サザンカの宿

登場人物:ろば太(夫)、せんた君(妻、趣味「洗濯」)、感謝くん(双子娘A、癇癪持ち)、めん・たい子(双子娘B、食欲旺盛)

我が家にもついにやってきた! ガラパゴス!

2011年03月06日 | 子育て進行形
めったに落ち込まない女、
家族から陰でそう呼ばれているめん・たい子が、
拳を振り上げて自分の頭を殴っている。

ろば太
「負けるな、たい子!
 やり返せ!
 左だ、左の頭はガラ空きだぞ!」

めん・たい子
「あ、パパ。
 お帰り。」

ろば太
「いいから、コラ、油断するな。
 やられるぞ!
 って、あれ?
 一人でやってるの?
 もったいないなあ、せっかく双子なのに。
 あ、分かった。
 今流行りの、エア太鼓の達人だろ?
 テレビがないと子どもはそういう育ち方をするのか、
 まさに今話題のガラパゴスって奴だな。」

めん・たい子
「ぐすん。
 私、嫌われてるのかなあ?
 もう、学校行きたくない。」

足元が揺れた。
いや、そうじゃない。
ついに来たんだ。
ろば太もそうだった。
暗黒の中学時代、、、。
少しばかり勉強が出来て、
少しばかり二枚目で、
少しばかりスポーツマンで
少しばかり正義感が強いばっかりに、
みんなから煙たがられたあの頃、、、
(煙が目にしみるろば太)

ろば太
「気にするなよ。
 中学生になるとみんなそうなんだよ。
 なんだかちょっと他の人と違うと、
 すぐに変わり者扱いするだろ。
 いいかい!
 世の中の閉塞状況を打破するのは、
 3つの者だと言われているんだ。
 分かるか、たい子?」

感謝くん
「あの、私たちまだ、、、」

ろば太
「やあ、ワンバンコ、感謝くん。
 双子なんだから離れてないで、
 感謝くんも一緒にこっちで聞きなさい。」

めん・たい子
「えーと、
 3つの者って、どういうこと?」

ろば太
「いい質問だなあ、たい子。
 って、これ、去年流行った言葉らしいぞ。
 学校で使うと、多分、人気者になれるぞ。
 いい質問だなあ。
 ・・・
 なんでこれが流行語なんだろな?
 やっぱりテレビの福山ドラマでやってたのかな?」

感謝くん
「AKBとかKARAの何かなんじゃない?」

ろば太
「すごいなあ、感謝くん。
 それっていわゆる韓流ドラマだろ?
 おとさんは職場で新聞読んでるから
 なんとなく分かるよ。」

感謝くん
「学校でみんなKARAの話してるから、
 家でママに調べてもらったの。
 すごいね、うちのDELLは。」

ろば太
「そうだな。
 テレビより、DELLだな。」

せん太君
「インテル入ってる?」

ろば太
「いや、
 インテル?はい、デル。だろ?」

めん・たい子
「で、3つの者って?」

ろば太
「どうした、たい子。
 双子なのにそんなに浮かない顔して。
 あ、3つの者ね。
 知りたいか、え、どうしても知りたいか?」
 それはね、、、
 教えなー、、、」

感謝くん
「はやく!」

ろば太
「は、はい。
 ・・・
 んー、たとえば、ヨソ者だ。」

めん・たい子
「ああ、そういう『者』ね、、。
 怠け者、悪者、コワレモノ、クダモノ、
 カワキモノ、モライモノ、、、
 うーん、うーん。」

感謝くん
「キモノ、ハレモノ、、、」

せん太君
「所かまわず。」

感謝くん
「あ、そうか。」

ろば太
「それは、『出物腫れ物所嫌わず』だろ。」

めん・たい子
「すごい、2つもモノが入ってる。」

ろば太
「おいおい、たいちゃん。
 中学生にもなって、
 人をあらわす『者』って漢字分からないのか?」

感謝くん
「わたしたち、まだ、、、」

ろば太
「まだ、
 何だ!」

めん・たい子
「そんなに歳とってないし、、、」

ろば太
「そうだ、それだ、2つ目。」

めん・たい子
「ん?」

ろば太
「若者だよ。
 若い者だよ、人生は、だよ。」

めん・たい子
「あの、面倒だから、ついでに3つ目もお願いします。」

ろば太
「そうだな、
 3部作の完結編、3つ目の者は、
 じゃじゃーん。
 ・・・
 来週に続く。」

感謝くん
「いいから、早く!」

ろば太
「な、なんだ、感謝くん。
 相変わらず、癇癪もちだなあ。
 ぐすん。
 小学生の時は、
 ぐすん、もっと優しかったのに、
 ぐすん、ぐすん。」

感謝くん
「3、2、1、はいどうぞ」

ろば太
「バカ者です。」

めん・たい子
「何それ?」

ろば太
「バカ者の意味が分からないってこと?
 なんだと、このオオバカモーン。
 って毎週日曜夕方5時のFMふくしま聞いてるだろ。
 ニッサン、あ、阿部部礼二の大場部長だよ。
 ああ、
 バカモンゲットだぜ、ってのもあった、、、」

