サザンカの宿

登場人物:ろば太(夫)、せんた君(妻、趣味「洗濯」)、感謝くん(双子娘A、癇癪持ち)、めん・たい子(双子娘B、食欲旺盛)

親を見習って

2006年07月31日 | 子育て進行形
週末ぐらいは華族のような気分を味わいたいという、
せんた君の積年の夢と挫折を子供達によいこらと託し、
バレエ教室なんぞに通い始めてはや3週間。

無理強いさせて却って反発を起こし、
タイツを履くだけでジンマシンがでるようになっては困りもの、
嫌になったらいつ辞めてもいいんだと、
物分りのいい笑顔で見守っていたろば太であったが、
ん万円もするレオタードを
新たに2着も揃えたと聞いてからは、
少なくとも
レオタードが擦り切れるまでは続けなさいと、
急にノルマを課せられた営業マンのように
レッスン通いに熱が入るのだった。

海老反りになる柔軟体操を遠巻きに眺めていると、
二重丸を描かんとばかりに可塑性のある生徒に混じって、
付和雷同、
風林火山と、
背骨を微動だにしない子供も中にはいるらしく、
バレリーナではない何か堅い職業訓練をさせた方がいいのに、
まさか見知った子供ではあるまいが、
話しの種にどんな面相か見てやろうと思案していると、
足先を床から離した分だけ
床との軋轢を起こして歪んだ顔が、
ねむ過ぎて起きる気がしないと突っ伏したまま、
目覚まし時計の方角だけを指してそのまま力尽きた
今朝のせんた君の横顔にそっくりで、
必死になって親の夢を追う子供たちの表情の先にある未来は、
決して美しいものではないと思い知らされたのだった。


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自由研究完了

2006年07月30日 | 子育て進行形
感謝くん
「ねえ、おとさん?
 消しゴムは、
 どうして消えるの?」

ろば太
「手品の話かい?」

感謝くん
「違うよ。
 鉛筆で書いたところこすると、
 消えるでしょ?
 どうして?」

ろば太
「いい質問だねえ。
 そういうのを、
 夏休みの自由研究にしたらいいんじゃない?」

感謝くん
「あ、そうか。
 そうするね?
 もっといろいろ考えるね?」

せんた君(小声で)
「上手く誤魔化したわね、ろばちゃん?
 本当は、答えが分からなかったんでしょ?」

ろば太(さらに小声で)
「ち、違うよ。
 本当にそうやって考えさせて、
 自由研究の幅を広げた方がいいと思ったんだよ。」

めん・たい子
「たいちゃんも、
 考えたよ。
 えーとね、
 『絵本は、どうして、
  心の中で読めるんですか?』
 どう?」

ろば太
「す、すごく難しいテーマだね?
 じゃあ、頑張って、
 夏休み中に調べてみようね?」

感謝くん
「私も決まったわ。
 えーとね、
 『人間は、
  何のために
  生きているんですか?』
 これくらいでどう?」

ろば太
「す、すごいなあ。
 夏休み中に答えが出るのかなあ。
 まあ、一緒にやってみましょうか?」

せんた君
「おかさんも自由研究のテーマ決まったわ。
 『とうもろこしや桃やスイカのように、
  夏の食べ物は、
  どうして捨てるところが多いんですか?』」

ろば太
「子供に比べると、
 だいぶ見劣りするねえ。」

せんた君
「じゃあ、ろばちゃんは?
 何を調べたいの?」

ろば太
「そうだねえ、
 ずーっと気になってるのはねえ、
 『どうしていつも、
  買ってきたバターを
  冷蔵庫にしまい忘れるのですか?』
 ってことかな?」

感謝くん
「簡単だよそんなの。」

めん・たい子
「そうだよ、分かるよ。」

ろば太
「え?
 すぐに答えがでるようなことなの?
 なーに、答えは?」

感謝くん
「おかさんが、
 買い物するからだよ。」

めん・たい子
「そうそう。
 正解は、
 『おかさんのせい』だよ。」


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研修の成果

2006年07月28日 | 炉端でろば太
なんだ、
ろば太はまた、
ブログ更新してないじゃないか、
最近やる気がないな。
なーんて思わないでくださいね。

何しろ今日まで
会社強制の
2泊3日の研修だったんです。

その後は、
3年間のALT期間が満了し、
アメリカに帰ることになった、
合気道の兄弟子デビッドくんの送別会
(稽古終了後なので、
 21時スタートです、、、。)
もあったのですから。

