イタリアンでも食べルッカ

おいしい物と個性豊かな料理人達に囲まれた料理学校での日常記

3月30日・残すところあと2日

2006-03-31 22:16:56 | 料理学院
3月30日(木曜)
講師:ジャンルーカ先生(その9)

今期も残すところあと2日。今日明日は残った食材をなるべく有効に利用し、かつ今まで習わなかったが一度見ておきたい料理・日本で知っていたがイタリアではまだ見たことがない料理などのリクエストを募ってメニューを組むといういつもの趣向でやる。
さて今日のお客様は5年前の卒業生で、現在大阪で料理教室を主宰中の岡嶋美香さん。朝フィレンツェから来ると聞いていたが、同期卒業のケンさん(ベアトリーチェ先生の店のセコンドシェフ)と連れ立って登場。やはり関西の出身で、イタリア留学にあたっていろいろと相談・問い合わせをしたというミホさん、ユウコさんと念願の初対面。歓談するうち電話が鳴って、応対に出たジャンルーカがふりかえる。「信じられないことだが」ユウコさんの小包が着いた!思わず廊下でイレーネと抱き合って踊ってしまった。「でも中身は冬物の衣料や防寒具が多いから、また荷造りして送りかえさなきゃ」やっぱりかわいそうなユウコさん。デボラも久々に登場。「月曜日はドルチェだから絶対来ると思ってたのに」「みんなとのお別れに来たかったから、残念だったけど見送ったのよ」。彼女は4月からも月曜日には来るが、みんなとは今日でお別れ。修了書をもらい、みんなと記念写真したあと一人一人とあいさつ。パルマで5月にワインと食品の見本市が開かれるから、その時はルイージも一緒に「隊長」を訪ねて行くそうだ。美香さんは日曜日に生徒さんを連れて1日講習に来るので、そのメニューをジャンルーカと打ち合わせ、またケンさんとフィレンツェに帰るとのこと。おみやげに和菓子をいただく。

55日目の昼食:
Risotto al pomodoro e menta(ミント入りトマトソースのリゾット)
Lampredotto alla fiorentina(ランプレドットのフィレンツェ風)今日のメインはリクエストによりトリッパ。ケンさんには先日に続き連チャンになってしまうが許してもらおう。
Insalata di carciofi e indivia(アーティチョークとベルギーチコリのサラダ)
Tiramisu’ all’italiana(ティラミス)
Caffe’ エスプレッソコーヒー

55日目の夕食:
きょうは4人がエンリコとフランチェスコに夕食に招待されており、人数が少ないので、私たちも木曜のコースの食卓の末席にお邪魔。以下、トリッパとグリーンピースのみは私たちのメニュー。
Involtino di pescatrice e salmone con crema di avocado あんこうをサーモンで巻き、蒸し焼き。アボカドのクリームソース添え
Involtini di sogliola con asparagi こちらはアスパラガスを舌平目で巻いたロール巻。
Polpa di merluzzo al vapore con salsa all’aglio 銀ダラの蒸し焼き、ニンニクソース
Cacciucco alla livornese カチュッコ おなじみリヴォルノ名物。でもエンリコは嫌いだそうで、どこかおいしい店を聞き出そうという私のもくろみは水泡に帰した。
Trippa alla bolognese トリッパのボローニャ風
Piselli alla Bolognese グリーンピースのボローニャ風
Muffin agli agrumi かんきつ類のマフィン
Caffe’ エスプレッソコーヒー
ワイン:
<白>LA-VIS (Trentino Müller Thurgau) 2001
<デザートワイン>Passito di Pantelleria 柑橘類ベースのお菓子とよく合っていた。

夕食後、フェスタ用に作った折り紙の「たとう」の折り方をミホさんとユウコさんにご進講。2人ともさすがに手先が器用ですじがいい。ユウコさんは子供の時からきれいな千代紙を使わずにためてあったそうで、こちらに送ってもらうようご家族に頼んだそうだし、ミホさんのお母様は「ツル」をたくさん組み合わせて大きな鳥の形を作ったりされるそうで、今回も千枚くらい「持っていきなさい」とくださったのがこれで陽の目を見そうである。彼女が帰国した暁にはご一緒にお母様に伝授をお願いしたいものだ。

3月29日・卒業パーティー

2006-03-30 23:10:04 | 料理学院
3月29日(水曜)

夕食は卒業式をかねて夕食会をするので、午前中と、あと夕方からはその準備。おととい講習に来られた江原さんの一行がいよいよルッカを発たれるので、お別れのご挨拶に寄ってくださる。キッチンでは日本人の生徒さんたちは和食の用意、ルイージはジャンルーカやマリエッラと一緒に作業するので通訳はいらないから、オフィスでみんなが発送する小包の準備や、各種書類作りの手伝い。

54日目の昼食(というか、ジャンルーカが作った「まかない」)
Spaghetti al pomodoro e basilico トマトとバジリコのスパゲティ
Rostinciana di vitella 子牛のスペアリブ
Insalata verde グリーンサラダ
Caffe’ エスプレッソコーヒー
先週お邪魔したアグリツーリズム Podere di Rosa に泊まっていて、今夕日本に帰国されるという、横浜のユウさんがお昼のお客様。ご自宅近くに卒業生がレストランを開業しているので店の名前をお教えする。たかし君、サービスしてあげてね。

さて着々と料理ができあがりつつあるその頃、2月からず~っと税関に留め置かれたままのユウコさんとキムさんの小包に大異変が起こっていた。イレーネはこの1か月半ず~っと郵便局に電話・ファックス攻撃をかけ続けていたが、おととい送ったファックスに「不明の点、不備の点があるのなら電話連絡を」と書いておいたので何か効き目はあったかとまたも郵便局に電話したところ「この郵便物はPC上で『手続き終了、取り扱い停止』と表示されている」という!停止って何?!送り返すならまだしも、廃棄は絶対に困るよ!その後判明したのは、昨日ミラノとローマから当校(があるホテル)に税関から電話をかけたが、誰も出なかったので「受取人住所不明」とみなされ手続き停止されたのだという。時刻は18時から18時30分の間だったというがちゃんといたぞ。フロントにもパオロ支配人がいたぞ。第一、1度や2度電話に出ないくらいで「受取人不明」に普通なるか?!こっちからかけた回数は少なくともその20倍だ!怒りに震えながらもイレーネがとにかく手続き再開を依頼。係の人はとてもいい人で「この『受取人不在』の処理をした人は正当な理由も明記せずすぐ手続き終了扱いにしてしまうので、再三苦情が出ているんです。上司に報告しておきますから」と言ってくれたという。私「外国人であることを逆手に取って、これは人種差別であり非EU国民の私有財産に対する不当な差し押さえであると言いなよ」ジャンルーカ「マリエッラのいとこが憲兵だからそっちに手を回して税関を捜索させろ」。キムさんやユウコさんにはこんなこと言えないよ。どうしよう。くくく。

