小平だより

月・火・金・土の午前9時〜11時が通常診療 午後は第三金曜のみ4時から6時です。感染症は11時以降の電話予約制です。 

水ぼうそうが流行し始めました

2012年02月28日 11時24分18秒 | 重要な医療情報
潜伏期は約2週間です。
当院来院者はほとんどが予防接種済みのため、脳炎の心配はなく、発症しても単なるおできが出来て痒い風邪に過ぎません。一応、早期治癒を目指して抗ウイルス剤を投与します。

予防接種をしていない自然感染の場合は、1万人に一人の割で脳炎が起きますので厳重な注意と早期の抗ウイルス薬の投与が必要です。発疹と共に強い頭痛を訴えた場合は、早期に医療機関に連絡をとって下さい。

医者の子ってどうやってるか?

2012年02月27日 10時06分32秒 | 重要な医療情報
予防接種の種類が増えてかなりわかりにくくなってきましたね。

医者のおうちの子ってどうやっているか?ですが、国内認可された時期の問題もあって全部ではありませんが、このページにあるものは基本的に全て打っています。

HIB・肺炎球菌・水痘・おたふく風邪といった乳幼児期の脳炎関連ワクチンは小平で母子手帳を見るとほぼ打つのが当たり前、の状態になりつつあります。

一方、子宮頸癌ワクチンとB型肝炎ワクチンというがん予防ワクチンの接種率はまだ低いようですね。成人後のリスクを考えるとこちらも重要なのですが、他の先進国と違い行政の補助が乏しいため躊躇されるご家庭が多いようです。性的逸脱行動のない方でも成人後は感染する可能性のある疾患だけに、医師の家庭では両方とも接種例が多いようです。

小平市の子宮頸癌ワクチンの公費助成期間延長

2012年02月21日 11時57分15秒 | 重要な医療情報
平成23年に高校1年生相当(平成7年4月2日から平成8年4月1日生まれ)の年齢の方で

平成24年3月31日までに1回以上の接種を行った方

上記2つの条件を満たす人のみ、平成25年3月31日まで公費接種期間が延長となります。

詳しくは2月23日に市役所より送付される書類をお読み下さい。

当院では子宮頸癌ワクチンは月・水・金の午後4時まで、予約制にて実施しております。

インフルエンザ治療薬

2012年02月08日 12時27分59秒 | 重要な医療情報
数年前までは、インフルエンザ治療薬はタミフル・リレンザなどの抗ウイルス薬一本槍でした。感染早期に投与するとウイルスの増殖が抑えられ、症状を軽快させるというものです。他の薬はウイルス感染症には効かないので不要、と今でもお考えの先生は多いようです。

ところが、抗ウイルス薬だけ単独で使うと、免疫細胞がウイルスの特徴を記憶する前にウイルス量が抑えこまれてしまいます。その結果、免疫細胞がウイルスの特徴を覚えられないため、類似のウイルスに複数回感染するという現象が起きることが確認されて問題となりました。

ヒトの免疫細胞の一部は抗体を産生してウイルスと戦います。体に侵入した病原体と戦う抗体にはいくつかの種類があります。

注射のワクチンでできるのはIgG抗体といいます。主に血液の中にあり、体内に侵入してしまったインフルエンザウイルスと戦い、全身の重篤な症状を抑えこむ効果はあります。熱は低くなり、肺炎や中耳炎は起きにくくなります。しかし、IgG抗体は鼻や気道の表面にはいないので、ウイルスの侵入自体を食い止めることは出来ません。

一方、鼻や喉の表面の粘膜にあるIgA免疫は体へのウイルスの侵入そのものを防いでくれます。インフルエンザのウイルスに対応できるIgA抗体が産生されると感染そのものが防げます。アメリカで実用化された点鼻ワクチンはこの効果を狙っています。(ただ、アジュバント(ワクチンの効果を増強する添加剤)の安全性の問題で一度治験中止となっており、膠原病の発症の可能性などが理論的に指摘されており、安全性評価は不十分と思いますので当院ではまだ採用していません)

