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料理にはっちゃんの気持ちが入っているから
85歳になるいまも、ランチ限定の食堂「はっちゃんショップ」を切り盛りしている「はっちゃん」こと田村はつゑさん。一人500円で食べ放題の料理を求めて、多くの人が群馬県桐生市郊外にある小さな店を訪れる。いまは新型コロナの影響もあって客数が減っているが、以前は県外からの客も多く、開店時間の11時30分には店外に列ができていたそうだ。
この日は、塩鮭、焼き塩サバ、じゃがいもの煮物、かぼちゃの煮物、切り干し大根など庶民的な家庭料理が15皿ほど並んでいた。鍋には魚のあら入りの味噌汁。漬物や塩辛、焼きそばなどもある。目玉はふきのとう、山椒、ナスの天ぷら。山椒は前日、はつゑさんが採ってきたそうだ。
店内を見渡すとお客さんは7〜8名ほど。食事を終えて店を出る人と入れ替わりに、また客が訪れる。一人客は、はつゑさんに言われるまでもなく相席になる。皆、口々に「ここに来たら、みんな知っている者同士のようにおしゃべりをする」「料理にはっちゃんの気持ちが入っているから、また来たくなる」と言う。
30代の男性は、仕事が休みの日は自転車で30分かけてやってくるそうだ。「ごはんがおいしいのはもちろんだけど、はっちゃんやほかのお客さんと話すのが楽しくて」と語る彼にとって、はっちゃんショップは人と触れ合える貴重な場となっているようだ。
おかずが減った頃に来たお客さんからはお金をとらないのがはつゑさんのポリシーだ。この日も、「500円払おうとしたら、無理やりお金をポケットにねじこまれちゃったよ」と笑っている人がいた。
開店当初から一人500円という値段は変わらず、小学6年生までの子どもは無料。毎月7万円ほど赤字が出るが、8年前に亡くなった夫の遺族年金で補填している。「儲けるためにやってるわけじゃないから」と、はつゑさん。大変だろうからと、お米や野菜を届けてくれる人もいる。
やる気があれば、どんな苦労も我慢できる
起床は7時半頃。起きたら頬を掌で叩き、「がんばんぞー」と拳を握って気合を入れるのが日課だ。「みんなもやったほうがいいんじゃないの? やる気がなけりゃあ、なんにもできないよ」。
自宅の向かいにある食堂にやってくるのは8時。3時間ほどかけて、コロナ以前は50人分ほどの料理を作っていた。開店中はお茶を配ったり、お客さんとおしゃべりしたり、常に動き回っている。最後のお客さんを見送ると片づけをし、翌日の食材の調達にでかける。
「いまでも30キロの米、持ち上げて運んで、バイクで精米所に行ってるよ」。足腰が痛くなったりしないのかと聞くと、「どこも痛くないよ」と頼もしい。
店を手伝っている76歳の住吉竹美さんは、「はっちゃんと一緒に働いていると元気が出るね」と言う。どうやら手伝いの人もお客さんも、はつゑさんからパワーをもらっているようだ。
はつゑさんは「やる気があれば、どんな苦労も我慢できる」と語るが、実際その人生は苦労の連続だった。3歳の時、渡良瀬川の氾濫で家が倒壊。終戦翌年、母親が32歳の若さで病死すると、父親は以前からの浮気相手だった女性を家に入れた。継母とうまくいかず、10歳で魚屋に奉公に出されるが、稼ぎはすべて父親にとられた。
17歳で、地場産業の機屋(はたや)で働き始めたが、父親が給料を前借りしたため、毎月小遣いの200円しか手にすることができなかった。その200円で映画を見るのが唯一の楽しみだったというはつゑさん。映画館で2歳上の田村昇三さんと出会って結婚し、3人の子どもを授かるが、夫の女性関係に悩まされた。
子育てをしながら内職、11時から午後2時までは工場でお茶出し、3時から8時までは魚屋で働き、日曜日は結婚式場でお運びのアルバイト。働きづめに働きながら、日曜の給料だけは自分のためにと、15年で300万円貯めた。
