久し振りに親戚のお爺ちゃん(大叔父?)と会う双子姫
誰なのか思い出せないのか、
やはりよそよそしい様子。
ろば太
「どうしたの?
もじもじして?」
感謝くん
「ちょ、ちょっと、、、」
めん・たい子
「う、うん、、、」
ろば太
「そんなに緊張しないで」
感謝くん
「い、いやあ、そんなんじゃないんだけど。」
めん・たい子
「こ、これなんだよね。」
ピースサインを出すめん・たい子
ろば太
「何?
イエーイって?」
めん・たい子
「違うよ。
これだよ。」
人差し指、中指、薬指の3本を立て、
その後、震えながら薬指を折り曲げるめん・たい子
ろば太
「んがー!
どうしたんだーっ?
薬指にいつもの元気がないじゃないか?」
感謝くん
「お、おとさん、、、
私も、もう、だめだ、、、」
初め3本とも立てていたはずの指が、
薬指、人差し指と順番にしな垂れていくのを
自分ではどうすることもできずに
ただ詮方なく眺めるしかない無力な子供たち、、、
ろば太
「お、おいっ!
く、薬指もかあっ!
だ、だめだー、次は中指もかあっー!」
残された最後の望み
人差し指をもう一方の手で支え
額のあたりにかざしたあと
聞き取れないことばをつぶやきながら
祈るように指を見つめる双子姫
ろば太
「おおっ!
ゆ、指が!」
親戚のお爺ちゃん
「何だい?」
ろば太
「あ、大叔父さん。
みてくださいよ、奇跡ですよ。
子供たちの指が。」
親戚のお爺ちゃん
「何だって?
よく聞げねえなあ。」
大きめの声でろば太
「子供たちの指が、
曲がるんですよ。」
今話題の超能力者が
大勢の観客に囲まれたスタジオの中で
目の前のスプーンをゆっくりと曲げていくように
最後に残った人差し指を
優しい息遣いで操り始める双子姫。
やがて、
自らの力でそうしているというのではなく、
何か不思議な導きに誘われているかのように、
そしてその誘いは、
決して我々を怖がらせるものではなく、
昔々からそうであったようにごく自然に、
そう、それはまるで、
野生の生き物が
深夜緊張を解いてサバンナの漆黒の闇の中で、
ゆっくりと眠りにつくように
安らかにうなだれていくのを
太古から繰り返されてきた当然の営みとして
穏やかな表情で見守る子供たち
ろば太
「き、奇跡だ。」
やがて、
蚊が耳元で鳴くような細く長い音が続く
ピーーーー
プーーーーー
ろば太
「ありゃ、なんだ、この音は。
昔、音響カプラでパソコン通信した時代の、
ピーひょろひょろーーーー。
い、いや、
これこそ太古からの神のことばか、
そしてこのほんのりとした燻(いぶ)されるような香り、、、
懐かしく、そして癒されるような、、、
これは、た、タイムスリップか?」
神秘体験を素直に受け入れて
何も迷わず恐れない神の子供、双子姫。
それでも神の前での礼儀を心得ているのか、
自重した低い声で話し始める。
感謝くん
「すっきりしたね。」
めん・たい子
「今回も同時だったね。」
感謝くん
「ハモった?」
めん・たい子
「うち、アルト」
感謝くん
「うちは、ソプラノ。
イェーイ。」
めん・たい子
「聞こえたかな?」
感謝くん
「大丈夫っしょ。
あのお爺ちゃん、
耳遠いみたいだから。」
呪縛がとけてふと現実にかえるろば太
ろば太
「何の話?」
感謝くん
「ん?
あれだよ。
いつもの3、2、1だよ。」
ろば太
「え?
いつものって、、、」
頭の中で日常の些事雑事を振り返るろば太
3、2、1、ゼロ?
突如、NASAのスペースシャトル打ち上げのように、
爆発音とともに蘇るろば太の記憶
ろば太
「おならか?」
めん・たい子
「あたりー!」
ろば太
「ハモった?」
感謝くん
「バッチリ」
同じ部活動の先輩と後輩が
最後の最後にお互いを認め合って
思い出を振り返りながら肩を叩き会うように、
目をぱちぱちさせながら微笑みあう3人
感謝くん
「ばれないよね?」
ろば太
「あ?
大叔父さん?
大丈夫じゃない。
耳遠くなったみたいだから。」
ろば太
「あ、そうだ大叔父さん。
これ、さっき買ったんですけど、
よかったら、、、」
4個入り400円の今川焼を3人で分けたあと
自分がお金を支払ったご褒美にと
残った1個を子供が眠ってからこっそり食べるため
バッグの奥に隠していたのを思い出したろば太。
肩まで手を入れて
バッグの奥の方にあるはずの今川焼を探っていると、、、
親戚のお爺ちゃん
「オレは食べたばっかりだから、いらねえよ。」
ろば太
「え?」
親戚のお爺ちゃん
「今川焼だぺ?」
ようやくバッグの奥に押し込められた今川焼の
湯上り美人のようにしっとりと濡れた薄皮の
その人肌のせつない暖かさに触れたばかりのろば太の指が止まる。
ろば太
「ど、どうして分かったんですか?」
親戚のお爺ちゃん
「何だって?」
大きな声でろば太
「どうして、
今川焼だったって分かったんですかあっー?」
親戚のお爺ちゃん
「ああ。
耳は聞こえねえけど、
オラあ、鼻は利くんだよ。」
鼻は利くんだよ。
鼻は利くんだよ。
除夜の鐘とそれをつく撞木のように
頭を突き合わせる双子姫。
108っつの鐘のように、
胸の辺りで言葉が響きわたる、、、。
鼻は利くんだよ。
鼻は利くんだよ。
3、2、1、ピーーひょろひょろろー
(後記)
ちょいと時間があったので、
久し振りに書いてみました。
みなさん、お元気でしたか?
最近、合気道の稽古サボっているので、
いつでもお酒飲みOKですよ。
浜なら「月のうさぎ」とか「もっきりや」とか「富八」とか、、、
中ならお安い「だんまや」で夜中までとか
「蘂(はなしべ)」とか、、、どこでもいいですけど、
会なら「百姓三人」「鳥元」んー、最近行ってないので、不明、、、