周平の『コトノハノハコ』

作詞家・周平の作詞作品や歌詞提供作品の告知、オリジナル曲、小説、制作日誌などを公開しております☆

#145 『ペガサスの誘い』

2015年02月25日 | 作詞作品集
眠りにつく前の このひととき
ひとりじゃない幸せ
彼方(あなた)の星座と
私の星座
今宵はとなり同士

横で彼方に聞いてて欲しい
今日という物語
泣けてくるページ
笑えるページ
眠るまでで良いから

いつの間にか気付いたら
彼方と心地良い眠りにおちてて
背に翼のある馬が
ふたりを迎えに来る あの空から

星降る夜にペガサスの背に乗って
夜空をふたりで自由に駆け巡る
朝日が新たなページめくるまでの
夢へと誘(いざな)うペガサス


忘れてしまいたい涙も
Ah ふたりで作り出した笑顔も全部
明日(あす)へのチカラに変えられたら
夢の使者が舞い降りる あの空から

星降る夜にペガサスの背に乗って
夜空をふたりで自由に駆け巡る
朝日が新たなページめくるまでの
夢へと誘うペガサス
明日へと誘うペガサス

小説第5弾『夢の終わりの夜行バス』~最終章~

2015年02月19日 | 小説
違う、お前じゃない。

そんな風に誰かに言われた気がした。

自分の夢を叶えられるのは、ほんの一握りの人たちだけ。
そんな事は分かった上で俺は10年前に上京した。

でも、その一握りの中に自分が含まれていると本気で信じていた。

しかし…

違う、お前じゃない。

そんな風にあの街そのものに言われた気がして、こうして俺は今このバスに乗っている。

カーテンの隙間から朝の光が差し込みはじめ、バスは高速道路を降り、まもなく盛岡駅へと到着した。

時刻は朝の6時55分。
ちょっとだけ予定より遅れたが、そんな事はどうでも良い。
幸いにも、しばらくプー太郎になるであろう俺には彼女と今後の事について話し合う以外の予定が今日は組まれていない。

斜め後ろの席の例の彼女はトランクに荷物を預けているので、荷物の少ない俺は計算してわざとゆっくりとバスから降りる事にした。

彼女がバスから降りた事を確認し、残っていた2杯目のコーラを飲み干し、乗客の中で一番最後にバスから降りた。

すると彼女はトランクに預けている荷物を受け取る列の中にいた。

彼女が乗務員から返却された荷物は、東京と銘打ちながらも実際には千葉県にある某"夢の国"のおみやげがゴッソリ入っている、ネズミやアヒルのキャラクターたちが描かれた大きなビニール袋2つだった。

「え?」

大きなビニール袋2つを重たそうに両手に持った彼女が俺の方へ歩いてきて、
「先ほどはどうも。ご自宅は近いんですか?」と訊いて来た。

「あ、はい、まぁまぁ近いです… あのぉ、その荷物って、まさか…」

「はい、おみやげです♪ って言ってもほとんど自分が使うんですけどねっ!」

「じゃあ、夢の終わりって言ってたのは…」

「はい、東京に住む遠距離恋愛中の彼氏との夢の国での夢の時間が終わっちゃったなぁって♪」

「あ、そうなんだ… 遠距離恋愛か…」

「はい!でも来月には私も東京へ引っ越して同棲する予定なんです♪」

「そ、そうなんだ… それは良かったね…」

「それじゃあ、失礼します♪」

「うん、ありがとう… 気をつけて…」



さて、帰るか。

実家までは決して歩けない距離ではないので、両親に車で迎えに来てはもらわずに、頑張って歩いて帰ることにした。

というより、なんだか歩きたい気分なのだ。

歩いていないと気が狂いそうだった。

10年前から抱いていた夢と、昨夜の23時に抱いた夢がたった今、二つ同時に終了したのだから…


誰か俺を励ましてくれ。

電話でもメールでも同情でも金でも良いから何かくれ。



と、その時、携帯電話に1通のメールが入った。

連絡先の交換すらしていないさっきの彼女が何らかの方法で俺のメールアドレスを入手し、「やっぱりあなたの方が良いです!」なんていうメールを送ってきたのだろうか?

それとも3年前ぐらいに受けたのが最後である何らかの音楽系のオーディションの書類選考に通りましたという連絡が今さら来たのだろうか?

どちらもあるわけがないと思いながらも、微かな期待を胸に抱きながら俺はメールを開いた。

メール文にはこう書いてあった。

「二瓶 一之さんからFacebookの友達リクエストが届いています」と。

違う、お前じゃない。

<完>

小説第5弾『夢の終わりの夜行バス』~第7章~

2015年02月12日 | 小説
「あ、はい…」

「あのぉ… どちらまで行かれるんですか?」

馬鹿か、もうここまで来たなら盛岡しかねぇだろ!

