「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

小説「傾国のラヴァーズ」その19・謎の人脈

2022-11-20 07:57:00 | 傾国のラヴァーズその11~20
 しかし彼は、
「いや、それは無いんだけど…」
と答えてはくれたが、その声に、俺はためらいのようなものを感じた。
「…その…向こうは僕のことを気に入ってくれてるのかもしれないけれど、酒が入ってからの説教というか指摘が長いしつらくて…いつもお前は駄目だとか、どういう仕事やってるんだとか…」
 まずは聞くことに撤することにした。
 俺に話せたことで少し気が楽になったのか、彼は安心したように、でもまっすぐ前を見たまま、
「向こうは後輩を育てているつもりなのかもしれないけど、僕としては古い考えで的外れなことばかり言われてる気がして、苦痛で…」
 
 それでも今後の仕事の展開を考えると切れない相手なのだろう。
 門外漢の俺が想像するより、かなり社会的地位のある人間なのかもしれない。
 でも、彼は祖父のコネなど使うような人ではないようだから、彼自身のバイタリティで得た人脈なのだろうが…
 
「でも、その人のことは誰にもまだ知られたくないんだ。だから、海原くんの胸にだけおさめておいてほしいんだ」
 俺は昨日知り合ったばかりの人間だし、仕事上守秘義務があるということで話しやすかったのだろう。
 しかし、
「わかりました。誰にも言いません。ですが、相手から脅迫とか襲撃されるようなことは…」
「ああ、それは大丈夫。そういう人ではないから」

 …ならば、その首すじのキスマークのようなものの正体は何なのか、俺に指摘された時、どうしてあんなにうろたえたのかと俺は知りたくなる。

 …なのに、それを冷静に切り出せない。
 そしてそんな自分を持て余していることに、俺は困り果てている…



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