忙しいんですよ、これでも。
仕事以外で。

さて、
先ずはその2泊3日の研修ですが、
事前課題のプリントをもらった瞬間、
行く気がなくなりましたよ。
何しろ、
この歳になって、
「以下にある40の文章を、
 20回音読してくること。」
なんていう課題だったんですから。

音読なんて、
好きな詩や小説の一部なら
常日頃してますけど、
(それも珍しい人だと言われますが、)
普通の社会人が、
音読なんてしますか?

うちの子供だって、
夏休みの日課になっているはずなのに、
やってないんですから。
(あ、明日起きたら、
 3日分やってもらわないとね。)

そういうわけで、
研修前から既に
早く終ればいいのに、
と思っていたんです。

ところが、
初日の講義で、
いきなりSMAPの歌を全員で唄い、
なんだか変な研修と思っているうちに、
サザンのインストロメンツをBGMにして、
臨床心理士でもある先生が
面白い講義をしたかと思うと、
なぜかグループごとの即興劇をやって、
その後、
パズルゲームをやって
なーんていう研修が続いて、
アレレ、
今までの研修と違うぞ、
と身体も心も
完全拒否の体制からは解除されたのでした。

意識改革セミナー
に似てなくはないのでしょうが、
ともかく大雑把に言えば、
ネガティブ思考の罠に陥ってはいけない。
何もいいことがない。
ポジティブに考えなくてはいけない。
その具体的な方法は、
これこれのものがある。
という研修でした。

