お前は もう いつから
そんな所に そんな姿で---
葉の落ちた 枯れ枝の先端に
お前は 無惨な姿を 晒している
お前は もう
田んぼの泥の中を 這いつくばる こともない
なくことも わめくことも ---
お前はただ そうして ミイラとなって
やがて来る きびしい冬の寒空に
吹き晒さらされるのだ
そして 全ての人々に
その ありのままの姿を
見てもらわねばならない
お前は 田んぼの泥の中を 這いつくばっていたときに
いっそ 餌食になってしまえば よかったのだ
そうすれば 誰にも 知られず
人々の前に そんな姿を晒すこともなかったろう
しかし 俺はわかるのだ
晩秋の青空に モズの声が響き渡るとき
彼が何故 お前をすぐにでも
おのれの肉体の一部としてしまわなかったのかを
そんなことを したら
彼の悲しみも 怒りも
永遠に 失われてしまう
いったい モズは お前の何なのだ
だから どんなに ひもじくとも
モズは お前を食べようとは しない
古代エジプトの ファラオの如く
お前を 永遠に生かすことによって
ありのままの姿で 生かすことによって
「あのとき」受けた 傷跡の深さを 訴えているのだ
田んぼの泥の中に 埋まったまま
死んでいた おじいのことは 忘れられても
お前だけは ミイラとなって
その姿を 後世まで 晒さねばならない