54日目の夕食
和食の部:巻寿司、お好み焼き、焼き鳥、野菜の串焼き、出し巻、わかめと玉ねぎの味噌汁、天ぷら(海老、ナス、ズッキーニほか)、胡瓜の浅漬け、餃子、抹茶ムース、白玉団子、ゆであずき
地中海料理の部:クスクス(塩味、甘味の2種類)、ジャンルーカがリンゴと洋梨とフィンガービスケットとパンで作った新作ドルチェ(名称未定)
お飲み物の部:フランチェスコ持参のマグナムボトルの白ワイン、隊長夫人ナオコさん持参のBarolo のワイン、生徒さんが放出した秘蔵コレクション中の Chinati Classico, Bolgheriで買ったワイン(その他多数にして数え切れず)、エスプレッソコーヒー、日本の我が家の庭で実ったユズで作った「リモンチェッロもどき」。今までは「ユジェッロ」と仮称していたが、こちらではユズを「日本のベルガモット」と言うことがわかり、ベルガモット酒と呼ぶとみんな抵抗なく飲んでくれることが判明。4月に来るナポリのマリーザのために少し残せとルカに言っておいたがすべて飲まれてしまう。Ahime!マリーザ許せ。
ゲスト:語学の先生(ルカ、エレオノーラ)、フランチェスコ、ルイージ、ナオコさん、マリエッラのご主人のジャン、ジャンルーカ一家(パオラ、ジュリア、アレッサンドロ)、イレーネと婚約者のアンドレア、カヨコさんと長男のレアンドロ君、ミョンファさんと長男のレン君、ホテル支配人のパオロさん、レセプションのスタッフのガブリエッラとイレニア。エンリコは39度の熱が下がらず、泣く泣く欠席。

食事の後一人ずつに卒業証書の授与。ただし母体である職業訓練団体のサインが間に合わなかったので、いったん感動の授与式をしたあと証書は回収。なんつうアンチクライマックスじゃ。

3月28日・料理人は電気技師の夢を見るか?

2006-03-29 16:07:48 | 料理学院
3月28日(火曜)
講師:ワルテル先生(トスカーナ州シエナ県ベットッレ)

実は先生は連絡の行き違いで、きのうが自分の講習日だと思っていてステファノ先生より先にオフィスに現れ、私の目を白黒させた(もうひとつ、実はナポリのマリーザ先生はその昔、ワルテル先生の講習日が自分の日だと思って1日前にナポリからやってきたことがある。伝染するとすれば次はステファノ先生の番だ)。どうもジャンルーカが火曜日は27日だと思っていたためのミスらしいのだが「今日じゃないのか、おいっ子が具合が悪くていつ見舞いに行こうかと思っていたところだったから、ちょうどよかった」と淡々とまた1時間半かけて帰っていき、今日は今日で「今日こそオレだよな?」とニコニコして現れるこの人はホントに人間のできた人だ!ホントにごめんなさい。そのうち食べに行くからね。
先生は電気技師になろうと思っていたのにお父さんの独断で調理師学校に入学させられ、そのままシェフになってしまった人。かたやルイージは元電気技師で料理人の卵。紹介すると、互いに相手のことを「自分の夢を実現した人」だと笑いあっていた。マリエッラの娘も電気技師にあこがれているのだそうで「料理好きになってほしいとは思っていたけど、電力公社に勤めていたマウロシェフの例もあることだし、見込みがあるのかもしれないわ」とマリエッラはひそかに期待している。じゃあ当校の生徒募集ポスターも今後はそっち方面に貼りに行くか。それにしてもどうして電気技師はそんなに若者にアピールするんだろう?
さて当校には東洋の美女のみならず好青年もいることが徐々に世間に知られてきたらしく、先日のスーザンに続いて今日はルッカから、エレナという若い女性が体験一日入学に来る。ピサ大学でイタリア文学を専攻したが就職口といっては大学の研究職か高校の教師くらいしかなく、料理人への方向転換を思案中とか。

53日目の昼食:
Gnocchi di spigola con vongole, erba cipollina e pomodori arrostiti(すずきのニョッキ、アサリ・チャイブ・トマトのソース)
Filetti di orata ai cetrioli クロダイを三枚におろして、シャトーむきにしたキュウリと一緒にフライパンでバター焼き。
Tortino di carciofi アーティチョークのプディング 本当は前菜だが、たくさんできたので半分は付け合せとして昼食に、半分は今夜の前菜に。
Crostata di limoni di giardino レモンタルト
Caffe’ エスプレッソコーヒー

エレナは結局ルイージともども、4月からの家庭料理コースに毎日来ることに決定。いかにも文学少女という感じのおとなしいタイプだけれど、今回は少人数だし年齢的にも近いから、うまくいくでしょう。

食後、土曜日からの研修に入るに当たって必要な書類の書き方の説明。前回使った「書き方見本」に数ヶ所訂正個所があるのでとりあえず口頭で説明し、その後オフィスで見本の作り直し。私「『研修生氏名』のとこは『日本太郎』みたいに仮名にすべきだと思うんだけど、何がいい?」イレーネ「ナツメソウセキ!(彼女は漱石を信奉しており、日本の国語の教科書には必ず彼の作品が収録されていると信じていた)」。レストラン名はイタリア語じゃないとまずいよね。といっても『我猫』でやたら引用されているアンドレア・デル・サルトくらいしか思い浮かばないよ。あ、坊ちゃんのマドンナもいたか。でも人名だとオーナーの名前を書くのかと誤解されるかもしれないので、結局「夏目漱石」君がリストランテ「猫(Il gatto)」で研修するという見本ができました。

