「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

小説「傾国のラヴァーズ」その14・泊まっていかない?

2022-11-13 22:46:00 | 傾国のラヴァーズその11~20
 そして、農業から伝説が始まったと聞く彼の祖父の呪縛には、とらわれていないことにもほっとした。

 彼の見た目とはかけ離れた作業のようにも思えるが、勉強のためには畑にも田んぼにも入るという。
「まずは日本の食料自給率もあげなくちゃね。有事の時にはきっと、東京なんてなかなか食料が回ってこないでしょ。それも東京で生まれ育った僕としては嫌なんだ」

 彼の瞳の輝きが増していく。楽しく俺は見ている。
「獣害の問題もあるからね。それにも関われないかとと思ってきてるんだ。それに、茨城ならスマート農業で大規模農業もやれるかもしれないから…」
 夢のある話でいいなと俺は思った。

 それでつい口走ってしまった。
「いいなあ、俺そちらに転職させてもらいたいなぁ…」
それを聞くと彼ははびっくりした顔をした。
 俺がびっくりするほど、目をまん丸にしていた。
 まずかったか、俺。
「いえ、すみません。今の仕事はプロとしてきっちりやってますので安心してください。でもなんだか夢のある仕事のようで羨ましかったので…」
 彼は笑って許してくれたが、
「ねえ、その辺ももっと話したいから、今日泊まっていかない? どうせ明日二人ここから一緒に出勤みたいなものでしょ?」
「い、いえ…」