めん・たい子
「バカ者の意味は分かるよ。
 3つの者が何するって話だっけ?」

ろば太
「え?
 何だったっけ。
 余所者、若者、馬鹿者、、、
 社会も乱す悪い奴らみたいだな?
 ♪我らを狙う黒い影、
  世界の平和を守るためー♪」

せん太君
「♪行け、行け。
  ライダー。
  タイガーマスク♪
 懐かしいわねえ。
 最近、また、タイガーマスク流行ってるんでしょ?
 伊達ヒロシだっけ?
 ってことで、はい、たいちゃん、感謝くん、
 給食マスク洗っといたわよ。」

感謝くん
「3つの者が何なの!!!」

ろば太
「なんだよ、アニメ話で盛り上がってるのに、
 そんなことどうだっていいだろ。」

感謝くん
「3つの者がどうしたの!!!」

ろば太
「は、はい。
 えーと、、、、
 あ、そうだ、社会を変える力になるのが、
 そういう人たちだってことだ。」

めん・たい子
「で?
 それがどういうこと?」

ろば太
「知らないよ。
 自分たちで話し始めたんだろ?
 まったく、こっちは茶碗洗いとかいろいろ忙しいのに、、、
 中学生にもなって3つの者も知らないなんて、、、」

めん・たい子
「うぇーん。
 そうだ、友達もそんな風にいうんだ、、、。
 私、嫌われてるんだあああ。」

ろば太
「あ、そうだ。
 そんな話だったな。
 たいちゃんがちゃんと話さないから、
 わき道にそれちゃったじゃないか。
 どうしたんだ、学校で?」

めん・たい子
「あのね。
 夏休みに東京に行ったでしょ?」

ろば太
「そうだったっけ?」

感謝くん
「気温37度の日に行ったでしょ。
 今のうちから見ていた方がいいとかいって、
 東大の校門とかお茶のみ大学とか、
 いろんなまわったでしょ、意味もなく。」

ろば太
「最後のセリフが気になるけど。
 そうだったね、思い出したよ。
 暑かったねえ、確かに。
 東大の門が赤かったもんな。
 古臭い地下の学食で
 東大生一家の振りして
 『C定食1人前』なんて気取って
 4人で食べたもんね、
 おとさんのおごりで。
 三四郎池覗いて蚊に刺されたあと、
 そうだいつの間にか、
 お茶の水女子大に着いたんだっけ。
 ちょうどキャンパス説明会やってて、
 『お譲様はどちらの学部を希望されてますか?』
 なんて聞かれちゃって
 『いえ、私は男です。』
 『いえ、そちらのお嬢様方です。』
 『え、この双子姫のことですか?
  まだ小学生ですよ。』
 『キャンパス説明会ってご存知ですか?』
 『はあ、入り口に書いてあったんで、
  プレゼント付きで学校を案内してくれるのかなあと思って、、、』
 『本校を志願される方に
  学部長学科長自ら説明することになっております。』
 『それは、それはご丁寧に。』
 そしたら感謝くんが、
 『私は理科の観察が好きです。』
 ってハキハキと言ったもんだから、
 理学部生物学科の列に並ばせられたんだよね。
 綺麗な現役女子大生がピンクTシャツで
 『小学生で大学説明会に来るなんてすごいですね。』
 なんて標準語で言うもんだから
 4人で浮かれてぴょこぴょこ飛び跳ねてたら、
 前に並んでた中学生連れの親が、
 なんかイヤーな目でこっち見てたよな。
 いやだな、やっぱ、中学生って。」

