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パイロット養成講座

多くの機長、副操縦士を育てた坂井優基が、パイロットになろうとする人や訓練生に送るアドバイス

気象

2013-08-10 | 気象

昨日の豪雨は気象庁が命を守る行動をすぐとってくださいと呼びかけるほど凄いものでした。通常秋田側で山で上昇させられて降る雨は、奥羽山脈を越えません。今回は簡単に越えて岩手にも多大な被害をもたらせました。これこそが温暖化の真に恐れるべき事態です。天気はこれからますます乱暴になります。パイロットにとって気象は最も重要な勉強すべき事項になってきました。


エアラインパイロットのための航空気象

2013-07-17 | 気象

パイロットの友人が航空気象の本を出版しました。

私の知る限りエアラインパイロット向けの航空気象の本としては日本で一番ではないかと思っています。

してはいけないこと、しなくてはいけないことが豊富なイラストや写真とともに書かれています。

この本を読んでから、気象の勉強をすると本当に必要なことがよく判る気がします。

興味のある方は読んでみてください。

http://www.hobun-books.com/products/detail.php?product_id=257


強風

2013-04-07 | 気象

昨日、今日とかなりの強風が吹いています。

欠航している便も多数出ています。

強風で困るのがウィンドシアーと横風です。

風速、風向が急激に変わることをウィンドシアーといいます。飛行機は空気の中を飛行しています。

向かい風が20kt減れば、飛行機の空気に対する速度も20kt減ります。

高度が高いときはエンジンパワーを増加させるかそれでも間に合わなければ、機首を下げて速度をつければいいだけなのですが、離陸や着陸のときは高度が低くそのような余裕がありません。そのためウィンドシアーが予測されるときは予め速度を多めにしておきます。ボーイングが推奨しているのは、通常のVrefという速度に対して、地上での風速の二分の一と、ガストを足しておくことです。ガストとは通常の風から10kt以上強く吹く瞬間風速のことです。このうちガスト成分は着陸するまで足しておくこと、風速の二分の一は接地までに徐々に減らして良いとしています。

ただし、プラスする量は最大20ktまでと規定しています。


アメリカの吹雪

2013-02-10 | 気象

アメリカではニューヨーク周辺の3主要空港やボストンのローガン空港は閉鎖され、9日までに5300便以上の欠航が決定したそうです。また原子力発電所は外部電源が途絶えたため停止されました。さらにマサチューセッツ州など5州で非常事態宣言が発令されたそうです。

最近の気象の荒れ方はすさまじいものがあります。

以前から書いているように温暖化すると熱帯地方の温度が上がりこれを解消するためにジェット気流は大きく蛇行します。また天気現象はより激しくなって南北の温度差を解消しようとします。単に厚くなるのが問題なのではなく、これこそが温暖化の真の脅威です。


関東地方の大雪

2013-01-15 | 気象
昨日の羽田空港はものすごい雪でした。
国内線では地方初も含めて約700便が欠航したようです。
外回りをしていると大粒の湿った雪が強い風で顔にあたって痛いぐらいでした。
あっという間に空港が真っ白になりました。
幸い離陸できた最後の方の便だったようです。

今回は低気圧が急速に発達して気圧が下がったために寒気が吹き込み、温度が急激に下がったのが大雪の原因です。
気象庁事態が最高気温6℃、最低気温4℃と予想して平野部は雪にならずにみぞれ程度と予想していたのですが
実際は気温がどんどん下がり大雪となりました。
地上気温3℃以下で雪、1℃以下で大雪の可能性が出てきます。
850hpではマイナス6度以下で雪の可能性があります。

TAFもここまで予想をしていませんでした。
最近、TAFが当たらないことが増えたような気がします。
決して気象庁や予報官が悪いわけではなく、天気の推移が過去よりも激しくなっていることが原因だと思われます。