職場の人間関係を改善するのを目的にしているのでしょうが、
これを家族関係に生かさない手はありません。

早速、
罰ゲームが、
「相手のいい所を3つ挙げる」
という簡単なゲームを
子供達とすることになりました。

ろば太
「あ、感謝くんの負け。
 じゃあ、たいちゃんの
 いい所を3つ挙げてください。」

感謝くん
「ええ?
 なんにもないよ。」

ろば太
「そういうネガティブ、、、
 ええと、
 自分も言われて嫌なことは言わないコト。」

感謝くん
「あ、そうか。
 たいちゃん、たいちゃん、
 イイトコ、、、
 うーん、
 思い出せない。」

ろば太
「じゃ、1コにしよう。」

感謝くん
「ああ、それなら、
 ノートに綺麗な絵を描いてくれたコト。」

ろば太
「なるほど。
 それもいいね。
 じゃあ、次ね。
 ・・・
 あ、たいちゃんの負けだね。
 じゃ、おとさんのいいトコロを
 3つ言ってください。」

めん・たい子
「一つでいい?」

ろば太
「う、うん。
 いいよ。
 じゃあ、飛び切りのイイトコお願いします。」

めん・たい子
「おとさんのいいところは、
 えーとね、
 仕事に行ってくれるトコロ!」

ろば太
「どう解釈すればいいの、
 せんた君?」

せんた君
「ポジティブに、
 ポジティブにね。」


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あちらを立てれば

2006年07月26日 | 子育て進行形
テレビがないせいか、
夕食を終えた子供達は、
黙々と計算プリントを解いている。

昨日から
繰り上がりの計算ができるようになって、
ますます算数にのめりこんでいるようだ。

めん・たい子
「7+3+8は、
 最初に7と3で10にするから、
 10+8で、
 分かった、
 18だ。」

ろば太
「すごいなあ、
 数字が3個ある計算もできるようになったね。
 天才ちゃん。
 算数ハカセちゃん。」

めん・たい子
「うん。
 サンツのかずのけいさんだーいすき。」

ろば太
「サンツって何?」

これだこれだ、
とめん・たい子が指している算数プリントをみると、
「3つのかずのけいさん」
と書いてある。

ろば太
「これはねえ、
 みっつって読むんだよ。」

めん・たい子
「ふーん、そうなんだ。
 今日さあ、
 ゴカメのプールだったから、
 疲れちゃった。
 ほらみてみて、
 よくできたマークだよ。」

スイミングスクールからの連絡ノートをみると
5日目の欄にマークがついている。

ろば太
「ゴカメって5日目のことね?
 日と目はちゃんと読んでるのにね。」

めん・たい子
「あ、ねむくなってきちゃった。
 また、算数の夢でも見て寝ようっと。
 おとさん一緒に寝よう。」

布団に入ってしばらくすると、
めん・たい子の寝息が聞こえてきた。
やがて、
ハッキリとした寝言が聞こえてきた。

めん・たい子の寝言
「もっとしたかったのにー。」

どうやら夏休み中に預かってくれる児童館に、
大好きな算数プリントを持っていくのを
忘れた夢を見ているようだ。

めん・たい子の寝言
「でも、でも、
 きょうは、、、」

ろば太
「なんだい、たいちゃん。
 言ってごらん。
 未来の数学博士ちゃん。」

めん・たい子の寝言
「きょうは、
 もってきなかったの」

ろば太
「え?」

めん・たい子の寝言
「もってきなかったの。」

ろば太
「きなかったのって
 方言じゃないよな?
 ・・・
 明日から、
 国語のプリントに変えるぞ、いいな!」

お腹にかけてやったはずのタオルケットが、
寝返りのせいで
今はめん・たい子の首のあたりに移動している。
ゴージャスマフラーを首に巻いて
クーラーのないこの家で、
算数プリントを解いている
そんな素敵な夏の夜の夢を邪魔しないようにと、
額に汗するめん・たい子をそのままにして、
ろば太は寝室を離れた。

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さすが奥様、ご英断にございます。

2006年07月25日 | 子育て進行形
夏休み初日から、
子供達はスイミングスクールに通っている。

5日間の短期集中講座なら
スクールバック付きで
入会金も不要
というキャッチコピーを
せんた君の無垢で高潔な心が
キャッチしちゃったのである。

お風呂に入るときでさえ
アゴの先端が水面についただけで
乱心のように手足をバタつかせ
流れるプールのように黒目を動かして怖がっていた子供達が、
4日目のレッスンを終え、
ビート板で10メートルも泳げるようになった
というのだから、
背泳ぎやキックターンは、
社会生活で直接生かされる技術ではないけれども
子供達のやる気を育てる力にはなるのかもしれない。

目を見張る効果に
心の奥底まですっかりプール色に染まったせんた君は、
短期集中講座が終って、
このまま正規レッスンに移行すれば、
年会費無料
という
霊験あらたかな次なるお札をテーブルに広げ、
もはや続ける続けないの素人の選択ではなく、
週1回か2回かという
上級者向けの課題に挑んでいるという自負心から、
やおらパソコンを起動して表計算ソフトを呼び出し、
1回あたりの単価を弾いては頷き、
いくら得になるかを確かめては微笑み、
「やっぱり週2回か。」
と独り言に似せた結論を
その場の構成員の合意のように
こちらの意識の下に滑り込ませるのだった。

「どうしようか?」
というのは
既に自由意見を求めるものではなく、
私の意見をなぞりなさい、
という
編みタイツの足を組むセールスレディが
共通に備えている不動心からのものであることが、
語調からありありと感じられるのだが、
肩越しに覗いていた計算式が、
どう検算しても1人分でしか設計されていないことが気になり、
機嫌を損ねないように、
これをいかにも本人が気付いたように仕向けるため、
「ということは、
 我が家の場合は、
 双子だから、、、」
と餌を垂れる太公望のように
継いだ言葉に獲物が掛かることを期待して待っていると、
少し動揺しながらも
素人風情に指摘されずとも
先刻承知の上だという不自然な落ち着きをもって、
「分かってるわよ。
 双子だから、
 ・・・
 1人分で登録しておいて、
 交替で通わせるんでしょ。」
と、
体重も身長も髪型も顔付きも
全く違う二卵性双子であることを忘れ、
尊大な優しさでウインクをしたあと、
自分のグッドアイデアをひけらかすつもりはないのよ、
と大時代な動作で伸びを一つした後、
いきなりパソコンのコンセントを抜いて
会議終了を宣したのだった。