50ccの原付バイクで、3ヵ月半かけて日本一周の旅へ
57歳の時、はつゑさんは思い切った行動に出る。50ccの原付バイクで、3ヵ月半かけて日本一周の旅に出たのだ。当初、夫から反対されたが、引き下がらなかった。
「小学校にも行かせてもらえなかったから、遠足も修学旅行も行ってない。だから一人で修学旅行したいなぁって。離婚してでも行きたいよって言ったら、自分の退職金から100万円くれたんだよ。子どもたちも、お金出してくれた」
500万円を持って旅に出たはつゑさんは、長崎県雲仙普賢岳の被災者のために300万円を寄付するなど、あちこちで寄付をする。「コンビニのおにぎりでも食ってればいいや、と思ってね。身体が丈夫だし、また働けばお金になるから」。
一方で人のやさしさにも触れる旅だった。九州のある町では、宿屋がどこも満室で8軒に宿泊を断られたが、ガソリンスタンドの店主が家に泊めてくれた。
「あぁ、こういう親切な人もいるんだなぁって。みんなに助けられて生きているようなもんだよ」。その思いが、赤字が出ても500円で食堂を続けている原点だという。
みんなが喜んでくれるなら、それでいい
日本一周から5年後、長年パートをしていた会社の倒産で職を失い、一念発起して惣菜の行商を始めた。魚屋で働いていた頃、煮物作りを担当していたのでお手の物だ。するとこれが評判に。「ごはんと味噌汁つけたら食堂やれるよ」とまわりに勧められ、68歳で自宅の自転車置き場だった小屋を改装して食堂をスタートさせた。
近年は、テレビなどで紹介されたことで県外からの客も増えたが、地元の一人暮らしの高齢者の支えになっていることがうかがえる。「出前もしているよ。知り合いが、足や腰が痛いから届けてほしいというので、昨日も3軒配達したよ」と住吉さんが教えてくれた。
「常連さんは80歳くらいの人が多いかなぁ。そういう人には、余ったおかずは持たしてやるんだ。ここで知り合って、結婚した60代の人もいるよ」と語るはつゑさんは嬉しそう。
だが、子どもたちからは、人にそんなに親切にしても、倒れた時に何かしてもらえるわけじゃないよ、と釘をさされているそうだ。
「かまやしないよ。みんなが喜んでくれるなら、それでいい。そのためにやってるんだから。お金がなければ、ないような生活をすればいいんだし。自分のことを自分で決められる自由さえあれば。いまが人生で一番幸せだよ」
人に喜んでもらうことがパワーの源、そう言い切るはつゑさん。昨年の緊急事態宣言中は店を閉めていたが、今年はこういう時だからこそ、頑張ってなんとか続けていきたいと笑った
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病気、介護、お金、片付け、空き家、お墓……。「実家」のさまざまな問題を解決するにはどうすればいいのか。
年収約370万円以上なら大幅負担増
2017年8月、70歳以上の高齢者の医療費の負担が見直された。
これまでのように、「負担するのは現役世代、給付を受けるのは高齢者」という構造では、健康保険制度を持ちこたえさせるのが難しくなってきている。そこで、負担・給付の両面で全世代型の社会保障にしていくために、年金などの収入が一定額を超える70歳以上の高齢者の負担が引き上げられることになったのだ。
そのひとつが健康保険の高額療養費の自己負担限度額だ。
高額療養費は、医療費が家計の重荷にならないように、1カ月に患者が支払う自己負担分に上限を設けた制度だ。この制度のおかげで、医療費が高額になっても際限なく自己負担しなくてもよいのはありがたいが、今回の見直しで負担が増える人が出てきたのだ。
70歳以上の人の高額療養費の限度額は、「通院のみ(個人単位)」「通院と入院の両方した場合(世帯単位)」があり、これまでは所得に応じて「低所得者I」「低所得者II」「一般所得者」「現役並み所得者」の4区分に分類されていた。このうち、負担増となったのは一般所得者と現役並み所得者だ。
