「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

小説「傾国のラヴァーズ」その20・夜中の電話に期待する

2022-11-20 23:51:00 | 傾国のラヴァーズその11~20
 でも俺はどうにか、
「誰にも言いませんが、もし、僕ができることがあったらいつでも連絡してください。今みたいに話を聞いてほしい、っていうのでもかまいません」
 夜中でも大丈夫ですから、とまで言うと、彼の横顔が少しほころんだように見えた。

 大変なことに巻き込まれたら面倒だな、とは思ったが、夜中に彼の声を聞けたら嬉しいかもしれない、などとおかしなことが頭をよぎる。

「それじゃあよろしく頼みます」
と、彼はものすごく神妙な顔で俺に頭を下げると、駐車場へと降り立った。

「…社長、皮膚科に行った方がいいですよ。畑に行った時とか、外来種の虫でも連れてきたんじゃないですか?」
 
 社長室で高橋専務に言われると、彼は、
「僕もそう思うんだよ」
と、さっきとは打って変わって落ち着いた様子で答えていた…


小説「傾国のラヴァーズ」その19・謎の人脈

2022-11-20 07:57:00 | 傾国のラヴァーズその11~20
 しかし彼は、
「いや、それは無いんだけど…」
と答えてはくれたが、その声に、俺はためらいのようなものを感じた。
「…その…向こうは僕のことを気に入ってくれてるのかもしれないけれど、酒が入ってからの説教というか指摘が長いしつらくて…いつもお前は駄目だとか、どういう仕事やってるんだとか…」
 まずは聞くことに撤することにした。
 俺に話せたことで少し気が楽になったのか、彼は安心したように、でもまっすぐ前を見たまま、
「向こうは後輩を育てているつもりなのかもしれないけど、僕としては古い考えで的外れなことばかり言われてる気がして、苦痛で…」
 
 それでも今後の仕事の展開を考えると切れない相手なのだろう。
 門外漢の俺が想像するより、かなり社会的地位のある人間なのかもしれない。
 でも、彼は祖父のコネなど使うような人ではないようだから、彼自身のバイタリティで得た人脈なのだろうが…
 
「でも、その人のことは誰にもまだ知られたくないんだ。だから、海原くんの胸にだけおさめておいてほしいんだ」
 俺は昨日知り合ったばかりの人間だし、仕事上守秘義務があるということで話しやすかったのだろう。
 しかし、
「わかりました。誰にも言いません。ですが、相手から脅迫とか襲撃されるようなことは…」
「ああ、それは大丈夫。そういう人ではないから」

 …ならば、その首すじのキスマークのようなものの正体は何なのか、俺に指摘された時、どうしてあんなにうろたえたのかと俺は知りたくなる。

 …なのに、それを冷静に切り出せない。
 そしてそんな自分を持て余していることに、俺は困り果てている…