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応用力

2006年07月23日 | 子育て進行形
感謝くん
「おとさん、
 運気って何?」

ろば太
「おかさんまた、
 運勢暦読んで落ち込んでるんだね?
 いいトコだけ信じればいいのに。」

感謝くん
「ウンキとウンコって、
 親戚?」

ろば太
「1年生になっても、
 相変わらずウンコ大好きだね。
 あのね、
 サーフィンって分かる?」

感謝くん
「寝たあと起きて、
 腰くねくねして笑うヤツでしょ?」

ろば太
「ん?
 ま、分かってそうだから続けるとね。
 ウンキっていうのは、
 海の波みたいなもんで、
 それに上手く乗れれば、
 サーフィンのお兄さんみたいに楽しく遊べて、
 最後に笑えるんだよ。」

感謝くん
「ふーん。
 じゃ、やっぱりウンコに似てるよね?」

ろば太
「おとさんの話きいてた?」

感謝くん
「聞いてたよー。
 だんてウンコもさあ、
 出たいナーって時にトイレに行けば大成功だけど、
 もうちょっと遊んでからって
 後から行くと出ないでしょ?」

ろば太
「すっごく、
 近くて遠いっていうか、
 遠くて近いっていうか。」

感謝くん
「あ、波の音が聞こえる。」

ろば太
「あ、流し終わったのか。
 どれ、
 たいちゃん終わったから、
 次おとさんトイレね?」


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格の違い

2006年07月22日 | 子育て進行形
やあ、久し振りだね。
どっか具合でも悪かったの?
しばらく見なかったから、
どんな顔だったか忘れちゃったよ。
と、言いたくなるくらい
太陽を見るのは久方振りのことだった。

子供達は大慌てで一輪車を引っ張り出し、
練習を再開したが、
2週間以上のブランクがあって、
上手くバランスが取れない。

それが面白くなかったのか
すぐに家に引っ込んで、
2人で2階の押入れに閉じ篭ってしまった。

しばらくしても降りて来ないので、
忍び足で近づいて戸を開けてみると、
慌てた二人は、
口を閉じて首を横に振っている。

「どうしたの?」
と聞くと、
「何も食べてないよ。」
と正直にウソを言う。

「本当に?」
と形ばかりの詰問調で尋ねると、
二人は顔を見合わせて何事かを協議し始める。

片方が、指を3本立てると、
もう一方が、無言でそれを取り消し、
自分の指を1本立てて、
これでどうだと主張する。
妥協点が見出せたのか、
お互いに指を1本立てた状態で、
微笑を浮かべ、
ようやくこちらに顔を向ける。

後ろ手に隠していた小さなカプセルから
赤色のチョコレートを1つ取り出し、
「じゃあ、これで。」
と言って私の手のひらに乗せる。

驚いた風を装ってしばらく動かないでいると、
もう一方がしまったいう顔をし、
他方を厳しい目で咎めたあと、
背中に手を回して
チョコレートを二つつまんで、
「やっぱり、3個?」
と済まなそうに差し出してくる。

慣れた手付きでチョコレートをポケットにしまい、
似たような顔で笑いながら2人の頭を撫でると、
押入れの暑苦しさが3人の平和を邪魔してしたことに気が付く。

大きい順に並んで押入れから外に出ると、
下で洗濯をしていたはずの人が、
腕組みをして頬を膨らませている。

振り返って5本の指を立てる私に、
子供達は、両手の指を力の限り伸ばし、
「10個、10個」
と言っている。


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理解力、ウン%

2006年07月20日 | 子育て進行形
今日は1学期の終業式だったそうだ。
家に帰ると感謝くんが泣きそうな顔をしている。

ろば太
「どうしたの?
 誰か転校するの?」

感謝くん
「違うの。
 おとさん、
 感謝くんの「はげみ」見ないでね。」

どうやら昔でいうところの通信簿が渡されたらしい。

全くもって迂闊だった。
今の小学校では、
5段階評価が無くなっているとは聞いていたが、
どこかに良し悪しの評価は残っていると考えてしかるべきだった。

同じ学校に通っているから、
当然、双子は同じ通信簿をもらって帰ってくる。
○の数が多ければ、
多い方はいつもより饒舌になり
ひとしきりバカ話をした後は、
寝転がってオマタおっぴろげで
漫画を読んでいても不思議は無い。
一方、○の少ない方は落ち込んで、
オヤツにも手をつけず、
慰めてくれる人の帰りを
ベランダで泣きながら待つようにもなるだろう。
それへの対処法を考えておくべきであった。