少し前から、従来は単なる風邪薬と考えられてきた補助薬や一部の抗菌剤、一部の漢方薬に粘膜表面の免疫細胞を活性化する作用があることが判明しています。粘膜の構造の破壊を防ぎ防御力を上げる、免疫細胞がウイルスの構造を記憶するのを助ける など様々なメカニズムが明らかになりました。

理論的な検証だけではなく、実際に使用群・非使用群で分けても治療成績に差がつくことから、当院ではこうした補助薬の中で明らかな証明がなされているものを選んで使用しています。当院の観察でも、タミフルやリレンザ単独より症状は軽くなり、二度目の感染も起きていない模様です。


ついでに、売り切れ続出の某市販品のインフルエンザ予防効果について。

医学的にその薬や治療法が「効果あり」と判定するには、厳密に同じ2つの被験者群で比較する必要があります。また、その2つのグループが、どちらを使用したのかわからないようにする必要があります。さらに、投与している人たち自体も、どちらを投与しているかわからないようにする必要があります。ここまで厳密にやって初めてプラセボ効果を除去した本当の効果がわかります。例えば、今季のインフルエンザでも小平市内ですら町や学校によってひと桁以上の患者数の差はざらに生じています。同じ町内で摂取群と非摂取群で比較したら意味がありますが、違う街での比較はほとんど意味がないでしょう。

かつて、ノーベル賞受賞者が「ビタミンC大量摂取が風邪予防に役立つ」という説を流して、相当多くの人が個人的に試し、これは効果があるという都市伝説が流れました。ところが、上記の条件で厳密にテストしたところ、全く効果がないどころか、過剰だと胃腸障害を起こすことがわかり、この説は今では完全に否定されています。そもそも、飽和量以上のビタミンCは尿中に排泄されるので無駄です。この情報が流れてから、効くと称する人が激減したという笑い話がオマケでついています。逆プラセボ効果ですね。

某市販品はこの条件はまだ満たしていないようです。いい加減な研究デザインだと、本当は効果のないものが一見効果があるような結果が出ることは実にしばしば有ります。もう少しましな研究デザインで検証しない限り、証明とは言えません。

なぜインフルエンザワクチンが効かないのか?

2012年02月08日 09時36分05秒 | 重要な医療情報
今年は特に効きが悪いようです。また患者数も多いようです。理由は割とはっきりしています。

現在、インフルエンザに関して実施されている全国サーベイランスは2系統あり、拠点病院での直接ウイルス検出を集計したものと、開業医での迅速検査の結果を集計したものが公開されています。

いずれの指標も、年末まで全国で散発的に出ては消え、を繰り返しており、ワクチンによって感染者や重症度が下がっていたものと推測されます。予防された株については、皆さん気づくことはありません。昨年流行した豚インフルエンザに至っては検出自体がほとんどなく、完全に抑えこまれています。

ところが、年末に愛知県の拠点病院で今年のワクチン株と全く違う型のウイルスが見つかり、お正月の民族大移動を経て全国に散らばってしまいました。ここから後は爆発的な拡大となっています。ワクチンが普及すると、こういう現象はどうしても目立ってきます。

ほとんどの型に有効な点鼻型のワクチンがアメリカで開発され普及し始めていますが、昨年、日本の研究者から膠原病を引き起こすのではないか?という疑念が出されたため、医師自身は使用しておりません。ここ数年で統計が出て安全確認されてから、と考えております。

さらに、今回のウイルスはほとんどの方はかなり軽症です。二日間ほどの鼻汁に続いて、一日の高熱。翌日ぐらいに下がって三日目から咳、というパターンが多いようです。丈夫な方ですと市販薬だけで略治して登校出社するため感染が広がりやすい、という面もあるようです。麻しんの予防接種が普及して、麻しんが鼻風邪みたいな症状になったため、免疫のない方が重篤になる例が増えたのと同じことが起きています。

インフルエンザ脳症を起こす特定家系の存在が証明されつつある現在、インフルエンザの予防戦略は従来と考え方を変える必要があるのかも知れません。