコラムを連載していたイタリア在住歴の長い芸術家である。
他にもマカ不思議な文章だらけで結局全文改訂となったが予算を大幅に超過し陳情に苦労した。

新聞の書評で評判のよかったミステリの翻訳が出たので手に取れば、
ちょうど主人公の男性がキッチンに立ってオムレツを作る場面だった。
ところがこの男性、卵を割ってほぐしてそこに水を入れるのだ。

コックでなくても、料理に心得や関心のある人は
「オムレツに水!?」と私でなくてもここで色めき立つだろう。
さっそく原書に当たってみると、これがなんと「塩」なのだ。
「基本中の基本の単語でしょ、なんで間違うかねえ」と昔のイタリア語クラスの同級生に話してみると
料理にそれほど関心がない彼女は「そんなの、謎解きにはぜんぜん関係ないんでしょ?
オムレツに水を入れる入れないなんて枝葉末節は、読者や編集部にはどうでもいいの。
ミステリ読む人があなたみたいに料理好きな人ばかりじゃないのよ」と言うが
そうではなく、そんな単純かつ初歩的なミスさえチェックされずに世間に出てしまう状況が問題だと思うのだ。
ちなみに訳者は東大のイタリア文学科卒。出版物の誤訳や誤記は気づく限り投書で指摘するようにしているが
なまじ中途半端に面識がある人なのでためらわれまだ書いていない(確かに謎解きには関係ないのだし)。

最後にもう一つはばかられる例を。
当学院と同じく日本人の料理人を養成し現地研修をあっせんしている
北イタリアの料理学校のパンフレットの一節なのだが
「非営利団体」と表記すべきところ「非営利を目的として設立された」「団体」となっている。
これでは利益を上げないことこそ目的で、設立した瞬間その目的を達してしまうことになり
筋が通らない(ついでに言えば、非営利なのに営利目的の当学院より授業料が高い理由もよくわからない)。
イタリア在住30年という通訳さんの日本語が怪しくなっているのか
自動翻訳に頼ったのかは不明だが、立場が立場だけにご注進するのもはばかられ現在に至っている。
ただパンフレットだから早く訂正したほうがいいと思うので
どなたか関係者でない方が誰か言ってあげてください……。

9月23日(日曜)の夕食
千切り野菜とハムのサラダ 
ジャンルーカ先生入魂の?ラーメン 金曜日の講習でブロードをとるかたわら
豚と鶏のガラでしっかりスープをとりました。味つけはなんか台湾風だという声がありましたが
過去に1度しかラーメン屋に行ったことのない私には判定がつきません。
ヒロキさんのお誕生日ケーキ
スプマンテ (GANCIA - Asti Dolce)
エスプレッソコーヒー

なぜにアナタは日本語ができぬ・2

2012-09-04 16:49:15 | 語学
NHKに関しては、むろん語学講座も聴いていた。
ロシア語・ハングル・中国語・アラビア語・ブラジルポルトガル語に関しては
興味はあるが(トルコ語も勉強しなければならない身の上ゆえ)今後にゆずるとして
朝7時からニュースに続いてスペイン語、フランス語、イタリア語、
11時台のアンコールフランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、
12時台の英語、13時のスペイン語ニュース、土・日の「攻略!英語リスニング」、
なかなか忙しい。

個人的ランキングの上位は、勉強方法の参考になるという点では
「ラジオ英会話」と「攻略!英語リスニング」。
語学学習とは愚直な肉体労働であることがよくわかる。
英語力をキープするためには「実践ビジネス英語」。
イタリア語の力をつけるためには「アンコール・スペイン語講座」と
「フランス語講座」。

スペイン語講座の今期の内容には「定型表現」「慣用句」が多いのだが
イタリア語と同じ言い回し・発想のものが多く、それをネイティブのゲスト2人が
テンポよく説明してくれ内容が濃い。
フランス語に関しては、文法構造がイタリア語とほとんど同じなのだが
その説明が簡潔にして当を得ており腑に落ちる。さすが英・西と並んで植民地を
作りまくった大国、リビアやエチオピア征服ふぜいにオタオタしていたイタリアとは
残念ながら?格段の差があるのである。とりわけ日本語の!