具体的な収入で見ると、一般所得者は住民税が課税されている世帯で年収約370万円までの人。現役並み所得者は年収約370万円以上の人だ。今後、どのように負担が増えるのか、通院時の医療費が月100万円かかったケースで比較してみよう。
「高額療養費の限度額」は最高で約25万円に
一般所得者の通院時の高額療養費の限度額は、これまでの月1万2000円から、17年8月に1万4000円に、2018年8月からは月1万8000円に引き上げられる。
一方、年収370万円以上の現役並み所得者は、かなり負担が増えそうだ。まず、これまで月4万4400円だった通院時の限度額は17年8月からは月5万7600円にアップ。さらに、18年8月からは通院のみの計算はできなくなり、通院と入院の両方した場合に一本化される。
同時に所得区分が3つに細分化され、年収約370万~約770万円の人は8万7430円、年収約770万~約1160万円の人は約17万円、年収約1160万円以上の人は約25万円に引き上げられる。高所得層はこれまで4万4400円だった高額療養費の限度額が、一気に約9万~約25万円に増えることになる。高齢の親の医療費の負担を不安に思う人もいるだろう。
医療費の備えとして、真っ先に思い浮かぶのが民間保険会社の医療保険だが、高齢期になると民間保険への加入は難しくなる。民間保険は事前に健康状態を告知することが義務づけられており、病歴や持病によっては加入を断られることもある。持病があっても加入できるタイプもあるが、保険料は割高だ。たとえば、A社の引き受け基準緩和型の医療保険(入院日額1万円)に70歳の男性が加入した場合、月払保険料は約1万6000円。1年間では約19万円にも及ぶ。
高齢者の高額療養費が見直されたのは事実だが、いきなり負担が青天井で増えたわけではない。引き上げ対象となったのは高所得層なので、ある程度の貯蓄があれば賄えない金額ではないだろう。
そこで、お勧めしたいのが医療費貯蓄だ。医療費専用の銀行口座をつくって貯蓄しておき、まとまった医療費が必要になったら引き出して使う。高齢になると数十年前に加入した養老保険などの満期金が入ることもあるが、それらをそっくり貯蓄しておけば、新たな保険に入らなくても十分に医療費を賄うことはできる。高齢期の医療費の備えは貯蓄を中心に考えよう。
たった「70円」で親の健康を守る方法
高齢になると複数の医療機関を受診している人も多い。それぞれの医療機関で処方された薬をまとめてみたら、飲み合わせがよくなかったり、効果の同じ薬が重なっていたりして、精神不安や認知機能の低下などを引き起こす例が報告されている。
こうした健康被害を防ぐうえで頼りになるのが、「かかりつけ薬剤師」による服薬支援だ。患者が指名した薬剤師が通常の服薬指導(残薬のチェック、後発医薬品の情報提供、薬歴の管理など)に加えて、服薬状況を継続的に把握し、24時間いつでも相談に応じてくれる。医師に対して処方内容の確認・提案も行う役割も担っているので、問題のある多剤投与を減らせる可能性もある。
服薬指導の料金は調剤報酬における「かかりつけ薬剤師指導料」が算定され、自己負担額は約70円(75歳以上で1割負担の人の場合)。通常は「薬剤服用歴管理指導料」が算定され、自己負担額約40円(調剤基本料1、または4の薬局にお薬手帳持参の場合)なので、1回あたり約30円高くなる。それでも高齢の親の薬の多剤投与に悩んでいる人にとっては、何でも相談できるのでコストパフォーマンスは悪くないだろう。
がんが治ったのに認知症になることも
高齢者にとってがん検診にはデメリットもある。たとえば、検診でがんの疑いが持たれ、精密検査を行ってもがんが発見されず、結果的に心身ともに負担だけがかかる「偽陽性」や、生命に影響のないがんを発見する「過剰診断」がある。
