「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

小説「傾国のラヴァーズ」その15・いつかは合宿

2022-11-16 20:51:00 | 傾国のラヴァーズその11~20
 さすがに俺は断った。
 いくら気が合いそうでも、出会ったばかりの顧客の家に泊まるわけにはいかない。
 盗難を疑われたり、ケンカになったりとトラブルになっては本当に困るからだ。
「あの…初日だったので、今日中に提出しなければいけない報告書が多いもので…」
「えっ? これから会社に戻るの?」
「まず、自宅からリモート使って…何かあれば会社へ」
「大変だなあ」
「24時間動いてる職種なので…」
 でもフォローのためにも、
「でも泊まったら、なんて言ってもらえて嬉しかったです。僕、泊まったりって経験ほとんどないので」
 それに驚いた顔をしながら、彼はまたノンアルビールを一本あけ、
「意外。体格いいから、体育系の合宿が多い人かと思った」
「いいえ…」
 と俺は、いい機会かと、自分のこれまでを話すことにした。
 2才の時に交通事故で両親を亡くしたこと。
 それ以降は父方の祖父母に育てられたこと。
 でも、高1の時に祖父を、高2で祖母を、それぞれ別の病気で亡くしたこと…
 さすがの彼も絶句していた。
「じゃあどうやってここまで…」
俺は手短かに、
「叔父たちが…父や母の弟たちが、お金やいろんな手続きとか管理してくれたので、後は自分でバイトして…」
「なんかごめん。今日は自分ばかり不幸みたいな顔しちゃって…」
「いえ、生きてると色々ありますすよね」
「そうだね。これはやっぱり語り合うのに泊まりの合宿がいつか必要だね」
と、彼は俺から目をそらしたまままたビールをあおった。