53日目の夕食:
Misticanza con alici, totani all’olio e limoni Verdi マリネしたイワシ、ソテーしたヤリイカ、オリーブオイルとレモンで調味したサラダ菜の前菜。本来は薄くスライスしたアーティチョークが加わるが、これはフライに化けた気が……。
Tortino di carciofi con crema al gorgonzola 昼間食べたアーティチョークのプディングに、ゴルゴンゾーラチーズのソースを添えて。
Carciofi e zucchini fritti アーティチョークとズッキーニのフライ
Pizzoccheri con patate, verza e aglio じゃがいも、ちりめんキャベツ、にんにくのピッツォッケリ そば粉で作る、ロンバルディア州ヴァルテッリーナの伝統パスタ。本来はそば粉と小麦粉を水(ぬるま湯)だけで練るが、ベテランでないとうまく伸せずにプツプツ切れてしまうので、卵を1個入れてつなぎにする。これをゆでて上記の材料を加える―だけならよいのだが、いかにも北国の山の料理らしく、さらに大量の溶かしバターを惜しみなく注ぎ、角切りのチーズも入れる。個人的には好きな味だが、前菜2つの後だとちょっと……。
Semifreddo all’arancio con sciroppo al limone verde di giardino オレンジのセミフレッド、グリーンレモンのシロップ添え 昨日の講習会のドルチェ。
Crostata di limoni di giardino レモンタルト(昼間の残り)
Caffe’ エスプレッソコーヒー

外部からお迎えする先生はワルテル先生で終わりで、今週の後半は卒業のフェスタと、あとはジャンルーカの講習を残すのみ。日本食のメニューも固まり、必要食材リストを持って明日何人かが一緒に買出しに行くことになった。

無録なわけ

2006-03-28 22:29:05 | 料理学院
今月末締め切りの原稿を1本抱え(2本あったけど1本は落とした)、ブログの筆がさらに鈍っております。今まではウェブ日記ならぬウェブ回想録と自嘲していましたが、この際「無録」と呼んだ方がいいのかもしれません。幸い生徒さんにもブログを書いている人がいて、私よりははるかにマメに更新しているので御用とお急ぎの方はそちらをご覧ください:http://ciaomiho.exblog.jp/i5

3月27日・ドルチェだらけの講習日

2006-03-28 20:36:09 | 料理学院
3月27日(月曜)・ドルチェのフルコース
講師:ステファノ先生(トスカーナ州ルッカ)

パティシェのステファノ先生による恒例のお菓子講座の日。やはり製菓にはそれなりの道具や材料が必要なので、先生は小型のスーツケースに道具をいっぱい詰めてガラゴロ転がしながら登場。感動するがマリー・アントワネットではない私たちは昼夜の食事もお菓子だけというわけにはいかないので、昼はマリエッラが「ママの料理」を作ってくれ、夜は1日講習に来られるミニグループの講習メニューをみんなでいただく。たまたま昨日がイレーネの誕生日だったので、講習で作るスポンジ生地やパイ生地を利用してバースデーケーキも作ってもらうことになる。彼女は夕方には帰宅してしまうので昼食時に手渡せるようこっそりカードも書かなくてはいけないし、製菓は見たいしマリエッラの料理は見たいし、忙しい!万が一にも見つからないよう奥まった一角でこっそり書いたかいあって、イレーネがキッチンに顔を出す前にカードは完成。「よし完璧だ!」と思っていたら、ルイージ「きのうは君の誕生日だったんだってね。おめでと~」イレーネ「ありがとう」。Ahime!これって2年前のジャンルーカの誕生日、大好物のギョーザを深夜早朝に厨房に忍び込んでこっそり作り、そ知らぬ顔で実習を受けていたのにレストランのパオロが「きょうが誕生日?おめでとう」と大声でバラしたのと同一のパターン。これからはかりごとからはイタリア男を除外しなくては……。それにしてもドルチェにいつも情熱を燃やしているデボラ、「きょうはドルチェばかりだからすごい意気込みで来ますよ」「どうしよう、7時頃からやって来たら」との事前の予想にもかかわらず欠席。あさっての卒業&謝恩会に来ようと万全を期しているのだろうとマリエッラの予想。

52日目の昼食:
Rostinciana di cinghiale con le olive(イノシシのスペアリブとオリーブのトマト煮込み)
Panini con miglioratore(改良剤入り生地で焼いたミニパンの盛り合わせ)
Grissini(グリッシーニ)
Focaccina (ミニフォカッチャ)
Sartu’(ナポリのティンパーノ、別名サルトゥ)10年ほど前のアメリカ映画「シェフとギャルソン、リストランテの夜(原題 Big Night)」に出てきた勝負料理ってこれでしたっけ?長いこと見てないので記憶が不確か。ミートソースで味つけしたリゾット、グリーンピース、グリーンピースと同じくらい小さく丸めて揚げたミートボール、固ゆで卵のくし形切り、などが大きなテラコッタの器に層状にたっぷり詰め込まれ、オーブンで焼かれた豪華な料理。いくらマリエッラといえどこんな料理を一人で午前中に作れるわけはない。以前に作って冷凍してあったもの。
チーズとボンレスハムのパイ(講習で習った折パイ生地を使用)
バースデーケーキ(講習で作ったスポンジ生地、同じくシュー生地、クリームなどを使用)
クリームをしぼったりナッペしたりしている右手がなんとなくぎこちないし先生も気にしていると思ったら、手首の骨がずれて神経を圧迫しているため、右中指と薬指がうまく動かないらしい。近々手術すると言うが、大変だな。
このほかチーズケーキも作る予定だったが、時間の都合でカット。ブリオシュ生地で作ったクロワッサンやパン、パイ生地で作ったクリームパイ、いちじくのジャム入りパイ、リンゴをサンドしたパイは明日の朝食に。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

