小平だより

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粉ミルクからセシウム

2011年12月06日 16時34分50秒 | 重要な医療情報
明治乳業のフォローアップミルク「明治ステップ」からセシウムが検出された、という報道で不安になって居られる保護者の方も多いようです。詳細はこのリンクからご確認ください。

どの程度の害があるか?というご質問は当然出ると思いますが、こちらのリンクで計算ができます。フォローアップミルクを指示通りに調合した場合、1リットルで4ベクレル程度になりますので1kg当たりのベクレル値(Bq/kg)に「4」と、あなたのお子さんが一日に摂取するミルクの量、グラムかキログラムを指定すれば計算できます。上に出てくる預託実効線量という項目の一番下のμSV(マイクロシーベルト)の値がわかります。影響が最も強いセシウム134で計算してみましょう。これが最大の被曝量となります。

ちなみに、ビッグバン以来、宇宙に存在するカリウムの0.0117%は放射性カリウムです。カリウムを豊富に含むバナナを一本食べると0.1マイクロシーベルトの天然の放射性カリウムを取り込むことになります。今回のミルクを毎日400mlずつ90日間飲み続けたとして合計2.736マイクロシーベルトです。同じように90日間、バナナを1/4個食べたとしたら合計2.25マイクロシーベルトです。人類はその起源からずっと、これだけの量の放射性物質を体内に取り込み、排泄し続けています。

さて、あなたのご両親・ご親戚でバナナを食べてガンになっている人がいるでしょうか?もしそんな特殊体質だったら人類はとっくに滅びています。放射線にはこれ以下なら安全というしきい値はない、ともっともらしく語られていますが、これはさすがに嘘です。やはり極端に微量となると影響は無視できます。また、天然放射性物質と人工放射性物質は違う放射線が出る、とかセシウムとカリウムは同じ1s族でも体内挙動は違う、などなどバラエティ豊かな素人にわか解説もネットにあふれていますが、完全に与太話なので相手にする必要はありません。放射線には天然も自然もへったくれもありませんし、分子生物学的に詳細な体内動態も調べられていますが、そんな珍説を信じるまともな研究者はいません。

今回は恐れる必要はないケースだと思います。科学的に見て影響のなさそうなケースにもかかわらず正直に情報公開して回収を実施したこの企業の姿勢は高く評価したいと思います。

これからも、恐れなくていいものと、本当に恐るべきものが出てくるはずです。定量的にモノを考える習慣をつけましょう。

かなり体制は整って来ましたが、検査機器や人員は限りがあります。すべての食品全ロット検査、が不可能な現状では、給食丸ごと→検出された農産物の産地、という要領の良い探し方が必要なのですが、牛肉で出たといえば牛肉ばかり測るなど、国民の総合的な被曝量を減らす戦略が欠落しているのも考えものです。ヒステリックな過剰反応は、こういうミスを拡大するおそれがあります。