小平だより

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日本脳炎

2006年05月19日 17時42分44秒 | 重要な医療情報
 「日本脳炎ワクチンの勧奨接種の中止について」にて書いたように、昨年出回っていた日本脳炎ワクチンの安全性にはなんら問題がないことが判明しており、むしろ、厚労省言うところの今年出る「安全なワクチン」の方が、使用経験ゼロでどうなんだろう?と注目していました。
 結果として性能的には問題のないものができましたが、これから生産を始めるので供給できるのは秋以降とのことです。
 幸い、昨年までの日本脳炎流行株は弱毒型でしたが、自然界から来るもののため、今年の夏以降もそうである保障はありません。昨年以前に2回以上接種している方は問題ないと思われますが、打ちそびれた方は、今年は蚊にさされる可能性のある海水浴やキャンプや夕方の公園などのレジャーは避けた方がいいでしょう。

おたふくかぜがはやっています

2006年05月17日 23時12分07秒 | 重要な医療情報
 正確にはムンプス耳下腺炎と言います。ムンプスウイルスにより小児の場合は耳下腺、成人の場合は精巣や膵臓に重い炎症を起こす事もあります。また、まれに重い髄膜炎や脳炎を起こし、後遺症が残ります。以前は数万人に一人だけ片耳が聞こえなくなると言われていましたが、最近の調査で、数百人に一人の割で片耳の聴力を、そのさらに数分の一の確率で両耳の聴力を失う事がわかってきました。当院の患者様でも、数名、犠牲者が出ています。今年も大流行の兆しが見られ、このままだと犠牲者が出そうです。
 いずれも、ワクチンを打つ事で予防でき、ワクチンを打たずに罹患して発症した場合は、治療法がない事がはっきりとしています。水ぼうそうやおたふくかぜは自然に感染した方がいい、という馬鹿げた迷信を言う人が未だに多いようです。ワクチン自体が高価で、自費のため強くお勧めしにくい、というのは悩ましいところです。(インフルエンザは大量仕入れで格安にできるのですが)
 先進国でおたふくかぜや水ぼうそうやHibワクチンが公費接種されていない国は極めて珍しいのです。海外勤務されてきた方の母子手帳に押された重要なワクチンのスタンプ類と我が国の貧弱な母子手帳を見比べると、これが経済大国か?と呆れてため息が出ます。
 おたふくかぜにもうかかったから大丈夫、という方も、よく問診してみると、単に耳の下が晴れて、医者が検査もせずに「おたふくかぜでしょう」と決めつけて終わり、という事が多いようです。耳の下が腫れる病気は化膿性耳下腺炎や他のウイルスによる耳下腺炎などもあります。血液検査にて抗体価が確認できない場合は、防御力はありません。予防接種が必要です。
 当院ではおたふくかぜはほぼ全員に血液検査を受けて頂いていますが、およそ1/3はおたふくかぜではありませんでした。もう大丈夫、と思っていて、5~9歳で罹患して聴力を失ったり、成人で感染して生殖能力を失う例が後を絶ちません。
 欧米では公費負担によるワクチンの推進でほぼ流行そのものがなくなりつつあるのに、未だに脳炎や難聴がゴロゴロいるのはおかしな話です。少なくとも、一生ものの障害が残る可能性のあるおたふくかぜやみずぼうそうのワクチンより、インフルエンザのワクチンを先に打とうとするのは間違いです。


麻疹にかかったらどうなるか

2006年05月14日 13時38分40秒 | 重要な医療情報
1.基本的に自宅待機です。
2.鼻汁や咳や高熱に対する対症療法にて様子を見ます。
3.摂食不能の場合は、皮膚科に入院して点滴をします。
4.呼吸困難になった場合はICUに収容して酸素を投与します。
5.麻疹の治療薬はありません。本人の生命力に期待して見守るだけです。
6.数年後にSSPEという麻痺症状が出る事があります。数ヶ月で死に至るケースが多いのですが、こちらも治療法はありません。
6.従って、予防接種を受けなかった段階で、その人の運命は決まっています。
母子手帳に勧奨接種として記載されている疾患はこのように、予防接種をしなかった場合、悲惨な運命が待ち受けています。