夕方、ジャンルーカの指令により、アーティチョークと相性がいい野生のミント「ニピテッラ」摘みに派遣される。彼の家の近くにもゴマンと生えているがまだ春が浅いため小さくて摘めないのだそうだ。彼の家と我々ハーブ班(マリエッラと私)ご用達の土手の距離は車で10分そこそこなのに、こっちのだって小さくて摘みにくいですってば。おまけに先日(23日の項参照)の時点では草刈の魔手まで伸びていたというのに。でも自然の営みとは大したもので、先日より確実に茎が伸び葉が成長していて、なんとか25人分確保。
夕方に10人ほどの日本人の小グループ到着。水の愛好・研究家でイタリアとの縁も深いシニョーラ江原、精進料理研究家の先生、プロのカメラマンで料理スタジオも経営されている方、パン教室の先生、自然素材料理教室の先生、香港在住の大阪の女性、北海道昆布の販売をされていて「イタリアの海を海草で埋めつくしたい」と語りジャンルーカとマリエッラに「私たちの行きつけのビーチは見逃して!」と悲鳴をあげられた青年、毎回このグループの運転手をつとめるピエモンテのジャンルーカ君など個性的で楽しいご一行で、講習も楽しく和気あいあいと進む。

52日目の夕食:
Parmigiana di melanzane moderna(なすのパルミジャーナ・現代風)揚げたナス、モッツァレッラチーズ、トマト、バジリコ、おろしチーズと材料は従来のパルミジャーナと同じだが、ラザニアみたいに層にして重ねて焼くとどっしり重いので、小さく1人分ずつ成形してあっさりと焼く。
Ravioli con carciofi(アーティチョークのラビオリ)中の具にもソースにもアーティチョークを使ったラビオリ。貧血防止にぴったり?
Agnello al forno con carciofi in crosta di pane sbriciolate(子羊とアーティチョークのオーブン焼き、パン粉まぶし)4月16日に迫った復活祭(パスクァ)。ユダヤ教では旧約「出エジプト記」の故事にちなんで過越しの祭(ペサハ)に子羊を食べていたが、紀元33年のこの時期エルサレムで捕えられ、十字架にかかったイエス・キリストこと「神の子羊」を記念してキリスト教でも子羊を食べる。イタリアでは地方によって子羊派と子ヤギ派に分かれるが、90%が子羊派だそうだ。今夜はその先取り。
Semifreddo all’arancio con sciroppo al limone verde di giardino(オレンジのセミフレッド、グリーンレモンのシロップ添え)
Saint-Honore’ (サントノーレ)菓子名の由来が、考案した人の苗字だったかその人の住んでいたところだったかよく覚えていないと先生(ならびにジャンルーカ)が言うので調べてみると、1846年にこれを考案したパリの菓子職人がサントノーレ通りに店を持っていたのだそうな。しかもその職人はその名をシブースト(Chiboust)というとのことだった。イタリア人はこれを「キブステ」と呼ぶ。全然かっこよくない。ジャンカルロが「マクドナルド」をなぜか「メカド」と呼ぶのといい勝負だ。えちごやマウロ先生など一度「キブステ(もちろん正しくはシブーストです)・クリーム」の由来を尋ねたら、「キブステという形のヘルメットがあり、それに似せて成形するからだ」とのたもうた。怪しいとは思っていたが、やっと合点が行った。
Caffe’ エスプレッソコーヒー



3月26日・今日から夏時間

2006-03-27 22:03:07 | 料理学院
3月26日(日曜)
この日からサマータイム(ora legale)に入る。夜中の1時59分から1分たつとふつうは2時になるが、この日ばかりはいきなり3時になる。カリニャーノ・ホテルでもちゃんとレセプションのガブリエラが宿泊客用に「お休み前に時計の針を1時間進ませてください」との掲示を出していたが、昨日コッレから帰ったジャンカルロが「進ませるんじゃないよ、1時間早くなるってことは時計の針は遅れるってことだよ」と誤った情報を真顔で伝えたため「きゃ~困った、逆を書いちゃった、すぐ書き直さないと」と彼女は一時パニックになっていた。何十年もやっているのにまだ覚えないとは不思議なことだが、実はイタリアは過去に何度かサマータイムを導入したり廃止したりしているので、たまに混乱する人がいる。普通は新聞もテレビもラジオもちゃんとアナログ時計の絵つきで報道するのだが、昨日に限って全国のジャーナリストがストをしていたので情報が少なかったのだ。
この日は夕方まで家で雑用、家事。生徒さんはゆっくり休養日に当てた人が多かったようだ。

51日目の夕食:
Insalata verde グリーンサラダ
Pollo fritto 鶏の揚げ物
Patate arrostite ポテトのオーブン焼き
Frutta calamellata (melone e kiwi) メロンとキウィのカラメルがけ
Caffe’ エスプレッソコーヒー

3月25日・2つ星レストランにお邪魔して

2006-03-26 05:00:16 | 料理学院
3月25日(土曜)・史上初・2つ星レストランでの講習会

いつもは日曜日にするはずの遠足が今週は土曜にくりあげ。シエナ県コッレ・デル・ヴァルサにあるミシュラン2つ星の店「Arnolfo」の厨房にお邪魔して講習を受けようという史上初の試みである。シエナに学校があったころは30分もあれば余裕で着けたのだが、ルッカからだと高速道路を疾走しても1時間半はかかるから、すぐに実習に入っても大丈夫なよう、講習時の服装(コックコート)を着こんでハーフコートやジャケットをはおり、シューズやサロンだけはいたり着けたりすればいい状態でバスに乗り込む。「8時に出発しないと間に合わない」とジャンカルロはつぶやいたが、なんとか10時過ぎにはお店に到着、地下の控えの間にお邪魔してまずはオーナーシェフのガエターノ先生からレシピの説明。春分も過ぎ、明日からサマータイムに入るので本来ならば春メニューになっている時期だが、今年は春の訪れが遅いのでお店のメニューは月曜日までは冬メニュー。火曜・水曜のお休みをはさんで木曜日からやっと春メニューに変わるそうだが、私たちは一足先に春メニューの中から4点を教わる。肉料理と聞かされていただけで詳細は知らなかったのでいささか不安だったが、何度か講習でとりあげ(といっても、この先生の場合料理がつねに進化発展しているので正確にはそのバリエーション)、著書にも紹介されている料理が多く、調理のプロセスを見るよりも注文設計でピカピカの厨房、各設備と用具の配置、使っている塩の精製度、などをのぞき回って遊ぶ。途中で「魚が届いたぞ」とお兄さんでソムリエのジョヴァンニが呼びに来、先生は一時中座。帰ってきて「ヒメジが入らなかった。どうする?」とボソッとつぶやいているので、そういう時はどうやって乗り切るのか見ようと観察していたが、結局判明しないまま講習は終わり、食前酒とおつまみをいただいたあと先生と写真撮影、雑談。13時より昼食。1年前にルプアンツアーで座ったのと同じテーブルにて。

