こひのうた
壬生忠岑、清原深養父の恋歌。併せて、枕草子110を読みましょう。
古今和歌集 巻第十二恋歌二
601~603
601
題しらず
忠 岑
風ふけば峯にわかるゝ白雲の たえてつれなき君が心か
風吹けば、峰で分かれる白雲のように、思いの絶えて、つれない男の心だなあ……心に風吹けば、山ばの峰で別れる、白き心雲絶えて、つれないおとこの心かあ。
「風…心に吹く風…飽風など」「峰…山ばの頂」「白…おとこの色…白じらしい」「雲…心にわき立つ煩わしいほどの思い…情欲」「君…男君…おとこ君」「か…感嘆、詠嘆の意を表わす」。
602
月かげにわが身をかふる物ならば つれなき人もあはれとやみん
月光に我が身が変るものならば、つれないひとも、あゝすばらしいと、見つめるだろうか……月人壮士の輝きに、我が身お、変る物ならば、つれないひとも、あゝいいわとか見るだろう。
「月…月人壮士、ささらえをとこ、月の別名(万葉集)…おとこ」「影…姿…光…男の威光…男の容姿の輝き」「人…女」「あはれ…ああ立派だわ…しみじみと感じる…心好い感に堪えない」「見…覯…まぐあい」。まど越しに月おし照りてあしひきの下風(あらし)吹く夜は君をしぞおもほゆ(万葉集巻11)。
603
深養父
こひしなばたが名はたゝじ世中の つねなき物といひはなすとも
恋こがれ死ねば、誰の名は立たずすむだろう、あなたの噂も立つのだよ、この世の命は常無きものよ言いはしても……乞い求め死ねば、誰の汝が立たないのだろうか、我が汝だなあ、夜の仲の常なき物だと言われはするが。
「な…名…うわさ…評判…汝…おまえ…わがおとこ」「たたじ…たたないだろう…打消しの推量」「世の中…女と男の世の中…女とおとこの夜の仲」「常無きもの…命なんて無常なもの…立つもの久しからず」。
上三首。白雲、月影、名に寄せて、おとこの乞いざまを詠んだ歌。
涸れるとも知らず頼んでいたのね
おとこの乞いのありさまを一ひねりして、女がこのように言うと、また、おかしいでしょう。
古今六帖六・続後撰集恋一
こもまくら高瀬の淀にかるこもの かるともわれは知らで頼まむ
菰まくら高瀬の淀で刈る菰のように、枯れるともわたしは知らないで、君を頼りにしているのでしょう……共まくら心波高き背の君が、よどむ女にかる小物、涸れるともわたしは知らずに頼んでるようね。
「かる…刈る…狩る…求め楽しむ…まぐあう…枯る…涸る…離れる」「せ…背…男」「瀬の淀…よどんだところ」「川・瀬・水・淀……女」。
こうして、枕草子を読みましょう。おおまじめな人々が学問として解き明かすようなものでないことがわかるでしょう。
枕草子110
卯月のつごもりがたに、初瀬にもうでて、淀のわたりといふものせしかば、船に車をかきすゑていくに、さうぶ、こもなどの、末みじかく見えしをとらせたれば、いとながかりけり。
こも積みたる船のありくこそ、いみじうをかしかりしか。「高瀬の淀に」とは、是をよみけるなめりと見えて。
四月末ごろ、初瀬に詣でて、淀の渡りというものをしたので、船に車を据えつけて川を渡ってゆくときに、菖蒲、菰などの、末短く見えたのを採らせたら、とっても長かったことよ。
菰積んだ船のゆくのが、とっても趣があったことよ。「高瀬の淀に」とは、是を詠んだのだろうと見えて。
憂尽きのはてに、発背にはもういでて、淀むひとのわたりというものしたので、ふ根には、繰る間をかき据えていると、壮夫、この君もが、末みじかく見えしを、かきすえたれば、いと長かりだったよ。
こも積み重ねたふ根が在るのこそ、とっても感動したことよ。「高瀬の淀に」とは、是を詠んだらしいと見えて。
こうして、「紫式部の清少納言枕草子批判」などは、読みましょう、よくわかるでしょう、紫式部とほぼ同じ読みができているからよ。
伝授 清原のおうな
鶴の齢を賜ったという媼の古今伝授を書き記している。
聞書 かき人しらず