二人の通信簿をこっそりと開くと
案の定、
○の数が1つだけ違う。

先生からのお便り欄は、
漢字交じりで書かれているために、
歯の浮くような誉め言葉が書かれていても、
子供たち本人は全く分からない。

ところが、
○の数は容易に比較できてしまう。

○の代わりに%でも¥でも
他の記号を表示するように、
教育委員会に嘆願しておくべきだった。

ろば太
「気にすることないんだよ、感謝くん。
 たいちゃんの方がおかしいんだよ。
 全部○なんて、異常だよ。
 可愛げがないよ。
 付け入る隙がなくて、
 友達もできないと思うよ。」

せんた君
「ろばちゃん、ろばちゃん。
 違う方法で!」

漫画本で腹鼓を打つめん・たい子を気にしながら、
ろば太の説得工作を中断するせんた君。

ろば太
「あ、そ、そうだな。
 ヨソの子ならともかく、
 自分の子をダシに使っちゃいけないな。
 えーと。」

汗をかきながら、
人間の価値は、
国語、算数云々の教科の成績では測れないこと、
むしろ小さいうちは、
生活態度の方が重要であることを逡巡と諭すろば太。

せんた君
「ちょ、ちょっと、ろばちゃん。
 教科の方は感謝くんも全部○なのよ。
 ○ついてないのは、
 生活面なのよ。
 「時間を守ること」に○がないのよ。」

通信簿を見直すと、
なるほど珍しくせんた君のいうとおりである。

ろば太
「14、15、16と。
 ○の数は全部でいくつだい?」

せんた君
「18よ。」

ろば太
「なるほど。
 で、今、なんどきだい?」

せんた君
「19時よ。」

ろば太
「じゃ、ご飯にするか。」

せんた君
「だめよ。
 元になってる落語知らないんだから、
 そんなので誤魔化せないわよ。」

ろば太
「まいったな。
 どう話そうか。
 感謝くん、とにかくこれはもう過ぎたことなんだから。
 過ぎたことで悩んでも仕方がないよ。
 ええとね、
 いいかい、今からおとさんが手を叩くよ。
 ほら、
 このポンって叩いた間に、
 何か嫌なことあった?
 さっきまでの悩みとかあった?
 このポンっていう短い間に、
 悩むことなんて出来た?」

感謝くん
「そんな短くちゃ、
 何にも考えられないよ。」

ろば太
「それでいいんだよ。
 いつでもこの、
 ポン、
 しかないんだよ。
 この
 ポン、
 がいくつも続いて
 時間が流れていくように感じるけど、
 いつもこの今、
 この瞬間の、
 このポン、
 しかないんだよ。
 過去も未来もないんだよ。」

感謝くん
「なんか分かんないけど、
 お腹すいてきちゃった。
 おとさん、
 一緒に食べよう。」

ろば太
「ほ、良かった。」

感謝くん(ニッコリ笑顔で内緒話)
「学校の「はげみ」にさあ、
 「かわいい子」の欄があったら、
 たいちゃんと○の数、
 いっしょだったのにね。」


悟後の時間

2006年07月19日 | 子育て進行形
めん・たい子
「おとさん?
 今日、うれしかったよ。」

ろば太
「あれ、今日は、たいちゃんの方か。
 どうしたの?
 授業ぜーんぶ自習だったとか?」

めん・たい子
「ジシュウって何?」

ろば太
「ま、気にしないで続けてください。」

めん・たい子
「たいちゃんね、
 じゃんけんで勝って、
 スプーン係になったの。」

ろば太
「何するの、その係は?」

めん・たい子
「給食が終わった時に、
 みんなのスプーンを集める係。
 いいでしょ?」

ろば太
「何だってそんな割りに合わない仕事を、、、。
 といってはいけないな。
 スプーンが汚れているとか、
 そう思うのは、
 おとさんの修業が足りないからなんだろうな。
 ・・・
 ある人がね、
 水が欲しいって頼まれて、
 コップに水を汲んで渡したんだって、
 で、もう一杯くれって言われて、
 次も同じように水を汲んだんだけど、
 今度は、
 ごめん、
 オシッコの検査で使ったコップだったんだけど、
 よかったら飲んでって、
 ウソついて渡したんだって。
 そしたら、さっきの人、
 今度は飲めなくなっちゃったんだってさ。
 本当は、さっきの水と同じなのに。
 汚いと思っちゃったから、
 カラダまで受け付けなくなっちゃったんだね。
 ・・・
 それを6歳にして、たいちゃん、
 君は我が子ながらコトの本質を
 既につかんでいるんだね。」