実際、検診で見つかるのは上皮内がんという、ほとんど進行がんにならないがんが多い。胃や大腸なら内視鏡で簡単に切除できるが、乳腺に上皮内がんが見つかったとき、標準治療では乳房の全切除だ。それくらいの覚悟が持てるだろうか。
高齢者の場合、肉体的に手術に耐えられるかの問題もある。手術後も、80歳以上の高齢者は1週間もベッドにいると寝たきりになることが多い。精神的ダメージが重なると認知症を発症する場合もある。がんの手術に成功しても、認知症になるリスクがあるわけだ。
仮に進行性のがんに進んでも高齢者の場合は寿命が先に尽きることが考えられるし、進行性のがんなら検診を受けなくてもいずれ症状が出てわかる。がん検診を受けるかどうかの目安として、75歳までなら受けてもよいといえるだろう。
早川幸子
ジャーナリスト
マネー誌などで医療、民間保険、社会保障などを手がける。
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永田 宏
長浜バイオ大学教授
理学修士(筑波大学)、医学博士(東京医科歯科大学)。
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万葉集の時代、天皇や皇族は現代よりはるかに自由に恋愛をし、恋心を歌に詠んでいたのは、誰もが知るところである。
今の季節にぴったりな歌にこのようなものがある。これは大津皇子が石川郎女に贈った歌である。
あしひきの山のしづくに妹待つとわが立ち濡れぬ山のしづくに
(あなたを待っていると山を濡らす夜露に私もすっかり濡れてしまいました)
そして、石川郎女はこのように返歌している。
吾を待つと君が濡れけむあしひきの山のしづくにならましものを
(あなたが私を待ってくださっている間にすっかり夜露に濡れてしまったのですね。できればその夜露になってしまいたい)
二人の恋は忍ぶ恋であったと言われているが、その詳細は今となっては知る由もない。遠い万葉の時代、二人を隔てる山を仰ぎながら、使者を通してこのような歌を贈り合っていたのだろうか。
執拗な「ネットいじめ」と誹謗中傷
そして現代。現代の皇室では自由な恋愛も許されないようである。むしろ、現代のほうがよほど生きづらく、息の詰まるような時代になってしまったようだ。
眞子さまの結婚をめぐって、小室さんの親の借金がどうとか、説明の仕方が悪いとか、国中からさんざんな批判や誹謗中傷を受け、果ては髪の毛の長さにまで文句を言われ続けている。ネット上は、さながら「ネットいじめ」の様相を呈していると外国でも報じられている始末である。
レポーターは、ニューヨークで小室さんを追いかけ回した挙句、職場にまで用もないのに電話をし、これが手柄だといわんばかりに繰り返しテレビで映像や音声を垂れ流す。その際に無言であったとか、ポケットに手を入れていたなどということもまた細かく文句を言われている。しかし、いきなりカメラやマイクを突き付けられて愛想良くしろというほうが無理だろう。
成城大学の森暢平教授によれば(日刊ゲンダイDigital「眞子さま「複雑性PTSD」公表後のTV局解説委員長の無責任な批判を問う」)、テレビ番組で読売テレビの解説委員長である高岡達之氏は、「(ここは)日本です。…例えば、銀行におうち買うお金の相談とか、ポニーテールの行員が並んでる銀行で金借りまっか?」「もうニューヨーク散髪屋開いてますよ。行ったらいいじゃないですか!」と批判を繰り返していたという。
森教授は、こうした言動とそれを放映するテレビ局に対し、「無責任な放送は、無責任な世論を形成する一因となる」と厳しく批判しているが、私もまったく同感である。
別に銀行員がポニーテールであっても金を貸してくれるのであれば喜んで借りる人もいるだろうし、散髪しようがしまいが本人の自由だ。この人の価値観を押し付けられるいわれは誰にもないし、これは明らかな容姿に基づく偏見である。多様性の時代とかいう言葉はどこに行ってしまったのだろうか。