50日目の講習メニュー&昼食(イタリア語料理名は以前のレシピ、および当日の調理法と説明からの類推)。
食前酒 Prosecco “Rustico” Nino Franco
おつまみ各種 オレンジの風味つきニンジンのスープ、トロペアのレッドオニオンのパン、コロンナータのラルドのフォカッチャ、パキーノのミニトマトのフォカッチャ、ミニパイ、あんきも(fegato di rana pescatrice←イタリア語は日本語にすると長くなると思っていたが、逆のケースもあった!)。前日入荷したあんこうがとびきり新鮮だったので出してくれたもの。
前菜 SELLA E COSCIO DI CONIGLIO ALLE ERBE E PISTACCHIO DI BRONTE CON PUREA DI FAGIOLI DI SORANA ウサギは骨をはずすところまではお店のスタッフの方ですませてあったので、その続きから。ももと背肉を平らにラップの上に置き、底を切ったワインのビン……にしか見えない特製ペパーミルのこしょう、塩、オリーブオイルで調味、チャービル・タイムなどの香草(シエナに学校があったころは、絶対そこで摘んだ野生のフェンネルを先生は使っていたと思う)、ピスタチオを巻いてロール状にとめ、調味してアルミホイルでくるんで80度のオーブンで焼く。冷めてウサギの「煮こごり」がゼリー状に固まったら切り分け、別に焼いておいたレバーと腎臓を置き、ソラーナ産の白いんげんのピューレと。
プリモ TORTELLI DI RICOTTA AL PESTO LEGGERO DI SPINACI E PECORINO DELLE CRETE SENESI パスタを鮮やかな黄色にするため、有機農法の農家から仕入れた黄身の鮮やかな卵を使うそうな。卵の割合が多いので生地が硬質の手触り。これをパスタマシーンで薄くのしていく。パスタをのす時の打ち粉は小麦粉、のし終わったパスタを台や布の上に置くときの打ち粉はセモリナ粉、とどの先生も言うが、ここではセモリナ粉を打ちながらのしている。わざと表面をざらざらに粗く仕上げるのがミソなのだそうだ。わざと上薬を施さずに焼いた高級茶器みたいなものかしらん。丸くぬいてのりがわりの水を周囲に塗り、リコッタとハーブの具を中央に置いて成形。ソースはバジリコならぬほうれん草で作った淡白なペーストソース。仕上げにオーブンで水気をとばしたトマトの果肉と、ペコリーノチーズが加わる。京都のイタリアンレストラン「DIVO DIVA」の西沢シェフはガエターノ先生の話が出るたびに「まだあの人はしつこく、ニンニクなしで料理してんのん?」と聞くが、ここで私はおごそかに証言する、このトマトを焼く時のオーブン皿には1枚につき、薄皮つきのニンニクが3~4個乗っていることを。
ワインはここまでが白。ALATA – Vernaccia di San Gimignano – La Rampa di Fugnano

主菜 MAIALINO DI CINTA SENESE ARROSTO CON PICCOLE VERDURE E CAVOLO NERO SALTATO IN PADELLA 今をときめくシエナ県原産の豚「チンタ・セネーゼ」種の子豚をまるごと使用。厨房にお邪魔した時はすべて掃除が終わり、パーツごとにきれいに分かれていた。この種類は脂肪が厚いので、まずはフライパンで表面をじっくり焼き、その後オーブンに移す。柔らかく焼き上げるため「低音調理」。なんと80度で12時間。生徒さんが「80度でないといけないんですか」と質問したのでセコンド担当のステファノさんに「80度以外の温度では?たとえば60度で焼いてはいけないんですか」と聞いたところ、かまわない、むしろ60~65度は理想の温度なのだという。ただその場合焼き時間が18時間かかる。12時間ならオーブンに放り込んでそのまま家に帰り、次の日出勤すればもう取り出せるが、18時間だとオーブンは2台しかないからほかのものが焼けない。要するに設備上80度で妥協しているのだと教えてくれた。焼きあがりはなるほど皮はカリカリ、肉はしっとりと柔らか。しかしそれより何より感動したのが風味の豊かさ。今まで「チンタ・セネーゼ」豚だと言われて料理を出されても、本当にそうなのかどうか味の判断ができなかったが、この日のは絶対に本物だったのでもう大丈夫、判断の基準ができたぞ。これだけ焼いてもやはり脂っこいので、舌をさっぱりさせるためつけ合わせには季節の小さな野菜と、あと黒キャベツを使う。4月7日には『フィガロ』誌が取材に来るそうだが、4センチ角くらいのサイコロ状の肉を切り分けながら、この肉で先生が「豚の角煮」を作りはじめたら今以上に日本人客が殺到するのではないかとふと思った。
ワイン:Chianti Classico (Poggio Bonelli, 2001)
このほか、手作りパンも数種。

デザートの前座(先生のサプライズ)
TORTINO DI PERA E MANDORLE E GELATO ALLA PERA(洋梨&アーモンドのカップケーキと洋梨のジェラート)洋梨づくしのデザート。

デザート TORTA DI ANANAS SOFFIATA E CALAMELLATA E IL SORBETTO ALL’ANANAS ふだんメニューで出しているデザートのバリエーション。豚は脂っこいのでパイナップルで舌をさっぱりさせようとの計算(中華料理の影響か?)。パイナップルはバニラ風味のシロップでオーブン焼きにし、上にフィリグラーナのような飴細工を乗せる。パイナップルのシャーベットを添え、硬・柔・温・冷のコントラストを狙っている。

