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脳内機長のフライトログ

「脳内機長のフライトログ」の記事置き場です。

止まれ・・・・・!

2010年02月07日 14時09分33秒 | Microsoft Flight Simulator
今日は、旅客機のブレーキのお話。(脳内機長のお仕事)
飛び立った以上地上に降りなければなりません。これ、当たり前。
ですが、この「着陸」が非常に難しい。そう、事故の確率が最も高い。
パイロットの皆様が安全に着陸するためのお話の一つ。

B747-400は、離陸時に約385トン(国際線)の重量があります。
この重量で着陸しますと、(故障等で引き返すなど)ランディング・ギア(車輪)が
粉砕されてしまいますし、アーム類も折れてしまいます。ですので、「この重量なら
ギア類が保ちますよ」と、いう重量があるんです。それを「最大着陸重量」と言います。
B747-400の場合、約286トンです。つまり、離陸したはいいのですが、トラブルで
引き返す場合、燃料等を空中投棄するなどして、機体重量を最大着陸重量以下に
しなければなりません。99トン以上の燃料を海上で空中散布するわけです。
東京-ニューヨーク間での燃料消費量はおよそ120トン。予備燃料等がありますので
実際の搭載燃料はもっと多いです。計算上、100トン以上投棄します。

で、この286トンの塊が、約250km/h で滑走路へ突っ込んで行きます。
それを安全に停止させるのが、各「ブレーキ」の役目です。B747-400のブレーキは3つ。
① ギア(車輪)のブレーキ
② 空力的なスポイラーによるブレーキ
③ ジェットエンジンの逆噴射ブレーキ
です。まず、①の「ギア(車輪)のブレーキ」の豆知識から。ギアのブレーキは基本的には
乗用車のブレーキと同じ「ディスク・ブレーキ」。違うのは、構造と材質。1輪あたり乗用車が
1枚のディスクに対してB747は6枚。材質はカーボンとなっております。また、車軸にファンが
内蔵され、飛行中や使用時に冷却します。(国内線用のみ)


操作は、ブレーキペダルなんてありません。舵用の「ラダー・ペダル」の上部(つま先部分)を踏んで
ブレーキをかけます。(着陸時は、車輪接地後 自動でブレーキがかかります。)


次は②の「空力的なスポイラーによるブレーキ」です。これは旅客機が浮くための「浮力」の
元となる空気の流れを変え、かつ、空気抵抗による「抗力」を発生させるのに使用します。
旅客機の翼の後端の整流板を持ち上げ、「抗力」を発生せせます。


操作は、スラスト・レバー左の「スポイラー・レバー」を手前に引きます。なお、これも着陸時は
自動で行われます。


最後は、③の「ジェットエンジンの逆噴射ブレーキ」です。これは多くの皆さんご存じの事と
思いますが、結構勘違いされています。「逆噴射」であり、「逆回転」ではありません。
大型旅客機のジェットエンジンは回転方向は一定です。構造上逆に回転することは
出来ません。では、どうするか?
大型旅客機のジェットエンジンは、「外筒」と「内筒」の組み合わせのような二重構造です。
「内筒」が燃焼室で、燃料を燃やし後方へ排気します。ですが、前面ファンを通過した空気の
6割くらいは、「内筒」と「外筒」の間を通って後方へ出ます。これを「高バイパス比型」と
呼んでいます。この燃焼しないバイパス側の空気を遮断し、斜め45°前方へ向けて排出します。
下の画のエンジン・カウルが1/3ほど後方に下がっているのがお分かりですか?
この隙間から、前方に向けて空気を出して抗力を発生させています。これを「スラストリバーサー」と言います。


「ゴーー」というエンジン音と共に、バイパス流が斜め45°前方へ向けて排出されています。
この抗力が絶大なブレーキ作用となり、286トンの機体を250km/h から安全なタキシング速度まで
減速させます。
操作は、スラスト・レバー前方のリバース用レバー「スラストリバーサー・レバー」を操作します。


作動時は、EICAS(機体情報表示システム)に、スラストリバーサー作動が表示されます。
(エンジン表示の上に「REV」の文字が表示されます。)


これらのブレーキシステムのおかげで機体や乗客の皆様・荷物を傷めることなく
地上へ降ろすことが出来ます。



本日は、旅客機の「ブレーキ」のお話。いかがだったでしょうか。













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