「生活クラブ」なる謎の秘密結社から
ろば太のクレジットカード払いで
せんた君が大量5箱も取り寄せた今年のミカンは、
粒こそどれも小さいものの
甘味と酸味のバランス良好、味濃厚で、
柑橘類の嫌いなろば太でも
1回に4個は平らげてしまうほどの絶品である。
せっかくの無農薬ミカンだから、
とミカン風呂用に干していた皮も
既に4箱分の量に達し、
我が家を訪ねる客人に、
漢方薬でも作っているのか、
それを売って生業としているのか、
オイラもそれに混ぜてもらえないか、
と疑われかねない状態である。
今夜は、
めん・たい子の咳が2ヶ月振りに治まったこともあって、
その打ち上げと旧正月祝いを兼ねて、
贅沢ミカン風呂大会が催されることとなった。
投入された皮の量は、
約半月分つまり
1箱分のミカンである。
思い返せば2ケ月前、
このミカンを初めて食べた時、
これまで私が数十年間食べ続けてきた
あの所謂ミカン色の果物は、
本当は何という名前だったのだろう、
あの中にすまし顔で入っていた薄皮のブヨブヨとした小袋を、
本当に口にしたりして良かったのだろうか、
噛んで潰れて身体に流れ込んだ液体は、
私だけに満足して、
子供達には手を出さないと約束してくれるだろうか、
と過去の記憶の一部が組み替えられたような衝撃を受けたのだった。
風呂に浮かぶ本物のミカンは、
本物の香りを浴室に満たし、
子供たちの敏感な肌は、
本物をぐんぐんと吸収していく。
さすがに本物であるからこそ、
風呂上りの子供の頭の天辺からも
香りが漂うものなのであろう。
めん・たい子の髪をタオルで乾かしながら、
私はその芳醇な香りに、
眩暈しそうであった。
ろば太
「めん・たい子の頭から、
甘酸っぱい香りがするよ。
どう?」
せんた君
「ん? うわっ。
ゲ、げほ、ぐぉ、ケッ。
ミカンが腐ったようなニオイよ。
・・・
ろばちゃん、
めん・たい子の頭、
いつ洗った?」
ろば太
「思い返せば2ケ月前、
丁度このミカンを食べ始めた頃かなあ。
その後、ずーっと、
たいちゃん風邪ひいてたでしょ?
だから、
おかさんと入った時だけ洗えば十分かな、
と思ってね。」
せんた君
「すごい偶然。
私も、
ろばちゃんと入った時だけ洗えば、
って思ってたから、
2ケ月間洗わなかったのよ。
気が合うわね、ふふふ。」
ろば太
「じゃ、じゃあ、このニオイは、
ミカンじゃないんだ。」
せんた君
「混じりっけなしの無添加よ。
純度100%の、
めん・たい子のニオイね。」
ろば太
「やっぱり、
本物は、すごいんだな。」
ろば太のクレジットカード払いで
せんた君が大量5箱も取り寄せた今年のミカンは、
粒こそどれも小さいものの
甘味と酸味のバランス良好、味濃厚で、
柑橘類の嫌いなろば太でも
1回に4個は平らげてしまうほどの絶品である。
せっかくの無農薬ミカンだから、
とミカン風呂用に干していた皮も
既に4箱分の量に達し、
我が家を訪ねる客人に、
漢方薬でも作っているのか、
それを売って生業としているのか、
オイラもそれに混ぜてもらえないか、
と疑われかねない状態である。
今夜は、
めん・たい子の咳が2ヶ月振りに治まったこともあって、
その打ち上げと旧正月祝いを兼ねて、
贅沢ミカン風呂大会が催されることとなった。
投入された皮の量は、
約半月分つまり
1箱分のミカンである。
思い返せば2ケ月前、
このミカンを初めて食べた時、
これまで私が数十年間食べ続けてきた
あの所謂ミカン色の果物は、
本当は何という名前だったのだろう、
あの中にすまし顔で入っていた薄皮のブヨブヨとした小袋を、
本当に口にしたりして良かったのだろうか、
噛んで潰れて身体に流れ込んだ液体は、
私だけに満足して、
子供達には手を出さないと約束してくれるだろうか、
と過去の記憶の一部が組み替えられたような衝撃を受けたのだった。
風呂に浮かぶ本物のミカンは、
本物の香りを浴室に満たし、
子供たちの敏感な肌は、
本物をぐんぐんと吸収していく。
さすがに本物であるからこそ、
風呂上りの子供の頭の天辺からも
香りが漂うものなのであろう。
めん・たい子の髪をタオルで乾かしながら、
私はその芳醇な香りに、
眩暈しそうであった。
ろば太
「めん・たい子の頭から、
甘酸っぱい香りがするよ。
どう?」
せんた君
「ん? うわっ。
ゲ、げほ、ぐぉ、ケッ。
ミカンが腐ったようなニオイよ。
・・・
ろばちゃん、
めん・たい子の頭、
いつ洗った?」
ろば太
「思い返せば2ケ月前、
丁度このミカンを食べ始めた頃かなあ。
その後、ずーっと、
たいちゃん風邪ひいてたでしょ?
だから、
おかさんと入った時だけ洗えば十分かな、
と思ってね。」
せんた君
「すごい偶然。
私も、
ろばちゃんと入った時だけ洗えば、
って思ってたから、
2ケ月間洗わなかったのよ。
気が合うわね、ふふふ。」
ろば太
「じゃ、じゃあ、このニオイは、
ミカンじゃないんだ。」
せんた君
「混じりっけなしの無添加よ。
純度100%の、
めん・たい子のニオイね。」
ろば太
「やっぱり、
本物は、すごいんだな。」