無明長夜もかくばかり…

食のこと、家族のこと、ペットのことや日々の雑感… 
手探りをしながら、書き綴っていきたいと思います。

憂いの玉箒

2006-07-01 | 生活


タバコが値上げされた。
オレの愛煙する銘柄は、それまでの270円から290円になった。
オレは一日に30本近く吸う。ヘビースモーカーと言えるだろう。
買うときは2箱ずつ買うから、1日に600円からの金が無くなる。
よくローンの返済で小遣いを減らされたオトーサン、
いわゆる1000円亭主のサラリーマン諸兄は、
これを機にタバコを止められる方も多いのではないだろうか。

オレ自身ここ2年程は、社内が完全禁煙になったこともあり
本数自体は減ってはいるのである。
以前はそれこそコンピュータに向かいながらだから
「吸う」というより「燃やし」ていたようなものだった。
机を離れ、非常階段まで行って火をつける。
この手間だけでだいぶ本数が減った。

とにかくここのところ、喫煙家であるだけで肩身が狭い。
都内の殆どが歩行禁煙地区になってしまったから
たまに喫煙スペ-スに行くと、煙が充満していて
己の口から吐き出された煙であるから、自業自得なのだが
不健康極まりない。勝手なものだ。
飲食店で、自分が喰っているときに隣でタバコを吸われると
嫌煙家の言うことがよくわかる。
本当に勝手な言いぐさだ。
しかしやめられない…

酒は『憂いの玉箒』と言われている。
呑みすぎなければ薬にもなる「百薬の長」だ。
しかしタバコはそうはいかない。「百害あって一利無し」である。
中島らもさんの小説だかエッセイだかにあったが
「酒を1本買うのに、役所に行って
住民票を申請くらいの手続きが必要になったら
おそらくアル中もだいぶ減るであろう」というものだった。
これを「タバコ」に置き換えても、充分ニコチン中毒が減りそうだ。
なにしろ、歩いて1分もかからない喫煙所に行くだけで本数が減るのだから。

子供の頃、大人の男はタバコに匂いがした。
誕生日や、父の日は貯めていた小遣いで
近所のタバコ屋で買う「ピー缶」が、親父へのプレゼントの定番だった。
親父はオレの頭に口を押しつけ、フゥッと煙を吹き付け
「ほ~ら、頭が火事だぞ~」と言ったり
煙のワッカをたくさん口から出して、オレを楽しませてくれた。
初めて堂々と親父の前でタバコを吸ったときの緊張感…
タバコにまつわる思い出は、数限りなくある。
もちろんノスタルジーをタバコが止められない理由にするつもりはないが。



深夜、タバコを1本点け、煙をくゆらせる。
そばにいたリタが、立ち上る紫煙を目で追い、オレの顔を見る。
意地悪でフッと顔に煙を吹きかけると、嫌な顔をして逃げていく。
このままではリタにまで嫌われてしまいそうだ。

嗚呼…無明長夜もかくばかり…