今年のノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎先生が、日本に帰りたくない理由を問われ、日本では周囲との「同調」が求められるのに対し、米国では周りを気にせずやりたいことができるからと答えたことが報じられた。まさに、上に挙げたような偏狭な価値観の押し付けが日本を息苦しくしている。
複雑性PTSDの公表
相次ぐ誹謗中傷を気に病んだ眞子さまが「複雑性PTSD」を公表した。するとすぐさま、本人に会ったこともない医師が「この診断は勇み足だ」「適応障害が適切だ」と批判をした。
「適応障害」というのは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と同じくストレスに起因する障害であるが、PTSDやうつ病などの診断基準を満たさないものを放り込んでいた「ゴミ箱」診断的なものであった。そのあいまいさが批判を受け、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)において定義が整理されたという経緯がある。1)
そしてその議論と関連して、同じストレス関連障害である複雑性PTSDが提唱された。複雑性PTSDとは、ICD-11によれば、逃げるのが困難な長期的なストレス体験(拷問、虐待、DVなど)の後に、ストレス体験の再体験症状(いわゆるフラッシュバック)、回避症状(トラウマを思い出すものを避ける)、過覚醒(イライラ、不眠、感覚過敏など)、持続的空虚感、無力感、対人関係上の困難(不信、孤立など)、感情制御の困難(怒りの爆発など)などが生じるものだと定義されている。
古典的なPTSDは、生命を脅かすような恐怖体験をした後に、上述のような症状が発現するものである(トラウマは必ずしも長期的体験ではなく、1回きりのものであることが多い)。事件事故の被害者、戦争や紛争のサバイバー、大災害の被災者などがこうした状態に陥ることがよくある。
実際に診断を下した精神科医の秋山剛・NTT東日本関東病院品質保証室長は、「「複雑性PTSD」は、言葉の暴力、例えば、ネット上の攻撃、いじめ、ハラスメントなどでも起こります。こういったトラウマを体験すると、どなたでも「複雑性PTSD」になる可能性があります。ネット上の攻撃、いじめ、ハラスメントなどのために、尊い生命が失われていることは、みなさまよくご存じの通りです」などと述べている。そして、眞子さまには上に挙げたような症状がいくつも当てはまることを指摘している。
ただし、この診断を幅広く当てはめすぎて「過剰診断」にならないようにすることは注意を要する点である。
メディアからのさらなる誹謗中傷
複雑性PTSDの診断公表後、メディアはさらに誹謗中傷を加えている。たとえば、デイリー新潮は「国民の声を“誹謗中傷”呼ばわり」と題し、「小室さんが眞子さまをマインドコントロールしている」などと報じている。
メディアやSNSがこれほどまで眞子さまを追い詰めたと知ったのならば、それに同情したり、行き過ぎを反省したりするのが自然な人間的反応である。人間には元来、相手の表情やリアクションを見て、「攻撃」のスイッチがオフになるという神経的装置が備わっているからだ。しかし、なおも攻撃を続けるような人々は、その装置が壊れているのかもしれない。
ジャーナリストの青沼陽一郎氏も、病名の公表に「強烈な違和感を覚える」と述べ、「体のいい言論封殺だ」「小室家の借金トラブルがなければ世論もこんなに騒然としない」「国民の反発は「故なき批判」ではない」などと述べている(JBPress「眞子さまの複雑性PTSD公表、狙いが「批判封殺」なら逆効果に」)。