すでに放送終了した講座の講師であるが、
「(お手本の文を)皆さんもくちずさんでください」
と何度もおっしゃる方あり。
察するに「リピートしてください」ということらしい。

が私の理解では、「くちずさむ」は「無意識のうちにふと興がわいて
言葉やメロディなどが自然と口から出る」ことなので
「この文章をしゃべるぞ」と思った瞬間
「口ずさむ」ことは不可能になるはずなのだ。

別の講師は、その日に習った単語などを使って短文を作ることを
「表現を作ってください」とおっしゃる。

ちょっと待って。文章なら初心者もすぐ作れるよ。
Ci sono due(2) libri(ここに本が2冊あります).
Ci sono tre(3) libri(ここに本が3冊~).
Ci sono quattro(4) libri(~4冊~)。
またたく間にしめて3つ。
かっこ内の数字を変えれば1兆でも1京でも作れる。
いや何も変えずとも「まったく同じ文章が2つ」
あったってかまわない。

だが「表現」とは「言い回し」であり
3通のハガキに「残暑お見舞い申し上げます」と3回書けば
「3つの文」かもしれないが「表現」としては1つである。
「一筆啓上」と書いて初めて「別の表現」になる。

「表現」なんて簡単に「作れる」(つまり、新たに生み出せる)
もんじゃありません。それは作家や詩人の、それも一流の人間の領分だ。
それを外国語でやってください、なんて要求が高すぎませんか?

写真は、ノンストレス豚のいる農家にて見かけた、ミラベルの実。
以前フランス語講座に登場してから、一度見たいと思っていたのだ。
ジャムを食べ損なったのは残念だったなあ。













なぜにアナタは日本語ができぬ・1

2012-09-03 18:44:56 | 語学
有意義なレストラン研修、楽しいイタリア生活を送るためには
なんといってもイタリア語のすみやかな習得が鍵である!
「どうしたらいいですか」と聞かれた場合、気軽に取りかかれる方法として
「家にいるときはテレビ(ラジオでもインターネットでも)を
つけっぱなしにして音に慣れなさい」ととりあえず答えておく。
最近はNHKのラジオ講座もインターネットで(1週遅れで)聴けるし便利……
だが、こと日本語に関しては、最近のNHKはコロッセオのごとく崩壊気味の
ような気がするのだ。

日本の我が家の台所にはテレビがないので、ニュースにしろ天気予報にしろ
ラジオが頼り。インターネットでもいいのだがテーブルが狭いのでつい敬遠してしまう。
ところがなにげに聴いていると出るわ出るわ、漢字の読み間違い、敬語の間違い、
イントネーションの間違い、はては活用の間違い!
4~5月頃がピークだったと思うが、あまりに頻発するので
ニュースが始まるとメモ帳と鉛筆を片手にかたずをのんで聞き入る始末。

「各地の高校で、卒業式が開かれました」
「式」って「挙げ」たり「挙行」したりするものでは?
「開会式」ってのはありますけどね。


「児童虐待はこの数年間で……伸びており」

「伸びる」はポジティブなことにしか使いません!児童虐待が増えるのを期待しているなら別だけど。

「(金環食の現象を利用して)太陽の正確な直径がもとまりました」
「決まる」/「決める」エトセトラと誤解してませんか?
「求める」は下一段活用の動詞だから「ま」(ア段)にはなりっこありませんってば。

しかしなんといっても最大傑作は4月9日、月曜日の正午のニュースであって、
前日の8日は復活の主日。したがってこの日はイタリア語ではパスクェッタ、
英語ではイースターマンデーといい、やはり祝日であるから
当然株式市場も休み……のはずが、アナウンサーは平然と
ロンドン市場の円相場の動きを読み上げたのである!
さすがに番組終了直前「失礼しました。先ほどのは前日の値でした」と訂正があったが
復活の主日はキリスト教最大の祝日ですぞ!
アナウンサーはジャーナリストと違って取材も原稿書きもしないのかもしれないが
世界最大の宗教のひとつが、36時間前から祝日を祝っていることくらい
気づくべきではないか?

さすがにイタリア語のテレビ・ラジオでは(間違いは多いとイタリア人は言うが)
そこまで細かいミスはわからないから怒りもわかない……と思っていたら甘かった。
今週のレシピを予習していたら、いきなり目に飛び込む次の一文。

le alcune variazioni

alcuno(いくつかの)の前に定冠詞はゼッタイにつかない!
って、イタリア語の初級レベルで習うことだぞぉ~

みんな、外国語の勉強もいいけど、もっと母国語を大切にしよう!
わが身への自戒もこめて声を大にして言う私。

そのためには読書も大事だよね~と最近読んだ本、

マルキ・ド・サド作 澁澤龍彦訳 「ジュスティーヌ あるいは美徳の不幸」

ディケンズ作 中野好夫訳 「二都物語」

やっぱりいいなあ、澁澤龍彦!

写真は、ぜんぜん関係なくて、トルコのエジプトバザールにて。