「盛岡までです…」

「あ、そうなんですか… 実は俺もです。」

だから、ここまで来たら当然同じ行き先だろうが!

「なんていうか… 夢が終わって実家に戻るというか…」
なんか無理に話を盛り上げようと、俺は変な事を言い出してしまった。

「そうなんですね… 実は私もそんな感じです。夢の終わり、みたいな。」
彼女はしょんぼりした様子でそう返した。

「あ、そ、そうなんですか? 奇遇ですね。でも、荷物少なそうですよね?」

「あっ、トランクにも預けてあるので…」

「なるほど…」

なんかよく分からない会話をしてしまったが、もう日の出の時間かと思うほど、一気に光が射した気がした。

「あ、そろそろバスに戻らないとですね!」
彼女が明るい声でそう言った。

「そうですね、じゃあまた後ほど…」

そう言って俺と彼女はバスへと乗り込みお互いの席に戻った。

もうあいつもいないし、ひとつ前の席、いや、なんなら俺のすぐ横の8Cの席に来ちゃいなよ!って言いたかったところだが言えるわけはなかった。

バスは再び動き出し、盛岡駅には予定通り朝6時50分くらいに到着するとアナウンスがあった。

俺には今、新しい夢ができた。
これは「夢の終わり」じゃない。
「夢のはじまり」なのだ!

お互いに夢破れて傷ついた心を癒し合いながら二人で仲良く生きてゆけば良いではないか。

この小説のタイトルも今からでも『夢のはじまりの夜行バス』に変更してしまえば良い。

運転手の素晴らしい安全運転のバスの中、彼女からしたら完全無許可である俺の新しい夢だけが時速300キロぐらいで、もうすぐ夜明けを迎えようとしている宮城県内の高速道路を暴走していた。

(最終章へ続く)

小説第5弾『夢の終わりの夜行バス』~第6章~

2015年02月05日 | 小説
マズイ、真横の席の男が目覚める気配が一切ない。
彼が寝過ごして盛岡まで行ってしまう事自体はべつにどうでも良いのだが、次のサービスエリアや盛岡でも俺の恋路を邪魔されたらたまったもんじゃない。

俺は自分の席を立ち、彼の肩を優しく叩きながら、小声で「仙台に着いたよ」と話しかけた。
それでも起きる気配がない。
おかしい。たしかに睡眠薬は飲ませていなかったはずだ。

今度はちょっと強めに肩を叩いて、「仙台だよ!仙台!」と周りの人達には迷惑だったかもしれないくらいの声で語りかけた。

すると、変な唸り声をあげながら、ようやく彼は起きた。

「あ、ありがとう。助かったよ。」

「いや、どういたしまして。」

「ねぇ、君、Facebookやってる? 良かったら僕と友達になってよ!僕、友達少なくってさぁ…」

「うん、いいよ…」

こうして俺達は、後でFacebookでお互いを検索できるように本名を教え合った。

違う、お前じゃない。
俺が仲良くなりたいのはお前じゃなくて、斜め後ろの席の女の子だ。
お前の本名など、どうでも良いのだ。

「それじゃあ!また!」
そう言って彼は元気にバスを降りていった。

果たしてあの彼にまた会う日なんて来るのだろうか?

再びバスが動き出し、車内は消灯された。
ここからが本当の戦いだ。

バスは仙台駅を出て、再び高速道路へ。
それから30分もしないうちに2回目の休憩タイム&チャンスタイムとなるサービスエリアへと到着した。

斜め後ろの席の女の子はまたしてもパッと目覚め、誰よりも先にバスを降り、トイレへと向かった。
なんて寝起きの良い子なんだろう。
きっと見た目だけじゃなく性格もステキなのだろう。
ちなみに「寝起きが良い=性格が良い」というのは俺の勝手な憶測である。

つい先日まで俺がアルバイトをしていたコンビニの早朝タイムのバイト仲間の女どもは皆、毎日寝起きが悪い様子で、性格も悪かった。

俺もすぐにバスを降り、用を足し、今度は自動販売機の前ではなく、バスの乗降口の近くで携帯電話をいじっているフリをしながら彼女がバスへと戻ってくるのを待ってみた。

3分ほどして、彼女が俺の方へ向かって歩いてきた。
正確には俺の方ではなく、俺の背後に停めてあるバスへ向かってだ。

「あのぉ… すみません…」
俺は勇気を出して彼女に話しかけた。

(第7章へ続く)