6ヶ月未満の場合、母親の母乳などからの抗体で守られていますが、1歳に近づくにつれて効力が低下し、感染した場合、1歳未満が最も高い死亡率となります。
母親自体が予防接種を受けていなかったり、母乳を十分飲ませられなかったり、母親が長期間、非常に衛生的な環境で麻疹の免疫力価が低下している場合は、6ヶ月未満でも感染があり得ます。

わが家の場合、以前、近隣で麻疹の流行がありました。一歳未満で一度接種し、2歳近くでもう一度追加接種をするという、先進国方式で乗り切りました。

保育所では接種しているこどもは免疫があるので軽い風邪症状で済みますが、未接種児は命がけの症状が発症してしまいます。この方式がお薦めなのですが、1歳未満で任意接種をすると、1歳以上での公費での無料接種は受けられない、という変な仕組みがあり、現場は混乱が続いています。

現在、かなりの先進国では麻疹は根絶に近づいています。アメリカで新規に発症する麻疹は全て他国からの侵入となっており、警戒を強めています。予防接種などしない「自然な」対応を好むドイツでは第三位です。公衆衛生レベルが低いが人口密度の高い中国が第二位となっています。そして、全ての予防接種は有害と「市民運動」が盛んな日本が、圧倒的な第一位です。人に迷惑をかける信念=略して迷信でしょうか。ちなみに、アメリカでは予防接種を受けさせていない場合、学校などの公立学校を含めて、共同生活への参加は基本的に禁止ですし、受けさせていない親を虐待候補として監視する州もあります。

(日本の麻疹に関する信頼できる公的資料)
http://idsc.nih.go.jp/iasr/25/289/dj2891.html

麻疹の大流行

2006年05月13日 12時50分45秒 | 重要な医療情報
 茨城県 千葉県で麻疹の大流行が起き、国立感染症研究所から警報が出ております。予防接種者も感染しているのが特徴ですが、接種後の感染者からは重態になった者が出た、という情報はないため、予防接種を済ませた方は問題ないものと思われます。
 私も5/12に多摩北部医療センターの救急外来当直において、麻疹疑いの患者様を一名診察しました。都内での子供が大量に集まる人気キャラクターのイベントに参加しています。麻疹はすれ違っただけでもうつる、というほどの高度な感染性があり、その会場にいた子供で未接種者ほぼ全員に感染した可能性があります。
 国立感染症研究所では、これを契機に首都圏や全国で麻疹の爆発的流行が起きる可能性があるとして、警戒を呼びかけています。
 軽度の発熱が三日続いた後、解熱し、その後、熱とともに全身に発疹が出てきたら、麻疹が疑われます。隔離診察が必要ですので、直接のご来院はおやめください。お電話いただけば、時間を指定して個別診察いたします。

黄砂の影響

2006年05月03日 07時36分40秒 | 重要な医療情報
 市瀬孝道(いちのせ・たかみち)大分県立看護科学大教授(環境毒性学)と国立環境研究所などのグループの研究によると、黄砂による肺への影響は、肺に直接卵白アルブミンを吹き付ける場合の数十倍から100倍という結果が出ています。
 気管支というのは分岐を繰り返すごとに狭くなり、最後は2μ程度になります。手前で引っかかるほど鼻汁や喉のかゆみと咳払いといった花粉症様の症状が強くなりますし、奥へ到達するほど気管支痙攣や喘鳴といった気管支喘息の症状が強くなります。日本まで到達する微細な浮遊塵は、スギやヒノキを上回る強力なアレルゲンとなる可能性が出てきました。
 以前より、サハラ砂漠の粉塵が大西洋を越えてアメリカ本土の喘息を引き起こすというデータがあり、砂の中に含まれるアスペルギルスと言う微生物が原因であることも突き止められています。
 中国本土から近い韓国では黄砂が吹くと入院率が上がるというデータがあります。車にホコリが大量につもった日には、当院でも気管支喘息の受診者が激増する傾向があります。(ここ数日、10名待ちという状態が続きました)
 地球温暖化で中国内陸部の乾燥が進行するにつれて、気管支喘息が増加する可能性があります。ここ数年のアレルギー性鼻炎や気管支喘息の患者数増加もこれが一因となっている可能性があります。
 今後、対策としては血液検査でアスペルギルスなどの反応が出る方は、黄砂の飛ぶ日にはマスクをして頂くなどの方法をとろうかと思っています。マスクに関しては、フィルタ型はすぐに目詰まりするので、過去の粉塵労災の実績を考えても、活性炭などを利用した吸着型が有効と思われます。