「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

小説「傾国のラヴァーズ」その17・どうして俺は

2022-11-18 23:32:00 | 傾国のラヴァーズその11~20
 それでも彼は、
「ゆうべちょっと寝るのが遅くなっただけなんだけどな。あの後、調べものに夢中になっちゃって」
と、出かけようとする。
 俺はそれよりも彼の首すじの、多分キスマークと思われる赤い痕の方が気になって、言葉を選んで尋ねた。
「首、どうしました? 虫刺されか何かですか?」
「えっ?」
 俺の予想に反して、彼はものすごくうろたえた。
 冗談めかして、「その辺は察してよ」くらいに言ってくれると思ったのに。
「そんなに目立つ? ええっ、どうしよう?」
「絆創膏か何かで隠せれば…」
 
 俺にも動揺が移ってしまい、彼と一緒に玄関に上がって洗面所についていってしまった。
「ほんとだ」
 鏡で確認すると彼はすぐに絆創膏を二枚貼って痕を隠した。
 更にまとめていた髪もほどいてしまった。
「これで目立たないかな?」
 目をそらしたまま、彼は訊いてくる。
 俺は、
「後から皮膚科に行った方がいいんじゃないですか? 外来生物に刺されたとかかもしれませんよ」
「うん。そうする」
 俺はなぜか複雑な気持ちだった。