感謝くん
「ね、気付いた?」

ろば太
「何?
 おならしたの?」

感謝くん
「私たち、夏は小学生だったのよ。」

ろば太
「そうだね。可愛かったね。
 それで?」

感謝くん
「まだ4月になってないでしょ。」

ろば太
「どうやら、そのようですね。
 ほら、カレンダー見る?」

感謝くん
「ということは、
 私たちは今?」

ろば太
「ん?
 元気なようですね。」

感謝くん
「違う。
 私たちは、今、どうなの?」

ろば太
「ん?
 双子です。」

感謝くん
「だめ、それも。
 私たちは、小学生?中学生?」

ろば太
「わかんなくなっちゃったの?」

感謝くん
「こっちが聞いてるの。
 どっちなの?
 小学生?中学生?」

ろば太
「小学生」

感謝くん
「でしょ。」

ろば太
「それが?」

感謝くん
「んもう。わけわかんない。
 ねえ、おかあさーん。」

ろば太
「さ、これで二人きりになったな。
 遠慮なく話せるだろ。
 どうしたんだ、めん・たい子。
 何でも言ってみろ。
 学校で何があったん?」

めん・たい子
「ぐすん。
 え?
 そのために30分も掛けたの?」

ろば太
「気にするな、42年のうちの30分なんて、
 おとさんにとっては星の数にも足りないさ。
 さ、言ってみなさい。」

めん・たい子
「ん?
 あのね、夏に東京に行ったでしょ。」

ろば太
「そうだな。
 気温37度の日だったな。
 ホテルのバイキングで
 冷たい水ばかり飲んで
 損したような、、、」

めん・たい子
「でね、
 夏休みの思い出の作文を書いたでしょ。」

ろば太
「そのようだね。」

めん・たい子
「私ね、
 上野の釜飯のこと書いたの。
 カニの釜飯のこと書いたの。」

ろば太
「暑い日に釜飯注文して
 店の人にビックリされた話か?」

めん・たい子
「違うの。
 私、初めて釜飯食べたでしょ。
 私だけ、カニの釜飯にしたでしょ。
 それがおいしくてそのことを書いたの。」

ろば太
「おお、たいちゃん。
 そんなに感動してたのか。
 暑くて冷たくて熱くての連続で、
 真っ赤な顔してふてくされた顔で食べてたから、
 釜飯嫌いなのかと思っていたよ。
 そうか、夏場のカニ釜は、
 やっぱうまかったか?」

めん・たい子
「おかしいよ、それ、やっぱ。
 パパのせいだよ。」

ろば太
「なんだよ、いきなり。
 急にどうしたんだよ。
 パパ、なんて。」

めん・たい子
「そっちじゃないよ。
 ずーっと、パパって呼んでるでしょ、最近は。」

ろば太
「そうか、
 いやあ、パパって言われるとなんか照れるなあ。
 パパってなんか、
 髪の毛チリチリパーマにして
 口ヒゲでも蓄えてないと似合わないような、、、」
 
めん・たい子
「私ね、作文で書いたの。
 『家族4人で東京に行って、
  おいしいカニカマを食べました。』って」

ろば太
「どうした、それが。」

めん・たい子
「あれ、カニカマって言わないんだって。」

ろば太
「カニの釜飯だろ?
 他に何ていうんだ。
 海苔ものっててたまにしか食べないから、
 ノリタマとでもいうのか?
 あ、いいな、どう?
 ノリタマってのは?」

めん・たい子
「うぇーん。
 うぇーん。
 みんなの前で自慢してやろうと思って読んだら、
 『わざわざ東京にカニカマ食べに行ったのか?
  そんなのフレスコキクチで試食できるぞ!』
 って馬鹿にされたの。
 うぇーん。うぇーん。」

ろば太
「え、あのスーパーで、カニ釜も食べられるんだ。
 そうか、夢が広がるなあ。
 あの店の音楽もいいよね。
 ♪やすくておいしい品揃え♪
 『こんなに安いのは、
  また、桁を間違えて大量入荷したからです。
  ナハハ』
 だもんねえ。
 いいよねえ、ああいう感覚。
 効率的に、計画的に、とかそういうのもう嫌だよ。
 いい加減が許される世界を目指します、
 っていう店のコンセプトがいいよ。うん。
 従業員をビデオ撮りして店内で流してるだろ、
 ああいう手作り感がいいよねえ、田舎芝居って感じで。」

めん・たい子
「そうだ、
 思い出した。
 この間、友達のうちに行ったとき、
 そのことでも笑われたんだ、うぇーん。」

ろば太
「だれだ、フレスコを馬鹿にするのは。」

めん・たい子
「友達の家に行ったらね、
 テレビがあったの。」

ろば太
「そりゃあ、あるだろ、普通。
 ジイとバアの家も、おばあちゃん家にもあるだろ。
 家の近所の電機屋にもあるんだぞ、そんなもんは。」

めん・たい子
「すごいビデオあるから、見る?
 って友達がいうから、
 うん、うん、見せてって言ったの。」

ろば太
「おいおい、
 まだ小学生だろ?
 しかも女の子だろ?
 そんなもんに興味あるのか、やっぱし。
 いい時代だなあ、今は。
 おとさんの頃はな、本屋でな、、、」

めん・たい子
「友達がね、
 黒い箱を指差してね、
 これ最新の『ソニーのブルーレイディスクだよ。』
 って言ったの。」

ろば太
「黒いのにブルーなのか、
 それもヘンだな、確かに。」

めん・たい子
「友達がね、
 『あ、たいちゃん家にテレビなかったよね。
  じゃあ、ソニーのブルーレイも分かんないよね。』
 って言ったの。」

ろば太
「どうした、たいちゃん。
 何も恥じることはないぞ。
 昔おとさんは、
 VHSかベータかでベータを選んだクチだからな。
 新しいものに飛びつく必要はないんだからな。
 別にそんなの分かんなくていいんだよ。
 堂々としろ、堂々と。」

めん・たい子
「でもね、私、本当に知らなかったから、
 正直に聞いたの。」

ろば太
「おお、そうか、たいちゃん。
 ・・・
 うん、うん。
 それもいいだろう。
 正直に聞くのが一番だな。
 そうだな、そうだったな。」

めん・たい子
「聞いたの。
 『その、ソニーってなーに』って」

ろば太
「・・・
 ん?」



 疲れたので、これで終わります。
       またね