TAFだけに頼るのではなく、自分の目で天気図を見て判断することが重要になってきます。


ランウェイコンディション2

2013-01-08 | 気象
皆さんあけましておめでとうございます。

皆さんの質問に順番に答えていきたいと思います。
まず、kooriさんの質問ですが、誘導路やランプも測定されます。
例えばD6 POORのような感じです。

ウムキさんの質問ですが、あくまで空港が伝えるのは現在のコンディションのみです。
その中で各航空会社が決めています。
正確に言うと機種毎にスリッパリー時の性能が決まっています。
おなじ滑りやすさでも機体が重いと滑走距離が長くなります。
さらには向かい風、追い風、滑走路の傾斜、温度、気圧など様々な要素で滑走距離が変わります。
そこで性能表を見て決めます。
例えば羽田千歳で千歳が雪の場合、代替空港が函館がとれれば良いのですが、函館の天気も悪く
羽田まで戻ってこなければいけないような場合、どこまで燃料を積むかは滑走路の状態から決めなければいけません。
天候的には燃料がたくさんあったほうが良いのですが、積み過ぎると着陸時に止まりきれません。

KVKさんの質問ですが
翼の可動部分にはヒーターはついていません。
エンジンの前縁、翼の前縁にはヒーターがついています。

ランウェイコンディション

2013-01-08 | 気象
滑走路に雪や氷がある時にはランウェイコンディションが発表されます。
雪の状態と滑りやすさが滑走路を3区分して報じられます。
滑走路番号の若い方から三分の一ずつA(アルファ)B(ブラボー)C(チャーリー)として
DRY SNOW 3mm、WET SNOW 5mm、雪と水が混じったような場合はSLUSH、雪が固められて圧雪となっている場合はCOMPACT SNOW 1mm
のように雪質と厚さが報じられます。
さらに滑りやすさがBRAKING ACTIONとして GOOD、MIDIUM TO GOOD、MIDIUM、MIDIUM TO POOR、POOR、VERY POORとして報じられます。
それらに応じて複雑な離着陸性能の計算をしなければなりません。

ここで重要なのが、BRAKING ACTIONは必ずしも通報されたとおりではないということです。
測定されてから雪が降ればどんどん変わります。また温度が変わればBRAKING ACTIONも変わります。
パイロットは常に通報されているよりも悪いとして考える必要があります。

気温と滑りやすさ

2013-01-07 | 気象
あけましておめでとうございます。
年末年始は仕事で飛び回っていました。
今年は連休の大型化もあり各航空会社ともに年末年始は好調だったようです。

千歳をはじめ北海道や日本海側では雪の日が例年より多くなっています。
同じ雪なのですが、一番滑りやすいのが、0度を挟んだ数度の温度です。
マイナス30度などとなってしまうと雪はカチカチに凍りあまり滑らなくなります。

気温0度前後で雪と水が共存する状態はスケートリンクに近くなります。
こんなときに一番頼りになるのはリバースです。

滑走路の端は雪が残っていたり、離陸の飛行機のジェットブラストで雪が溶けた後に凍り非常に滑りやすくなります。
滑走路の端に行く前の十分な原則が重要です。

ゴーアラウンド後のアプローチ

2012-12-13 | 気象
天気が悪くてゴーアラウンドした時には、すぐにアプローチを開始しない方が良い場合があります。
全ての天気現象は波があります、その波を読み切って良くなった時に着陸するようにアプローチが開始できれば最高です。そのためにはホールディングして上空待機すると同時に天気がどのような周期で変化しているかを読むことが重要になります。

グルービング

2012-11-19 | 気象
滑走路に横溝を切るのをグルービングといいます。滑走路の右の端から左の端まで、溝を掘ります。
滑走路は真ん中が盛り上がっているので、こうすると水はけがとても良くなります。
重たい飛行機がブレーキをかけながら溝の上を通過するので、溝はだんだんと削れて厚さが薄くなってきます。そうなるともう一度滑走路の上にアスファルトをしき平らにしてから、再び溝を切り直します。
このグルービングがあれば多少の雨が降っても、横風の制限は滑走路が乾いているときと同じです。
グルービングの修理中は、グルービングが無い状態として扱います。
こうなると雨が降ったときの横風の制限値が小さくなります。グルービングがあれば着陸できたのに、ないから着陸できないといったことがおきます。