デザートのとどめ、またはダメ押し(先生のサプライズその2)
以前はここでプチフールが出ていたが、今回はクレーム・ブリュレ、シエナ銘菓リッチャレッリ、チョコレートとピスタチオの菓子、すぐりのプチフール、パイナップルとフランボワーズのジュース、等々の盛り合わせのお盆が11人に対し5台も来る。Aiuto!
エスプレッソコーヒー
厨房のスタッフ:前菜担当ダニエルさん(オランダ出身)、プリモ担当スズキさん、セコンド担当ステファノさん、ドルチェ担当ヴェレリアさん、パン担当エレナさん(10年以上前からずっといますね、この方)、また我々が入ったためにキッチンが狭くなるので席をはずしてくださった2人の日本人スタッフの方、ありがとうございました。

この日、我々のほかに男性ばかり6人のテーブルあり。95ユーロのデギュスタシオンメニューを注文したようす。メニューと、白1冊、赤1冊ある長大なワインリストもついでに見せてもらって読んでいると、デギュスタシオンメニューには「tempura」があり(道理で前菜の作業場に日清と昭和の天ぷら粉が仲よく1箱ずつ置いてあったわ)、ヒメジはこのメニューに使われていることが判明する。どうやってカバーしたのかな。
白のワインリストを完読したケイシュウ君によると、一番高い白は1本1400ユーロのロマネ・コンティだそうである。コッレくんだり(失礼)まで来てロマネ・コンティを注文するお客っているんだろうか……。
素晴らしいレストランにしてみごとな料理なのだが、隣席のジャンカルロはことあるごとに「ジャンルーカの料理はこんなのじゃない、ジャンルーカの料理がいい」とつぶやく。確かに結婚式やとっておきの席には彼だってこういう店に来ないわけじゃないけど、結局イタリア人が足を向けるレストランって「自分の食べなれた料理(たとえばラグーソース、肉の煮込みやグリル。要するにおふくろの味)を、いつ行ってもおいしく食べさせてくれる店」なのだ。そういう料理を作って繁盛している店が日本に少ない気がするのは、ちょっと残念。

帰路は高速道路をわざと避け、だんだん春めいてきたシエナ県の小さな町をいくつか遠望しながら旧道を通ってルッカまでドライブ。生徒さんはいったんホテルに帰って夕方街に出直し、語学の先生たちとピッツァの夕食。

3月24日・ジャンルーカのシチリア料理

2006-03-25 00:03:52 | 料理学院
3月24日(金曜)
講師:ジャンルーカ先生(その8)

今日のテーマは「シチリア料理」。シチリアに親戚がいて、何度も現地で料理を食べたり勉強したりしているジャンルーカの得意なジャンルである。エンリコとフランチェスコはやはり「海の男」なので、魚料理の日にあわせて久々に復帰。2人には生徒さん一同から、先日サッカー観戦に連れて行ってもらったお礼にワインのプレゼント。今日は下ごしらえの段階では別に難しい技術の説明はないので、イタリア語があまりよくわからないスーザンと英語でおしゃべり。しかし真っ先にアプローチしていたのは最近イレーネに「latin lover」と見抜かれた「隊長」で、スーザンに「彼、英語が上手だわ」と気に入られていた。新婚6か月の身で、同じ班には古典的美人のシズコさんがいるというのに何ということであろう。皆で「ナオコさんに電話するぞ」「ブログに書くぞ」と言ってからかう(私は書くといったら本当に書くのだ)。
アメリカの食事情は(たぶん)州によって、あるいはルーツによっていろいろなんだろうけれど、コロラド州・フロリダ州に住んだことがあり、もうすぐネブラスカ州に引っ越すというスーザンの周囲の状況はかなり悲惨なようだ。魚も肉も骨を除いた切り身しか売っていないから、魚や動物の骨格をちゃんと知っている若者が少ない。栄養のバランスはむちゃくちゃで、2人のルームメイトなどは「アトキンズ・ダイエット」とかいう、肉しか食べないダイエットでやせてみせると言っている。ミルクも砂糖も摂らないしパンもダメ、マクドナルドに行ってもパン抜きのハンバーガーを注文するのだという。「効果はあるの?」「提唱者は心臓マヒで死んだわ」。化学者の彼女が畑違いのパン教室の先生をやったのも、「子供たちにどうしたら料理に興味を持ってもらえるか」と考えたあげく、粘土遊びのようにこねて楽しめ、最初とできあがりが全然変わるのでびっくりしてもらえるパンに注目したのだそうだ。「発酵は要するに化学変化だから私の専門だもの」。カレはアメリカ人だが台湾にいたことがあり、現地で中華料理の学校に通っていたそうだ。今度は彼と来たいわ、というスーザン。待ってます!
今回もパスタには、マフィアに牛耳られていた土地を買い取って有機農法で作られているという製品を使用。運営団体のホームページでは伝統料理のレシピも見られるそうです:(www.liberaterra.it )

49日目の昼食:
Insalata di arance(オレンジのサラダ)
Sarde a beccafico alla palermitana(イワシのニワムシクイ風、パレルモ版)イワシのお腹にレーズンや松の実、おろしチーズなどを詰めてオーブンで焼く。やせた(?)イワシがニワムシクイのようにぽっちゃり太るのでこの名があるらしい。それにしてもイタリア語ではイチジク(fichi)をついばむ(beccare)はずのこの鳥がなぜ日本語では虫を食することになるのか私は不思議です。
Pasta con le sarde alla siciliana(シチリア風イワシのパスタ)シチリア島がアラブ人に支配されていた頃からあるという長い歴史のある伝統料理。シエナ時代の本拠地・チェンニーナで摘んできた野生のフェンネルを冷凍庫から取り出し、大きな鍋でゆでてその中でブカティーニをゆでる。揚げたイワシ・松の実・レーズン・玉ねぎで作ったソースと和える。今日はイワシがやや大きすぎて大味だったので、80点の出来?都会っ子のエンリコが「野生のフェンネルなんてあるのかい?」と聞くので「あるところにはあるんだよ」と答える。カラブリアでも見たことがあるけど、まったく香りがしなかったのは不思議だった。あ~、またチェンニーナで摘み草したい。
Cannoli alla siciliana(シチリア風カンノーリ)中の具はリコッタとオレンジやシトロンの砂糖漬け、リコッタとチョコレート・コーヒー粉の2種類で。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

