禅と薔薇

高島市 曹洞宗 保寿院 禅の話と寺族の薔薇のブログ

壺の中

2014年11月16日 | 小さな法話
いつも時間に追われるような暮らしから、細かな時間に追われる必要がなくなりました。
電池が切れたのを契機に、腕時計をはずしてみました。
最初は、少々不安もありましたが、慣れてしまえば不便はありません。
いざ、時間はとなれば確認する方法はいくらでもあります。

壺中日月長(こちゅう じつげつ ながし)という言葉があります。
中国の昔、壺公(ここう)という一人の薬売りの老人がいました。壺公は毎夕、店を閉めると店先にぶら下がっている小さな古びた壺に飛び込みます。
このことは誰も知らなかったのですが、ある日費長房という役人に見つかってしまいます。
費長房は壺の中がどうなっているか興味がわき、自分も一緒に連れて行くように言います。そこでしかたなく、一緒に壺に飛び込みます。
その壺の中は狭い世界ではなく、この世界と同じような世界が広がっていたのでした。
そして壺公はその国の主人でした。
費長房は、数日の間いろいろなもてなしを受けます。やがて壺の世界から帰ってくると、この世界では十数年も経っていたということです。


忙しい現代社会の中で、時間が私たちを追いたてるようなことがあります。腕時計が手錠のように感じることがあるかも知れません。
時間に追われるより、心の持ち方を変えて、充実した「今」を過ごす、それを積み重ねていく毎日でありたいものです。


「アイスバーグ」が白く美しい花を咲かせています。