まず、そもそも「批判」とそれを逸脱した「誹謗中傷」とはまったく違う。現時点では明確な線引きがあるわけではないかもしれないが、言論に携わる人がこの2つを雑に一緒にして論じるのは問題だ。「誹謗中傷」を「批判」であるというのなら、言論の自由を持ち出せば何を言ってもいいことになってしまう。誹謗中傷に対抗することを「言論封殺だ」と言うのは、まさに今、国を挙げてネット上の誹謗中傷対策を講じようとしていることに逆行する主張である。
また、相手に落ち度があれば何を言ってもいいと言わんばかりの主張には、憤りすら覚える。これは「いじめられるほうにも問題がある」と言っているのと同じである。借金問題があろうと、髪の毛が多少長かろうと、何を言ってもいいわけがない。
タレントのスマイリーキクチさんが、Twitterで「メディアもネットも、この人は“叩いてもいい”と決めつけると、集団で吊し上げる。批判する人達は「叩かれる理由がある」と開き直る。一億総いじめっ子時代か…」とつぶやいているが、まさにそのとおりである。
青沼氏はまた、小室氏に対して「それで嫁を幸せにできるのか、それも誕生から生育を見守ってきた皇室のお姫さまが嫁ぐだけに、国民も無視はできない」と述べ、時代錯誤の家父長的なパターナリズムを開陳している。
眞子さまは、一個の人格を備えた大人である。本人の生き方は本人が決めればよい。幸せになることもあろうが、傷つくこともあろう。それも人生であり、自由である。心配だからと言って、それを言い訳にして一挙手一投足あげつらうような小姑的な言動をすることは、本人からすると迷惑この上ないだろう。これは、相手を一人の人間として見ていないからで、まさに人権軽視が露呈している。
これは深刻な人権問題である
つまるところ、一連の問題は一言で言えば、深刻な人権問題なのである。
皇族はどんなに批判を受けても、誹謗中傷されても、そもそも反論したり、訴訟を起こしたりすることができない立場である。それを知っていて言いたい放題という状況は、卑怯というほかない。もちろん、どんな意見を持つもの自由であるし、戦前のような「不敬罪」があるわけではないのだから、自由に意見を述べることはできる。
その一方で、これまでも特に女性皇族は頻繁に誹謗中傷の的となっており、それを原因としてメンタル不調に陥った例はたくさんある。このような状況をいつまで放置しているのだろうか。早急に効果的な対策を講じる必要がある。皇族の人権問題について、これまで国民も政府も明確な議論を避けてきた。しかし、一連のいきさつを見るにつけ、やはりきちんとした議論が必要であることを痛感する。
そして、まるで日本から逃げるように、一時金も辞退して異国で新生活を送ろうとしている二人には、心安らぐ場所を見つけ幸せになってほしいと心から願わずにはいられない。
筑波大学教授
原田 隆之
TAKAYUKI HARADA
1964年生まれ。一橋大学社会学部卒業。同大学院社会学研究科博士前期課程、カリフォルニア州立大学心理学研究科修士課程修了。東京大学大学院医学系研究科でPhD取得。法務省、国連薬物犯罪事務所(ウィーン本部)、目白大学人間学部教授等を経て、現在筑波大学人間系教授、東京大学大学院医学系研究科客員研究員。専門は、臨床心理学、犯罪心理学。
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健康診断や人間ドックで検査した血糖レベルに明確な異常がなくても安心するのは早い。血糖レベルが比較的高い状態を放置すると、糖尿病はもちろん認知症やがん、フレイル(虚弱)などのリスクが高まることが分かってきた。専門家は高血糖によるリスクの蓄積を「血糖負債」と呼び、健康なうちに検査値に注意を払うよう呼び掛けている。
定期的な血液検査で数値を確認することが重要だ(写真はイメージ=123RF)
順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京・文京)の糖尿病・内分泌内科を今年受診した50代半ばの経営者のAさん。綿田裕孝教授が診察すると、腎臓機能の低下によるたんぱく尿や網膜症など糖尿病の合併症状が確認された。