49日目の夕食:
Pasta alla “Norma”(「ノルマ」風パスタ)ベリーニの傑作オペラ「ノルマ」の名を冠したパスタ。初演が1831年なので古典料理ではない。ジャンルーカがカターニアで覚えたレシピで作る。「揚げたナスって油だらけなんだよね~」「でもおいしいんだよね~」とみな、ジレンマに苦しみながら食べる。昔の料理ってカロリーは多いんだよね。
Involtino di pesce spada con insalatine(カジキマグロのロール巻き、サラダ添え)
Cantucci di Prato e Vin santo(プラートのビスケット「カントゥッチ」、ヴィン・サント添え)
Caffe’ エスプレッソコーヒー

来週の水曜日はいよいよ卒業式&謝恩会なので、和食のメニューを決めるよう生徒さんにお願いする。今回は内輪でやるので約30人分。

3月23日・ジャンルーカ

2006-03-24 09:00:00 | 料理学院
3月23日(木曜)
講師:ジャンルーカ先生(その7)

ついにマリエッラ復帰!でも面やつれというかちょっとまだ消耗した感じ。彼女の留守中に私たちもちと自立したので、講習で使う用具や調味料類を揃えたりして手伝う。娘のルイーザは普段ママに頼りきっていて、高校2年生なのにバスの切符も一人で買いに行けないのでパパに怒られたらしい。さて今日の午後、ルッカの料理人たちで作っている組合のチャリティ食事会がガルファニャーナで開かれる。ジャンルーカはメンバー中唯一の「料理の名匠(maestro di cucina)」でもある責任上、夕方にクレープを100人分くらい焼かなくてはいけないので、授業のついでにそれを準備する、いやその準備をもって講習と代える?ことになる。一番大きなボウルを2つ使い、何キロもの小麦粉と栗の粉とミルクを混ぜて、テフロンのフライパンを総動員して焼いて焼いて焼き続けた。今回から新学期が開講する木曜夜のコースのラビオリにはハーブが要るので、まだちょっとふらふらしているマリエッラの摘み草に腰元として同行。4月なみのいいお天気だが、ニピテッラの宝庫としてふだん目をつけていた土手に草刈が施されていてがっかり。ピンピネッラは生えていたがこれは苦くてたくさんは使えないので引き返し、別の場所でボリジの若葉(1週間でものすごく大きくなっている!)、野生のにんにく、いらくさ、たんぽぽ、クレマチスなど8種類ほどを摘んで帰るとお昼すぎ、なのにまだクレープ作りは延々と続いていた。もうみんなクレープ屋さんが開けそう。

48日目の昼食:
Bocconcini di ricotta fritta con pomodoro agrodolce(一口大のリコッタチーズのフライ、トマトの甘酸ソース添え)前回も思ったが見た目は本当に「揚げ出し豆腐」。ジャンルーカがスルドク聞きとがめ、「どこに出しがあるの?」と突っ込む。じゃあ揚げっぱなし豆腐とでもいうか、揚げてすぐ「出す」豆腐というか……。とにかく日本ならお豆腐で応用したら面白そうな上品な一皿。
Cima alla genovese(ジェノヴァ風チーマ)チーマとは「頂上、先端」。山のてっぺんみたいにとんがった部分を使うのでこういう。脳みそだの骨髄だの乳房だのを卵や乾燥ポルチーニ、おろしチーズなどと混ぜ、肉に詰めてブロードで煮込むのだが、もちろん現在こんな特定危険部位オンパレードの材料は揃わないので、内臓などで代用する。イレーネはレシピをタイプ打ちしながらなぜこんな変な部分ばかり使うのかと首をひねっていたらしい。「ジェノヴァ人はケチのランキングでイタリアチャンピオンに輝くから?」とジャンルーカに聞くと、そうではなく伝統的にこういうものを使う料理だからだと言うが、それって単に昔からケチというだけでは……?。一度ジェノヴァの人に聞いてみたい。
Sformato di finocchi e cavolfiore(フェンネルとカリフラワーのスフォルマート)セレーナの授業でもやったが、トスカーナ料理の大切なレパートリーなので復習。2つの野菜の組み合わせでも、相性がよければ使えるというお手本。
Colomba di Pasqua(復活祭のコロンバ)リナルド先生の長男がパティシェで、わざわざ作ってお土産にくださったもの。添加物は一切使わずに焼き上げたので、市販品と全然違う本当の味がした。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

午後、PCの技師さんがメモリーを増設してくれ、カメのようにのろかったXPが別人いや別マシンのように変貌しとても快適である。何しろ以前はシャットダウンにすら1分以上を要し、「待っている間暇だからレシピでも訳そう」というていたらくだったのである。前任者はよくこれで我慢してたものだ。多分これで当たり前の速度なんだろうけれど、不遇時代を経験した人間には小さな幸福すら大きく感じられるものである。さらに幸運は続き、「隊長」がPCとBluetooth搭載の携帯の接続方法を詳しく解説したマニュアルを作ってくれる。「このマニュアルってきっと高く売れますよね~」「HPで9割公開して、最後のところでつまづくようにして、お助け出張費用をガッポリ請求したら儲かりますよ」「じゃあ私たちがトスカーナ支部で、隊長がエミリア=ロマーニャ支部で、ミホさんがリグーリア支部で……」計画だけは壮大だがまったく実行しない私たち。

48日目の夕食:
Crespelle alle verdure(野菜のクレープ)春野菜とベシャメルソースを具にして。
Crespelle con salsicce e formaggi(ソーセージとチーズのクレープ)栗の産地ガルファニャーナに持っていくので、生地は小麦粉と栗の粉を混ぜて使った。
Insalata verde(グリーンサラダ)
Schiacciata senese(シエナのスキアッチャータ)シエナの復活祭の伝統的なお菓子。もっともトスカーナのほかの町でも、名前や形は変わるが同じものはあるらしい。「ぺったんこの(schiacciata)」という名なのに、ビール酵母を入れてパンのように発酵させるので、実際はかなり膨らむ。リキュールに浸して香りを立たせたアニスシードがいい香り。
Caffe’ エスプレッソコーヒー