落雷

2012-11-08 | 気象
kooriさんのコメントに答えて。
通常飛行機の金属部分に落雷しても電機は通り抜けてしまうので被害はありません。一番やっかいなのが絶縁体や抵抗が非常に大きい部分です。レドームは電波を通しやすいように、グラスファイバーで作られています。雷避けに、金属の箔を何本かはってあるのですが、強い雷には効果がありません。
電気抵抗が非常に大きい部分に無理に電気が通ろうとして発熱します。その時、グラスファイバーの繊維をつないでいるプラスチック部分を溶かします。場合によっては溶けたプラスチックがさらに気体となって急激に体積を増し、周りの部材を中から爆発させたのと同じようになって壊れます。

787はカーボン繊維に金属繊維を織り込んであるそうですが、無事なことを祈ります。

もし壊れたレドームの写真などありましたら送っていただけると嬉しいです。

フィズドアレイ気象レーダー

2012-09-07 | 気象
NICT情報通信機構が阪大などと協力してフェイズドアレイ気象レーダーを設置しました。フェイズドアレイとはレーダーを回転させるのではなく電子的に走査して調べるレーダーです。従来のレーダーですと積乱雲の立体構造を見るのに、10回転してやっと一つの立体構造がつかめました。フェイズドアレイだと10秒で立体構造が見られます。積乱雲のようにどんどん変化していく現象を見るのには最高です。
気象の道具もどんどん進化していきます。より詳しく変化が判り、より安全な空になって欲しいと思います。

http://www.nict.go.jp/press/2012/08/31-1.html

積乱雲の避け方

2012-08-27 | 気象
KVKさんの質問に答えて
坂井キャプテンのブログや書籍等で、積乱雲は避けるものと言うことを知りましたが、最低限どのぐらいの距離を空けると影響を受けないものでしょうか。大きさにもよると思いますが。

またレーダーでは、積乱雲など雲の種類まで識別出来るものなのでしょうか。雲の粒子や密度で応答速度が違うのでしょうか。素人質問で申し訳ありません。

一般に言われている目安は20NM(20海里 約37km)は離れなさいというものです。
積乱雲の側を飛ぶだけで、雷が落ちることがありますし、雹が周りに飛ばされてくることもあります。

レーダーでは雲の種類まではわかりません。
またレーダーは雨粒や水滴はよく映るのですが、それが凍った氷晶(ひょうしょう)は映りません。
目の前に巨大な積乱雲が見えているのにレーダーでは全く映らないこともあります。

目で見える時は目視で避けます。


積乱雲

2012-08-15 | 気象
パイロットが嫌いなものは
一に積乱雲、二に積乱雲、三、四が無くて、五に積乱雲・・・
と言っていたキャプテンがいました。

積乱雲の中は上昇気流と隣り合わせで下降気流が存在します。
強い積乱雲の中にもし入ると現在の飛行機でも分解する危険性があります。
さらには内部には雹が上昇下降しています。
ゴルフボールや場合によっては野球のボール大の氷の塊が多数飛び回っているのですからとても危険です。

また積乱雲が衰退するときには、ダウンバーストを作り出します。
パイロットにとって最善の策は決して中に入らない、ひたすら避けることです。


CO2と異常気象

2012-07-18 | 気象
よぬぐんさんの言われるとおり、最近の異常気象の主原因はCO2にあると思っています。
CO2が増えて地球が暖かくなるといっても一様に暖かくなるわけではありません。
一番暖められるのが、赤道などの太陽エネルギーが多く降り注ぐところです。
そうなると南北の温度差が増加します。
温度差を解消させるためにジェット気流が南北に大きく蛇行します。
そうなると、暖気が入った部分は高温、寒気が入った部分は低温となります。
また極端に豪雨が降る地域ができたかと思えば雨が降らずに乾燥した地域ができます。
九州でいまだ経験したことがない豪雨が襲ってくる一方、アメリカ中西部では歴史的干ばつでとうもろこし、小麦の値段が急騰しています。
温暖化は一言で言えば天気がどんどん乱暴になることを意味します。
実はそんなに遠くない縄文時代には現在よりも海水面が15mから20m高かったという研究があります。
もしそんなことになると、世界の主要都市のほとんどが水没してしまいます。