めん・たい子
「?」

ろば太
「だってさあ、
 みんなのスプーン、
 汚いって思わないんでしょ?」

めん・たい子
「うん、ぜーんぜん。」

ろば太
「おー、ジーザズ。
 この子を神とお呼びください。」

めん・たい子
「だってさあ、
 みんな最後にきれいになめるんだもん。
 ピカピカになってるんだよ。」

ろば太
「おー、神よ。
 正しいのはどちらなのでしょう。
 歳を重ねるごとに
 心は濁っていくばかりなのでしょうか?」


本当のところは?

2006年07月18日 | 子育て進行形
感謝くん
「ねえ、おとさん?
 今日ね、廊下掃除当番だったんだけど、
 うれしかったよ。」

ろば太
「無理するなよ、感謝くん。
 掃除なんてうれしいわけないじゃない。
 無理にイイ子ちゃんになると、
 ストレスで胃がボロボロになるよ。」

感謝くん
「?
 あのね、廊下でお掃除してたらね。
 先生が、うれしいこと言ってくれたの。」

ろば太(若い新卒先生の声色を使って)
「まあ、感謝くんったら、ステキ。
 廊下が、鏡みたいにピカピカになったわ。
 心が澄んでいる人が磨くと、
 廊下さんだって、
 それに答えるんだわね。ウンウン。」

感謝くん
「それ誰?」

ろば太
「え、まあいいから、いいから。
 で、うれしいことって、何?」

感謝くん
「あのね、
 お掃除しようかなあって雑巾探してたら、
 先生がね、
 「もう遅いから、
  今日はいいよ。」
 って言ってくれたの。」

ろば太
「本当にうれしい?」

感謝くん
「うん、とっても。」

ろば太
「ふふふ。
 50年後に思い出しても、
 そう思えるかな、ふふふ。」

感謝くん
「だって、その分早く帰れたから、
 おかさんのお手伝いして、
 おとさんのオカズ作れたんだよ。」

ろば太
「あ、そうなの?
 んじゃ、よかったね。
 ラッキー!」

ライダー浄瑠璃

2006年07月16日 | 子育て進行形
ということで、
何故10日以上もブログを書かないでいたのか、
それをこれから3年かけて書くことにしよう。
と、いうプルーストのような
現実時間と乖離した物語時間を設定することはやめて
さっそく事実だけを並べて説明することにしよう。

今から10日ほど前のことである。
家に帰ると子供達がろば太にしきりとせがむのである。
「おとさん、
 手をつないでてね。」、と。

病気になって気弱になった幼い魂が、
あどけない唇を借りて
そんな願いをうわごとで発している
というわけではない。

二人とも
いわゆる子どもらしい、
雲ひとつない笑顔で、
快活な調子で、
むしろ
そうすることが太古からの摂理であるかのように
ろば太に向かって真っ直ぐに発するのである。

セピア色に染まる夕薄暑の世界にろば太を連れ出し、
コモンと呼ばれる団地内共有スペースに駆け出す夏の少女たち。

コモンの中央には、
樹高10メートルを超えるミズナラが
西陽を受けながら佇立し、
結果生じた巨大な影が、
私たちに涼を与えてくれていた。

ミズナラの根元には
ピンクとブルーのヘルメットが並べ置かれていて
3人の到着を待ち焦がれるように
じっと幹に身を凭せていたのは、
2ケ月前に買ってすぐにまた封印された
イエローな一輪車なのだった。