木曜夜のルッカ人対象料理コース(新開講)
Torta con carne e asparagi(肉とアスパラガスのタルト)
Ravioli alle erbette con passata di pomodoro(ハーブ入りラビオリ、トマトソース)
Coniglio in porchetta con patatine alle erbe(ウサギの「子豚の丸焼き」風、ポテトのハーブ風味)
Torta di limone e mandorle(レモンとアーモンドのケーキ)
Caffe’ エスプレッソコーヒー

夕刻いきなりこのコースにやってきたアメリカ人の女性がいて、明日の講習に参加したいからよろしくと言ってくる。たまたま泊まったルッカのホテルで案内を見たらしい。コロラド州デンヴァー出身で名前はスーザン、化学者だけれど前職はPCのインストラクター、パン教室の先生も経験し、今の仕事は動物園での遺伝子の研究だという。アメリカ人は転職が好きだというが変えすぎです!ベジタリアンだというが明日のお魚は大丈夫かな?若くてチャーミングなので、男性陣から「ぜひ彼女はうちの班に」という希望が殺到する。

3月22日

2006-03-23 22:24:44 | 料理学院
3月22日(水曜)
講師:リナルド先生その2

午後からジャンルーカがアジア料理のデモンストレーションをするので、先日くじで幸運を引き当てた3人がアシスタントとして同行し、残りの人はやむなく(?喜んで?)イタリア語の授業に出たあと6時過ぎに合流、夕食は近くのアグリツーリズモでとることが決まっているので、講習で作ったものをドルチェ以外全部お昼に食べる。しかも揚げ物から始まり、プリモと付け合せが2つもあるのにである。量は控えめにするとのことだが、テーマが「料理による北イタリア諸州めぐり」といった感じのメニュー(バター、チーズ等乳製品の宝庫)だからなあ。

47日目の昼食:
Crescentine alla Bolognese e salumi misti (ボローニャ風クレシェンティーネ)エミリア=ロマーニャの料理。ピザ生地のようなイースト入りの生地を作って発酵させ、伸ばして切って油で揚げるとふくらむ(crescere)のでクレシェンティーニ。熱々のところを生ハム・モルタデッラ・スペックなどのサラミ類のスライスと取り合わせて。
Tagliolini con mele, speck e burro al tartufo(リンゴ・スペック・トリュフバター風味のタリオリーニ)トレンティーノ=アルト=アディジェ州の料理。豊富にとれるリンゴ、燻製サラミのスペック、やはり名物のトリュフの組み合わせ。本来は黒トリュフをスライスして添えるが、トリュフが苦手なイレーネのことも考慮してトリュフバターをほんの少し入れるやり方に変えたところ、かえって全体からトリュフの香りがもわ~んと立ち上がってダメだったそうである。ということは逆に少量で「トリュフ入り!」の感じが出るから安上がりで便利かも?
Riso alla pilota(脱穀係風のリゾット)お米は日本の炊飯法とピラフの中間みたいな独特のやり方で炊き、別に火を通したサラミを混ぜて、豚スペアリブをオーブンで香りよく焼いたものを乗せる。山盛りのお米の上に横棒のように乗っかったスペアリブが、昔の脱穀道具を思い出させるのだそうな。
Roast beef con salsa alla senape(ローストビーフのマスタードソース)
Patate arrostite(ポテトのオーブン焼き)
Cipolline glassate(ペコロスのグラッセ)
Caffe’ エスプレッソコーヒー

さてアジア料理と言っても、食材道具の手配のむずかしさ、時間の制限などもあって結局和食1本やりで行くことになり、巻き寿司・そば・わかめサラダの材料を揃える。本当は和食器も山のようにあるのだけれどまだシエナに残したままなので、せめてもと「いせ辰」の風呂敷をテーブルクロスがわりに敷き、頭にはみなバンダナのつもりの日本てぬぐいをかぶる。柄はチロさんが「祭」の字の染め抜き、ミチさんが「桜吹雪」、それにケイシュウさんには歌舞伎の助六がしめてるみたいな紫の柄が当たる(彼は見たとたん辞退してイタリア語の授業に戻ろうかと考えたそうで、やはり結局くじ運は悪いのかもしれない)。場所はすぐ近くのスポーツジムで、デモンストレーション終了後ひととおり見学させてもらう。なんでもルッカで一番トレンドなジムなのだそうで、週のまん中なのに利用者で駐車場はいっぱい。きれいで広そうなスパとマッサージルームには全員心引かれるものを感じたが、予約制と聞いて、はて、時間があるかどうか……。このコースも残すところあと10日、その後はみんな散り散りに現場研修に入るから。
さてふたたび車にてアグリツーリズモ Podere di Rosaへ。働き者のパオロとしっかり者で世話好きなカテリーナのご夫妻、近くに住むドイツ人夫妻ヴォルフガングとコリーヌ、シェパード犬ザーラの歓迎を受ける。夕食はパオロさんが自分の畑で作った野菜・穀類・オリーブ&そのオイルetc.を使ってカテリーナが腕を振るったマンマの料理。ヴォルフガングとコリーヌ(ドイツとフランスのハーフ)、ミラノ出身でスウェーデンの家具メーカー・IKEAのトスカーナ販売担当員のアンドレア(スウェーデンとミラノとルッカを行ったり来たりしている)が同席。コリーヌは台湾で中国語を学んだことがあり、アンドレアは6月に来日するとかでメンバーも話題もなかなか国際的な夕食となった。

47日目の夕食:
Zuppa di lenticchie(レンズ豆のスープ)
Orecchiette alla ricotta e pomodoro(リコッタとトマトソースのオレッキエッテ)
Arista di maiale al forno(豚の背肉のオーブン焼き)
Olive sotto olio(オリーブのオイル漬け)
Patate arrostite(ポテトのオーブン焼き)
Cavolfiore gratinato(カリフラワーのグラタン)
Borlotti lessi con olio extravergine d’oliva (うずら豆の水煮、自家製オリーブオイル添え)
Cioccolatini con corn-flakes e al riso soffiato caramellato con cioccolato fondente bianco e nero(コーンフレークとライスクリスピーのブラック・ホワイトチョコレート菓子)
Limoncello fatto a casa(自家製リモンチェッロ)
Caffe’ エスプレッソコーヒー