綿田教授はAさんに「腎臓の状態がよくないので、いずれ透析治療になるかもしれません。それまでの期間をできるだけ延ばせるよう頑張りましょう」と告げ、治療方針を説明した。
Aさんは30歳代の終わりころから血糖レベルが高めだと言われていた。だが治療を要するレベルではなく、仕事も忙しかったので特に気にかけていなかったという。最近は仕事も落ち着いたので一度きちんと診てもらおうと病院に行ったところ、想像以上に症状が進んでいたというわけだ。
「Aさんのように、もっと早い段階で来院してくれていれば、というケースは本当に多い」と綿田教授。糖尿病は高血糖が長く続くことで血管が傷んで、体の様々な場所に障害が出る。日本生活習慣病予防協会では高血糖が継続して体への悪影響が蓄積することを「血糖負債」とネーミングして注意喚起を始めた。
高血糖の影響は、糖尿病にとどまらないことも近年分かってきた。例えばがん。糖尿病患者のがんのリスクはそうでない人と比べて約2割高いとされるが、糖尿病に至らない軽度の高血糖状態でも、がんによる死亡リスクが高いことが、日本人を対象とした研究で判明した。
また、軽度の高血糖状態が認知症のリスクを高めるという知見も増えている。認知症の中でも脳血管性認知症は高血糖によって脳の血管が老化するとされる。アルツハイマー病のリスクが高くなる理由はよくわかっていないが、高血糖による酸化ストレスが影響しているとの見方がある。
どうすれば血糖負債の蓄積を防げるのか。綿田教授ら専門医は定期健診の血糖の検査値の一つである「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」を活用してほしいという。通常の血糖値は空腹時や運動後に下がるなど変動が大きいが、HbA1cからは過去1~2カ月の平均的な血糖レベルがわかる。
HbA1cの単位はパーセントで、健康状態の判定区分は「異常なし」(5.5%以下)、「軽度異常」(5.6~5.9%)、「要経過観察」(6.0~6.4%)、「要医療」(6.5%以上)の4段階。要経過観察や軽度異常のレベルでは糖尿病の合併症は起こりにくいが、血糖負債が徐々にたまっている状態と考えていいという。
これらに該当する数値だった場合、食生活に気を付けたり、日常の運動を心がけるなど、血糖レベルを下げる生活に切り替えることが重要だ。「HbA1cの値を正常域に近づけることで健康障害が起きにくい状態を保つことができる」(綿田教授)という。
HbA1cが分かるのは通常だと年1回程度の健康診断や人間ドックの時くらいなので、自分の体を定期モニターするには間隔が長い気もする。だが綿田教授は「血糖負債を減らすのは年単位の長期的な取り組みになる。1年に1回くらいの頻度でモニターしても問題はない」という。また、直近の数値をすぐに知りたい場合は、血液検査がその場でできる薬局や郵送の血液検査キットの利用も選択肢になるという。
◇ ◇ ◇
生活習慣見直しに血液検査
日本生活習慣病予防協会は、新型コロナウイルス感染症流行に伴う生活変化によって、生活習慣病のリスクがどう変化したのかを探るため、全国の一般生活者3000人、医師100人を対象に3月時点で調査を行った。
健康診断や人間ドックの検査結果を把握する立場にある医師に「健康診断・人間ドックを受診した患者で数値が悪化した検査項目」を聞いたところ、最も多かったのは「HbA1c」と肥満度を表す「BMI」で、いずれも55%だった。「中性脂肪」(54%)、「血糖値」(51%)が続いた。
一般生活者に「最もかかりたくない生活習慣病」を聞いたところ、トップは糖尿病の42.6%だった。HbA1cについて知っている人は36.8%にとどまった。同協会は「自身の生活習慣見直しの指標としてもHbA1cの一般への知識普及を進めたい」という。
(編集委員 吉川和輝)