サイズの違いから、
所有者が固定されているため、
ヘルメットの取り合いで時間を浪費することもなく、
2人は頭の大きい順に整列し、
先頭のライダーピンクが一輪車を太腿で挟み、
背後のライダーブルーが
よういドンで一歩さがるような格好で足を前後に開き
車止めのような要領で
前足を犠牲にしてタイヤを抑える。

ライダーピンクは両手を投げ出してろば太の腰にすがりつき、
着替える猶予を奪われた形状記憶シャツが泣き顔に替わるのを確かめながら、
ゆっくりと生地を手繰り寄せて身体を起こしていく。

怪我をしたろば太の右手を気遣って、
正義の味方ライダーピンクは
ろば太の左側に並ぶような位置に身を移し、
ここで迷いのない人のように背筋を頂天に向けて伸ばしたあと、
竹とんぼのように両手を広げて、
独特な変身のポーズを決める。

この瞬間にライダーピンクの生みの親であるオヤッサンろば太は、
ライダーのまだ小さな右手を包み込むように片手で受け止め、
沈みかけの夕日がゆっくりとシャッターを切る間、
できるだけ白い歯をみせるような笑顔を保ち、
これを記憶に念写して、
初日の有意義な練習を終えたのだった。


いつものアレです。

2006年07月15日 | 炉端でろば太
近頃、ブログ更新していないね。
と職場で指摘されたろば太。

全世界に向かって
本来あるべき教育の姿を提言していたつもりが、
睡眠時間を除けば、
おそらくは家族以上に長い時間を共有しているであろう
執務室の背後に座って
定規で背中を掻きながらウットリと笑うオッちゃんに
言い咎められたのだった。

不愉快極まりないが、
人格者を装うろば太は、
あくまでも謙虚に軽く頭を下げる。

このとき自然に頬が赤らみ、
額に汗が滲むのだから、
我ながら技巧派の役者だと感心し、
また自分のことを好きになってしまう。

そういえば昔、
こんな戯れ言を書いたことがあった。
・・・

気後れ、出遅れ、乗り遅れ。
後手に回って逃げ遅れ。
ぐずつき、もたつき、後ずさり。
埒があかずに、足踏みし、
気付いた時には、もう手遅れ。
頭上がらず、歯が立たず、
他人の足元ばかり見る。
そんな自分が
今日も大好き。

・・・

それと
これから書こうとする話には、
何のつながりもない。

(あ、また、悪い癖だ。
 へんなところで、
 「つづく」で逃げようとしてる!)

「つづく」

さようなら、せんた君

2006年07月14日 | 炉端でろば太
「明日は土曜日だけど、
 ダンボールのゴミ捨てがあります。
 冷蔵庫にオカズあります。
 以上であります。(笑)」

置手紙があった。
本人は「あります」で韻を踏んだつもりなのだろう。

(笑)の文字を親指の爪で2度3度と傷を付け、
冷蔵庫を開けるろば太

生卵とさけるチーズと水羊羹。
中段の扉から覗くと
この程度のものしか見当たらない。

最下段の野菜室を覗く。
力なく曲がった玉葱の芯が先ず目に飛び込んできた。
ここにもオカズらしきものはなさそうだ。
よっこらしょと立ち上がって
足で野菜室を閉めようとしたが、
大きなビニール袋の先端が邪魔をしてきちんと閉まらない。

もう一度野菜室を引き出して、
そのビニール袋の先端を折り返すと、
水分を含んだ付箋紙がハラリと落ちた。

「あたり!(笑)」
と書かれている。

付箋紙を大事につまみ上げ、
そのままゴミ箱に放り込む。

気を取り直してビニール袋を開けてみると、
茶色い土のような塊の中に、
目と鼻と口らしきものが見えた。

嫌な予感がしていた。
結婚以来、そんな感じを持っていた、
といっていいかもしれない。

ぬか床に
小ナスを2個、
逆さまに突き刺してこれを目に見立てたつもりだろう。
無理に半分に折ったキュウリがその上に並べられてこれは眉なのだろう。
半月切りにした大根が下にあってこれは唇なのだろう。
しかし、そのヌカ顔の中心にどうしてこの野菜を使ったのだろう。
同じような赤色なら、
ニンジンの方がマシじゃないか。