壬生忠岑、清原深養父の恋歌。併せて、枕草子110を読みましょう。
古今和歌集 巻第十二恋歌二
601~603
601
題しらず
忠 岑
風ふけば峯にわかるゝ白雲の たえてつれなき君が心か
風吹けば、峰で分かれる白雲のように、思いの絶えて、つれない男の心だなあ……心に風吹けば、山ばの峰で別れる、白き心雲絶えて、つれないおとこの心かあ。
「風…心に吹く風…飽風など」「峰…山ばの頂」「白…おとこの色…白じらしい」「雲…心にわき立つ煩わしいほどの思い…情欲」「君…男君…おとこ君」「か…感嘆、詠嘆の意を表わす」。
602
月かげにわが身をかふる物ならば つれなき人もあはれとやみん
月光に我が身が変るものならば、つれないひとも、あゝすばらしいと、見つめるだろうか……月人壮士の輝きに、我が身お、変る物ならば、つれないひとも、あゝいいわとか見るだろう。
「月…月人壮士、ささらえをとこ、月の別名(万葉集)…おとこ」「影…姿…光…男の威光…男の容姿の輝き」「人…女」「あはれ…ああ立派だわ…しみじみと感じる…心好い感に堪えない」「見…覯…まぐあい」。まど越しに月おし照りてあしひきの下風(あらし)吹く夜は君をしぞおもほゆ(万葉集巻11)。
603
深養父
こひしなばたが名はたゝじ世中の つねなき物といひはなすとも
恋こがれ死ねば、誰の名は立たずすむだろう、あなたの噂も立つのだよ、この世の命は常無きものよ言いはしても……乞い求め死ねば、誰の汝が立たないのだろうか、我が汝だなあ、夜の仲の常なき物だと言われはするが。
「な…名…うわさ…評判…汝…おまえ…わがおとこ」「たたじ…たたないだろう…打消しの推量」「世の中…女と男の世の中…女とおとこの夜の仲」「常無きもの…命なんて無常なもの…立つもの久しからず」。
上三首。白雲、月影、名に寄せて、おとこの乞いざまを詠んだ歌。
涸れるとも知らず頼んでいたのね
おとこの乞いのありさまを一ひねりして、女がこのように言うと、また、おかしいでしょう。
古今六帖六・続後撰集恋一
こもまくら高瀬の淀にかるこもの かるともわれは知らで頼まむ
菰まくら高瀬の淀で刈る菰のように、枯れるともわたしは知らないで、君を頼りにしているのでしょう……共まくら心波高き背の君が、よどむ女にかる小物、涸れるともわたしは知らずに頼んでるようね。
「かる…刈る…狩る…求め楽しむ…まぐあう…枯る…涸る…離れる」「せ…背…男」「瀬の淀…よどんだところ」「川・瀬・水・淀……女」。
こうして、枕草子を読みましょう。おおまじめな人々が学問として解き明かすようなものでないことがわかるでしょう。
枕草子110
卯月のつごもりがたに、初瀬にもうでて、淀のわたりといふものせしかば、船に車をかきすゑていくに、さうぶ、こもなどの、末みじかく見えしをとらせたれば、いとながかりけり。
こも積みたる船のありくこそ、いみじうをかしかりしか。「高瀬の淀に」とは、是をよみけるなめりと見えて。
四月末ごろ、初瀬に詣でて、淀の渡りというものをしたので、船に車を据えつけて川を渡ってゆくときに、菖蒲、菰などの、末短く見えたのを採らせたら、とっても長かったことよ。
菰積んだ船のゆくのが、とっても趣があったことよ。「高瀬の淀に」とは、是を詠んだのだろうと見えて。
憂尽きのはてに、発背にはもういでて、淀むひとのわたりというものしたので、ふ根には、繰る間をかき据えていると、壮夫、この君もが、末みじかく見えしを、かきすえたれば、いと長かりだったよ。
こも積み重ねたふ根が在るのこそ、とっても感動したことよ。「高瀬の淀に」とは、是を詠んだらしいと見えて。
こうして、「紫式部の清少納言枕草子批判」などは、読みましょう、よくわかるでしょう、紫式部とほぼ同じ読みができているからよ。
伝授 清原のおうな
鶴の齢を賜ったという媼の古今伝授を書き記している。
聞書 かき人しらず