イタリアンでも食べルッカ

おいしい物と個性豊かな料理人達に囲まれた料理学校での日常記

うまい・まずい

2009-10-07 05:35:17 | 料理学院
先日ゲストに来た、カナダで牧畜業をやっているという人が言ってた話。

牛肉の味は屠畜前の90日間で決まる。自然に生きている(または放牧されている)牛が食べるのは草だが、いくらいい草を食べさせても体重は増えるが、それだけでは食用としてはダメ。最後の3か月にトウモロコシなど炭水化物を含んだ餌をやらないと、脂肪の質が変化せず(味は脂肪の質で決まるらしい)、おいしい肉質にならないのだそうだ。いくら配合飼料を使用せず自然な餌だけで育てているといっても、牧草地じゃ逆立ちしても口に入らないという意味ではじゅうぶん不自然な餌を与えているわけですな。ちなみに飼っているのはスコットランド原産のアンガス種だそうです。

ちなみにトウモロコシといえばアメリカ大陸原産ですが、コロンブス以前の牛はもっと自然な餌ばかり食べてたんでしょうか。それともやっぱり炭水化物を食べさせられていたんでしょうか(ま、人間の食糧事情にそんな余裕はなかったと思うが)

そういえば、犬養道子さんの「聖書を旅する」の第2巻だったか3巻だったかに、フランスで一番最初にロマネスクの教会が建てられた地方というのはきまって土地が tellement riche (非常に肥沃)で、そういうところの牛は非常においしいとあったのを興味深く読んだ覚えがある。
産業だの商業だのが発達する前の富の源泉は農業だもんなあ。作物が豊かに実り牛が肥える土地でなきゃ富は蓄積できず大伽藍は建たなかったのダ。
「だったら古い大教会が残っている土地を訪ね歩けばおいしい肉が食べられる。きっと道路網も整備されているし」とマジメな巡礼者が聞いたら憤慨しそうな感想を抱いたものだが、元来「すごく豊かな」土地の草だけ食べた牛ってのもやっぱりトウモロコシのお世話になってるんでしょうか、草オンリーなんでしょうか。後者だったら一度は食べてみたい。

と考えつつ昼にも食べたブドウ入りフォカッチャを夕食にも食べていたら、近くの席の生徒さんが「やっぱりフォカッチャは焼きたてでないとダメですねえ、固くなっちゃっておいしくない」と言っていた。おいしくなくなったものをいかにして「少しでもマシにするにはどうしたらいいか」と知恵を絞ることで食文化ってのは発達してきたと思うのですがね。最近発明される料理にロクなものがないのは、保存がよくなり小金ができまずいものを拒否できる人間ばかりになってきたからか。