そろそろ小児科の親御さんが一世代代替わりして、以前お話した大事なことをご存じないケースが増えてきたので再掲します。
抗菌剤の必要なケースは細菌やマイコプラズマなどに限られており、風邪の大多数を占めるウイルス性感染症には無効です。長期の咳嗽や複雑な副鼻腔炎に対して使用するケースはありますが、少なくとも喉が赤い・鼻水に色が付いている・咳と痰が出ている、だけでは抗菌剤の適応にはなりません。
抗菌剤の乱用による問題は世界的に年々深刻化しています。多剤耐性化の問題もそうですし、研究が進むにつれて、正常腸内細菌叢の破壊によるがんや自己免疫疾患の発生メカニズムもあるのでは?と疑われ始めています。
アメリカでは以前から、医師が初日に抗菌剤を出す場合はなぜ出すのか理由を問いただせ、と日本の厚労省に相当する役所が広報しておりますが、日本でも公的機関が正式にこういう広報やこういうコメントを出すに至りました。
特に、軽い咳や鼻水や喉が赤い、といった程度の軽症例に対して第三世代セフェム(メイアクト・フロモックス・バナン)が乱用された結果、髄膜炎や敗血症などの際に救命が困難になる症例が多発して、外来での上記薬剤の初日使用はほとんどの領域でガイドラインで正式に否定されています。
ヒブワクチンや小児肺炎球菌ワクチンの普及後はさらに、細菌感染症自体が激減しており、当院でも第三世代セフェムがどうしても必要なケースは月に一例あるかないかの、極めて稀なケースになっています。(入院を検討するほどの場合だけで、仕入れても使い終わらずに期限切れになることがほとんどです(笑))
抗菌剤を出すにしても、溶連菌に対してペニシリン系抗菌剤。治療しても除菌できない例に対して初めてセフェム系を使用する程度です。(年間数例ぐらいです)ほとんどの施設でガイドラインが守られるようになった結果、培養で副鼻腔炎・中耳炎で耐性菌が出るケースは、当院受診以前に特定の施設で安直なセフェム系投与を受け続けていた方に限られています。
小児の肺炎ですとさすがに第三世代セフェムは外来投与も推奨されていますが、これとて我が国で安直な軽症例への抗菌剤投与による耐性化が多いため仕方のない措置です。入院が必要なケースでは、飲み薬の濃度ではとても助からないため、点滴による高濃度投与が必須です。
重症の感染症ではそもそも第三世代セフェムの経口薬は効果は薄く、
成人の肺炎ガイドラインですと、外来での推奨すらありません。
中耳炎ですと、中等症まではガイドラインに従う限り、第三世代セフェムの出番は全くありません。
抗生物質漬けのお子さんで複雑な耐性菌が定着しきってしまっている場合は必要となりますが、アメリカの一般医と異なり日本の耳鼻科専門医はみなさん鼓膜切開が上手なので、そこまで至らずに治してしまうようです。特に若い耳鼻科医は優秀な方が増え、耐性菌がみるみる減っていくのがこちら側からもよくわかります。患者さんにとっては素晴らしい変化です。
(2016年2月29日追記です)
抗菌剤乱用による耐性菌の増加は世界的に問題となっており、次の伊勢志摩サミットでも議題に入っています。
日本と韓国は突出して乱用が目立っていたのですが、韓国では科学的根拠なく抗菌剤を乱用する医師に対する監視体制を構築し、一定の成果を上げつつあります。日本は残念ながらそういう点では後進国です。
抗菌剤の必要なケースは細菌やマイコプラズマなどに限られており、風邪の大多数を占めるウイルス性感染症には無効です。長期の咳嗽や複雑な副鼻腔炎に対して使用するケースはありますが、少なくとも喉が赤い・鼻水に色が付いている・咳と痰が出ている、だけでは抗菌剤の適応にはなりません。
抗菌剤の乱用による問題は世界的に年々深刻化しています。多剤耐性化の問題もそうですし、研究が進むにつれて、正常腸内細菌叢の破壊によるがんや自己免疫疾患の発生メカニズムもあるのでは?と疑われ始めています。
アメリカでは以前から、医師が初日に抗菌剤を出す場合はなぜ出すのか理由を問いただせ、と日本の厚労省に相当する役所が広報しておりますが、日本でも公的機関が正式にこういう広報やこういうコメントを出すに至りました。
特に、軽い咳や鼻水や喉が赤い、といった程度の軽症例に対して第三世代セフェム(メイアクト・フロモックス・バナン)が乱用された結果、髄膜炎や敗血症などの際に救命が困難になる症例が多発して、外来での上記薬剤の初日使用はほとんどの領域でガイドラインで正式に否定されています。
ヒブワクチンや小児肺炎球菌ワクチンの普及後はさらに、細菌感染症自体が激減しており、当院でも第三世代セフェムがどうしても必要なケースは月に一例あるかないかの、極めて稀なケースになっています。(入院を検討するほどの場合だけで、仕入れても使い終わらずに期限切れになることがほとんどです(笑))
抗菌剤を出すにしても、溶連菌に対してペニシリン系抗菌剤。治療しても除菌できない例に対して初めてセフェム系を使用する程度です。(年間数例ぐらいです)ほとんどの施設でガイドラインが守られるようになった結果、培養で副鼻腔炎・中耳炎で耐性菌が出るケースは、当院受診以前に特定の施設で安直なセフェム系投与を受け続けていた方に限られています。
小児の肺炎ですとさすがに第三世代セフェムは外来投与も推奨されていますが、これとて我が国で安直な軽症例への抗菌剤投与による耐性化が多いため仕方のない措置です。入院が必要なケースでは、飲み薬の濃度ではとても助からないため、点滴による高濃度投与が必須です。
重症の感染症ではそもそも第三世代セフェムの経口薬は効果は薄く、
成人の肺炎ガイドラインですと、外来での推奨すらありません。
中耳炎ですと、中等症まではガイドラインに従う限り、第三世代セフェムの出番は全くありません。
抗生物質漬けのお子さんで複雑な耐性菌が定着しきってしまっている場合は必要となりますが、アメリカの一般医と異なり日本の耳鼻科専門医はみなさん鼓膜切開が上手なので、そこまで至らずに治してしまうようです。特に若い耳鼻科医は優秀な方が増え、耐性菌がみるみる減っていくのがこちら側からもよくわかります。患者さんにとっては素晴らしい変化です。
(2016年2月29日追記です)
抗菌剤乱用による耐性菌の増加は世界的に問題となっており、次の伊勢志摩サミットでも議題に入っています。
日本と韓国は突出して乱用が目立っていたのですが、韓国では科学的根拠なく抗菌剤を乱用する医師に対する監視体制を構築し、一定の成果を上げつつあります。日本は残念ながらそういう点では後進国です。