ろば太は一人で夕食をとった。
オカズは各種野菜のヌカ漬である。

ミニトマトのヌカ漬は、
存外、
美味であった。



大人の解決法

2006年07月03日 | 炉端でろば太
たんこぶが出来たので、
休みます。

ろば太はここで蹲(うずくま)った。

社会人になって15年は優に過ぎたというのに、
そんな理由で会社を休んでいいものかどうか、
判断に窮したからである。

覚えている限りでは、
謎の生物のようなたんこぶが頭に住み着いたのは、
小学校5年生以来のことだ。

たんこぶが痛むので、
休ませてください。

と小学校のサッカー部監督に話したときは、
何の羞恥心も違和感も感じなかったように思う。
しかしこれはどうにも、
真っ当な大人が使う日本語ではないような気がする。

ろば太はここで頭を抱えた。
その手がたんこぶにあたって、
今度は飛び上がった。

我が家のクローゼットが狭いのが悪い。

僅か3畳分のスペースに、
洋服だけではなく、
靴やカバンや大工道具、
米袋に一升瓶に避難袋までもが押し込まれているのである。

棚の上部に置かれた洗濯カゴの中には、
旅行用小物大物が納められ、
カゴの側面の格子に引っ掛けるようにして、
ろば太の半袖長袖シャツが約10枚、
住所不定の状態で、
針金のハンガーで吊るされていた。

たんこぶは、
半袖シャツを取ろうとした時、
一緒になって落ちてきた洗濯カゴの中の、
機内持込用バックからの贈り物だったのである。

どうしてよけなかったの、
とめん・たい子に言われて
返す言葉もない
合気道週3日稽古男ではあるが、
それはさておき、
「たんこぶ」に替わるいい言葉はないだろうか、
とろば太は、
ロダンのポーズのように考え込んだ。
その時のグーの拳が、
またもたんこぶにあたって涙が出た。

頭に怪我をしたので、
は、チト大袈裟に聞こえるかもしれない。
頭に腫れ物が出来た、
だと、気持ち悪がられるだろう。
頭が増えた、頭が変化した、頭が膨れた、
これらは、
外形の変化を正しく表現している筈なのに、
意図が正しくは伝わらないだろう。

どうにもいい表現が思いつかない。
上手い言い方がないものかと気になって、
何も手につかない。
どうにもやっかいだ、
こんなことをあれこれ悩むのは
邪魔だ、面倒だ、
目の上のたんこぶみたいだ。

ハタと閃いて額を叩いた。
案の定、
たんこぶをモグラたたきのように叩いてしまっていたが、
今度は歯を食いしばって我慢をする。

目の上のたんこぶと言えばいいんだ、
と思いついたような気になって、
自分の出した問題をゆっくりと振り返ってみるが、
何も解決されていないことに思い至って、
照れ隠しに頭を掻いた。

爪の先がたんこぶの中腹から頂上を行き来し、
たんこぶの方が先に、
いい加減に休ませてくれ、
と音を上げたのだった。


力づく

2006年07月02日 | 子育て進行形
楽しい夕食を終えて、
疲れたといって横になるろば太。

めん・たい子
「カレー好きな人、手挙げて!」

素直に手を挙げる感謝くんとせんた君。

めん・たい子
「じゃあ、カレー嫌いな人、手挙げて!」

子供の言いなりになりたくない気分のろば太、
何も反応しない。

めん・たい子
「あれ?
 おとさんは?
 おとさんは、ナーニ?」

ろば太
「おとさんは何かって?
 フフフ。
 おとさんは、ろば太だよ。」

親子の交流を目的にしためん・たい子の問いかけに、
冷や水を浴びせ、
勝ったつもりになって大の字で不貞寝する
反抗期のろば太。

しばらくの間めん・たい子が黙っているので、
やりすぎたせいで泣き出したのか、
とゆっくり目を開けた瞬間、
どすんと馬乗りになったかと思うと、
再び閉じないようにと
両手でろば太のまぶたを抑え、
黒目の奥に向かってはっきりとこう言った。

めん・たい子
「じゃあ、
 ろば太の人、手挙げて!
 手挙げて!」

素直に両手を挙げて降参するろば太。
ニコニコ笑うめん・たい子。
遠くで拍手する感謝くん。
コーヒーを飲みながら雑誌を読むせんた君。